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バーフバリの監督が描く、今、世界一面白い映画「RRR」(2022)

ぷらすです。

現在、全国映画館で絶賛公開中のインド映画『RRR』を観てきました!

感想を一言で言うなら、多分いま、世界で一番面白い映画だと思いましたよ!

で今回は基本、ネタバレしても面白さに影響のでるタイプの作品ではないと思うので、ネタバレありで感想を書いていきます。なので、ネタバレは嫌と言う人、これから本作を観る予定のある人は先に映画を観てくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

『バーフバリ』シリーズなどのS・S・ラージャマウリ監督によるアクション。イギリス植民地時代のインドを舞台に、イギリス軍に捕らえられた少女を救う使命を帯びた男と、イギリスの警察官が育む友情と闘いを描く。互いの事情を知らないまま親友となる男たちを、『バードシャー テルグの皇帝』などのN・T・ラーマ・ラオ・Jrとラージャマウリ監督作『マガディーラ 勇者転生』などのラーム・チャランが演じる。(シネマトゥディより引用)

感想

「バーフバリ」の監督が描く待望の最新作

S・S・ラージャマウリといえばインド・テルグ語映画圏、通称”トリウッド“で活躍。「マッキー」(2012年)や「バーフバリ」二部作でインドのみならず今や世界中にその名を轟かせる監督です。特にバーフバリ「~伝説誕生」(2015年)と「~王の凱旋」(2017年)2部作は日本でも異例のロングラン大ヒットをしたので、ご記憶の方も多いのではないでしょうか。

本作はそんなS・S・ラージャマウリ監督の最新作。

しかも、バーフバリは古代インドを舞台にした貴種漂流譚でしたが、本作はイギリスに植民地支配されていた1920年の近代インドを舞台に、アッルーリ・シータラーム・ラージュコムラム・ビームという、実在したインド独立運動の英雄2人を主人公にしているんですね。

まぁ、“実在の英雄“とは言ってもそこはS・S・ラージャマウリ

本作は主人公の人生を描く「伝記もの」ではなく、あくまで二人の名前を拝借しただけの完全フィクションで、ラーマは単独で数万人の暴徒を警棒一本で鎮圧。ビームは狼やトラと素手で渡り合う超人的身体能力の持ち主。

しかも史実では年齢も違うし出会っていない二人が、ひょんな出会いから大親友の義兄弟となり、クライマックスではイギリス軍をちぎっては投げちぎっては投げする――という、いわば「伝奇アクションもの」なんですね。そんなん、面白いに決まってますやん。

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なんて書くと、「あーハイハイ、どうせおバカアクション映画なんでしょ」って思われるかもですが、ところがどっこい。脚本は隅々まで気が配られているし、次から次へと繰り出される見せ場や山場シーンの画力の強さときたら、これぞザッツ・エンターテイメント映画と言った感じ。

当分、この映画を越える映画は出てこないだろうと思っていた「バーフバリ」越えの面白さを叩き出しているんですねー。

ざっくりストーリー紹介

映画冒頭、ゴーンド族の村に訪れていたスコット英国軍提督とその妻キャサリン
提督が部下を引き連れ山に狩りに入っている間、村の少女マッリが一族に伝わる歌を歌いながらキャサリンの手の甲にアートを施しています。

そのアートをいたく気に入ったキャサリンは、たったコイン2枚でマッリを連れ去ろうとし、止めようとした母親を部下が銃で撃とうとする。

するとその部下を止めたスコット提督。マッリを返すのかと思いきや「インド人の命に銃弾一発の価値もない」的な事を言い、それを聞いた部下が道に落ちていた木の棒でお母さんをぶん殴ってマッリを連れ去ってしまう。この提督の顔がですね、見た瞬間に悪役って分かる顔でして、顔も演技も最初から最後までずっと超憎ったらしいんですよねーw

一方、インドの首都デリーでは、イギリス人の横暴に怒り狂った民衆が提督の屋敷?を取り囲んで大暴動。その中の一人が投げた石が、イギリス国王?の写真に当たった事に怒った提督は、その男を逮捕するよう指示。

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しかし、柵の外は数万人の群衆が取り囲んでいて、その中から1人を逮捕などできるはずもなく、逆に殺されてしまう――と警官たちが怯む中、警官隊にいたラーマは警棒片手に柵を飛び越え群衆の中に降り立つと、次々に襲い掛かる群衆をものともせず、投石犯を捕まえ、その気迫にビビった群衆は抵抗をやめるのです。

一方、ゴーンド族のビームは、村人を襲う?狼を罠におびき寄せて捕らえる囮役になるも、その途中野生のトラに遭遇。リアル前門の虎後門の狼状態ながら、襲いかかるトラを寸前でかわし2体を鉢合わせにしてまずは狼を撃破。

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そこから何とか、ギリギリで仕掛けた罠でトラを捕らえるも、トラのパワーで罠が破られ、危機一髪のところを手製の睡眠薬の入ったボールを投げつけ眠らせる事に成功します。

このビームは、何があっても命がけで村人を守る守護神的役割の通称“羊飼い“で、提督の屋敷からマッリを取り戻すため、仲間と共にデリーの街に潜伏しているんですね。

マッリを取り返すべくビームがまじかに迫っている事を知った提督と妻キャサリンは、ビームを捕らえた者に出世を約束。ある目的のため何としても出世したいラーマは、顔も分かっていないビーム逮捕に名乗りを上げ、調査を始めるんですね。

そんなある日、重油を積んだタンクを運ぶ機関車の火花がタンクの重油に点火。橋の上で大爆発を起こし下の川も火の海に。しかもそこには、漁に出ていた1人の少年が。

それを発見したラーマとビームは協力し、火の海となった川から少年を救ったところでやっとタイトルどーーーん!

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なんと、このOPまで30分かかっていますw

っていうか、このOPまでで、既に普通の映画のクライマックス級の見せ場が3回入ってますからね!

で、実は宿敵とも言うべき2人ですが、ラーマがビームの顔を知らずビームもラーマが警察だと知らなかったため、2人は義兄弟の契りを交わす大親友になるのだが―――と言うストーリー。

というわけで、ここから先はネタバレしますので、ご注意を!

 

 

キャサリンがやべえ

その後、2人のブロマンス的イチャコラを存分に見せつけられ、ラーマはビームと優しい英国人美女のジェニーの仲を取り持ち、パーティーでは2人で息ピッタリに超絶ダンスを踊り。

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色々あってビームはついにマッリ奪回作戦を決行。

その作戦とは、パーティーが開かれた夜、荷台に野獣をてんこ盛りのトラックで屋敷に突っ込み、野獣たちを解き放った混乱の隙を狙ってマッリを取り戻すという破天荒なもの。

この計画は見事にハマり、もう一歩でビームがマッリを救出というところまでいくもギリギリ駆けつけたラーマに阻止され、ビームはあえなく逮捕されてしまうのです。

そして、見せしめのため公開むち打ちの刑となったビームですが、鋼の精神を持つ彼はラーマの鞭を何発受けても決して膝を折らない。

それを見ていた提督の妻キャサリン、「そんなんじゃ足りないわ!私はもっと血がみたいのよぉぉぉ!」とトゲトゲつきの一本鞭を渡してビームを打つようラーマに命令するんですね。やべぇだろこの嫁。何なら極悪非道の提督ですらちょっと引いてたよ。っていうかその鞭どこで買ったんだよ。

そこからさらにアレコレあって、ビームとマッリを逃がした罪で投獄されたラーマを救出にきたビーム。

そしてついに二人は合体!襲い掛かるイギリス軍をちぎっては投げちぎっては投げ―――。っていうね。

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いやもう、この合体シーンを見た時は声出して笑ったけど、同時に心に熱いものが込み上げましたよ。

丁寧なフリとオチ

いやー、それにしてもこうやって文字にするとやっぱ「おバカ映画だろ」って感じですが、違うんです。

例えば冒頭の数万人を相手にラーマが一人で戦うアクションシーンも、ラーマの上に何人も乗っかってくる群衆を気合一発吹き飛ばす!みたいなマンガ的展開はなくて、ラーマは押しつぶされそうになりながらも一番手自家な奴から順に、手に持った警棒で一人ひとり地道にやっつけていくんですよ。根性で

ビームの方も、トラを素手でぶん殴って勝つみたいな事はなくて、山の民としての薬草の知識を活かして作った眠り薬を使ってトラを眠らせるとかね。
それでも、2人が人間離れした身体能力なのは変わりませんが、闘いと勝利には一応のロジックはちゃんとあって、それが後の重要な展開の布石にもなっていて、クライマックスでしっかり回収されたりする。

そういう物語上のフリとオチが随所に仕掛けられ、回収されることで観ているコッチは「なるほど!これ、あの時の!」と膝を打つ快感があるんですよね。

その辺の丁寧な脚本づくりは前作「バーフバリ」でも見られましたが、本作はそこからさらに洗練されている感じがしました。

また、インパクト抜群の画面の数々は、一見確かにバカっぽいし思わず笑っちゃうんだけど、同時に観ているコッチの心が熱くなるというか、こんな画を見せられたら惚れてまうやろ――!!って、僕の中の小学五年生男子が叫びだすカッコ良さで、しかもそれを茶化さず、本気でカッコいいと信じて真面目にやってるのです。

そういう意味で、ラージャマウリ監督は、ギレルモ・デル・トロジョン・ファヴローなどと同じ、世界的にも数の少ない「分かってる監督」なんですよね。

で、「実在の英雄の名前だけ拝借している」と書きましたが、イギリスの植民地支配はトータルで300年続いていたそうで、その間に各地方でインド開放運動の英雄が何人も現れ、悲劇的な結末を迎えていたのだそう。ラージャマウリ監督はそうしたインドの英雄たちを本作の二人のキャラクターに乗せて描いているんだと思うんですよね。多分。

そして本作でイギリス人を悪者一辺倒で描くのではなく、彼ら(イギリス)の良心として心優しいジェニーを登場させることでバランスを取っているのです。

さらにラスト。

ワンシーン・ワンカットに何そうにもレイヤーを重ね

目的を果たすことが出来たラーマがビームに「礼に欲しい物を言ってくれ」というと、ビームは一言「読み書き」と答える。

これは、山で暮らすビームの一族が文字を持っていないから教えて欲しい。とも取れますが、一方で今のインドの成長に数学と語学が大きく貢献している事のメタファーにもなっていて、ラージャマウリ監督はこの一見やりたい放題エンターテイメント作品の中に、先達への畏敬の念、そして、今のインドへのメッセージ性など、一つのシーン、一つのカットに何層にもレイヤーを仕込んで作り上げているのです。

その辺のバランス感覚やスマートさは、ラージャマウリ監督見事だなーと思ったし、ほぼ3時間ある本作ですが、あまりにも面白すぎて体感では2時間くらいにでした。

興味のある方は是非!!

 

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