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美少年をストーキングするオッサンの物語「ベニスに死す」(1971)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、イタリア映画界の巨匠ルキノ・ヴィスコンティが、美少年への思いを募らせた老作曲家の苦悩を格調高く描いた文芸ドラマ『ベニスに死す』ですよー!

まぁ、僕もたまには「名作」と言われる作品も観てみようと思ってレンタルしてきたんですが、結論から言うと観ている間ずっと眠気との闘いでしたねーw

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概要

イタリア映画界の巨匠、ルキノ・ヴィスコンティが、美少年への思いを募らせた老作曲家の苦悩を格調高く描いた文芸ドラマ。作曲家グスタフ・マーラーをモデルに描かれたトーマス・マンの原作を基に映画化。少年へ恋焦がれるあまりに破滅へと向かう作曲家を演じるのは、『召使』『ダーリング』などのダーク・ボガード。美少年を演じたスウェーデン出身のビョルン・アンドレセンの美ぼうも話題になった。マーラーの音楽と共に描き出される芸術的で退廃的な世界観を堪能したい。(シネマトゥデイより引用)

感想

ドイツ三部作

本作はドイツの作家トーマス・マン作の同名小説を、イタリア映画界の巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督が映画化した作品です。

ヴィスコンティロベルト・ロッセリーニヴィットリオ・デ・シーカなどと共にネオレアリズモ主翼を担った監督で、本作はそんな彼が監督した「地獄に堕ちた勇者ども」「ルートヴィヒ」と並ぶ「ドイツ三部作」の第2作なんだそうですね。

ちなみに僕は、恥ずかしながらヴィスコンティ監督作品は今回が初見だったりします。

で、本作の内容をざっくり一言で言うなら「美少年をストーキングするオッサンの物語」でしたよ。

ざっくりストーリー紹介

1911年、イタリアのベニス。
心労から病に倒れてしまった事で静養に訪れた作曲家のアシェンバッハダーク・ボガード)が本作の主人公。

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色々あって疲れ果てた彼は療養のためベニスを訪れたんですが、ベニスは季節風の影響から驚くほどの暑さと、バカンスに訪れている観光客で賑わっていたためアシェンバッハはうんざりします。

しかし、ホテルの中で偶然、絶世の美少年タジオ(ビョルイン・アンドレセン)に目を奪われ、自身の中に特別な感情が芽生えたことにアッシェンバッハ本人はまだ気づいていないんですね。

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タジオは家族とともに同じホテルに滞在していたため、レストランでの食事中も、窓を開けると見える海岸でも、気持ちのよい潮風が吹くビーチでも、アッシェンバッハはタジオを目で追ってしまうのですね。

そんなある時、エレベーターでタジオは自分が見つめられていることを知ってか知らずか美しい笑みを浮かべながら振り向き、見つめ合った瞬間、アッシェンバッハは彼の圧倒的な美の魅力の虜になってしまったことに気づくのです。

動揺した彼は、慌ててホテルを引き払いミュンヘンに帰ることを決めるも、手違いで別の場所に荷物が送られてしまったため、再びベニスのホテルに舞い戻ることに。

そこで、タジオを見つけた彼は、再会をひそかに喜ぶんですねー。

そんなアッシェンバッハがホテルのロビーで海外の新聞を読んでいると、ベニスでの感染症に注意するようにと警察からの勧告を発見し――というストーリー。

僕は「ベニスに死す」がオッサンが美少年に恋する物語という程度しか知らなかったので、今回見て観光地ベニスに伝染病が蔓延という内容にビックリしてしまいしたよ。

イムリーすぎんだろ。

美と生への渇望

本作では、ベニスでのアッシェンバッハと同時進行で、彼がベニスに来ることになる経緯が語られていきます。

ドイツで作曲家として名声を手に入れ、美人の奥さんと可愛い一人娘にも恵まれ幸せの絶頂だったアッシェンバッハ。
しかし、不慮の事故か病気で娘を亡くしただけでなく、老いと共に仕事も上手くいかなくなって病に臥せってしまった彼は、静かな環境で療養するためベニスを訪れますが、そこでタジオと出会ったことで、自分がどんなに努力しても叶わない美しさと生の輝きにすっかり心を奪われてしまうんですね。

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その感情は恋とか愛とかではなく、彼がタジオに激しく惹かれるのは、身も心もすっかり年老いてしまったアッシェンバッハが求め続けた美と生への「渇望」だったのだと思います。

最初はタジオを目で追う程度だったアッシェンバッハでしたが、次第に行動はエスカレート。タジオを探してホテルやビーチ、ベニスの街をウロウロしたり、白髪交じりの髪や口ひげを黒く染め、白粉に紅をさして若作りし始める始末。

真っ白なスーツやハットで身を固める彼はまるでピエロのようで、何ともいたたまれない気持ちになってしまいましたよ。

一方、アッシェンバッハに忍び寄る死の影
本作ではベニスでタジオと出会った瞬間、アッシェンバッハの運命は決まったかのように描かれています。
つまり、タジオはある意味で、アッシェンバッハを破滅に向かわせるファム・ファタール(主人公を破滅に向かわせる魔性の女)であり、彼を黄泉の国に誘う美しい死神のような存在でもあるわけです。(あくまでアッシェンバッハから見て)

一度は死神の手から逃れたかに見えたアッシェンバッハでしたが、荷物の手違いでベニスに戻らざるを得なくなった時、文句を言いながらも彼の顔はにやけているんですよね。そんな彼の向こうでは、やせ細った一人の男が今にも死にかけている。
この時点で、アッシェンバッハは忍び寄る死の影に捕まったのです。

環境ビデオのよう

とまぁ、本作でヴィスコンティ監督がやりたい事は何となく分かるし、シネスコサイズ(2.35:1)で撮られた映像も非常に美しかったです。
しかし、その美しい映像にアッシェンバッハのモデルになった作曲家マーラーの音楽も相まって、まるで環境ビデオを観てるような134分、僕はもう眠気を堪えるのに必死でしたよw

アッシェンバッハの心情の変化やタジオとの距離感をじっくり時間をかけて描く演出も、本作が公開された71年ならともかく2020年のテンポに慣れきってしまった今となっては、かなり辛いものがあるんじゃないかと思いましたねー。

興味のある方は是非!

 

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