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MCUドラマ「Ms.マーベル」レビュー&解説

ぷらすです。

今回は、Disney+で公開されたMCUマーベル・シネマティック・ユニバース)ドラマ、「Ms.マーベル」をご紹介します。

なんと、今回主役を務めるマーベルヒーローは女子高生にして、マーベルコミック初のムスリムヒーローなんですねー。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

マーベル・スタジオが製作するアメリカ合衆国インターネットテレビドラマシリーズ。マーベル・シネマティック・ユニバースMCU)の7番目のテレビシリーズで、2022年6月8日からDisney+にて配信されている。

レビュー

Ms.マーベルとは

本作のタイトルにもなっているMs.マーベルというキャラクターは、1977年出版の『ミズ・マーベル』第1号で初登場。初代Ms.マーベルはMCU作品でお馴染みのキャプテン・マーベルことキャロル・ダンバースでした。

実は、この「キャプテン&Ms.マーベル」という原作キャラの変遷は少々ややこしくて、アメコミ史上最初のキャプテン・マーベルは、マーベルコミックではなくフォーセット・コミックスで初登場。そのキャプテン・マーベルは現在「シャザム」と名前を変え、DCコミックのヒーローとして実写映画化もされているんですね。

で、マーベルコミックにおける初代キャプテン・マーベルが初登場したのは1967年。

銀河三大列強種族の一つクリー帝国軍大尉マー・ベルは、最初は地球の宇宙進出の進行度合いを測るため地球に送り込まれたスパイでした。

ところが、彼の恋人ユーナに横恋慕した上官ヨン・ログが、彼女を自分のものにしようとマー・ベル暗殺を画策。しかし誤って地球人のミサイル施設科学者ウォルター・ロウスン博士を殺してしまう。
そこで、マー・ベルは博士と入れ替わってアメリカの航空宇宙科学の発展を間近に観察していて、そこで出会ったNASAの保安主任のキャロル・ダンバースと恋に落ちるんですね。

そんなある日、彼はクリー帝国のロボットが発した「マー・ベル大尉(Captain Mar-Vell)」を、周囲の人々が「キャプテン・マーベル」というヒーロー名だと勘違い。こうして彼は初代キャプテン・マーベルになったわけです。(その後、キャプテン・マーベルは様々なキャラに引き継がれる)

その後、キャプテン・マーベルの女性版として構想されたヒーローが「Ms.マーベル」で、キャプテン・マーベルの恋人だったキャロル・ダンバースが、初代Ms.マーベルになり、そこから2代目のシャロン・ベンチュラ、3代目のカーラ・ソフェンを経て、2006年からスタートしたリブートで、キャロル・ダンバースがキャプテン・マーベルになり、2013年に登場したのが4代目Ms.マーベルのカマラ・カーンで、本作はそのドラマ化作品になります。

Ms.マーベル/カマラ・カーンとは

カマラ・カーン版の「Ms.マーベル」は、編集者サナ・アマナットとスティーブン・ワッカー、原作者G・ウィロー・ウィルソン、作画家エイドリアン・アルフォナによって創作された、マーベル・コミック初のムスリムティーンヒーローです。

ニュージャージー州ジャージーシティに住む16歳の少女カマラ・カーンは、パキスタンアメリカ人の高校生でアベンジャーズオタク。

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そんな彼女自身の資質か、それとも人種やムスリムという信仰が関係しているのか、彼女は学校では軽くいじめられてるぽいんですが、美人で快活なナキアやオタク仲間で科学の天才ブルーノという親友に恵まれ、また、WEB上で大好きなキャプテン・マーベルなどスーパーヒーローのファン・フィクションを発表するなど、それなりに楽しい青春を送っているんですね。

そんな彼女の目下の悩みは、どうすれば過保護すぎる両親に近日開催される「アベンジャーズコン」というファンイベントへの参加を認めてもらえるかと、その中で行われるコスプレコンテスト用の衣装で自分らしさを表現する決め手が思いつかない事。

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そんなある日、パキスタンに住む祖母から贈られてきた荷物に入っていたバングルを、コスプレ用にと身につけたカマラは不思議なパワーに目覚め――というのが今回のドラマ版のあらすじ。

原作版の彼女は、自身の身体を思い通りに変える(手足や身体を巨大化させたり伸ばしたり、変身したり)能力を得ますが、同じくマーベルヒーローで「ファンタスティック4」のミスター・ファンタスティックと能力が被るため、ドラマ版では宇宙エネルギーを利用し、バングルから構造物を作成する能力を得るという設定に変更。

また、原作では彼女は原始時代にクリー人によって遺伝子改造された元地球人「インヒューマンズ」の末裔で、テリジェン・ミストという特殊な霧を浴びることで能力に目覚めたらしいんですが、今回のドラマでは「ミュータント」という設定になってる模様。
「ミュータント」と言えば「X-MEN」なので、本作やMs.マーベルが、X-MENMCUに登場するキッカケになるのかもしれません。

そんなカマラ・カーンを演じるのはほぼ新人のイマン・ヴェラーニ
パキスタン系カナダ人の彼女は、高校3年の年に受けたオーディションで、この大役に選ばれ、見事にキュートでポップなティーンヒーローを演じきりました。

アイデンティティ

そんな本作の特徴といえば、主人公がマーベル初のムスリムヒーローであるということ。

カマラ・カーンのアイディアはマーベル社の編集者サナ・アマナットとスティーブン・ワッカーの雑談の中で生まれたそう。自身もパキスタンアメリカ人の彼女が、ムスリムアメリカンとして経験した体験談をもとにムスリムのヒーローを生み出すべく、小説家でグラフィックノベル・ライターでもあるG・ウィロー・ウィルソンに打診。プロジェクトがスタートします。

そしてMs.マーベル/カマラ・カーンというキャラクターはコミックに登場するや、ムスリムのみならず、マイノリティーの少年少女を中心に爆発的な人気を得たのです。

アマナットによれば、この企画の背景には「ムスリムアメリカンのディアスポラ(民族離散)を正面から描こうという望み」があったのだとか。

その試みは今回のドラマ版でも、カマラの曽祖父と祖母が分離独立の混乱に巻き込まれインドからパキスタンに逃げ延びたこと、彼女の両親がアメリカに移住・最初は孤立したがジャージーシティーのデシ(南アジア)系コミュニティーに救われたというエピソードなど、カマラというキャラクターが背負う背景として描かれているし、劇中で、(恐らく9.11以降)の多人種からムスリムアメリカンへの偏見や差別的態度(第一話冒頭の同級生からのカマラへの態度も多分それ)などもしっかり描かれているんですね。

また、カマラの力の源でもあり、曽祖母とその同胞たちが抱える出自の秘密が、これらパキスタン人やムスリムアメリカンとしての彼女らが抱える、異邦人としての寄る辺のなさともリンクしていくのです。

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そんな重いテーマを扱いながらも、空想好きのカマラの脳内をアニメ表現を使って表現したり、マーベルならではのオフビートなギャグなども盛り込むことで、(カマラ自身のキャラクターも含め)イマドキなポップでキュートなティーン向けの作品に仕上げているのが素晴らしかったんですよね。

親子の物語

カマラのお母さんは敬虔なムスリム教徒であり、ゆえにカマラに対して過保護に、またムスリム的価値観で厳しく接することから、ネットで第1話の感想を見ると「毒親」呼ばわりする意見も散見していて、カマラよりお母さんに年の近い僕としては少々モヤってしまったり。

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本作はそんなカマラとお母さん、お母さんとお祖母ちゃんという親子3世代の溝を生める物語でもあります。

カマラのお祖母ちゃんは幼少期の不思議な体験を語り、周囲の人からは変わり者扱いされていたようで、カマラのお母さんはそんなお祖母ちゃんにわだかまりがあり、その反動もあって、お祖母ちゃんに似ているカマラを心配し多少厳しい事も言ったりするわけです。

そんな中、スーパーパワーを得て戸惑うカマラですが、それを家族、特にお母さんには相談することが出来なかったんですね。

で、ある事件をキッカケに、彼女とお母さんはお祖母ちゃんのいるパキスタンに行くことに。そこでの体験がカマラとお母さん、お母さんとお祖母ちゃんのわだかまりを溶いていく事になるわけです。

この親子の物語は、なにもヒーローものだからというわけではなく、どこの家族でも多かれ少なかれはある普遍的な関係で、血を分けた親子の分断(毒親問題)をテーマにした作品が多かった昨今、Disney&マーベルはいち早く分断の”その先“を描いているんですよね。

ヒーローものの王道をゆく

ここからは軽くネタバレするので注意して欲しいんですが、3~5話のパキスタン編で親子問題を解決したカマラでしたが、帰国後の最終話で大ピンチに見舞われてしまいます。

その時、彼女を助けてくれるのがジャージーシティの同胞や住人たちで、まさにこれぞヒーローものの王道という展開に震えてしまいましたねー!

これはそもそも「ヒーローとは何か」に直結する問題で、力が強いから、空が飛べるから、超能力があるから、ヒーローになるのではないし、極論すればヒーローの役割は巨悪を倒すことでもありません。

例え何の力がなくても、理不尽に泣く人の前に身を挺して立ちはだかる。

その精神性こそがヒーローのヒーローたる所以であり、その背中を見せることで市井の人々を鼓舞することこそがヒーローの役割であり強さだと僕は考えています。

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本作は、キャプテンマーベルに憧れた少女カマラ・カーンがMs.マーベルになるまでのオリジンであり、市井の人々がそんな彼女をヒーローとして認めるまでの物語でもあるんですね。

それはサムライミ版「スパイダーマン2」でピーターが身を挺して地下鉄を止めたシーンや、「アメイジングスパイダーマン2」で、スパイダーマンのコスチュームを着た男の子が町で暴れるライノの前に立ちはだかるシーンにも通じる胸アツ展開なんですよね。

で、この展開って、まだ純粋なティーンヒーローの特権だったりします。
これが大人のヒーローだと、政治背景とか社会問題とか何かこう……面倒くさいアレコレが邪魔して、こういう王道ヒーロー展開も何かしらの捻りを加えないと嘘くさく見えちゃうんですよね。

そういう意味でも、この「Ms.マーベル」の最終回は個人的にめっちゃ良かったと思いました。

Ms.マーベルは帰ってくる

そんなMs.マーベルことカマラ・カーンは、来年公開の映画「ザ・マーベルズ」にも登場するのだとか。

その作品にはキャプテン・マーベルことキャロル・ダンバースも登場するハズなので、2人の「マーベル」共演が今から楽しみです!

 

というわけで、MCUドラマ「Ms.マーベル」のレビュー&解説でした!

ではではー(´∀`)ノシ