ぷらすです。
今回ご紹介するのは、スイス・フランス合作のストップモーションアニメ『ぼくの名前はズッキーニ』ですよー!
ストップモーションアニメという手法から、ついつい観る前は子供向けの寓話的なファンタジーだろうと思いこんでいたんですが、実際に観たらとんでもない。
痛々しいくらいにリアルで美しい物語でしたねー!
画像出典元URL:http://eiga.com
概要
第89回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネートをはじめ、世界中で旋風を巻き起こしたストップモーションアニメ。母親に先立たれて施設に入れられた主人公が、仲間たちと信頼関係を築いていく様子を映し出す。これまで短編アニメを手掛けてきたクロード・バラスが監督を担当。長い時間を費やして丁寧に制作されたアナログな人形たちによるアニメに注目。(シネマトゥデイより引用)
感想
原作について
本作の原作は、フランスの作家ジル・パリスによる2002年の同名小説。
日本では2004年にポプラ社から『奇跡の子』として邦訳版が刊行され、その後、2018年、映画公開に合わせて新装改訂版『ぼくの名前はズッキーニ』としてDU BOOKSから刊行されたそうです。(恥ずかしながら僕は未読)
本作は2007年のフランスの実写テレビ映画『C'est mieux la vie quand on est grand』に次く2度目の原作小説の映像化作品なんですね。
大人向けに書かれた(らしい)の原作はそれなりに長い作品らしいんですが、本作では原作から物語の肝となるエピソードを抜き出して、かなりコンパクトにまとめているようです。
また、子供でも観られるようにキャラクターを整理し、エピソードの細部も改変し、ラストでは原作の後日談とも言えるオリジナルシーンを付け足しているのだそうです。
ざっくりストーリー紹介
僕は今回ほぼ事前情報なしで本作を観たんですが、上記したように観る前はストップモーションアニメということもあり、また人形の造形のデフォルメ具合から「子供向けのファンタジーだけど、大人も楽しめる寓話的な映画なのだろう」と思ってたんですね。
しかし、それはとんでもない勘違いなのだと開始5分で気づきましたよ。
本作の主人公で9歳の少年“ズッキーニ”は、父親が若い女と浮気して出て行って以来、アル中でネグレクト(&家庭内暴力も?)な母親と二人暮らし。
画像出典元URL:http://eiga.com / 主人公のズッキーニ
ズッキーニは父親から貰った凧や、母親が飲んだビールの空き缶でいつものように遊んでいたんですが、“ある事故”で母親は死亡。ズッキーニは様々な事情で親に捨てられたり、引き離された子供たちと共に孤児院「フォンテーヌ園」で暮らすことになる――というストーリー。
ズッキーニ(Courgette)は、元々「のろま」や「石頭」を意味するCourge(コルジェ)という言葉から派生したそうで、本国では人を馬鹿にした蔑称として使われているのだとか。
主人公の本名はイカールですが、しかし彼は母親がつけた“ズッキーニ(Courgette)”というニックネームにこだわります。
日本人の僕らには分かりにくいですが、このニックネームの件一発でゴチャゴチャ説明しなくても、この親子の関係が分かる仕組みになっているんですね。
本作はそういう細かいディテールが満載で、かつ小道具を使った演出や映像的な情報量も多く、たった65分の作品ですが、かなり見ごたえがある作りになっているのです。
また、子供たちや役者陣に、声だけではなく実際に演技をさせて動きをトレースする「ロトスコープ」技法も使っているそうで、だからなのか、こんな頭でっかちの人形なのに、凄く実在感があるというかリアルな動きや表情をしていて、実写以上に実写を観てる感じがするし、キャラクターへの感情移入度がハンパないんですよねー。
多分、これを実写で撮ったら、普通にいい話で終わってたんじゃないかな。
登場キャラクター
そんな本作ではズッキーニ以外にも魅力的なキャラクターが登場します。
孤児院のボス、シモンは両親が麻薬中毒でフォンテーヌ園に保護されます。
画像出典元URL:http://eiga.com / 本当は心優しいシモン(左)
最初いじめっ子的な感じで登場しますが、実は心優しい少年で、ズッキーニとケンカして親友になります。
カミーユはズッキーニの後にフォンテーヌ園にやってきた女の子。
画像出典元URL:http://eiga.com / ズッキーニが恋するカミーユ(右)
少し大人びたハスキー声の彼女にズッキーニは恋をしてしまうんですね。
両親は母親の浮気が原因で刃傷沙汰となり両親が死亡。
補助金目当てで彼女を引き取ろうとする叔母に抵抗します。
アメッドは、父親がナイキ欲しさに強盗で刑務所に入れられたのでフォンテーヌ園に保護された少年。
純粋で、少し天然の彼は(本人の意思に反して)場の雰囲気を盛り上げるムードメーカーです。父親を捕まえた警察官全般を憎んでいます。
画像出典元URL:http://eiga.com / アメッド(左)ジュジュブ(右)
ジュジュブの母親は精神病に掛かって入院。彼は園に保護されます。
歯磨き粉も食べちゃうくらい食いしん坊で神経質。大親友のアメッドとはいつも一緒にいます。
ベアトリスの母親はアフリカ系の不法移民で、彼女が学校に行ってる間に強制退去させられました。
園に車が来るたびに母親かと飛び出してくるのがお約束。
とても優しい女の子です。
画像出典元URL:http://eiga.com / ベアトリス(一番右)とアリス(右から2番目)
アリスは実の父親から性的暴行を受けて園に保護された女の子。
髪の毛で顔を隠して、ほとんどしゃべらない彼女でしたが、カミーユとの出会いでゆっくりと心を開いていきます。
「フォンテーヌ園」にやってきた子供は、みんな勝手な大人のせいで心に傷を負っていますが、寂しさを抱えながらもみんな健気でしなやかな強さを持っているのです。
そして、そんな重たい背景を持ち傷ついている子供たちを優しく見守る園長や職員と心優しい警察官レイモン。
子供たちを傷つけるのも大人ですが、子供たちを守るのもまた、大人なんですよね。
原作者のパリスは、取材のため孤児院で1年間働き、バラス監督も孤児院の子供たちと3週間共同生活したそうです。
だからこそ、劇中の子供たちに寄り添うような優しい目線で物語が描かれているのかもしれませんね。
傷を負い孤独を抱えた子供たちが、孤児院というコミュニティーの中で寄り添うように互いの居場所を作り、笑い合ったり励まし合ったりしながら成長していく姿や、里親に引き取られることになった仲間の背中を押してあげる描写には、おじさん不覚にも号泣でしたよ!・゜・(ノД`)・゜・
昨年、今年は、人形を使ったストップモーションアニメの当たり年でしたが、本作はそれらの作品とはまた一味違った、傑作になっていると思いましたねー!
興味のある方は是非!!!
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