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端的に面白くない「ザ・スピリット」(2009)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「バットマン:ダークナイト・リターンズ」「シン・シティ」の原作者として知られるコミックアーティスト、フランク・ミラーが監督した『ザ・スピリット』ですよー!

漫画家とはいえ、「シン・シティ復讐の女神」では脚本、ロバート・ロドリゲスとの共同監督も務めているフランク・ミラーが、一体どんな作品を撮ったのか気になったので、早速レンタルしてきました!

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概要

アメコミ界の巨匠ウィル・アイズナー原作の同名グラフィック・ノベルを『シン・シティ』『300 <スリーハンドレッド>』の原作者フランク・ミラーが実写映画化。死からよみがえり、愛する街を守るために犯罪組織と戦う仮面のヒーローを『グッド・シェパード』のガブリエル・マクトが熱演する。彼の宿敵にサミュエル・L・ジャクソンがふんするほか、エヴァ・メンデススカーレット・ヨハンソンらが共演。洗練された衣装の数々や、白黒を基調にしたスタイリッシュな映像も見どころだ。(シネマトゥディより引用)

感想

ザ・スピリット」とは

この映画の原作は、1940年に新聞(日曜版)マンガとしてスタートした、アメコミ界の巨匠ウィル・アイズナーのコミック。
恥ずかしながら僕はウィル・アイズナーという人はよく知らないんですが、それまで子供向けのカートゥーン的なマンガ(日本で言えば4コマ的な?)が主流だったアメコミに“映画的”ドラマやコマ割りなどを持ち込み、現在のアメコミ体系の礎を築いたという、日本で言えば手塚治虫(もしくはさいとう・たかを?)的な人らしいんですね。

では、この「ザ・スピリット」がどんなコミックかというと、毒殺されたと思われたものの、墓の中で息を吹き返し、覆面のクライムファイター(=犯罪者退治専門のヒーロー)として活躍する刑事デニー・コルトの活躍を描いた物語Wikipediaより)だそう。


作品の舞台は「セントラル・シティ」となってますが、多くのヒーローコミックがそうであるように、本作もNYをモデルにしています。

で、子供の頃からウィル・アイズナーに多大な影響を受け、生前の彼とも親しかったコミックアーティストのフランク・ミラーが自ら脚本・監督を担当、2008年にこの「ザ・スピリット」を実写映画化したわけです。

フランク・ミラーと言えばマーベルヒーローの「デアデビル」やDCコミックの「バットマンダークナイト・リターンズ
映画化された「300」や「シン・シティ」などを手がけたことでも有名で、同じくコミックアーティスト・ライターのアラン・ムーアなどと共にアメコミ/モダン・エイジの代表的なアーティスト。

また「シン・シティ」の続編「~復讐の女神」では、脚本やロバート・ロドリゲスと共同監督も務めています。

ざっくりストーリー紹介

セントラルシティの刑事・デニー・コルトガブリエル・マクト)は、職務中に拳銃で撃たれて殉職。
しかし、墓の中で息を吹き返した彼は不死身の身体になり、仮面のヒーロー「スピリット(魂)」として、警察と協力しながら街を守っているわけです。

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そんなある晩、警察の要請で沼地に駆けつけたスピリットは、宿敵オクトパスサミュエル・L・ジャクソン)と対決。

オクトパスの狙いは、沈没船に積まれていた宝箱を引き上げることでしたが、女盗賊のサンド・サレフエヴァ・メンデス)と遭遇したせいで、互いの標的が入った箱を取り違えてしまったのです。

オクトパスが狙ったのは英雄ヘラクレスの血で、サンドが狙ったのはイアソンが手に入れたという伝説の金羊毛

二人は互の宝を交換する取り引きをしようとするも、そこにスピリットが割って入り――というストーリー。

まぁ、ヒーローと言ってもスピリットの特殊能力は「死なない」ことだけ。
敵のオクトパスも基本は若者たちに麻薬を売りつけるギャングのボスであり、手下のクローンを作ったりするマッドサイエンティスト。そんな彼の目的は「不老不死」と「世界征服」で、その為には「ヘラクレスのDNA」が必要なわけです。

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映画のルックはデジタル加工された白黒の画面に赤や青の差し色が入るというシン・シティ」と同じ方法だし、内容的にも1930~40年を舞台にしたフィルムノワール調になってるんですね。

端的に面白くない

じゃぁ、面白かったかと聞かれると、端的に言えば「面白くない」と答えるしかないというか。

それこそミラーのコミックをそのまま映像にしたようなシン・シティ的映像自体は洒落てると思うんですが、ストーリーの方はアイズナーの原作コミックを意識している所為か、2000年代の映画としては正直古臭いというか単純すぎるというか。
まぁ、“墓場から蘇ったヒーロー”という原作に対して、何故そうなったのかという一応の理屈はあるものの、なぜ彼が街を守るヒーローになったのかという行動原理は謎なんですよね。
これがバットマンなら、「両親を殺した“犯罪”への復讐」という動機があるわけですが、スピリットにはそれがないので何のために命懸けで戦ってるのか分かりづらいし、初恋の女の子にフラた反動でプレイボーイになったという設定も今どきの映画としては(´ε`;)ウーン…って感じ。

オクトパスの、不死身になって世界征服ってのも今どきリアリティーが無さ過ぎるし、そもそも不死身ってだけでは世界征服出来ませんしね。

あと、これも原作リスペクトだと思うんですが、この映画コメディーシーンがちょいちょい挟まれるんですが、これがどうにもスベり倒してる。

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画像出典元URL:http://eiga.com /オクトパスに急所を攻撃されて悶絶するスピリット

例えば、ホテルの窓からサンドに突き落とされた彼のジャケット?が引っかかって宙吊りになって、それを市民が「落ちろ落ちろ」と囃したてたり、スピリットが女の子たちが乗ったエレベーターに飛び移るため、ベルトを外して引っ掛けようとするけどズボンが下がってパンツ丸見えとか。

オクトパスの子分でクローンの、ファボス(ルイス・ロンバルディ)たちも、研究が未完成なのでみんな間抜けだったし、オクトパス自身も頭がいいようには見えないとか。

そうした原作リスペクト?のコミカルな部分と、フランク・ミラーフィルム・ノワール的な映像との食い合せが超絶悪いのです。

いっそ、コミカルなシーンもマンガ的な突拍子もない設定もなくして、完全にハードボイルドなフィルム・ノワールにすれば、まだ観れたかもですが、中途半端にアイズナーとミラーの世界観を合わせてみたら、主人公のスピリットがカッコつけのお間抜けヒーローになっちゃった的な。

あと、やたらナレーションでの説明が多かったり、セリフで状況を説明しちゃったりするのも垢抜けない。
おそらく、コミック表現をそのまま実写にする的な考えだと思うんですが、それをやって成功したのは「シン・シティ」くらいで、それは原作もフランク・ミラー自身だったからなんですよね。(それだってロバート・ロドリゲスが「映画」になるように調整してたし)

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そんなこんなで、本作はコミックの実写映画としても「面白くない」し、ヒーロー映画としても主人公が「カッコ悪い」っていう残念映画になってしまってたんですよね。

でもまぁ、EDロールで流れるフランク・ミラーが書いた絵コンテ?はカッコイイですよ。

興味のある方は是非

 

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