今日観た映画の感想

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映画の原点に立ち返った作品!「映画 ひつじのショーン 〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜」(2015)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、NHKのEテレでお馴染み、アードマン・アニメーションズ制作によるストップモーション・アニメーション『映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』ですよー!

僕はツイッターでこの作品を知ったんですが、無声映画のようにセリフなしで繰り広げられるクレイアニメのドタバタコメディーで、まさに映画の原点に立ち返った作品でしたねー。

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あらすじと概要

日本でもテレビ放映されているイギリス発のストップモーション・アニメーションシリーズの初の劇場版。『ウォレスとグルミット、危機一髪!』に登場したキャラクター、ひつじのショーンを主人公に、牧場に暮らすショーンと仲間たちの大騒動がユーモラスに展開する。監督は、『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』などの脚本を担当したマーク・バートンと、「ひつじのショーン」テレビシリーズの監督リチャード・スターザック。ショーンをはじめとする個性的なキャラクターの魅力と、彼らが繰り広げるドタバタなストーリーに笑いがこみ上げる。

ストーリー:牧場で生活しているひつじのショーン。ある日、牧場主から自由になるためにいたずらを仕掛けるが、そのせいで牧場主は眠ったまま都会へ運ばれてしまう。牧場主と彼を追い掛けていった牧羊犬のビッツァーを捜そうと、ショーンと仲間たちは都会へ向かう。

感想

ひつじのショーン」とは

本作を制作したアードマン・アニメーションズといえば、ニック・パークが制作したクレイアニメウォレスとグルミット」でお馴染みですが、「ひつじのショーン」はシリーズの中編映画「ウォレスとグルミット、危機一髪」(1995)で登場し、一躍人気者になった羊のショーンを主人公にしたスピンオフ作品です。
1話7分のテレビシリーズとしてEテレでも放映していたので、知ってる人も多いハズ。で、本作はその「ひつじのショーン」の長編映画化作品なんですね。

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まるで無声映画

人間の発明家とその相棒のビーグル犬が主人公だった「ウォレスとグルミット」と違って、動物の目を通して見た世界を描いている「ひつじのショーン」は、ショーンたちだけでなく、牧場主など人間のキャラクターも言葉になってない発声の調子と、キャラの動きや表情だけでストーリーを伝える、チャップリンキートンなどの無声映画に近い作りになってるんですねー。

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本作でマーク・バートンと共同監督を務めたリチャード・スターザックも、バスター・キートンジャック・タチを参考にしたと、インタビューで語っています。

また、単調な生活に飽きたショーンたちが、牧場主にいたずらを仕掛けるところからスタートするストーリーは、ジョン・ヒューズ監督の名作青春映画「フェリスはある朝突然に」(1987)から着想を得たそうですよ。

ショーンたちが都会に出て騒動の末に牧場に戻ってくるという「行って帰る」ストーリーは、マッドマックス 怒りのデス・ロード」にも通じるかもしれませんねw(ジョージ・ミラー監督も無声映画を意識して「~デス・ロード」を作っているらしいですし)

そもそも映画の原点はアクション(アクション映画の「アクション」じゃなくて、演技や表情も含めた動き全般)なので、本作は映画の原点に立ち返った作品と言えるかもしれません。

三本の流れを同時進行で見せるストーリー

しかも本作では、冒頭はいつもの牧場からスタートし、ショーンのいたずらをキッカケに、牧場主と牧羊犬のビッツァー、ショーン、仲間のひつじたちという三本のストーリーラインが同時進行していて、それぞれ別れたり合流したりしながら、最終的には再び一本に集約されていくという結構複雑な構成になっていて、それをセリフなしのクレイアニメで誰でも分かるように(しかも面白く)見せていく手腕は素晴らしいと思いました。

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実際、本作の制作では、脚本執筆に18カ月をかけて「ストーリー上何が必要で何が必要でないか」を取捨選択するストーリーリールに最も労力を費やしたそうです。

また、本作を観ていて驚くのは、まったく説明はないのに、各キャラクターの性格や個性が表情や動きだけで分かるんですね。
インタビューによれば、キャラクターの方はセリフがない分、それぞれの考えや感情が観客に伝わるように、各キャラクターの表情を丹念に練っていったんだそうです。

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羊たち一匹一匹の性格の違いや、ビッツァーの真面目さ、牧場主のちょっとくたびれた中年感に加え、今回敵役となる動物捕獲施設(日本の保健所的な場所)の職員で、野良動物を捕まえる事に執念を燃やすトランパーの偏執的なところも、具体的な説明はないのに、それぞれのキャラクターがちゃんと伝わってくるんですよねー。

年齢、国籍関係なく誰でも楽しめる作品

もちろん、基本的には子供向けの作品ですが、例えば、羊たちが人間に変装して横断歩道を渡るシーンはビートルズのアルバム『Abbey Road』のジャケット写真のオマージュだったりとか、そんな大人がニヤリとするような遊び心も入っていたりして、シンプルだけど練りに練られたストーリーと、クレイアニメながら実写的な描写とともに見ごたえがあり、年齢や国籍関係なく誰でも楽しめる作品だと思います。

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正直僕は、観る前「そうは言ってもクレイアニメだし子供向きのヤツでしょ」と、ちょっとナメてたんですが、観終わったあとはショーンを始めこの作品に登場するキャラクターが大好きになっちゃいました!

興味のある方は是非!!

 

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2人の天才が再びタッグを組む!「夜は短し歩けよ乙女」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、天才アニメ作家 湯浅政明13年ぶりの劇場長編アニメーション
夜は短し歩けよ乙女』ですよー!

フジテレビの「ノイタミナ」で2010年に放映されて話題を読んだアニメ「四畳半神話大系」以来10年振り、 森見登美彦の原作小説のアニメ化ということでも話題になりました。

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あらすじと概要

第20回山本周五郎賞、第4回本屋大賞第2位に輝いた森見登美彦の小説をアニメ映画化。京都の移りゆく四季を背景に、パッとしない大学生と彼が片思いする後輩の恋の行方を、個性的な仲間たちが起こす珍事件と共に描く。主人公の声を、テレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」などの星野源が担当。監督の湯浅政明をはじめ、脚本の上田誠、キャラクター原案の中村佑介ら、森見原作によるテレビアニメ「四畳半神話大系」のスタッフが再集結する。

ストーリー:クラブの後輩である“黒髪の乙女”に恋心を抱く“先輩”は、「なるべく彼女の目に留まる」略してナカメ作戦を実行する。春の先斗町に夏の古本市、秋の学園祭と彼女の姿を追い求めるが、季節はどんどん過ぎていくのに外堀を埋めるばかりで進展させられない。さらに彼は、仲間たちによる珍事件に巻き込まれ……。(シネマトゥデイより引用)

感想

湯浅政明とは

「劇場版クレヨンしんちゃん」シリーズ初期より参加し、2004年の劇場長編アニメ「マインド・ゲーム」で一躍脚光を浴びた湯浅政明監督。

その後、「ケモノヅメ」「カイバ」「ピンポン THE ANIMATION」「アドベンチャー・タイム」など、次々とテレビアニメシリーズの話題作を世に送り出し、特に2010年放映、人気作家 森見登美彦の同名小説をアニメ化した「四畳半神話大系」は、原作やアニメファンだけでなく、一般の人たちにも人気を得ました。

本作では、そんな「四畳半~」の製作陣が再集結し、再び森見登美彦作品をアニメ化ということで、公開前から話題になってましたよね。

アートでアバンギャルドでエンターテイメント

そんな湯浅監督の作風は、とにかく既存のアニメーションの枠には収まらない、ビビットな色彩や、アーティスティックでアバンギャルドな映像が、そのままエンターテイメントとして成立しているということ。

そして原作者の森見登美彦の作風は、古都“京都”を舞台に、日常と非日常が混在するポップでカオスでシュールな青春劇という感じで、2人の相性は抜群なんですよね。

さらに、キャラクターデザインは「四畳半~」と本作の表紙イラストを手がけ、ロックバンド「アジアン・カンフー・ジェネレーション」のジャケットデザインでも知られる中村佑介と、まさにファンが望んだ形でのビジュアライズ化と言えるんじゃないかと思います。

原作との違い

僕は原作の方は未読なんですが、ネットで調べたところによると、原作では一年を通して春夏秋冬4つのエピソードで綴られるオムニバスとして構成されているそうで、本作ではそれを一夜の出来事にギュッと圧縮しているんですね。

そのへん原作ファンの人がどう感じるのか分かりませんが、個人的にはむしろカオスで不思議な感じの濃度が濃くなっている気がして、悪くない改変だったんじゃないかと思いましたねー。(多分原作の持つエッセンスは損なっていない気もする)

それに一夜の物語にしたことで、テンポが早くなってダレ場がないまま最後まで一気に疾走したように感じました。

声優陣

そんな本作では、花澤香菜神谷浩史など実力派人気声優と、役者としてもミュージシャンとしても人気の星野源や、コント日本一に輝き、クリエイターズファイルなどが人気の芸人ロバート秋山など、そうそうたるメンバーが個性的なキャラクターの声を当てています。

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個人的に特に良かったのは、想い人に出会うまでパンツを履き替えない願掛けをしているパンツ総番長を演じたロバート秋山と、ヒロイン「黒髪の乙女」を演じた花澤香菜ロバート秋山はクレジットが出るまで気づかないくらい達者な声優ぶりだったし、花澤香菜は何事にも怖気付くことなく、前に前に進んでいくヒロインをイヤミなく演じていましたねー。

多幸感

本作のストーリーは、ヒロインと主人公の「先輩」(星野源)が、先輩の結婚式に参加しているところからスタート。
実はヒロインはとんでもない酒豪でお酒大好きなんですが、周囲の空気を読んで一杯で控えるんですね。
で、彼女は2時会に向かう途中で抜け出し、夜の京都繁華街へと一人繰り出しはしご酒を始めるわけです。

そこで、立場も年齢も違う様々な人たちに出会い、巻き込みながら次々店を変えて飲み歩いていくんですが、なんていうか、彼女のキャラも手伝って何とも言えないヌケのいい多幸感があるんですよねー。

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そんな彼女とは対照的に星野源演じる「先輩」の方は、ヒロインが好きなのに、“偶然を装って出会う”を繰り返すばかりで、ちっとも次の行動に移れないんですよ。
それを友人に突っ込まれると、詭弁を弄して誤魔化すっていう、森見登美彦作品によく登場する主人公。

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続く古本市のエピソードや、学園祭のエピソード、京都中の人間が風邪に倒れるエピソードなどなど、何事にも躊躇することなく飛び込んでいくヒロインと、その周りで空回って、ひどい目に遭う先輩の恋の行方を中心に追っていく青春恋愛群像劇なんですね。

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どのエピソードにも(種類の違う)多幸感があって、ラストは何とも言えない爽快感に満ちた素晴らしい作品でしたー!

また、舞台は夜の京都ということで、いわゆる僕らが観光地として認識していう京都ではなく、日常と非日常、虚実入り混じった、「森見登美彦の京都」を「先輩」や「黒髪の乙女」に案内されながら歩いているような気持ちにさせてくれるのも良かったです。

それだけでなく、詭弁部伝統の詭弁踊りだったり、辛い火鍋を食べて唇が晴れ上がったり、ソフトクリームを股間にぶつけられてコーン部分がそそり立ってたりと、思わず笑ってしまうバカバカしいくらいコミカルなシーンも満載でしたねー。

そしてクライマックスは、まさにアニメならではの大スペクタクルを堪能して現実に帰ってくる、ミステリーツアーのような作品でした!

興味のある方は是非!!

 

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完全一人称視点のアクション映画!「ハードコア」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2015年公開(日本公開は2017年)でロシア・アメリカ合作のSFアクション映画『ハードコア』ですよー!

全編POV形式(一人称視点)でのアクション映画という初の試みで作られた作品で、主人公を“体験”出来るアクション映画として話題になりました。

他にも、色々と異色で革新的な本作。こんな映画初めて観ましたよー!!

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あらすじと概要

トロント国際映画祭で上映されて反響を呼んだ、異色のアクション。大事故で損傷した肉体にマシンを組み込まれたことで超人的能力を得た男が、妻をさらった悪の組織に立ち向かう。監督はロシア出身の俊英、イリヤ・ナイシュラー。『マレフィセント』などのシャールト・コプリー、『イコライザー』などのヘイリー・ベネット、『ロブ・ロイ/ロマンに生きた男』などのティム・ロスらが出演する。主人公の視点のみの完全一人称で映し出されるビジュアルや、壮絶なシーンの数々に息をのむ。

ストーリー:見知らぬ研究施設で目を覚ましたヘンリーは、妻エステル(ヘイリー・ベネット)が、大事故によって肉体が激しく損傷してしまった自分に機械でできた腕と脚を取り付け、声帯摘出の準備を進めているのを目にする。だが、手術に取り掛かろうとしたとき、謎の組織を率いる男エイカン(ダニーラ・コズロフスキー)が乱入。すさまじいパワーで施設を破壊した上に、エステルを連れ去ってしまう。ヘンリーは機械のパーツを導入したことで得た超人的身体能力を活用し、愛する妻をエイカンから奪い返そうと立ち上がるが……。(シネマトゥデイより引用) 

感想

まさかのSF!?

僕はこの映画については全編POV形式のアクション映画ということしか知らなくて、「ははーん、主人公と敵(ギャングとか)が銃で撃ち合う様子を体験できる感じの映画なんだろう」と思ってたんですね。

ところが冒頭で本作がSFだということが明かされてビックリでしたよ!

なんと主人公ヘンリーは改造手術で蘇生したアンドロイドで、その施術を施したのは美人妻のエステル(ヘイリー・ベネット)

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失った声帯の修復が行われようとしていた矢先、研究室にイキナリ踏み込んでくる敵組織のボス、カイエン( ダニーラ・コズロフスキー)は念動力を使う超能力者。

しかも、敵から逃げ出そうと研修室のドアを開けると、そこは……。

と、こちらの理解が追いつく前に矢継ぎ早に物語は展開し、カイエンに奪われた妻エステルを取り戻すため、ジミー (シャールト・コプリーという男のサポートを得ながら、次々襲いかかってる敵を倒していくというストーリーなんですねー。

しかもアクションの方も銃撃戦あり、格闘アクションあり、パルクールありと、超絶アクションの連続で、まさに目の回るようなジェットコースタームービーになってるんですねー。

監督はロックバンドのフロントマン!?

そんな本作の監督を務めるのは、ロシアのロックバンド「バイティング・エルボウズ」のメンバーでフロントマンというイリヤ・ナイシュラー

自身が監督を務めたバイティング・エルボウズの「Bad Motherfucker」という曲のMVでの、POVアクションのショートストーリーがYouTubeに公開されるとたちまち話題になり、1.2億回再生を記録します。

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この動画を見た映画監督でプロデューサーのティムール・ベクマンベトフが、facebookでメッセージを送り、長編映画化に向けて合意。
9ヶ月以上の撮影、6ヶ月の編集を経て完成した仮編集版の出来を確認後、インディーゴーゴーでクラウドファンディングを募ることを決定し、約7分間のプレビュー映像をアップすると、youtubeで500万回超, vimeoで75万回超の再生数を記録し、クラウドファンディングでは2078名の支援者から目標額を超える$254,954達成するという快挙を成し遂げたんですねー。

カメラは全編Go Pro(ゴープロ)を使用

本作は、POV形式のアクションということで、全編で頭部に取り付けるアクションカメラのGo Pro(ゴープロ)を使用していて、スタントマンがこのカメラをヘルメットなどに装着して、実際にアクションをしながら撮影しているわけですねー。

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Go Pro全面支援の元、本作のために何百時間ものテスト撮影を行って、観客が快適に観られるカメラを開発したそうですよ。

さらにCGなども組み合わせて出来た、誰も見たことのない新感覚な映像を本作は観ることが出来るんですね。

全編POVを実現するための脚本と撮影

そんな本作では、POV形式を最大限活かすために、脚本にもかなりの工夫が成されています。
観客とのシンクロ率を増すために主人公ヘンリーは記憶がなくて話せない設定にして、その分、他のキャラクターがヘンリーのキャラクターや状況説明、行動の指示などを行う形に。

その合間にも、次々襲いかかってくる敵から逃げたり、武器を手に入れたり奪ったりしながら戦う展開は、まるでバイオハザードなどのFPS(ファースト・パーソン・シューティング)ゲームを彷彿させます。

しかし、それだけなら自分で操作できないFPSの画面をスクリーンで観ているだけに成りかねないんですが、本作ではそうならないような工夫が随所にあるんですね。

その最たるものが、劇中で主人公を助けるキャラクター、“ジミー 
一人でありながら、次々に姿で登場し複数の人格を持つ彼らが、記憶喪失の主人公を導いていくという設定の面白みが、状況説明のためのお助けキャラというだけでなく、ストーリー自体に謎や面白みをプラスしてくれます。

また、主人公が記憶喪失という設定は、FPSゲームでユーザーの没入感を深めるためによく使われる手法らしいんですが、本作でも主人公が記憶を失っていることで、観客は訳もわからないまま物語に放り込まれ、ストーリーが進むうちに少しづつ世界観を理解していくという、ある種、ミステリーの謎解き的興味でがあり、物語への興味を持続させているんですね。

アクション面でも映像が単調にならないよう、敵はあの手この手で攻撃してきて、そんな絶体絶命のピンチをどう凌ぐのかを、主人公と同調している観客も考えざるを得ないわけです。

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自身も、FPSゲームのファンであるという監督だけに長所も短所も踏まえた上で、POVでどうやって100分近い物語を成立させるかを考え抜いて工夫した作品になってるんですねー。

また、FPS洋ゲーでも多く見られるグロシーンもふんだんに盛り込まれていて、バイオレンス映画大好きな人も満足出来るんじゃないかと思いますよw

とはいえ

とはいえ、全編POVでの本作はストーリーテリングや映像表現的な制約も多く、普通の映画なら感じない無理矢理感やご都合主義がチラチラ垣間見えてしまうのは否めないんですよね。

本作を越える作品が次々に作られて、観る機会が増えれば相対的に技術も上がっていくだろうし、観客もこの手法に目が慣れて違和感もなくなるかもですが、量産されたPOV形式のホラーが飽きられたように、この手法の上っ面だけを真似したような劣化作品が量産されれば、やっぱり観客に飽きられてしまう危険性も含んだ諸刃の剣でもあるし、王道とは言えないこの形式を発展させていくこと自体、現状ではちょっと難しいんじゃないかなーと感じました。(この作品自体、かなり異例ですしね)

もちろん、VR的な視聴環境が整うなど映画を視聴するためのハード面が変わっていけば、分かりませんけどねー。

そういう意味で本作は、今のところ唯一無二の作品でもあるし、まだ見たことがない映像体験が出来るので一見の価値はあると思います。

ただ、人によっては映像酔いしちゃうかもしれないし、前述したようにグロシーンもあるので万人にはオススメ出来ませんけどねw

興味のある方は是非!!

 

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西部劇を“殺した作品”「許されざる者」(1993)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、監督作を何本も制作して、今や巨匠となったクリント・イーストウッドが、監督と主演を務めて第65回アカデミー賞で監督賞、作品賞、助演男優賞編集賞の4部門に輝いた作品『許されざる者』ですよー!

そのうち観ようと思っているうちにすっかり忘れていて、先日まだ観てなかった事を思い出したので、早速レンタルしてきましたー!

で、今回は古い作品だしネタバレを気にせずに感想を書いていきますので、もしもこれから観てみようという人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじ

荒事からは足を洗っていたウィリアム・マニーの元へ若いガンマンが訪れる。娼婦に傷を負わせ賞金をかけられた無法者を追うためだ。マニーのかつての相棒ネッドを加えた3人は追跡行に出かけるが、その頃、町の実力者の保安官ビルは疎ましい賞金稼ぎたちを袋叩きにしているところだった。やがてビルの暴力が黒人であるネッドにも及んだ……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

クリント・イーストウッドといえば、西部劇のテレビドラマ「ローハイド」でブレイクを果たして以降、数多くの作品に出演した大スターで、さらに数々の作品を監督し、数々の賞に輝く名監督でもあります。

特に、西部劇は「夕陽のガンマン」や「荒野の七人」など多くの作品に出演、監督もしていて、本作もそんなイーストウッドが監督主演を勤めた西部劇ですが、公開時には「イーストウッドが西部劇を殺した」と物議を醸したのだとか。

というのも、本作は徹底的にリアリティーにこだわった作品で「西部劇なんて全部嘘っぱちだから」という内容なんですね。

西部劇とは

そもそも西部劇とは、日本で言えば歌舞伎、講談など、実在の人物の逸話や武勇伝を元にした活劇から派生した時代劇と同じ構造で、正義のガンマンがならず者や悪徳保安官、もしくは正義の保安官がならず者や悪漢を退治する勧善懲悪ものが多いんですね。

中には伝説の保安官ワイアット・アープや、ならず者のビリー・ザ・キッドなど、実在の人物を英雄的に描いた作品も多く、それらはダイムノベルという10セントで買える安価な大衆小説で描かれる美化・英雄化されたガンマンたちがベースになっているんだそうで、本作でも、“伝説のガンマン”イングリッシュ・ボブに同行するライターが登場します。

しかし、この作品は彼の武勇伝の種明かしをして、「伝説」の正体なんて所詮こんなもんだということを辛辣なまでに描いていきます。

主人公は元極悪非道のならず者

そんな本作の主人公は、昔、極悪非道の限りを尽くしたならず者のウィリアム・"ビル"・マニー(クリントイーストウッド)

そんな彼でしたが、美人の奥さんと出会って会心し、今は貧しい農民として2人の子供と粗末な家で暮らしていて、奥さんはといえば天然痘が原因で三年前に亡くなっているんですね。

そんなある日、昔の知り合いの甥っ子スコフィールド・キッド(ジェームズ・ウールヴェット)が彼に、賞金稼ぎの話を持ってくるわけです。

ビッグ・ウィスキーという町の酒場で、娼婦が客のカーボーイとトラブルになり、ナイフで顔を斬り刻まれる事件が発生。
しかし、保安官のリトル・ビル・ダゲット(ジーン・ハックマン)は、このカーボーイたちを逮捕も裁判もせずに、被害にあった娼婦ではなく、酒場の主人に馬7頭の賠償を命じて事を収めてしまいます。

これに納得の行かない娼婦たちは、自分たちの貯金をかき集めて、2人のカーボーイを殺してくれる賞金稼ぎを雇おうとするんですね。

で、その話を聞いたキッドが、伝説のワルだったマニーに声をかけて一緒にカーボーイを殺そうと持ちかけてくるわけです。

一旦は断るマニーですが、子供の将来を考えると金は欲しいと、結局キッドの話に乗り、さらに旧友で“射撃の名手”ネッド・ローガン(モーガン・フリーマン)も誘って、ビック・ウィスキーに向かうんですね。

許されざる者」は誰なのか

本作を観る前、伝え聞いた断片的な情報から僕は、更生した主人公が過去に犯した過ちからすったもんだあって最後に死んじゃう話だと想像していたんですが、実際観てみると全然違う物語でした。
っていうか、そもそもこの物語は誰が悪者で誰が善人か分からないのです。

そんな本作の脚本を書いたのは「ブレードランナー」の脚本も担当したデヴィッド・ピープルズ。映画化される10年以上前に書いた脚本を、イーストウッドが映画化権を買ったあと、自身が主人公のマニーと同じ年齢になるのを待って映画化したんだとか。

その構造は複雑で、西部劇の勧善懲悪やカッコイイガンファイトとはかけ離れたものなんですね。

主人公マニーは、亡くなった奥さんと出会って引退したものの、昔は女子供も平気で殺すような極悪人だし、おそらく相棒のネッドも彼の仲間だったんでしょうが、今はネイティブアメリカンの奥さんを貰い、マニーと同じく貧しい農民として暮らしています。

しかし「娼婦の顔を切り刻んだカーボーイ」というキッドの話を聞いて、「それはひどいな…」と呟く彼らの顔には、傷ついた女性の復讐という正義の大義名分を得た人間の目になるわけですね。

しかし、10年前にならず者を引退し年老いたマニーは、拳銃を撃つ手もおぼつかず、馬にもなかなか乗れない始末。
ネッドは、生意気な若造に対抗して腕自慢をするものの、いざ本番となると怖気付いて計画から降りてしまう口だけ番長だし、キッドも「5人殺した」なんて嘯いてるけど、実は今回が初めての殺人っていう、どいつもこいつも役立たずばかりなんですね。

一方、街の保安官リトル・ビルは、最初は穏健派で人のいいおっさんぽいんですが、酒場の店主から女たちが賞金稼ぎを雇ったと相談され、「町の治安を守る」ため街の入口に「拳銃の持ち込み禁止」の看板を立て、賞金の噂を聞いて町を訪れたイングリッシュ・ボブ(リチャード・ハリスから銃を取り上げ、公衆の面前でボコボコにリンチして見せしめにしたり、同じ理由でマニーもボコボコにします。

まぁ、無法者から町を守るためなら仕方ないと一瞬思いますが、そもそも彼がカーボーイたちに正当な手続きで裁きを加えていればこんな事にはならなかったし、明らかに女性差別主義者(もちろん当時の男は多かれ少なかれそうなんでしょうけど)で、娼婦たちを見下していたからこそ、女性ではなく店主への賠償という自分勝手な判断で場を収めて自体を悪化させてるんですね。

イングリッシュ・ボブをボコボコにしたのも、独立記念日にやってきてアメリカをバカにした彼への怒りがメインで、町の治安云々は実は二の次。
さらに、マニーたちがカーボーイの一人を殺したあとにネッドを捕まえたリトル・ビルは、法の手続きを経ずにネッドを拷問死させたうえ、酒場の前に晒すわけですが、これもイングリッシュ・ボブを生かして追放したことを考えると、彼が人種差別主義者である事が分かるんですね。

しかし彼は最後の最後まで、自分が悪いことをしたとは微塵も思っていません。
むしろ正義のために行動したのに、なぜ自分が殺されるのかと本気で思っているわけです。

前述のキッドも、初めての殺人のあと「あいつは殺されて当然だ」と言って自分を正当化しようとしますが、マニーに「俺たちも同じだけどな」とつっこまれてシュンとしたりし、もう人殺しは嫌だと逃げ帰ります。

マニーたちを雇った娼婦の方は被害者だから悪くないかといえば、法の手続きなしで勝手に殺人依頼をしてるわけで、それは今後また同じことが起こらないようにという自衛のためという大義名分があるけど、ぶっちゃけ問題のカーボーイは恐らく、以前からトラブルを起こすやつで、みんな「やつが死ねばいい」と思っていたっところに、件のトラブルが起きたことで大義名分を得たってことじゃないかなって思うんですね。

つまり、本作に登場するメインキャラは全員が、「正義」という大義名分を得て暴走した人間ばかりで、全員が「許されざる者」なのです。

さらに言うと、この物語はネイティブアメリカンから土地を奪い、正義の大義名分を傘に着て、他国と戦争を繰り返す米国の歴史そのものへの内省的な物語でもあり、保安官のリトル・ビルはそんな保守派の米国人を象徴するキャラクターでもあります。

劇中、彼は一人で理想の家を作っているんですが、素人な上に不器用な彼の作る家は歪んでいて、ちょっと雨が降れば盛大に雨漏りするようなガタガタの家。
これは、そのまま当時の(そして現在の)米国の象徴なんですね。

この映画でイーストウッドは、西部時代を描きながら、西部劇は人殺しを美化した嘘っぱちだと、それまでの西部劇や伝説のヒーローを真っ向から否定し、それは同時に数多くの西部劇でヒーローを演じてきたイーストウッド自身(=米国人のスピリット)の否定でもあるんです。人殺しに正義も悪もないっていうね。

現にマーニーは、保安官と荒野で正々堂々対決をするわけではなく、保安官たちがいる夜の酒場に押し入ってライフルを発射。友人の仇討ちを果たすんですが、真っ先に撃ち殺したのは丸腰の酒場の店主で、これは西部劇のヒーローにあるまじき卑怯な行為です。

だから、本作公開後にイーストウッドは「西部劇(=アメリカンスピリット)を殺した」と言われたんですねー。

そんな感じで、西部劇的な活劇感は微塵もない本作ですが、しかしそこはイーストウッド。文芸性だけでなく、しっかりエンターテイメント性も盛り込んだ面白い映画でしたよ。

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またも誰得映画に……「破裏拳ポリマー」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのはタツノコプロの創立55周年記念作品『破裏拳ポリマー』ですよー!

最初は観る気なかったんですが、監督がアクションの得意な坂本浩一監督ということで、観てみることにしましたー。

多分、どれくらいの期待値で観るかによって評価の別れる作品だと思いますが、個人的には、ちょっと期待値上げすぎちゃったかなー? って感じでしたねーw

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あらすじと概要

科学忍者隊ガッチャマン」シリーズなど数多くの人気アニメを生み出してきたタツノコプロによるSFアクションヒーローアニメ「破裏拳ポリマー」を実写映画化。元ストリートファイターの探偵で、奥義「破裏拳」を操る拳法の達人・鎧武士が正義の使者ポリマーとなり、悪と戦うさまをコミカルに活写する。主演は、本格的アクション初挑戦の『赤い糸』などの溝端淳平。アクション監督としても活躍する坂本浩一監督がメガホンを取る。

ストーリー:凶悪化する組織犯罪に対抗すべく開発された、絶大な力を持つ“ポリマースーツ”。しかし、中断を経て生まれたテスト版3体が盗まれ、犯罪に使われてしまう。スーツ奪還のため、封印されていたオリジナル版ポリマースーツの使用が決まるが、スーツ起動には特定の声によるダイアローグコードが必要だった。そこで警察は、封印を解く声の持ち主で拳法の達人である探偵・鎧武士(溝端淳平)に協力を求める。(シネマトゥデイより引用)

感想

タツノコプロダクションといえば、科学忍者隊ガッチャマンタイムボカンシリーズ新造人間キャシャーン破裏拳ポリマーなどなど、1970年代から80年代にかけて少年時代を過ごした僕のようなファンにとっては、まさにヒーローアニメのパイオニアと言えるアニメ制作会社です。

そんなタツノコの「新造人間キャシャーン」を、2004年実写劇場版としてリブートしたのがCASSHERNキャシャーン)」
この作品は、紀里谷和明が監督を務め、CGを多用して全体のルックはカッコよかったものの、予算の都合なのか2時間以上の映画にも関わらず、肝心のキャシャーンのアクションシーンはほんとに一瞬で、中盤以降は敵役の唐沢寿明の演説が延々続くという地獄のような映画でした。

それから4年後、2008年にハリウッドで制作された「スピードレーサー」(「マッハGoGoGo」の実写映画化)

ガッチャマンの実写化を依頼された三池崇史監督が、「ガッチャマンは予算的に無理だけどコッチなら出来ますよ」と提案して作られた2009年のヤッターマン

それでも作ったら、本当にただひたすらに酷かった2013年のガッチャマン

そして、タツノコアニメの実写化劇場作品としては5作目となるのが1974年の同名アニメの実写化作品である本作なのです。

正直「またか……」と思ったし、予告編を観ても地雷臭しかしなかったのでスルーしようと思ったんですが、米国の「パワーレンジャー」シリーズでアクション監督を務め、近年では仮面ライダーウルトラマン、戦隊ものの劇場版などのアクションシーンが高い人気を評価を得ている坂本浩一監督がメガホンを取ると聞いて、「それなら」と観ることにしたんですね。

パワードスーツを着用して拳法で戦うヒーローという本作の設定と、ジャッキー映画に憧れてスタントやアクションの道に入った坂本監督の相性はいいんじゃないかと思ったし、ほかのタツノコヒーローに比べて、本作なら物語のスケール的にも邦画の予算でも作れるかもと思ったからです。

…………思ったんですけどねー。

一体誰得なのかと小一時間……

実写映画だけでなく、アニメの方でも過去作のリブートに失敗し続けているタツノコ作品。
僕の知る限り、設定を大きく変えた「ガッチャマンクラウズ」以外で、リブートに成功した作品はないんですよね。(タツノコアベンジャーズこと「infini-T Force」は観てないので何とも言えませんが)

その一番大きな要因は、「いったい誰に向けて作っているのか分からない」ってこと。
リブートされた作品はアニメ・実写ともほぼ1970年代の作品で、明らかに僕と同年代のおっさんオタク向けなネタにも関わらず現代風なテイストを盛り込もうとし、そのくせ当時の設定やテイストが何の説明もなくそのまま入れ込まれてるので、おっさん的には「コレジャナイ」だし、若者たちは「ナニコレ…」だしと、結局どっちつかずの中途半端な感じになっちゃうわけですよ。
あと、実写版の方はそもそも邦画の予算では再現できない作品が多いですしね。

さらに、実写なのにアニメの設定のままやろうとするから、それはもう失敗しない方がおかしいんですよ。ええ。

以前も書きましたが、メディアが違えば当然文法が違うわけで、アニメを実写にするには、実写映画用の文法に「翻訳」しないとただのコスプレショーになっちゃうのです。つまり人間が演じても違和感のない様に、物語もキャラクターも設定も、最初から作り直さないと大抵失敗します。

タツノコヒーローに限らず、そこを勘違いして安易に上っ面だけを真似して、ただのコスプレショーになってるマンガやアニメ原作の実写映画は本当に多いと思うんですよ。

そういう意味で「ヤッターマン」は、元ネタからしてギャグテイストの作品なので、アニメ設定もそんなに違和感はなかったですけどね。(そういう意味で三池監督はクレバーだと思う)

良かったところ

本作では、その辺はわりとしっかり出来ていて、アニメ版の「破裏拳ポリマー」を知らない人でも、キャラや物語の設定がちゃんと分かるようにオリジナル設定も交えつつ、実写映画に翻訳していましたねー。

凶悪化する犯罪者に対抗するために、国家が秘密裏に開発したパワードスーツ(ポリマースーツ)を着用して戦うという設定も決して悪くないと思うし、なぜ民間人の鎧武士がポリマーに選ばれたかの理由付けも(無理矢理感はあるけど)それなりに納得出来る感じでした。

あと、気弱な新米刑事と私立探偵のバディーものという設定も今風でいいと思うし、元ネタにも登場するヒロインで探偵助手の南波テル(柳ゆり菜)が機械やITに強いという設定も悪くないし、ポリマースーツのデザインも(顔が丸見えになるの以外は)メタルヒーローっぽくてカッコイイですし。

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なので上手くハマれば、面白くなりそうな感じはあったんですよね。

アクション

アクションそのものはかなり良かったです。

格闘&パルクールを入れ込んだアクションシーンは、さすが坂本監督だけあって見ごたえがあったし、主役で探偵の鎧武士を演じた溝端淳平は思った以上に良かったし、邦画のアクションとしてはかなりレベルが高かったんじゃないですかね。

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ところが冒頭の方で、カメラのアングルが悪いのか、パンチやキックが相手に当たってないのが分かっちゃうシーンがあるんですよね。アクション映画でそれはどうなん? っていうね。

あと、凶悪犯罪が云々っていうなら、敵はマシンガンくらい持ってて欲しいところだったし、もっと極悪な行動しても良かったと思います。(全年齢向けだからソフトなのかな?)

っていうか、敵がスナックにたむろしてる街の不良みたいな奴らってのもなー。
もうちょっとこう、暴力組織やテロリスト的な感じの方がすんなり受け入れられた気がしますねー。

コメディーシーン

本作には、笑いの要素もふんだんに入っていて、それが上手くハマってるシーンも確かにあるんですが、いかにもベロベロバー的っていうか「はい、今おどけてますよー」っていう感じなのは、どうなのかなーと。

100歩譲ってそこはいいとしても、後半でかなりシリアスな展開になっても似たような感じで笑いを入れられると、観ているこっちの集中力が途切れちゃうのでアレはやめて欲しいと思いましたねー。

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かなりヤバイと分かっている現場に、助手で女の子の南波テルを連れてくる鎧武士の神経を疑うし、鎧武士の真剣な戦いの合間に、テルがいかにもテロリスト然とした屈強な相手とコミカルな格闘シーンを演じたり、胸の谷間をアップにするカメラワークとか、笑顔のアップとか、いちいち緊張感が削がれてほんとイライラしました。

っていうか、その手前のシーンで新米刑事の来間譲一を演じる山田裕貴の熱演も、その無駄な演出で台無しですよ。

せめてラストの方だけでもテルを(事務所からネットを通じて助ける)バックアップ要員に回すとか、何か良いやり方があったと思うんですけどね。

舞台設定

あと本作の舞台設定が、未来なんだか過去なんだかよく分からないのもすごく気になりました。
攻殻機動隊ブレードランナー的な、「雑多でアジア感溢れるTOKYO」をやりたいのは分かるんですが、今時マサイ族や遊牧民の人たちだってスマホくらい持ってますからね。

なのに、来間譲一は旧式のセドリックに乗って一昔もふた昔も前のアンテナ伸ばすタイプのケータイ使ってるし、捜査リーダーの土岐田恒 (長谷川初範)の家はビデオと黒電話ですよ。

実際の東京とは違うパラレルワールド感を出したいっていう意図はわかるけど、それ以外は普通に現代の東京の風景だから、逆にこのちょっとしたズレがただのノイズにしかならないんですよね。

ポリマースーツ

違和感といえば、主人公鎧武士が“変身”するシーンは、いかにも東映特撮っぽくて興醒めでしたねー。

グローブ・ブーツは先に身につけてて、ポリメットを被って“機動コード”を口で言うと量子的なアレで全身ポリマースーツになるっていう設定なんですが、(´ε`;)ウーン…って感じ。

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子供向けの仮面ライダーや戦隊ものならそれでもいいですが、本作では戦いの前にあらかじめ着用しておく、あくまでパワードスーツ的な扱いの方が合ってたんじゃないかなーと。

舞台設定もそうですけど、作品のリアリティーラインがどの辺なのか分からなくてノイズになっちゃう……っていうか、この作品自体が、(演技も映像のルックも構成も)平成版仮面ライダーや戦隊モノ劇場版のテンプレで作られてるんですよね。

でも本作は明らかに大人向けな作品なんだし、リアリティーラインを引き上げて、全体的に大人の鑑賞に耐えられる作品にした方がいいような気がしました。

あと、ポリマーに変身したあと、顔が全部見えるのも個人的にカッコ悪いなーと。
フェイス部分はスモークでも貼って、普段は顔が見えない方がカッコよかったんじゃないかと思うし、それならスタントマンも使えるから、役者さんでは難しいかなり高度なアクションも出来たんじゃないかなー。
もちろん溝端淳平さんは頑張ってたし、思った以上にアクションも良かったですけど、生身と変身後の違いが分からなくてもったいないんですよね。

それと必殺技「破裏拳」のエフェクトは、あまりにもしょぼすぎると思いました。

いらないシーン多すぎ&構成悪すぎ

でもまぁ、一番問題なのは全体的に無駄なシーンが多くて、シーンの構成?が悪すぎるってことですかねー。
そのせいで作品全体のテンポが悪くなってるし、「そのシーンの後にこのシーンを繋げる!?」 みたいなのも多くて、折角盛り上がった気持ちが冷めちゃう事が多すぎるんですよ。

そこを何とかするだけでも、全体的にスマートで盛り上がる作品になるんじゃないかと思いましたねー。

 

とまぁ、散々文句を並べましたけど、個人的には「CASSHERNキャシャーン)」や「ガッチャマン」に比べれば好感の持てるし、良いところも沢山ある作品でしたよ。

興味のある方は是非

 

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様々な要素を内包した物語「LION ライオン~25年目のただいま~」(2017) *ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、サルー・ブライアリーが自身の経験を元に書いたノンフィクション本「25年目の「ただいま」 5歳で迷子になった僕と家族の物語」を実写映画化した『LION ライオン~25年目のただいま~』ですよー!

アカデミー賞6部門にノミネートされ、各国の映画賞でも高い評価を受けた作品。
英国王のスピーチ」の製作陣と、「スラムドッグ$ミリオネア」の デーヴ・パテールやニコール・キッドマンなど実力派キャストが参加して制作されています。

で、この作品はそもそも予告編とタイトルでほぼネタバレしているので、あまりネタバレは気にせずに感想を書いていきます
なので、余計な情報を入れたくないという方は先に映画を観てから、この感想を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

英国王のスピーチ』などのプロデューサー、イアン・カニングが製作に名を連ねた実録ドラマ。幼少時にインドで迷子になり、オーストラリアで育った青年が Google Earth を頼りに自分の家を捜す姿を追う。メガホンを取るのは、テレビシリーズや短編などを手掛けてきたガース・デイヴィス。『スラムドッグ$ミリオネア』などのデヴ・パテル、『ドラゴン・タトゥーの女』などのルーニー・マーラ、名女優のニコール・キッドマンらが顔をそろえる。

ストーリー:インドのスラム街。5歳のサルーは、兄と遊んでいる最中に停車していた電車内に潜り込んで眠ってしまい、そのまま遠くの見知らぬ地へと運ばれて迷子になる。やがて彼は、オーストラリアへ養子に出され、その後25年が経過する。ポッカリと人生に穴があいているような感覚を抱いてきた彼は、それを埋めるためにも本当の自分の家を捜そうと決意。わずかな記憶を手掛かりに、Google Earth を駆使して捜索すると……。(シネマトゥデイより引用)

感想

「ライオン」ってこんな物語

というわけで、いきなりネタバレすると、本作は「25年間迷子だった主人公サルーが家に帰る物語」です。

しかも、この作品は原作者であるサルー本人の経験談。つまり実話なんですね。

インドの貧しいながら暖かい家庭で育った5歳の少年サルーが、はぐれた兄を探して乗り込んだ列車が発車。数千マイル離れたコルカタで迷子になってしまいます。

サルーの地元で使われる言葉はヒィンドゥー語ですが、コルカタの言葉はベンガル語
しかも、5歳のサルーは母の名前が分からない上に、地元の名前も間違えて覚えていて、結局生家には戻れず、オーストラリア人夫婦の養子に。

それから25年後、グーグルアースを知った彼は、僅かな記憶を頼りにグーグルアースを使って生家を探し出すという物語なんですね。

予告編を観たとき、僕はてっきり幼年期はサラッと見せて、青年になったサルーがメインの物語で、グーグルアースでどうやって自宅を探し出すのかをメインにした物語なんじゃないかと思ったんですが、いざ観てみると、少年時代のサルーが様々な困難を乗り越えてオーストラリアで養子に迎えられるまでのストーリーが全体の半分を占めていましたねー。

様々な要素を内包した物語

そんな感じで、本作は表面的には迷子が家に帰るという非常にシンプルな物語なんですが、その奥には、インドという国が抱える様々な問題や家族から引き離されたサルーのアイデンティティ。養子縁組の光と影など、サルーと、彼に関わった人々の心情を丁寧に描いているんですねー。

キャスト

幼年期のサルーを演じるのはサニー・パワールというインド人少年で、インド人スタッフが何千人もの中から発掘したシンデレラボーイ。

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あどけない顔の可愛らしい男の子ですが、大きくてまっすぐな瞳の奥に芯の強さをを持っていて、観る者を引き込んでいきます。

演技も5歳とは思えない上手さで、本作の成功にかなり貢献していると思いましたね。

青年になってからのサルーを演じるのは、「スラムドッグ$ミリオネア」のデヴ・パテル。優しい養母と養父のもとで幸せに成長しながらも、実母や兄への想いを捨てきれずに悩む繊細で難しい役柄を見事に演じていました。

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そんなサルーを支える養母、スーを演じるのは名女優ニコール・キッドマン
初めて思いの丈をぶつけるサルーに、自分が彼を養子にした理由を語るシーンは本当に素晴らしかったんですが、リアルでも二人の養子を持つ彼女自身の思いも乗っかっていたのかもしれませんね。

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サルーの彼女ルーシーを演じるのは「ドラゴン・タトゥーの女」でリスベットを演じたルーニー・マーラ

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リスベットのイメージが強い彼女ですが、本作ではアイデンティティに悩むサルーの心の支えになる強くて優しい女性を好演してました。

ガース・デイヴィス監督

本作で監督を務めるのは、オーストラリア出身でCMデレクターやドラマシリーズの監督としても活躍しているガース・デイヴィス。
母国オーストラリアでドキュメンタリー映画「P.I.N.S.(原題)」を監督した経験からか、インドのスラムに暮らす人々(本物のスラムの人たち?)や、駅や迷子収容所の子供たち。自然や風景の描写など、全体的にドキュメンタリーっぽい撮り方だなーと思いましたねー。

それでいて、シーンによっては作劇的に美しく撮っていたりもして、そのバランスも良かったと思いました。

気になったシーン

ただ、スーとジョンが引き取った二人目の養子、マントッシュ( ディヴィアン・ラドワ)やルーシーが、やけに宙ぶらりんな描かれ方だったのは、ちょっと気になりましたねー。(いや、実話の映画化なんだから仕方ないんでしょうけども)

あと、(これも仕方ないんですけど)養父のジョンが劇中であまり存在感がないのが若干かわいそうでしたw

インドの今と養子縁組の現実

幼年期のサルーは言葉も通じない見知らぬ土地で迷子になり、様々な人に出会います。
実際インドでは毎年8万人もの子供たちが迷子や誘拐などで行方不明になっているそうで、本作でもサルーに対して良からぬ思惑で近づく大人や、いい人だけどスラム暮らしの女性、孤児や迷子などの子供たちを収容する施設は、まるで刑務所のような劣悪な環境で、その一方でそんな環境から子供たちを救うために、養子縁組を進めるグループの人々もいて。

そういう意味では、遠いオーストラリアで優しい養父養母に出会えた彼は、同じような境遇の子供たちの中では運のいい方だったと言えるんでしょうね。

そこには貧富の差や教育格差、国として色々な整備が整っていないという、インドが抱える問題もあると思うし、幼い子供たちがそれらの犠牲になっている現実もあることを、この映画は教えてくれます。

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そして、養子縁組によって救われた子供たちもまた、自らのアイデンティティに悩み、それ以前の環境によっては精神的に不安定になってしまうなど、一筋縄では解決しない部分があることも、本作ではしっかり描いているんですね。

そうした「今そこにある現実」を一見シンプルなストーリーの中に織り込むことで、本作はただのお涙頂戴映画ではなく重層的な語り口を持つ作品になっています。
だからこそ、ラストのシーンでは感動するし、観たあとは色々考えさせられる作品になっているんじゃないかと思いました。

あと、映画のラストでなぜタイトルが「ライオン」なのかも分かりますよ。

興味のある方は是非!!!

 

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シークエル・トリロジー第二幕として申し分なし!「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(2017)

ぷらすです。

昨日、12月15日公開の『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を公開初日朝一の上映で観てきましたよー!!(;゚∀゚)=3ハァハァ

ネットでチェックしたところ、否定的な意見もいくつかありましたが、概ね好評なようで、僕自身もシークエル・トリロジー(続三部作)第二幕として申し分ない出来だと思ったし、超面白かったです!

というわけで、公開したばかりの超話題作なので、出来る限りネタバレしないように感想を書いていこうと思いますが、これから本作を観る予定の方は、絶対に映画を先に観た後で、この感想を読んでくださいね!

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

世界的な人気を誇る『スター・ウォーズ』シリーズの新たな3部作の第2章。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』後のストーリーが展開する。『LOOPER/ルーパー』などのライアン・ジョンソンが監督と脚本を担当し、前作に引き続きデイジー・リドリージョン・ボイエガマーク・ハミルらが出演。レイがルーク・スカイウォーカーから知らされる真実や、ダース・ベイダーになろうとするカイロ・レン、レジスタンスたちの新ミッションなど見どころ満載。(シネマトゥディより引用)

感想

旧世代と新世代キャストによる継承の物語

本作の公開に合わせて、金曜ロードショーでは前作「スターウォーズ/フォースの覚醒」を地上波ノーカット初放映したので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか?

本作は、「~フォースの覚醒」から始まるスターウォーズ シークエル・トリロジー(続三部作)の第二幕で、前作のラスト直後からスタート。

前作に引き続き、レイ(ディジー・リドリー)、ポー・ダメロンオスカー・アイザック)、フィン(ジョン・ボイエガ)、カイロ・レン(アダム・ドライバー)の新世代キャストに加え、旧三部作の ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)、レイア姫(キャリー・フィッシャー)、チューバッカ(ピーター・メイ・ヒュー)なども引き続き登場。
前作以上に大活躍していますよー!

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そして、本作では前作では明かされなかった謎が明らかになり、また新世代のメインキャラクターたちが、自分の弱さや葛藤と向き合い乗り越えていく様を描いています。
旧世代のキャラクターたちは、自らの過去と向き合うように、若者たちを見守り、導き、サポートしながら、次世代へとバトンを繋いでいくんですね。

前作以上に壮大で迫力満点の映像

前作「~フォースの覚醒」では、自らも大のスターウォーズマニアであるJJ・エイブラムス自らメガホンを撮り、CGと巨大セットなどを組み合わせた迫力満点でリッチな映像で、旧作ファンと新世代のファン双方が納得するような見事なスタートを切ったわけですが、本作では人気テレビシリーズ「ブレイキング・バッド」などの監督として知られるライアン・ジョンソン監督が前作を引き継ぎながら、更なる迫力の映像で物語を紡いでいます。

また、前作に比べて若干暗いトーンの本作。
個人的な感覚としては前作と昨年公開の「ローグ・ワン」のいいとこ取りのような映像だなーと思ったりしました。

特にクライマックスのシーンでは、白と赤の配色を巧みに使って、全年齢向けの作品では中々描けない部分をイメージとして表現するなど、新鮮な映像表現もあってとても良かったですねー!

アジア系女優の大活躍に注目!

ローグ・ワン」では、スター・ウォーズシリーズでは初めてのアジア系メインキャラクターとして、アクションスターのドニー・イェンがキャスティングされて話題になりましたが、本作ではフィンの相棒役として、アジア系アメリカ人の新人女優ケリー・マリー・トランがキャスティングされて話題になっています。

まだキャリアの浅い彼女は、米大手映画情報サイトIMDbですらたった2行しか記されていない無名の新人で、どうやらYouTubeなどでコメディー動画をアップしているコメディアンヌらしい。くらいしか情報がないんですよね。

www.youtube.com

前作でも、無名だったデイジー・リドリーがイキナリ主役に抜擢されて話題になりましたが、アジア系女優のケリー・マリー・トラン起用はスターウォーズの歴史からみても画期的な事件で、彼女はまさにシンデレラガールと言えるのではないかと思います。

決して美人とは言えないし、背も低くどちらかといえばポッチャリ型の彼女ですが、本作ではフィンを助けるなど物語上でも大きな役割を担っていて、次回作以降の活躍にも期待ですねー!

ルークが超カッコイイ!

前作ラストで、約30年ぶりに「スター・ウォーズ」に復帰したマーク・ハミル演じるルーク・スカイウォーカー
本作では「エピソード6/ジェダイの帰還」からの30年間、ルークの過去がついに明かされます。

そして、過去3作ではジェダイとしてあまりカッコイイところのなかったルーク(*個人の感想です)ですが、本作ではジェダイとしての能力を発揮し、過去最高にカッコイイ姿を見せてくれました!

ぶっちゃけあのルークが見られただけでも、劇場に足を運んで良かったって思いましたねー!(;゚∀゚)=3ハァハァ

レイヤ姫役、キャリー・フィッシャーの遺作

昨年12月27日、60歳という若さで早世したレイヤ姫役のキャリー・フィッシャー。本作は、そんな彼女の遺作でもあります。

前作と本作に同役で出演した彼女。30年以上、指導者として反乱軍を率いてきたレイヤを風格たっぷりに演じ、またハン・ソロとは過去作を彷彿とさせる軽妙なやりとりで、オールドファンを歓喜させてくれた。

次回作がどうなってしまうのかは分かりませんが、出来ることならもっと彼女の活躍が観たかったですねー。

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彼女の魂がフォースとともにあらんことを。

 

本当は、もっと語りたいですが、これ以上内容に触れるわけにもいかないのでここまでにします。が、なんと言ってもスター・ウォーズ」最新作ですからね!
劇場の大画面で観たほうが絶対に楽しめると思いますよー!

興味のある方は是非!!!

 

12/23日 追記

 

というわけで、そろそろ公開から1週間になるので、ネタバレも含んだ内容に触れる感想を追記しようと思います。

なので、まだ観てない人は、この先を読んじゃダメですよ?
いいですね? 注意はしましたよ?

 

その後のネット上の反応をチェックすると、評価は真っ二つに割れてるようですねー。
個人的には、批判的な人の意見も分かるし、肯定的な人の意見も分かるんですよね。

何て言うかこう、本作のドコにフォーカスを当てて観るかで、評価が全然違う感じと言うか。ざっと読んだ感じでは、ずっとファンだった人ほど本作にガッカリしてる印象があります。

僕もスター・ウォーズ(以下SW)はリアルタイム世代なんですが、そこまで熱狂的なファンと言うほどではなく、だから本作を受け入れられたし楽しめたのかなーなんて思ったりしました。

僕の感想を一言で言うと、本作は「スター・ウォーズ国が、絶対王政から民主国家に移行する作品」っていう感じがしました。

これまでのスター・ウォーズは、ジェダイとシスというフォースの力を独占していた特権階級、もっと言えばスカイウォーカー家という王族内のゴタゴタを描いてきたわけですが、前作EP7というクッションを挟んで、このシリーズではフォースの力を民衆に開放していこうとしているというか。(もちろん、次回作でレイが「実はスカイウォーカー家の血筋のお姫様だった」という展開も絶対ないとは言えませんけどw)

昨年公開のサイドストーリーである「ローグワン」では、SWのメインキャラクターではなく、“名も無きものたち”の戦いが描かれたわけですが、本作ではその流れを踏襲していて、帝国側の脱走兵フィン、反乱軍のエースパイロット ポー、辺境の星でゴミ拾いをしながら暮らしていたレイという、まだ何者でもない3人がそれぞれのアイデンティティを確立していく物語が、シークエル・トリロジーの大きな流れになるんだろうと僕は前作から思っていて、同時にジェダイとシスという特権階級が消滅することで、SWがフォースという呪いから開放される物語でもあるのかなと思ったりしているんですね。

つまりフォースにはそもそも光も影もなく、それを二つに分けていたのはフォースという「エネルギー」を独占するジェダイでありシスだったわけで、双方最後の継承者(ルークとスノーク)がいなくなったことで、ある種の縛りがなくなってフォースは多くの名も無き民に解放されていく的な?

上手く言えないけど、そういう方向に進んでいくんじゃないかと思ってるんですね。

それは、今後ディズニーがSWを作っていく上で必要な工程だと思うし、今までのジェダイとシスの対立というフォーマットは、時代的にそろそろ限界が来てるとも思うので、(もし本当にそういう流れになるなら)個人的には歓迎だったりします。

ただ、じゃあ本作でそうした流れを上手くストーリーに落とし込めたかといえば、ちょっと(´ε`;)ウーン…っていう感じで、普通に観ていても納得できない部分やツッコミどころが多すぎなんですよねー。

反乱軍は組織として規律や「報・連・相」がなってなさすぎだし、フィンとローズの潜入作戦も意味なさすぎるし、レイヤ姫のあのシーンいる!? だし、スノークの死に様は間抜けだし(まぁ、そこはSWの伝統といえるのかもですがw)、ヨーダ「お前が言うな!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ」だし。

多分、 ライアン・ジョンソン監督は、最初に劇中で描きたい事や撮りたいキメのシーンをいくつか決めて、後づけでストーリーを構築してるんじゃないかなーって思うんですよね。
まぁ、そもそも前作でJJが広げまくった風呂敷をある程度回収して次に繋げなきゃならないっていう無理難題もあるので、一概にライアン・ジョンソン監督ばかりが悪いとも言えないかもだし、そもそもSWの過去作だってストーリー自体は結構ガタガタですしねー。

ただ、上記したように、これまで“ジェダイとしては”カッコイイ活躍が見られなかったルークが、最後の最後でジェダイマスターとして超カッコイイ活躍を見せるシーンは燃えたし、ファーストオーダーと反乱軍双方に武器を売りつけて私腹を肥やす武器商人たちの登場は非常に現代的で、これから彼らやDJ (ベニチオ・デル・トロ)がどんな風にストーリーに絡んでくるのかも気になりました。

次回作は再びJJが監督するようですが、果たしてここからどうやって風呂敷を畳むのか、とても楽しみですねー(´∀`)ノ

 

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