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4作一気にレビュー!「デス・レース」シリーズ*ネタバレあり

ぷらすです。

今回は、「B級映画の帝王」ロジャーコーマン制作のカルト映画「デス・レース2000年」を「バイオハザード」シリーズや「エイリアンVSプレデター」のポール・W・S・アンダーソン監督でリメイクしたデス・レース』からの4部作を一気にご紹介ですよー!

一晩でシリーズ4本一気観はさすがにキツかったでござる!

あと、どうせ誰も観ないだろうからネタバレも気にせず感想を書きますよ。
なので、ネタバレ嫌って人は、シリーズ全部観てからこの感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

概要

脱獄不可能の刑務所で繰り広げられる、“死のレース”へ出場を決意する男の試練を描くアクション・ムービー。インディペンデント映画で有名な、ロジャー・コーマンが手掛けた1975年の『デス・レース2000年』を『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソン監督が現代的なアレンジでリメイク。主演は『トランスポーター』シリーズのジェイソン・ステイサム。流血とスピードと破壊が支配する壮絶なレースシーンに圧倒される。(シネマトゥデイより引用)

感想

ロジャー・コーマン&「デス・レース2000年」とは

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画像出典元URL:http://eiga.com

ロジャー・コーマンは、自分のインディペンデント会社「ニューワールド・ピクチャーズ」で数々のB級ジャンル映画を制作・公開し「B級(低予算)映画の帝王」と呼ばれる男です。

低俗で安い映画を大量に作る一方で、ジョー・ダンテジェームズ・キャメロンロン・ハワードフランシス・フォード・コッポラマーティン・スコセッシなど後に有名監督や俳優となる若き才能にチャンスを与えた事でも有名。

デス・レース2000年」はそんなロジャー・コーマンプロデュースで1975年に公開されたカルト映画で、「キルビル」のデヴィッド・キャラダイン主演、ブレイク前の若きシルベスタ・スタローンが出演し、市民を轢き殺した選手にはポイントが入るという頭のおかしい自動車レースを描いた、いわば「地獄のチキチキマシーン猛レース」なんですね。

デス・レース」のザックリ設定とストーリー紹介

そんな「デス・レース2000年」を『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソンを初めとした監督たちが現代風にリメイクして復活させたのがこの「デス・レース」(2008)から始まるリメイクシリーズ。

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2012年、経済が破綻したアメリカでは治安が悪化し、どの刑務所も満員御礼状態。
「とても管理できない!」と政府は刑務所の運営を民間会社に委託して、民間会社は刑務所の囚人を利用して、マシンガンやミサイルランチャーで武装したモンスターカーで殺し合いOKの「デス・レース」をテレビ中継。これがストレスMAXの国民に大ウケして大人気番組になるんですね。

このレースには、囚人は5回優勝するとどんな凶悪犯も自由の身になれるという特典がついていて、すでに4回優勝して自由にリーチのかかった鉄仮面の男フランケンシュタインは最後のレースに臨むんですが、ライバルのマシンガン・ジョーの攻撃で車は大破。
フランケンシュタインは死んでしまうのです。

と、ここまでがこのシリーズの基本設定。

シリーズ1作目の「デス・レース」では、貧乏ながら真面目に働いて奥さんと赤ちゃんの3人で暮らしていた元レーサーのジェイソン・ステイサムが、ある日突然奥さん殺しの冤罪をかけられ刑務所に投獄。
デスレースプロデューサー兼女刑務所長はステイサムに、死亡した事を隠し大怪我を負ったと発表していたフランケンシュタインの身代わりとして、デス・レースに参加するように強要。
ステイサムも自由を得るためにこの話に乗り、3日間のデスレースで凌ぎを削るうちに妻殺しの真相に近づいていくーー という物語です。

仮面レーサーのフランケンシュタインは、元ネタ「デス・レース2000年」のほうでデヴィッド・キャラダインが演じた主人公。マシンガン・ジョーはスタローンが演じていたのを、ステイサムとタイリース・ギブソンという「ワイルドスピード」コンビが演じていて、通行人を轢き殺すとポイントになるという設定はさすがに止めて、刑務所内に作られたコースでレースをするという設定に変更。車の方も今風(というかほぼマッドマックスだけどw)なカッコイイデザインになっているのです。

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つまり、元ネタの設定は生かしつつ、マッドマックスxワイドスピードみたいな映画になってるんですねー。

で、最初は正直「どうせ昔の映画をデザインだけ今風に変えただけのリメイクなんでしょ」とナメてかかってたわけですが、いやいや、(もちろんツッコミどころはあるけど)思ったよりずっとちゃんとしてたし車のデザインも超カッコよくて、個人的には大満足でしたよ!

レースの、車に搭載された銃火器は地面に埋め込まれたスイッチを車で踏まないと使えないルール設定とか中々凝っていたし、それぞれの車のギミックや女性ナビゲーターとドライバーの二人一組という設定も、その後の展開に生かされてたり。

また自動車整備のメカニックを務めるクルーの二人、「ジョン・ウィック」シリーズのイアン・マクシェーン(役名コーチ)、TVドラマを中心に活躍しているフレデリック・コーラー(役名リスト)もいい味を出してました。 

ただ、本作があまりにも綺麗に終わっていたし、ステイサムも出ない続編を一体どう作るんだろう? と。

デス・レース2」(2010)

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というわけで、すぐに続編「デス・レース2」を鑑賞。

経済破綻で治安が悪く、刑務所の運営を民間に任せるという世界観の基本設定はどうやら同じみたい。

で、今回の主人公を演じるのがイギリス人のミュージシャンで俳優のルーク・ゴス。

って、ステイサムの廉価版かよ!!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

いや、確かに頭頂部だけはステイサム感あるけど、ステイサムと比べると、なんかスッゴイ弱そうなんですよねー。

と、若干がっかりしつつ観ていると、前作でメカニックを務めたリストがゴスと一緒に入所してる?? コーチがいなくなってる?? って、ダニー・トレホ出てるじゃん。

っていうか、デス・レースじゃなくてデスマッチが放映されてる????
あれ? 14Kって前作でサクッと死んだ奴じゃん?????

デス・レース2」じゃなくて「デス・マッチ1」なの??
レンタルするタイトル間違えた???

と混乱しつつ観ていると、女プロデューサーが「デス・レース」を発案し、「なるほど! 続編だけど前日譚に遡るパターンかー!!」と納得。

で、そこからゴス、トレホ、リスト、紅一点のカトリーナ(タニット・フェニックス)がチームを組んで、「デス・レース」が始まるわけです。

前作ではただのチョイ役で雑魚だった中国人の14K(ロビン・ショウ)も大活躍して中々面白くなってるんですが……、デス・レース」が始まるまでの前フリが長いよ!!

なんて文句言いながら観ていると、ラストで衝撃の展開が!

なるほど、これフランケンシュタイン誕生の物語だったのかーーー!!

いやいや、こうなると俄然続きが気になるってもんで、即「デス・レースインフェルノ」を観ましたよ!!

デス・レースインフェルノ」(2013)

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前作「デスレース・2」ラストで顔面が焼けただれ、鉄仮面レーサーのフランケンシュタインとなった主人公のゴス。

なんと、序盤でイキナリ前作で刑務所を運営していた会社がM&Aされるんですが、新オーナーが超イヤな奴なうえに野心家でしてね。

超人気番組となったデス・レース」を世界各国で展開するという計画を打ちたて、フランケンシュタイン、トレホ、リスト、カトリーナのチームは南アフリカでレースをすることになります。

で、レースで勝つ事に焼けただれた顔面を整形で元に戻していく&5レース買ったらチーム全員自由の身という約束を前オーナーに取り付けていたゴス。その代わりに誰にも正体を知られてはいけないと言われてたわけですが、南アフリカについた途端乱チームの仲間たちに身バレします。

そんなこんなでギクシャクしつつもレースはスタートし、色々あってチームは晴れて自由の身となるんですが、リストだけは外の世界が怖いので刑務所に残ることになってめでたしめでたしというオチでした。

この南アフリカ縦断レースっていう設定は、多分元ネタである「デス・レース2000年」を踏襲したんでしょうが、そのせいで主人公の車が変わったりシリーズとしての流れが途切れた感じになっちゃって、ちょっと(´ε`;)ウーン…って感じでしたねー。

っていうか、これまでステイサムのデス・レース」に繋げていくプリクエルとして進んでいたハズのシリーズが、フランケンシュタインことゴスが自由の身になったことでどう繋がっていくのか、続きが超気になるじゃないですか!

というわけで、すぐさま「デス・レースアナーキー」をデッキにONしましたよ!

デス・レースアナーキー」(2018) 

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経済破綻によって犯罪率が爆発的に増加した近未来。
あまりに犯罪者が増えたので、高い壁を造って町一つを巨大刑務所にし、フランケンシュタインはその町に君臨する悪の魔王になっていましたとさ。

……って、続きちゃうんかーーーーい!!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

何かステイサムの「デス・レース」飛び越えちゃったよ!
もはや、「デス・レース」ほぼ関係ないよ!

トレホ、シャバで悠々自適の生活だよ!

っていうかリストお前、いつまで刑務所にいる気だよ!

えー……途中で寝ました。
内容もウダウダグダグダで絶望的に面白くなかったです。
前作での引きは一体何だったんだっていうね。

いや、途中で寝たので内容はよく分からないんですけどもw

というわけで僕の中では「デス・レース」は3部作。4なんてなかったんや……(遠い目
という結論に達しました。

あと、一日で4本はさすがに疲れるので、映画は一日3本までにしましょうw

興味のある方は是非!

 

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ガイ・リッチーの原点「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ 」(1998)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは「スナッチ」や「シャーロック・ホームズ」などで有名なイギリス人監督、ガイ・リッチーの長編デビュー作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ 』ですよー!

人によって好き嫌いがパックリ分かれる監督ではあるし、僕も全作品が好きってわけではないんですが、この映画は面白かったですねー!

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概要

本作で一躍名を成したイギリスの俊英、ガイ・リッチー監督・脚本によるクライム・ムービー。一攫千金を狙う4人の若者を軸に、ギャングやマフィアが入り交じって繰り広げる群像劇を独特のユーモアを交えて描く。巧妙なストーリー展開やテンポある演出に加え、多彩な登場人物が見せる妙な味わいが秀逸。ロンドンの下町に生きるエディはある日、仲間3人から金を集め、ギャンブルに投資するが惨敗。逆にその元締めに多額の借金を背負ってしまう。返済猶予は一週間。途方に暮れるエディたちだったが、彼らは偶然隣人の強盗計画を耳にする。(allcinema ONLINEより引用)

感想

ガイ・リッチーはこの作品で一躍注目を浴びた監督ですが、本作ではまだ「知る人ぞ知る監督」って感じで、世間的に広く認知されたのは(多分)ブラピが出演した「スナッチ」(2000)からじゃないかと思います。

彼の作品の特徴は、登場人物が多く視点切り替えが多い、時間を遡って他シーンの裏側で起こっていたことを見せる演出、スローモーションや早回しを多用したいわゆるオシャレで「スタイリッシュ」? な映像だと思うんですが、その辺も好き嫌いが分かれるところではあるという印象があります。

ちなみに、ガイ・リッチー、本作で制作も務めたマシュー・ヴォーン、アメコミ大好きザック・スナイダーは僕の中で同じグループのイメージだったりするんですよねw

クライムコメディー群像劇

そんなガイ・リッチー監督の長編デビュー作であるこの作品は、ざっくり言うとボンクラ4人組が借金返済のために強盗団から大金と大麻を横取りする計画を立てるという物語。

エディ、ベーコン、トム、ソープの悪友4人組は一攫千金を狙って、それぞれ持ち寄った合計10万ポンドを元手に、地元のギャング ハリーとギャンブルをするもイカサマに引っかかって50万ドルもの借金を1週間以内に返済するハメに。

途方にくれるエディたちは、隣室の強盗団が大麻の売人を襲撃する計画を盗み聞き。
横取り計画を立てて、まんまと大金と大量の大麻をせしめる事に成功するのだが……。

という物語。

で、この映画はいわゆる群像劇なので、登場キャラの多さに序盤は少し混乱してしまいます。

そんな登場キャラをざっくりグループ分けすると、

1・エディ、ベーコン、トム、ソープのボンクラ4人組。
2・ギャングで賭博の元締めハリーのグループ&間抜けな泥棒2人組&親子の借金取り。
3・黒人ギャングのロリー率いるギャング団&配下の大麻密造グループ。
4・隣室の強盗団。

で、最初はバラバラに動いているこの4つのグループが、大金と麻薬と年代物のライフルを巡って地で血を洗う抗争へと集約していく様子をブラックユーモアとスラップスティック要素を入れてコミカルに描くという、後の監督作に繋がる要素全部乗せな、まさにガイ・リッチーの原点とも言える作品なんですね。

また、ジェイソン・ステイサムの俳優デビュー作でもあり、ロック様や巨大ザメと戦う前のステイサムが見られます。もっとも、この時すでに30歳を超えていたので初々しさはないですけどもw

タイトルの意味

「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ 」という長いタイトル。
これは、「ロック・ストック・アンド・バレル」という慣用句をモジった造語で、ロック=発射装置、ストック=銃床、バレル=銃身をそれぞれ表し、三つが揃って銃が完成することから、「一切合切」「すっかり」という意味なのだそうです。

「~『トゥー・スモーキング』・バレルズ」となっているのは、劇中で登場する2丁のアンティーク銃を指していて、このライフルを撃つと硝煙がたつ→銃撃戦を連想させる&最後は煙のように消えてしまうみたいな、複数の意味が込められているっぽいです。

ガイ・リッチーのオリジナリティー

本作から遡ること数年前、タランティーノの「レザボアドックス」や「パルプフィクション」が大ヒットしたことで、ガイ・リッチーは英国版タランティーノなんて(本人にしてみれば)不名誉な呼ばれ方をして当時はタランティーノフォロワー的な扱いだったし、僕も「スナッチ」を観た時は僕もそう思ってましたが、今こうして長編デビュー作を振り返ってみると、やっぱり違うなーと。

スローモーションや早回し、カメラを動かしまくりの映像的特徴だけじゃなくて、ストーリーテリングにも、ガイ・リッチー独自のオリジナリティーがしっかりあるんですよね。

続く2作目の「スナッチ」は、本作と同じスタイル、アイディア、モチーフを踏襲していて、本作より映像的にも物語的にも洗練された印象ですけど、個人的には(デビュー作ならではの粗さや拙さも含めた)勢いが感じられたし、これだけ沢山のキャラクターを登場させながら、観ているこっちが混乱しないように最終的に一つの物語に集約させる構成力は素晴らしいと思いました。
まぁ、物語のピースを揃えるために登場するキャラやエピソードがないとは言わないけど、それぞれのキャラクターがちゃんと立っているので、それほど気になりませんでしたねー。

興味のある方は是非!!

 

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痛々しいほどリアルで美しい傑作!「ぼくの名前はズッキーニ」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、スイス・フランス合作のストップモーションアニメ『ぼくの名前はズッキーニ』ですよー!

ストップモーションアニメという手法から、ついつい観る前は子供向けの寓話的なファンタジーだろうと思いこんでいたんですが、実際に観たらとんでもない。
痛々しいくらいにリアルで美しい物語でしたねー!

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

第89回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネートをはじめ、世界中で旋風を巻き起こしたストップモーションアニメ。母親に先立たれて施設に入れられた主人公が、仲間たちと信頼関係を築いていく様子を映し出す。これまで短編アニメを手掛けてきたクロード・バラスが監督を担当。長い時間を費やして丁寧に制作されたアナログな人形たちによるアニメに注目。(シネマトゥデイより引用)

感想

原作について

本作の原作は、フランスの作家ジル・パリスによる2002年の同名小説。
日本では2004年にポプラ社から『奇跡の子』として邦訳版が刊行され、その後、2018年、映画公開に合わせて新装改訂版『ぼくの名前はズッキーニ』としてDU BOOKSから刊行されたそうです。(恥ずかしながら僕は未読)

本作は2007年のフランスの実写テレビ映画『C'est mieux la vie quand on est grand』に次く2度目の原作小説の映像化作品なんですね。

大人向けに書かれた(らしい)の原作はそれなりに長い作品らしいんですが、本作では原作から物語の肝となるエピソードを抜き出して、かなりコンパクトにまとめているようです。
また、子供でも観られるようにキャラクターを整理し、エピソードの細部も改変し、ラストでは原作の後日談とも言えるオリジナルシーンを付け足しているのだそうです。

ざっくりストーリー紹介

僕は今回ほぼ事前情報なしで本作を観たんですが、上記したように観る前はストップモーションアニメということもあり、また人形の造形のデフォルメ具合から「子供向けのファンタジーだけど、大人も楽しめる寓話的な映画なのだろう」と思ってたんですね。

しかし、それはとんでもない勘違いなのだと開始5分で気づきましたよ。

本作の主人公で9歳の少年“ズッキーニ”は、父親が若い女と浮気して出て行って以来、アル中でネグレクト(&家庭内暴力も?)な母親と二人暮らし。

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画像出典元URL:http://eiga.com  / 主人公のズッキーニ

ズッキーニは父親から貰った凧や、母親が飲んだビールの空き缶でいつものように遊んでいたんですが、“ある事故”で母親は死亡。ズッキーニは様々な事情で親に捨てられたり、引き離された子供たちと共に孤児院「フォンテーヌ園」で暮らすことになる――というストーリー。

ズッキーニ(Courgette)は、元々「のろま」や「石頭」を意味するCourge(コルジェ)という言葉から派生したそうで、本国では人を馬鹿にした蔑称として使われているのだとか。

主人公の本名はイカールですが、しかし彼は母親がつけた“ズッキーニ(Courgette)”というニックネームにこだわります。

日本人の僕らには分かりにくいですが、このニックネームの件一発でゴチャゴチャ説明しなくても、この親子の関係が分かる仕組みになっているんですね。

本作はそういう細かいディテールが満載で、かつ小道具を使った演出や映像的な情報量も多く、たった65分の作品ですが、かなり見ごたえがある作りになっているのです。

また、子供たちや役者陣に、声だけではなく実際に演技をさせて動きをトレースする「ロトスコープ」技法も使っているそうで、だからなのか、こんな頭でっかちの人形なのに、凄く実在感があるというかリアルな動きや表情をしていて、実写以上に実写を観てる感じがするし、キャラクターへの感情移入度がハンパないんですよねー。

多分、これを実写で撮ったら、普通にいい話で終わってたんじゃないかな。

登場キャラクター

そんな本作ではズッキーニ以外にも魅力的なキャラクターが登場します。

孤児院のボス、シモンは両親が麻薬中毒でフォンテーヌ園に保護されます。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 本当は心優しいシモン(左)

最初いじめっ子的な感じで登場しますが、実は心優しい少年で、ズッキーニとケンカして親友になります。

カミーユはズッキーニの後にフォンテーヌ園にやってきた女の子。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ズッキーニが恋するカミーユ(右)

少し大人びたハスキー声の彼女にズッキーニは恋をしてしまうんですね。
両親は母親の浮気が原因で刃傷沙汰となり両親が死亡。
補助金目当てで彼女を引き取ろうとする叔母に抵抗します。

アメッドは、父親がナイキ欲しさに強盗で刑務所に入れられたのでフォンテーヌ園に保護された少年。
純粋で、少し天然の彼は(本人の意思に反して)場の雰囲気を盛り上げるムードメーカーです。父親を捕まえた警察官全般を憎んでいます。

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画像出典元URL:http://eiga.com  / アメッド(左)ジュジュブ(右)

ジュジュブの母親は精神病に掛かって入院。彼は園に保護されます。
歯磨き粉も食べちゃうくらい食いしん坊で神経質。大親友のアメッドとはいつも一緒にいます。

 

ベアトリスの母親はアフリカ系の不法移民で、彼女が学校に行ってる間に強制退去させられました。
園に車が来るたびに母親かと飛び出してくるのがお約束。
とても優しい女の子です。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ベアトリス(一番右)とアリス(右から2番目)

アリスは実の父親から性的暴行を受けて園に保護された女の子。
髪の毛で顔を隠して、ほとんどしゃべらない彼女でしたが、カミーユとの出会いでゆっくりと心を開いていきます。

「フォンテーヌ園」にやってきた子供は、みんな勝手な大人のせいで心に傷を負っていますが、寂しさを抱えながらもみんな健気でしなやかな強さを持っているのです。

そして、そんな重たい背景を持ち傷ついている子供たちを優しく見守る園長や職員と心優しい警察官レイモン。
子供たちを傷つけるのも大人ですが、子供たちを守るのもまた、大人なんですよね。

原作者のパリスは、取材のため孤児院で1年間働き、バラス監督も孤児院の子供たちと3週間共同生活したそうです。

だからこそ、劇中の子供たちに寄り添うような優しい目線で物語が描かれているのかもしれませんね。

傷を負い孤独を抱えた子供たちが、孤児院というコミュニティーの中で寄り添うように互いの居場所を作り、笑い合ったり励まし合ったりしながら成長していく姿や、里親に引き取られることになった仲間の背中を押してあげる描写には、おじさん不覚にも号泣でしたよ!・゜・(ノД`)・゜・

昨年、今年は、人形を使ったストップモーションアニメの当たり年でしたが、本作はそれらの作品とはまた一味違った、傑作になっていると思いましたねー!

興味のある方は是非!!!

 

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僕らのマッコール師匠が帰ってきた!「イコライザー2」(2018)

ぷらすです。

観てきましたよイコライザー!!

いやもうね、前作では描かれなかったマッコール師匠の過去を掘り下げて映画としてもスケールもアップするという、まさに正統派続編って感じでしたねー!

というわけで、まだ公開されたばかりの映画なので、出来るだけネタバレしないように注意して感想を書きますが、もしこれから本作を観に行く予定の方は、先に映画を観てからこの感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

トレーニング デイ』のデンゼル・ワシントンアントワーン・フークア監督が組んだクライムアクション『イコライザー』の続編。元CIAの工作員が、親友の死の真相を追う。前作に続きフークア監督がメガホンを取り、メリッサ・レオビル・プルマン、ドラマシリーズ「ナルコス」などのペドロ・パスカルらが共演。(シネマトゥデイより引用)

感想

イコライザー」とは

まず、前作を観たことのない人にどんなストーリーだったかをザックリ説明すると、

ホームセンターの店員で、不眠症強迫症(っぽい)のマッコール師匠は、実は元CIAの特殊工作員っていうか暗殺要員。
そんな彼が深夜のダイナーで顔見知りになった娼婦の女の子(クロエ・グレース・モレッツ)を救うため、ロシアンマフィアをDIY精神で殲滅するという物語でした。

そんなマッコール師匠を演じるのは、オスカー俳優のデンゼル・ワシントン

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画像出典元URL:http://eiga.com / 我らがマッコール師匠が帰ってきた!

いわゆるビジランテ(自警団)系の歪なダークヒーローを、実力派のデンゼル・ワシントンが演じるという衝撃のデビューを果たした前作は「ナメてた相手が殺人マシーンでした」(©ギンティー小林)映画の歴史に新たな1ページを刻むわけです。

そんな前作の大ヒットを受けて作られた本作は、前作から引き続きデンゼル・ワシントンと盟友アントワーン・フークア監督がタッグを組み、前作では語られなかったマッコール師匠の過去を掘り下げながら、さらにスケールアップさせるという正統派な続編になっているんですね。

マッコール師匠転職!

前作ではホームセンターの店員だったマッコール師匠、ほんのりサイコパス感があり、娼婦の少女を救うためロシアンマフィアに単独カチコミをかけるという姿が若干「タクシードライバー」(1976)っぽいと思ってたら、なんと本作ではウーバーを使った自家用タクシーの運転手に転職してましたw

ホロコーストを生き延びた老人や、女子小学生、アル中のおっさん、イラクに従軍する若者、近く結婚するカップルなどなど、色んなお客をマイ・セダンで運ぶマッコール師匠。アパートの住人とのご近所付き合いも良好で、前作同様神経質なくらいの几帳面さは残っているものの、若干、人間味が増している印象でした。(前作では「善き人」であろうと努力している感じだった)

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画像出典元URL:http://eiga.com / 同じアパートに住む若者を悪の道から救う父親っぽい一面も

しかし、彼も元女上司で唯一の親友スーザン(メリッサ・レオ)が何者かに惨殺される事件が発生。
怒り心頭のマッコール師匠は復讐のためスーザンが殺された原因を調査し始めるのだが……。というのが本作のストーリーなんですね。

マッコール師匠、今回も健在!

前作では、目につくものは何でも武器にして戦う創意工夫溢れるアクションでファンの度肝を抜いたマッコール師匠。続く本作でも、その姿勢は健在です。

映画冒頭、離婚の腹いせに奥さんから子供を奪った男とその仲間を、熱湯、グラス、ティーポットで倒し、インターンの女の子に薬を飲ませて乱暴する金持ち社長のボンクラ息子どもを彼らのブラックカードでスパっと切り(さすがブラックカード。切れ味がいい)、もちろん(敵が持っていた)ナイフや拳銃も使いこなすし、車、小麦粉など、何でも武器にしながら、(前回ほどではないですが)創意工夫で次々と敵を瞬殺していくんですね。

 このシリーズの欠点として、マッコール師匠が強すぎてハラハラしないってのがあるんですが、本作では近しい普通の人々が敵に人質にされることでハラハラ感を演出。
しかし、師匠は師匠で敵の奥さんと娘を人質にするので、どっちもどっちだったりするし、結果的に敵側に同情すら覚えてしまうのですw

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画像出典元URL:http://eiga.com  / クライマックスはまさに西部劇のよう。

それまでは、一応相手にこのままやり合うか、改心するかの選択の機会を与えていた師匠ですが、スーザンの敵と対面したときは「お前ら全員ぶっ殺す。一回しか殺せないのが残念」ととてもヒーローにあるまじきセリフを吐く師匠。
でも、これはそのくらい支障が怒り心頭であることを表しているんですよね。

目の前で師匠にこんなん言われたらシッコちびるわ。((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

あと、師匠の怖いところは、やり合う前に言葉でじわじわ相手を追い詰めるところ。
本作冒頭でも、トルコに向かう列車の中で、ターゲットと最初は友好的に話しているけど、「探し物をしている」と切り出し、相手が「トルコならなんでも見つかる」と相手が返したところで「離婚の腹いせに奥さんから子供を奪った男も見つかるかな……それともトルコに向かう途中で見つかるかな」と相手を追い詰めてからの、襲いかかってきた仲間を瞬殺→「体の痛みと改心の痛み、どちらを選ぶ?」と迫るわけですよ。

もうね、やり口がアウトレイジと一緒だよ!

デンゼル・ワシントンの名演

そんなマッコール師匠とうマンガみたいなキャラクターに質量を与えているのが、デンゼル・ワシントンの重厚感溢れる演技。

良い人から恐ろしい悪役まで何でも演じちゃうデンゼル・ワシントンですが、彼の演技の凄みが分かるのが、デップーの中の人ことライアン・レイノルズと共演した「デンジャラス・ラン」(2012)で、デンゼル演じる元CIA局員がライアンに射殺されるシーン。

デンゼルが死ぬ瞬間、僕は観てて「わ、本当に死んだ!」って思ったくらいで、デンゼルの体から魂が抜けたのが分かるんですよ。

映画の内容はほとんど覚えてないけど、このデンゼルの死ぬ演技だけは今でも記憶に残ってますねー。

そんな名優、デンゼル・ワシントンが演じているからこそ、マッコール師匠のちょっとした表情や動きから、細かい心の機微まで観ているこっちはハッキリと感じ取る事が出来るし、だから半分サイコパスっぽい師匠から垣間見える人間味や悲しさみたいな部分に共感してしまうのです。

すでに還暦を越えてるデンゼル・ワシントン
そろそろアクション映画は厳しいとは思いますが、出来るなら続編が観たいですねー!

興味のある方は是非!!!

 

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スピルバーグ、もう一つの遺言「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」(2018)*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「レディ・プレイヤー1」とほぼ同時期に、スピルバーグ史上最短のスピードで製作された『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』ですよー!

本作を観た人は多分、誰もが思う事だと思うんですが、「レディ~」と本作をほぼ同時進行で作っちゃうとか「スピルバーグ、マジヤベェ!」って思いましたねーw

あ、ちなみに、本作は史実を元にしているので、今回はネタバレ全開で感想を書きます。
なので「ネタバレは嫌」という人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

メリル・ストリープトム・ハンクスが共演し、スティーヴン・スピルバーグがメガホンを取った社会派ドラマ。実在の人物をモデルに、都合の悪い真実をひた隠しする政府に対して一歩も引かない姿勢で挑んだジャーナリストたちの命懸けの戦いを描写する。『コンテンダー』などのサラ・ポールソンやドラマシリーズ「ベター・コール・ソウル」などのボブ・オデンカークらが出演。脚本を『スポットライト 世紀のスクープ』で第88回アカデミー賞脚本賞を受賞したジョシュ・シンガーらが担当した。(シネマトゥデイより引用)

感想

「レディ・プレイヤー1」と公開が近かった事もあって話題になった本作。「レディ~」の製作期間中だった2017年5月30日にユニット撮影を開始してたった50日間で完了。同年の12月には公開したという、(もともと早撮りで知られるスピルバーグが手がけた中でも)最短を記録した作品なのだそうです。

では、なぜそこまでスピルバーグが急いで本作を公開したかったのかというと、トランプが大統領に就任したからだそうで、「この作品はすぐ作ってすぐ公開したかった」と、トランプ大統領就任から45日めにスピルバーグは本作の製作を発表したんだそうです。

つまりスピルバーグは、ベトナム戦争が泥沼化している1971年に起こった実際の事件を通して、アメリカの「今」を描いたんですね。

ペンタゴン・ペーパーズとは

本作の元になった「ペンタゴン・ペーパーズ」事件をざっくり説明すると、国際安全保障問題担当国防次官補のジョン・セオドア・マクノートンが命令して作らせたベトナム戦争トンキン湾事件に関する国家機密文章が流出し、それをニューヨークタイムスがスクープします。

それで、これまでの歴代大統領による発表がとんだ嘘っぱちだった(勝ち目のない戦争で多くの若者の命が失われた)ことが明るみになり大騒ぎに。
これに慌てたニクソン政権はニューヨークタイムスを訴えるんですが、同時期に独自のルートから機密文章ほぼ全文を入手したワシントンポストが記事にしたことで、他の新聞社も追従。

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ニューヨークタイムス&ワシントンポストは、「国家機密文章漏洩」の罪で政府に告発され裁判で争うも表現・報道の自由が認められ勝訴したわけです。

本作では、当時まだ地方紙に過ぎなかったワシントンポストの女性社主キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)と、編集主幹のベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)にスポットを当てて、この事件の顛末を描いているんですね。

イムリミットは10時間

そもそも、この機密文章のコピーをリークしたのは、ジョン・セオドア・マクノートンの命令でベトナム戦争の様子を前線で記録していた国防総省勤務のダニエル・エルズバーグ

彼は責任逃れのために勝てない戦争を続ける政府に義憤を覚え、密かに持ち出してはコピーしていた「ペンタゴン・ペーパーズ」をリーク。
ニューヨークタイムスは3ヶ月間をかけて事実を精査し、記事を掲載したわけです。

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特ダネを独占されたワシントンポストのベンは、機密文書を手に入れる為に、マクナマラと仲が良い社主キャサリンに文書を入手するよう懇願しますが、キャサリンは家族ぐるみの親友であるマクナマラをこれ以上の窮地に陥れることを躊躇するんですね。

翌日、謎の女性によってワシントンポストにも機密文章の一部が持ち込まれますが、しかし、その文章はすでにニューヨークタイムスが記事にしているものでした。

さらにニューヨークタイムズは、機密文書に関する記事を掲載したことで、ホワイトハウスからの圧力がかかり、出版差し止め命令を受けてしまいます。

一方、独自に機密文書の入手に動いていた新聞記者バグディキアンは、友人だったエルズバーグの居場所を突き止め、膨大な量の機密文書を入手。

ベンは翌朝の新聞に掲載するため自宅に精鋭を集め機密文章を解読、記事を書かせますがイムリミットはたった10時間。しかも機密文章の記事を掲載することは政府の圧力によって会社が潰されかねないリスクも抱えているのです。

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キャサリンに掲載を迫るベン。止めさせようとする役員幹部。
イムリミットが迫る中、キャサリンはマスメディアとしての正義を貫くのか、それとも会社を守るのかの判断を迫られるという作品なんですね。

二つのテーマ

本作には二つの大きなテーマがあります。

一つは、女性蔑視問題
もともと、ワシントンポストはキャサリンの父親が社主で、父親はキャサリンの夫に跡目を継がせ、その事にキャサリン自身も納得していたんですね。
ところがある日、夫が自殺、キャサリンは迷った末に自ら社主となる決心をするわけです。
しかし、取引銀行や株主、幹部役員の多くはキャサリンをお飾りのように扱い、彼女が独断でベンをスカウトしたことにも納得していないし、キャサリン自身も会社を担う重責に自信が持てていないのです。

本作は、そんなキャサリンが会社の存続に関わる大きな決断を下すことで成長・自立する姿を描いているんですね。

裁判の後、ニューヨークタイムズ側にマスコミ陣が群がるのを横目に階段を降りるキャサリンのもとには女性たちが集まっているという構図は、本作のそうしたテーマを象徴的する表現だと思いましたねー。

そしてもう一つは、マスメディアの意義

新聞に記事を掲載したことで、ニューヨークタイムス、ワシントンポスト両社は政府に起訴を起こされるわけですが、判決は新聞社側の勝訴でした。それはアメリカ合衆国憲法修正第1条「表現と報道の自由が認められたからなんですね。

本作ではマスメディアの姿勢や役割について、人を変え、言葉を変えながら繰り返し語られています。
そして、これはもう言うまでもなく、権力によって言論やマスメディアに圧力をかけるトランプ政権への批判でもあり、全ての報道と表現者へのスピルバーグからの警鐘とエールでもあるわけです。

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あと、これは余談ですが、インタビューでスピルバーグは本作を「(自分の)ツイートみたいなもの」と言ったらしいですが、これはもちろん何かとツイートが話題(問題)になるトランプ大統領への当てこすりですよね。

温厚そうな顔して、しれっと毒を吐くスピルバーグ御大、流石ですw

スピルバーグ、もう一つの遺言

同時期に撮られていた「レディ・プレイヤー1」は、スピルバーグから次世代のクリエイターを目指す若者たちへ向けた、ある意味「遺言」的な意味合いを持つ作品だったわけですが、本作はそんな若者たちをサポートするべき大人たちに向けた「遺言」なのだと思います。

そしてこの両作、もっと言えば「カラーパープル」以降、彼は作品を通して常に「自由」の大切さを全世界の人々に説いているのだと思います。

エピローグについて

本作を観た人の中にはラストのエピローグ(警備員の件)がピンと来なかった人もいるんじゃないでしょうか?
あれは、その後ニクソン大統領が辞任に追い込まれる事になる「ウォーターゲート事件」の始まりを描いているんですねー。
どういうことか気になった人はウィキペディアで調べてみてくださいw

あと、最後に「ノーラ・エフロンに捧げる」ってクレジットが出ますが、ノーラ・エフロンは、本作の後日談とも言える『大統領の陰謀』監督バーンスタイン奥さんで、脚本を推敲する過程で彼女も(クレジット無しで)関わっているってことらしいです。

 

まぁ、こんなふうに書くと何か重くて堅苦しい映画みたいに思われてしまうかもですが、そこはスピルバーグですからね。
メッセージやテーマ性を入れ込みつつ、エンターテイメント映画として誰でも楽しめる超面白い映画になってました。

ただ、早口で食い気味なセリフが多い映画なので、字幕より吹き替えで観たほうが楽しめるかもしれません。

興味のある方は是非!!

 

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タイトル通りの映画!「ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、リュック・ベッソン製作のアクション映画『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』ですよー!

何ていうか、うん、タイトル通りの映画でした。

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概要

ボスニア紛争末期のサラエボに派遣されたネイビーシールズが、ナチスの金塊を奪取しようとする痛快アクション。リュック・ベッソンが製作と脚本を手掛け、『イントゥ・ザ・ストーム』などのスティーヴン・クエイルが監督を務める。リーダーを『300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~』などのサリヴァン・ステイプルトン、彼の上官を『セッション』などのJ・K・シモンズが演じるほか、『鑑定士と顔のない依頼人』などのシルヴィア・フークスらが共演。(シネマトゥデイより引用)

感想

ざっくりストーリー紹介

1995年、ボスニア紛争末期のサラエボが舞台。

ネイビーシールズに所属する隊長のマット(サリバン・ステイプルトン)、チーム1の色男イカ(チャーリー・ビューリー)、数学の天才モラン( ジョシュア・ヘンリー)、腕利きの調達屋ダッフィー (ディアミッド・マルタ)、重火器のエキスパートJP(ディミトリー・レオニダス)は、敵の将軍を誘拐する極秘任務につき、作戦は成功するものの敵将校ペトロヴィッチの軍隊と派手な戦いを繰り広げたことから、上司のレヴィン少将J・K・シモンズ)に大目玉を喰らい、3日間の謹慎を言い渡されます。

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その夜、バーに繰り出したマット隊でしたが、バーのウェイトレスのララシルヴィア・フークス)と付き合っていたベイカーは、第二次大戦中、水没した村にナチスがヨーロッパの各国から奪った金塊が総額3億ドルが眠っているという話を聞き、ララから「難民を救うため」秘密裏に水没した村からナチが隠した金塊を引き上げる手助けを懇願されるんですね。

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イカーから話を聞いたマットは、避難民を救う為に金塊奪還を決意。
5人+ララの6人で、金塊引き上げ作戦を立てます。
しかし、金塊が眠る湖は敵陣のど真ん中にあり、巡回船が見張っている危険な環境。
水深45mの湖底から重さ27トンもの金塊を運び出すのは容易ではなく、また、ペトロヴィッチがマット隊を捜索している事が分かり、彼らは36時間後に勤務地を移動することに。

果たして、マット隊は敵(と上司)の目を掻い潜り、無事金塊を奪還することが出来るのか――という物語。

文字通り、タイトルそのままの内容でした。

ただ予告編を観た段階では、もっとシッチャカメッチャカな映画かと思いましたけど、ストーリー自体は意外と真面目だし、はみ出しものたちが弱者を救うために心意気を見せる下りは60年代の戦争映画っぽい雰囲気もあって、かなり好みでした。

チーム一丸となって不可能を可能に

とはいえ、27トンもの金塊を(敵地の真ん中で)敵に気づかれないよう引き上げるのは至難の業。
しかも、最初は数日に分けて運ぶ予定だったのに、彼らに残された時間は36時間しかないわけです。
一度は諦めたマーク隊でしたが、数学の天才ラモンのヒラメキによって、たった一晩(約8時間)で、金塊を湖から引き上げるという前代未聞の作戦を計画・決行するんですね。

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ロケ地や武器などは全て本物!

本作はドイツ、クロアチア、マルタ、フランスと4か国にまたがって撮影を行い、軍事基地や戦車、戦闘機に至るまで、全て実物を使用。

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クライマックスの舞台になる水中都市も実在する場所でロケ撮影を行い、マット隊の5人の俳優たちは元シールズのトレーナーから訓練を受けて撮影に臨んだんだとか。

冒頭の街を破壊しながら展開されるド迫力の戦車シーンや、中盤のヘリと戦闘機の息詰まる大チェイス。クライマックス、追い詰められた状況での、水中都市での戦いなどなど、全て本物だからこそのリアリティー溢れる迫力が本作にはあるんですよね。

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ただ、あえて1つイチャモンをつけるなら、夜間の戦闘シーンが多いので映像が観ずらいシーンが多いのは、正直ちょっと残念というか勿体無いって思いました。

実際サラエボでは、大戦や紛争によって多くの人々が亡くなったり難民になった事実もあり、その歴史的な事実や痛みを映画の中だけでも……という試みは、タランティーノ監督の「イングロリアス・バスターズ」にも通じるのかなって思ったりしました。

あと、本作のJk・シモンズは、「上司にしたい俳優ナンバー1」な役柄でしたねー!

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リベンジ、サバイバル、おっぱい!「女囚701号 さそり」(1972)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、篠原とおる原作の劇画を実写化した1972年の作品『女囚701号 さそり』ですよー!

ずっと観たいと思ってたけど、地元のレンタル店に置いてなかったので、アマゾンプライムでレンタルして観ることができましたー!

いい時代になったねー。

www.youtube.com

概要

ビッグコミック」に連載された篠原とおるの『さそり』を、神波史男松田寛夫が脚色。監督は本作がデビューとなる伊藤俊也。主演の梶芽衣子による主題歌「恨み節」もヒットし、この曲は後にクエンティン・タランティーノ監督作品「キル・ビル」で使用された。  
女子刑務所からの脱走を企てたナミと由紀子だったが、二人のもくろみは失敗に終わる。ナミは刑事の杉見と恋人同士だったが、麻薬のおとり捜査に使われた上、杉見に裏切られてしまった。ナミは復讐のため杉見を襲うが、逆に逮捕されてしまったのだ。ナミは刑務所で他の女囚から嫌われていたが、唯一、由紀子とだけは親しかった。ある日、刑務所で暴動が起こり、由紀子が射殺されてしまう。(allcinema ONLINE より引用)

感想

女優 梶芽衣子の代表作

梶芽衣子は日本映画界が斜陽に差し掛かった1965年、高校卒業と同時に日活に入社し、本名の太田雅子として「悲しき別れの歌」でデビュー。

「日本残侠伝」(1969)で梶芽衣子に改名し、1970年~「野良猫ロック」シリーズに出演し1・2作目は脇役を演じていたのが、3作目から主役に抜擢されます。

1972年、日活がロマンポルノ路線に移行したためフリーになり、その後東映に移籍すると、本作でその人気を決定づけたんですね。

劇中でほぼ喋らずに相手を睨みつける無口なキャラクターや、全身黒ずくめに鍔広のハットというアイコン的なファッションは彼女のアイデアだそうですよ。

レイプリベンジでプリズンブレイクでおっぱい!

ごく普通の女の子だったナミは、初恋の相手で刑事の杉見に全てを捧げ、麻薬のおとり捜査を頼まれて暴力団が経営するクラブに潜入します。
しかし、正体がバレたナミは暴力団員たちにレイプされ、しかもそれが全て杉見のシナリオだった事を知るんですね。

ナミは復讐のため、杉見を襲うも逮捕され、女子刑務所に収監されてしまうわけですが、この映画はナミがどうやって刑務所を脱獄し杉見に復讐を果たすかというプリズンブレイク(脱獄)ものなのです。
まぁ、脱獄シーンは映画冒頭のアバンしか出てきませんけども。

この頃、業績不振だった東映はテレビに取り込まれない客層を狙い、実録ヤクザものやエログロものを量産しているんですが、本作はまさにその走りといえる作品で、女子刑務所の実態を描く実録もの? として、陵辱シーンやヌード、リンチなどのエログロ要素も満載。こんなにおっぱいが沢山出てくる映画ってそうはないと思いました。

さらに自分(女性)を利用して私腹を肥やす杉見や権力者たちにナミが復讐する、レイプリベンジムービーでもあるという、色々な要素を全部乗っけたようなカオスな作品なのです。

その背景に有るのは、学生運動末期、反体制という時代の空気。
本作ではナミという主人公を通してそこを描いていて、「野良猫ロック」などで梶芽衣子自身が持つキャラクターとも相まって、若者を中心に異例の大ヒットになるのです。

その辺は日の丸のアップに君が代のBGMから、ナミが収監されている刑務所の所長が表彰されるシーンへ続く映画冒頭や、クライマックスで宙を舞ったナミのナイフが日の丸と重なるなど、非常に分かりやすいアイコンが映画随所に散りばめられていることからも明白で、つまり、理不尽に女性を虐げる男社会を描いている物語に、権力者に搾取される若者たちの反抗を重ね合わせているわけですね。

アバンギャルドな映像と演出

そんな本作で特徴的なのは、ナミの回想シーンなどで使われるアバンギャルドな映像演出。

ナミが何故、刑務所に収監され脱獄しようとしているのかを回想するシーンでは、まるで舞台演劇のような演出で見せたり、ラブシーンを真上から撮ったり、レイプシーンを真下から(透明なガラスの下から?)撮ったり。
また、クライマックスでナミのターゲットが殺されるシーンでは、必ずターゲットの顔に緑のライトが当てられるなどなど、鈴木清順っぽい演出になってるんですよね。

この辺の(マンガや前衛舞台的な)当時流行のカルチャーが取り入れることで物語を抽象化し、普遍性が強調されたからこそ今観ても色褪せない作品になっているんだと思うし、この時、この時代じゃないと作れない作品だからこそ、未だにカルト的人気を誇る伝説的な作品になったんだろうと思いましたねー。

あと、女囚の皆さんがみんなイイ顔の人ばかりだし演出も演技も映像も全てが過剰で、こんな刑務所や刑務官がいるか!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ とツッコミを入れながら楽しめる楽しい作品でもあるので、機会があれば是非見て欲しい一本でしたよ。

興味のある方は是非!!!

 

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