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山崎貴監督の最高傑作「アルキメデスの大戦」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、菅田将暉演じる天才が数学の力で戦争を止めようとする『アルキメデスの大戦』ですよー!

山崎貴監督作に好意的とは言えない僕ですが、この作品に限っていえば面白かったし、あのオチも含めて凄く上手いなーって思いましたねー。

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概要

「週刊ヤングマガジン」連載の三田紀房のコミックを原作にした歴史ドラマ。1930年代の日本を舞台に、戦艦大和の建造計画を食い止めようとする数学者を描く。監督・脚本・VFXを担当するのは、『ALWAYS』シリーズや『永遠の0』などの山崎貴。主演は『共喰い』や『あゝ、荒野』シリーズなどの菅田将暉。軍部の陰謀に数学で挑む主人公の戦いが展開する。(シネマトゥディより引用)

感想

マンガ原作実写化作品

本作は「週刊ヤングマガジン」に連載中の三田紀房の同名コミックを原作に、山崎貴監督が実写映画化した戦争映画です。
天才数学者の主人公・櫂直(かい・ただし)が、数学を駆使して戦艦大和建造=戦争を止めようとするという、戦争映画としては変わり種の作品ですが、「世に蔓延する不合理に理詰めで立ち向かう」という内容は、「ドラゴン桜」や「砂の栄冠」など、三田さんの過去作に通じるものがあるのではないでしょうか。

事実、三田さんは「砂の栄冠」終了後の次作の構想を練っている最中、国立競技場建設を巡るゴタゴタを見て本作を思いついたという背景があり、そういう意味では太平洋戦争と今の日本を重ね合わせた、非常に現代的な作品と言えるのかもしれません。

そんな原作マンガの大ファンで、実写映画化を熱望していた山崎監督は、原作コミックの1~3巻にアレンジを加え、本作を制作したのだそうです。

また、冒頭約5分の戦艦大和沈没までのシークエンスを、山崎監督が所属する実質日本トップのVFX制作会社「白組」が担当。
日本映画史に残る、大スペクタクル映像を作り上げたんですね。

歴代邦画ナンバー1の沈没シーン

本作は1945年4月7日、大日本帝国海軍の巨大戦艦大和が米軍の猛攻の前に成す術なく撃沈される約5分のシークエンスからスタートします。

敵戦闘機による銃撃や魚雷攻撃の前に必死の抵抗を見せる大和でしたが、物量で勝る米軍の前には成す術がなく、最終的には海に投げ出され、一度は難を逃れたかに見えた乗組員を飲み込む巨大生物のように転覆。

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この一連のスペクタクルを白組のVFXで見事に描いているんですね。
もちろん、大予算のハリウッド映画などに比べれば見劣りはするものの、邦画としては過去トップクラス…というかナンバー1と言っても差し支えない見事な出来だったと思いました。

また、このシーンではそれだけに留まらず、撃墜した敵機パイロットを、哨戒機が回収していくのを銃座の乗組員が呆然と見送るシーンがあるんですが、このシーンはまさに本作の根幹に関わるとても重要なシーン

もちろんそれは「仲間を救うアメリカ人」的な“イイ話”というわけではなく、“人的資源を無駄にしない米軍の合理性”や日本の戦争に対する思想の違いを、その映像一発で見せているのです。

この演出は非常にスマートだし、完璧なスタートだったと思いましたよ。

そこから時系列は遡って1933年。

海軍では新造艦をめぐる会議で、来る航空戦に備え航空母艦の必要性を説く永野修身中将國村隼)と山本五十六少将舘ひろし)と、大艦巨砲主義派の嶋田繁太郎少将橋爪功)が激突。

そこに、嶋田派の平山忠道技術中将田中泯)が持ち出した巨大戦艦の模型は、大角岑生大臣小林克也)をも魅了、流れは巨大戦艦新造に大きく傾きます。

料亭で今後の方針を話し合う永野と山本は、平山案の建造予算が異様に安いことに着目。その裏に隠されているハズの不正を暴き、巨大戦艦新造を阻止しようと考えますが、次回会議までたった2週間では適正予算を割り出すことはとても不可能と、途方に暮れるんですね。

で、話し合いを中止し芸者を読んで飲もうという話になるんですが、芸者は同じ料亭で豪遊する学生服の若者が独り占めしている。
そこで山本は彼に芸者を融通するよう説得に行くんですが、その若者、櫂直菅田将暉)の数学能力の高さに気付いた山本は、彼に新造戦艦の適正価格を割り出させようと考えます。櫂は日本屈指の天才数学者だったのです。

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しかし日本と軍隊の非合理性に幻滅する櫂は頑なに断り、アメリカに留学しようとするんですが、出発の間際、戦争に負け人々が焼き尽くされる姿を想像し、「国民に幻想を与える戦艦案を阻止することで、戦争を阻止する」という山本の説得に応じる――というストーリー。

しかし、戦艦の適正価格を割り出そうにも、戦艦に関する資料は全て軍規によって閲覧不可。まして戦艦に対して素人の櫂には到底不可能と思われるんですが、数学の天才である彼は数学と若者らしい行動力で、困難なミッションの打破に挑むのです。

観る前からネタバレしてる本作をどう盛り上げるのか問題

とは言え、冒頭のシーンで大和が作られ沈む事は分かっているし、後に日本が戦争に大敗することも観ている全員が知っているわけで、櫂の挑戦が徒労に終わることは最初から分かっているんですね。

つまり、SWのプリクエル・トリロジー(ep1~3)でアナキンがダースベーダーになることを全員が知ってるのと一緒で、本作は観る前からネタバレしているわけですよ。

そんな物語をどう盛り上げていくのか、どう着地させるのかが本作の見所なのです。

結論から言えば、中盤以降は櫂のサポート役として田中柄本佑)という若者を配すことで、ホームズとワトソンが難事件解決に挑み、その頭脳と発想で解決の糸口を見つける展開で引っ張り、後半の山場となる会議では名探偵による解決編、もしくは法廷劇的に盛り上げ、クライマックスにはまさかの(アクロバティックな)どんでん返しが用意されていて「そう来たか!」と思わず膝を打ちましたよ。

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しかも、その着地に向けて、序盤からしっかり伏線が敷かれていて、このクライマックスでしっかり回収されているんですよね。

キャストもいい

結果、ラストの後味は悪いですが、その後味の悪さがある種のカタルシスをもたらす構成も見事だったし、それを支えるキャスト陣の熱演・好演も素晴らしかったですねー。

主演の菅田将暉の天才で理想家の若者という役どころに対する、舘ひろし橋爪功國村隼らが演じる軍上層部のガハハオヤジ感というか「あー、そりゃぁ戦争も負けるわな」という絶望感はそのまま硬直した現代社会や組織への痛烈な批判にもなっていたと思うし、田中泯の狂気を含む底知れない恐ろしさは、そんな本作を確実に底上げしていたと思います。

櫂の相棒・田中を演じた柄本佑の持つ仄かなボンクラ感と若者らしい熱を両立した演技も良かったですしね。

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まぁ、とは言え、シーンによっては考えをセリフで言わせちゃったり、あまつさえ心の声まで入れちゃったり、櫂の脳内の計算式を映像で浮き上がらせるなど、垢抜けない演出もあったりするんですが、本作に限ってはさほど気にならなかったし、全体的に観れば、山崎貴作品の中でも郡を抜いた傑作と言えるんじゃないでしょうか。

ラストカットの切れ味も素晴らしかったですしねー。

興味のある方は是非!!

 

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