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映画史に残る傑作「殺人の追憶」(2003)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「パラサイト」で外国人監督として初めてアカデミー監督賞&作品賞を受賞したポン・ジュノ監督2003年の作品『殺人の追憶』ですよー!

てっきり観たと思い込んでいたんですが、よくよく考えたら未見だったと気づいて慌ててレンタルしてきましたよ。

結論から言うと、ビックリするくらい面白かったです!

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

実際に起きた未解決連続殺人事件をテーマにした衝撃サスペンス。韓国で560万人を越える動員数を記録。事実を基に綿密に構成された脚本と緊迫感あふれる映像で、犯人を追う刑事たちの焦燥感が身近に迫る。東京国際映画祭アジア映画賞受賞。主役は『シュリ』JSA』で知られる、韓国の名優、ソン・ガンホ。田舎町の少々、愚鈍な刑事を演じるため、体重を10kg増やし役作りした。監督・脚本は『ほえる犬はかまない』のポン・ジュノ。(シネマトゥディより引用)

感想

天才監督ポン・ジュノ、未解決事件に挑む!

本作は、1986年から1991年にかけて韓国・京畿道華城郡(ファソン)周辺の農村地帯で実際に起こった、本作公開時の2003年当時の段階で未解決だった連続強姦殺人事件を基にしたサスペンス映画。

本作が公開された2003年当時、まだ事件は未解決ということで、ポン・ジュノ監督は本作を“犯人捜し”のミステリー映画ではなく、犯人を追う二人の刑事や警察組織にスポットを当てて、当時の韓国情勢と事件が迷宮入りした背景にある社会の歪みを描いているんですね。

そして2019年、韓国警察は別件で刑務所に収監されていた男を犯人と特定したと発表。
しかし、一連の事件は2006年4月2日に公訴時効が満了しているため犯人は罪に問うことは出来ないのだそうです。(犯人は別件で無期懲役だそう)

ざっくりストーリー紹介

1986年10月、農村地帯華城市の用水路から束縛された女性の遺体が発見されます。

地元警察の刑事パク・トゥマンソン・ガンホ)とチョ・ヨング(キム・レハ)が捜査にあたるんですが捜査は進展せず、2か月後、線路脇の稲田で新たな遺体が発見されるのです。

パク刑事らは二人の女性の関係者を片っ端から取り調べるんですが、スーツ姿の男にはそれなりに丁寧に、しかしそうでない低所得者らしき男には乱暴な取り調べを行います。

そんな中、パク刑事は二人目の被害者の恋人からの情報で、知的障害を持つ焼肉屋の息子グァンホ(パク・ノシク)に目をつけ、暴力的な取り調べや誘導尋問や証拠の捏造を行う。

そこへソウル市警の若手刑事ソ・テユンキム・サンギョン)が赴任。
グァンホの自供で事件解決かと思われるも、ソ刑事は遺体の状況からグァンホの麻痺した手では犯行は不可能であると断定。同時期に警察の拷問による自白強要が問題化し課長を解任。新たに赴任したシン課長(ソン・ジェホ)はソ刑事の主張を支持し、グァンホを釈放します。

ソ刑事は、犯行が雨の日に行われている共通点を指摘、現在行方不明の女性が殺害されていると進言します。
これを受けて大掛かりな捜査の結果、行方不明女性の腐乱死体が発見され、さらに第4の女性の遺体も発見される。

警察の捜査を嘲笑うかのように犯行は続き、犯人像はまったく見えてこない事にいら立つ捜査員たち。
そんな時、女性警官がラジオで「憂鬱な手紙」という曲が流れる日に犯行が行われる事に気づき――というストーリー。

民主化前夜

次々に浮かび上がる犯行の共通点や容疑者たち。
しかし、夜とはいえまだ浅い時間(7時~9時の間)の犯行にもかかわらず目撃者がまったくいないことから警察は犯人の特定に難航します。
その理由の一つが、全斗煥政権末期の学生らによる民主化デモの鎮圧で、そのため捜査に割ける人員が圧倒的に少なかったんですね。
また劇中では、北朝鮮との緊張状態から夜間外出禁止令?によって人の目が極端に少なかった様子も描かれています。

本作は、この田舎の村で起こった連続強姦殺人事件を通して、軍事政権から民主国家に移り変わる韓国社会の歪みを炙り出しているんですね。

反発しあう二人

ソン・ガンホ演じるパク刑事は、そんな退廃した旧体制の警察を象徴する存在。
部下のチョ・ヨングと共に拷問による自白強要、証拠の捏造などやりたい放題。

一方、ソウルからやってきたソ刑事は、4年生大学を卒業したインテリで冷静かつ論理的な若者で民主化後の韓国を象徴する存在です。
書類は嘘をつかない」と、これまでの捜査書類を洗い直し、犯行の共通点から事件が同一犯による連続事件であること、行方不明とされていた女性も被害に遭っていることを見抜くんですね。

そんなソ刑事の存在がパク刑事は面白くないし、ソ刑事も旧態然としたパク刑事のやり方が気に入らないので、二人は当然反発しあいます。

本来、憎まれ役的な立ち位置なハズのパク刑事を、観ているこっちが(間抜けとは思うけど)憎めないし彼に乗れるのも、件の取り調べシーンがコントのようにコミカルに描かれている事と、パク刑事がボケ役、ソ刑事が冷静なツッコミ役になっているからなんですね。

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画像出展元URL:http://eiga.com

そして、更なる事件をキッカケにソ刑事は暴走、パク刑事が彼を止める役になるという、二人の立場が逆転するクライマックスに、観ているこっちは思わず息を呑んでしまうのです。

計算されつくした映像

そんな本作を盛り上げているのが、ポン・ジュノ監督によって入念に計算された映像の設計です。
ぱっと見、無造作に撮影しているように見えて、要所要所でハッとするような映像が差し込まれるし、本作では、フィルムの質なのかカメラワークやライティングなのかは分からないんですが、刑事たちが事件を追う1980年代を映す映像は(今から17年前の作品にしても)昔風というか1980年代的というか、後日談となる2003年のシーンの映像とはハッキリ違いを出しているように感じたんですよね。

多分ですが、そこも計算のうちで、ポンジュノ監督は画質の違いで時代の空気感みたいなものを出しているのではないかと思いました。

あと、観た人全員の記憶に残ること間違いなしの、ソン・ガンホの表情が大映しになるラストショット。
この物語が全て、あのショットに集約されるように作られているのが分かる、映画史に残る見事なショットでした。

よくある話なのに目が離せない

本作をざっくり一言で言うなら「猟奇的な連続殺人犯を追う刑事の物語」で、それ自体はこれまで数多の映画で使われているし、僕もこれまで死ぬほど観た、いわゆる手あかのついたプロットと言えるし、実際の事件を扱う以上結末も分かっている

なのに、本作がラストシーンと対になるアバンから最後まで目が離せないのは、ストーリー・テラーとしての観客を引き込んでいくポン・ジュノ監督の練りに練った構成を、前述の計算された映像設計による極めて映画的語り口で見せていく見事な手腕あればこそなのだと思いました。

これまで僕が観たポン・ジュノ作品はどれも面白かったですけど、個人的には本作が一番面白かったですよ!

興味のある方は是非!!

 

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