ぷらすです。
今回ご紹介するのは、未解決事件を追う二人の刑事を描いたデンマーク映画のシリーズ第4弾『特捜部Q:カルテ番号64』ですよー!
有能だけど気難しくてすぐ一人で突っ走ってしまうカールと、移民という出自ゆえ警察署内で正当なポストを与えられなかったアサドのコンビが、デンマーク最大の闇を追うシリーズ最終章?です!
画像出典元URL:http://eiga.com
概要
ユッシ・エーズラ・オールスンの「特捜部Q」シリーズ映画化第4弾のミステリー。未解決事件の調査に当たる特捜部Qの刑事たちが、ある失踪事件を捜査する。特捜部Qのコンビを、ニコライ・リー・コスとファレス・ファレスが続投。『恋に落ちる確率』などのクリストファー・ボーがメガホンを取り、脚本を本シリーズや『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』などのニコライ・アーセルが務めた。(シネマトゥデイより引用)
感想
北欧映画の乾いた湿度
北欧ミステリーと言うと洋画ともアジア映画とも違う、独特な「乾いた湿度」のある作品が多い印象があります。
“乾いた湿度”というのもおかしな言い回しだし、北欧で一括りにするのは些か乱暴かもしれませんが、例えばシリアルキラーが犯人のミステリーやサスペンスなどでは、ハリウッド映画ほどドライではないがアジア映画ほど湿度は高くない。みたいな?
北欧ミステリーを語れるほど沢山の作品を見てきたわけではないけど、少なくとも僕が観た作品では、旧家の因習や社会制度の捻じれ、選民思想や排他主義が絡むストーリーが多い気がするんですよね。
まぁ単純に残酷な犯人像の背景として使いやすいからかもですが、冬は雪と氷に閉ざされる北の国ならではの閉塞感や、戦争の記憶みたいなものが深く根ざしているのではないかと思ったり。
本作で主人公カールとアサドの敵となるのは、まさに選民思想による排他主義を掲げる集団であり、その犠牲になるのは少女や女性なのです。
そういう意味では非常に現代的なテーマと言えるかもしれませんね。
シリーズ作品をざっくり解説
デンマークの作家J・エーズラ・オールスン原作の同名シリーズを映画化したサスペンスドラマで、捜査ミスにより部下を殉職させてしまった元殺人課の刑事カール(ニコライ・リー・コス)と、移民という出自ゆえ自身が望む部署に配属されないアサド(ファレス・ファレス)の二人が配属された窓際部署「特捜部Q」で未解決事件を解決していくという内容。
最初に映画化されたのは「~檻の中の女」
ずっと死んだと思われていた女性を、たまたま書類に目を通したカールの違和感から再捜査をするうち女性が実は生きていて、犯人に長年にわたって監禁・拷問を受け続けていたことを突き止めるというストーリーです。
この拷問というのが普通では思いつかない方法で、また、その背景には犯人と女性の過去が関係していることが分かるんですね。
2作目は「~キジ殺し」
20年前に結審済みの双子レイプ殺人事件の再捜査から、新たな事実が浮かび上がってくるというストーリー。
「キジ撃ち」は貴族や富裕層の娯楽として定着してますが、それが転じて“弱いものを追い回す”という意味があり、それに殺人事件をかけて「キジ殺し」というタイトルになったんですね。
3作目の「~Pからのメッセージ」
特捜部Qに届いた血に染まったボトルメールから、「神の弟子」という宗教がらみの殺人事件が明らかになっていくというストーリー。
フィクションでは扱い辛い「宗教」にスポットを当て、真正面から描いています。
そして本作「~カルテ番号64」では、アパートの壁に隠された部屋の中から3体のミイラ化した遺体が発見され、その謎を特捜部Qのカール、アサド、そして前作から参加している紅一点のローセ(ヨハン・ルイズ・シュミット)の3人が追うというストーリー。
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捜査を進めるうち、3人は昔1961年に閉鎖された不良少女を収容、更生させる施設「スプロー島女子収容所」に辿り着くのです。
一方、アサドと顔見知りの少女で望まぬ妊娠をしたマールは、友人に付き添われ匿名で中絶を行えるクアト医師のクリニックで手術を行います。
その後、クリニックの院長クアトはスプロー島の女子収容所で医師をしていた事が分かり……というストーリー。
実はこのクアト医師、表向きは不妊治療の第一人者ですが、実は寒冷地に住む白人種こそ優生種と信じ弱者断絶の思想を信奉するグループ「寒い冬」の指導者的な人物で、過去にスプロー島で少女たちへの強制不妊手術を行っていた事が分かるんですね。
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そして女子収容所が閉鎖になってからは中絶を望む移民の少女に、合意なしで不妊手術を行っていたのです。
しかも「寒い冬」のメンバーは医師や弁護士だけでなく警察や司法にまで及び、ゆえにメンバーの医師らに対する訴訟は裁判になることなく揉み消され、(証拠を握る)都合の悪い人物は密かに消されていたことが分かり、その魔の手は3人にも伸びていくのです。
女子収容所は実在した
本作に登場するスプロー島女子収容所はフィクションとして描かれますが、そのモデルは実際に1921年から1962年までスプロー島に実在した女性収容所です。
この施設には、軽度の知的障害の女性や(当時基準で)“ふしだら”とされた女性が収容され、出所には不妊手術の同意が条件だったそうです。
“ふしだら”な女性は優生学的に劣る存在とされていたことが理由なんだそう。
これとよく似た事案が、つい最近日本でもニュースを賑わせていますよね。
1948~1996年まで、障害を持つ人への(本人の同意がない)不妊手術を国が法律で認めていた「旧優生保護法」です。
社会的弱者の人権を踏みにじる「スプロー島女子収容所」は決して絵空事でも他人事でもないのです。
さらに本作では劇中に「寒い冬」の選民思想や移民排斥などの排他主義なども描き、ある意味イマドキなテーマを扱った作品でもあるんですね。
カールついにデレる!
シリーズを通して観てきた人なら、カールとアサドの関係にはずっとヤキモキしてきたのではないでしょうか。
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相棒のアサドに対して、ちょっと心を開きかけたかな?と思ったら、次の作品ではまた心を閉じているツンデレおじさんのカール。
それに根気強くつきあい、サポートしてきたアサドですが、本作ではとうとうほかの部署に転属することに。
しかし、当のカールは「別に同じ署内での移動だろ?」なんてツレない様子。
これにアサドは「5年も一緒にいたのにそれだけなの!?キー!」とついにブチギレ。
二人の関係は過去最悪になるんですね。
そして色々あって、本作ラスト。
ついに、あのカールがデレましたよ皆さん!! 。:.゚ヽ(*´∀`)ノ゚.:。
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