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音で“観せる”映画「THE GUILTY/ギルティ」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのはデンマーク発の北欧スリラー『THE GUILTY/ギルティ』ですよー!

主要“登場”人物はほぼ主人公1人という会話劇なんですが、これが超面白かったんですよねー!

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概要

主人公が電話の声と音を通して誘拐事件の解決を図ろうとする異色サスペンス。本作が長編初監督作となるグスタフ・モーラーが、緊急ダイヤルの通話を頼りに誘拐事件と向き合うオペレーターの奮闘を描く。ドラマシリーズ「北欧サスペンス「凍てつく楽園」」などのヤコブ・セーダーグレンが主人公を演じ、イェシカ・ディナウエ、ヨハン・オルセン、オマール・シャガウィーらが共演している。(シネマトゥデイより引用)

感想

想像させる映画

本作は、2018年に本国デンマークで公開されるとたちまち話題になり、サンダンス映画祭では観客賞を受賞、さらにアカデミー賞外国語映画賞にもノミネート候補に選出され、映画評価サイト「Rotten Tomatoes」では初登場で満足度100%の評価を叩き出したという北欧スリラー。すでにハリウッドリメイクも決定しているらしいです。

ある事件がキッカケで、市民からの通報を受ける緊急通報指令室のオペレーターに回された警官のアスガーヤコブ・セーダーグレン)が、今まさに誘拐されている女性イーベンからのSOSを受けるという物語。

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主要“登場”人物は主人公アスガー1人。舞台は緊急通報指令室の室内のみという完全会話劇で、アスガーと僕ら観客は、電話先の相手の言葉や漏れ聞こえてくる“音”だけで、電話の向こうで起こっている事を「想像」するという趣向。
そして、物語(会話)が進むうちにアスガーと僕らは、思いもよらぬ“真実”へと辿り着くことになるんですねー。

以前、僕はハル・ベリー主演「ザ・コール 緊急通報指令室」というほぼ同じシチュエーションの映画感想で、「緊急通報指令室の中で物語を完結させて欲しかった」的な事を書いたと思うんですが、本作はまさに、そんな僕の希望を叶えてくれた作品なのです。

 なんせ映像に映るのは、焦ったり、イラついたり、怒鳴ったり、考えこんだりするアスガーの姿だけで、電話相手の姿も、電話の向こうの陰惨な状況も一切映像には映らない。
それでも面白いのがこの脚本の上手いところで、あえて見せないことで観客がそれぞれ、自分の頭の中に映像を思い浮かべる様、短い会話の中や会話相手の電話から漏れ聞こえてくる“音を設計”しているわけです。

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そもそも映画は、映像と(BGMを含めた)音で物語を観せる媒体。
映像はもちろん大事ですが、その一方で音の演出も大変重要です。

例えば70年代スラッシャーホラーの名作「悪魔のいけにえ」には、実はグロい殺戮シーンってそれほどないんですよ。
でも、多くの人は実際は無かったシーンを「観た」と思い込んでいるんですね。

それは「悪魔の~」の音の設計が上手いからで、例えばレザーフェイスが重い鉄扉をバーン!と閉める音でショックを与え、観客に扉の向こうで起こることを想像させているからなのです。

本作の場合、アスガーと相手との会話や効果音の中に、観客が状況や内容を理解・想像するのに必要な情報、さらにコチラの思い込みを利用したミスリードまでぶち込み、映像の方は、その時のアスガーのリアクションを映すことで、観客が感情を向ける喜怒哀楽の動線を作ってるわけです。

普通は映像をサポートとして音があるわけですが、本作はそれが逆になっているんですねー。

そういう意味で本作の演出方法は小説や舞台演劇に近いと言えるかもしれません。

一筋縄ではいかない

で、クライマックスでは本作じゃないと出来ない、ある衝撃の展開が待っているんですが、ミステリーやサスペンスが好きな人なら、ここの展開は割と早い段階で読めちゃうかもしれません。

でも、そこまでは(恐らく)作り手側も想定内。
実は、本筋のそこかしこに仕掛けられていたもう一つの物語がここで発動。
全ての真実が詳らかになった時、僕ら観客は初めて物語の意図やタイトルの意味を理解し、あのシーンやこのシーンに隠された仕掛けの意味にも、振り返って気づく作りになっているのです!

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一の矢を交わしてドヤ顔してたら、実は二の矢三の矢がすでに刺さってたっていう。

そして最後には、デンマーク(というか世界の国々)が抱える、弱者を救済するためのシステムによって弱者が犠牲になってしまうという問題や、コミュニケーション不足からくる差別や偏見など、ドスンと重いテーマまでを最小限の情報で語っているんですね。

それだけの仕掛けや情報量をたった88分という時間の中に収めてしまう手腕も凄いし、ある意味ほとんど画変わりしないワンシチュエーションの映画で、最後まで緊張感を持続させるのも凄いなーと思いましたねー。

映画館で見るべき作品だった

僕は今回、本作を自宅のテレビで観たわけですが、観終わったあと「映画館で観れば良かった!!」と激しく後悔してしまいましたよ。

いや、もちろん自宅のテレビで観ても十二分に楽しめたわけですが、音響設備の整った映画館で本作を観たら、更なる臨場感が味わえたのではないかと思うんですよね。
「サスペンス系の映画だしDVDで観ればいいや」とナメてた、あの時の自分をぶん殴ってやりたい!!ウワァァァァァァヽ(`Д´)ノァァァァァァン!

興味のある方は是非!!!

 

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