今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

フィギュアスケート版ウルフ・オブ・ウォールストリート!「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、リレハンメル五輪の選考会での「ナンシー・ケリガン襲撃事件」のを軸に、2度の冬季五輪にも出場したトーニャ・ハーディングのスキャンダラスな半生を描いた伝記映画『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』ですよー!

バカとクズの連鎖によって、事態が最悪な方向に転がっていく様子を疾走感たっぷりに描きつつ、格差や貧困、大衆やフィギュアスケートのシステムにまで言及した超面白い映画でした。

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概要

第75回ゴールデン・グローブ賞作品賞(コメディー/ミュージカル)にノミネートされたほか、さまざまな映画賞で評価された伝記ドラマ。五輪代表に選ばれながら、ライバル選手への襲撃事件などのスキャンダルを起こしたフィギュアスケータートーニャ・ハーディングの軌跡を映す。監督は『ラースと、その彼女』などのクレイグ・ギレスピー。『スーサイド・スクワッド』などのマーゴット・ロビー、『キャプテン・アメリカ』シリーズのセバスチャン・スタンらが出演。(シネマトゥデイより引用)

感想

先に個人的なことを書くと、僕はフィギュアスケート(というかスポーツ全般)に殆ど興味がなく、件の「ナンシー・ケリガンを襲撃事件」についてもテレビで見て「へー」と思った程度なんですね。

なので、この映画も最初はまったく興味がなかったんですが、「スーサイド・スクワッド」のハーレイクイン役で世間の注目を浴びたマーゴット・ロビーが主演(制作にも名を連ねている)だしネット上での評価もすこぶる高い。だったら一応観てみるかとレンタルしたら、これが超面白かったのです!

“事実”ではなく“真実”を描いた作品

本作は、主人公トーニャ・ハーディングを始め、母親やコーチ、夫、夫の友人やマスコミなど、「ナンシー・ケリガン襲撃事件」に関わりのある人間のインタビューパートとドラマパートを交互に見せていく構成なんですが、誰か一人の証言からドラマを作っていくのではなく、それぞれの証言の食い違いも、そのままドラマにして見せるんですね。

例えば、トーニャと旦那ジェフ(セバスチャン・スタン)の夫婦ゲンカでは、ジェフに殴られたトーニャがショットガンを撃ちながら(ジェフ視点)、カメラに向かって「そんな事するわけないじゃない」(トーニャ視点)と言ったりするわけです。

それが、コメディー演出として機能しながら、“事実”をあぶり出すのではなく、それぞれの語る“真実”からトーニャの半生を立体的に描いていくわけです。

こういう構成は、黒澤明の「羅生門」から名前を取って「羅生門スタイル」と呼ぶんだそうですね。

 母と娘

そんなトーニャ・ハーディングの人生は、母ラヴォナとの歴史でもあります。
まぁ、アリソン・ジャネイ演じるラヴォナってのが、いわゆる毒親でしてね。

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スケートリンクでタバコは吸う、トーニャの演技を全否定する、母子喧嘩では投げたナイフがトーニャに命中、その辺のオッサンに金を渡してトーニャを野次らせるなどなど。

ただ、これもラヴォナに言わせれば、娘の才能を見出し、ウェートレスで得た少ない収入でトーニャにコーチをつけてスケートを習わせ、衣装を手縫いしてやって、娘の性格上、怒りがパワーになる事を知ってたから否定し続けた。となるわけです。

しかし、トーニャにしてみれば、親から得られなかった愛情を埋めるために夫ジェフとの交際、結婚するんですが、このジェフがDV夫のクズなんですよね。(親から虐待された子供は暴力を振るうパートナーを選びがちな傾向にあるんだとか)

で、このジェフの友達ショーンってやつがいるんですが、この男、いわゆる自宅警備員で、誇大妄想狂っていうか、自分をプロの諜報員だと言い張る超イタイやつ。

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そして、トーニャとショーンとの出会いが、後の「ナンシー・ケリガン襲撃事件」へと発展していくわけです。

まぁ、この事件の顛末に至っては、あまりにバカすぎて出来の悪いコントみたいですが、その後の、トーニャにとっての悲劇的な結末を見るととても笑えないっていう。

そうした背景には、アメリカの格差問題やフィギュアスケートという競技のシステムもあり、本作はトーニャの半生を通して、その背後に横たわる“歪み”も炙り出しているんですね。

フィギュアスケート版「ウルフ・オブ・ウォールストリート

この映画、映画評論家の町山智浩さんは小林勇貴監督の全員死刑に似ていると言っているし、ライムスターの宇多丸師匠はグッドフェローズと同じスタイルだと言っているんですが、僕はこの映画を観て『ウルフ・オブ・ウォールストリート』みたいって思いましたねー。(マーゴット・ロビーも出演してるし)

いわゆるホワイトトラッシュ(貧乏白人)の家に生まれたトーニャが、世間の偏見と戦いながら、アメリカ人初のトリプルアクセルを成功させたことで一気にスターダムに上り詰めるも、「ナンシー・ケリガン襲撃事件」であっという間に叩き落とされる。

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そんな彼女を悲劇のヒロインとして祭り上げるのではなく、「不屈の闘志を持つ女性」として良いところも悪いところも(制作者がジャッジせずに)そのまま描く姿勢っていうか。

その上で、エンターテイメントとして、疾走感たっぷりに2時間の物語として描ききったところが痛快だし素晴らしいと思いました!

興味のある方は是非!!

 

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尻・股間・尻・股間・乳首! 「バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲 」(1997)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、前回ご紹介した「バットマン フォーエヴァー」の続編となる『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』ですよー!

前回あれほど悪し様に罵っておいて、何故観たのかと言われてしまいそうですが、だって2本一緒にレンタルちゃったんだもの! 

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概要

好調「バットマン」シリーズ4作目の敵は、ゴッサム・シティを氷の王国に変えるという野望を抱く“Mr.フリーズ”。彼はもともとノーベル賞に輝くほどの高名な分子生物学者だったが、研究所の爆発事故で凍結液を浴び、身も心も氷のように冷酷になってしまったのだ。演じるのは、悪役は「ターミネーター」以来なんと13年ぶりのアーノルド・シュワルツェネッガー!(allcinema ONLINEより引用)

感想

前作「~フォーエヴァー」の大ヒットで制作された本作ですが見事に大コケ。第18回ゴールデンラズベリー賞では9部門ノミネート(内一部門受賞)という不名誉な記録を残し、企画していた続編の話も白紙に…と、映画版バットマン黒歴史として名を残しているんですね。

ただ、ちょっと待って欲しい。

本作の興業不信は本作だけの問題でなくて、ティム・バートン監督の「バットマン リターンズ」を観たファンが期待して観に来た→「~フォーエヴァー」大ヒット→しかし多くの観客が失望し離れる→残ったファンは「でも、シュワちゃんが出るし…」と一縷の望みをかける→「ふざけんなー!ヽ(`Д´)ノ」大・失・敗。っていう流れなんじゃないかと思うんですね。

個人的な感想としては、この映画はむしろ、前作「~フォーエヴァー」に比べれば幾分マシになってると思いました。

乳首問題

本作は、ゴードンから「Mr.フリーズが宝石店を襲ってる」と連絡が入ったブルースが、バットマンに変身して出動するシーンからスタート。

前回、「なぜ尻のアップ!?」と書いたんですけど、もう今回はオープニングからいきなり、尻、股間、尻、股間、乳首のアップ……ん? ちょっと待て……って…
乳首ーーー!!

バットマンスーツに乳首付いとるがな!

実は気づいてなかったんですが、前作でもバットマンスーツに乳首がついてたらしいんですよね。
ただ、作品後半では乳首なしのスーツになってて観客がホッとしたのも束の間、乳首はロビンのスーツに移動してたそうです。

そして本作では、開き直ったように冒頭からバットマンスーツに乳首が復活

が、後半のスーツ変更で再び乳首が消たと思ったら、ロビンとバットガール(アルフレッドの姪っ子)のスーツに乳首がついて……って、どんだけ乳首好っきゃねん!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

そんな感じで、本作では前作以上に、メガホンを取ったジョエル・シュマッカーの趣味が大爆発していましたねーww

本作も豪華キャストの無駄遣い

さらに、前作に引き続き、本作でも豪華キャストが登場。

まず、バットマン/ブルース・ウェインが前作のヴァル・キルマーからジョージ・クルーニーに変更。
いや、う、うーん…、まぁヴァル・キルマーに比べれば幾分マシ?…かなぁ?

で、本作のヴィランは、なんでも凍らしちゃう冷凍人間 Mr.フリーズ&自然保護過激派の植物人間 ポイズン・アイビー&「ダークナイト ライジング」でバットマンを苦しめたベインの三人。

まぁ、本作でのベインはポイズン・アイビーの家来で、知能はほぼゼロなんですが、

Mr.フリーズを演じるのはみんな大好きアーノルド・シュワルツェネッガー
ポイズン・アイビーは、「キル・ビル」のユマ・サーマンがそれぞれ演じていますよ。

バットガールは、「聖なる鹿殺し」でお母さんを演じたアリシア・シルヴァーストーン、ロビンとアルフレッドは、前作に引き続きクリス・オドネルマイケル・ガフが演じています。

ヴィランに全く中身がなかった前作とは違い、本作のMr.フリーズは難病の妻を救うため冷凍保存しようとするも失敗。自分が冷凍人間になってしまったという設定。
悪事を働くのも、妻の治療費を稼ぐためというバックグランドがあるんですね。

その辺はさすがに大スターのシュワちゃんに気を使ったのかな?

ユマ・サーマン演じるポイズン・アイビーは、前作で言えばジム・キャリー演じるリドラー的ポジションなんですが、一応、人間の環境破壊によって植物が絶滅するのを防ごうという研究をしている化学者で、その思想が強すぎて人間を全滅させるという過激思想になったという背景があるんですよね。

ただ、やっぱり前作のニコール・キッドマンと同じく、扱いが酷いなーって思いました。何故かジョエル・シュマッカー監督が描く女性はみんな下品で安い女っぽくなるんですよね。ナンデカナー?(棒

家族の物語

本作のテーマは「家族」です。
長いあいだアルフレッド以外に心を許せる人間がいなかったバットマン/ブルース・ウェインが、不器用ながらロビンや、バットガールと擬似家族のような関係を築いていく様子がメインで描かれていて、映画だけ観てる人はこの展開に違和感があるかもですが、原作コミックやアニメではお馴染みのストーリーなんですよね。

で、そこに焦点をあてて、Mr.フリーズと奥さんとの家族愛を絡めているところは、評価出来るかなって思ったりします。

まぁ、そうは言っても前作同様、脚本は無茶苦茶だし、映画としても出来は悪いんですけどね。

興味のある方は是非!

 

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観てなかったバットマンを観てみたが「バットマン フォーエヴァー」(1995)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ティム・バートン監督の「バットマン」(89)「バットマン リターンズ」(92)からスタッフ・キャストが一新され、それまでの方向性を大きく変えた『バットマン フォーエバー』ですよー!

先日TSUTAYAに行ったとき、「そういえば公開時に観てなかったっけ」とレンタルしてきたんですが、…うん。劇場で観なくてホント良かったって思いましたねー。

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概要

スタッフ・キャスト、それにデザインをも一新してのNEWバットマン。トゥー・フェイス&リドラーの強敵に、待望久しいロビンが登場するというにぎやか編で、前2作のダークなイメージをうまく陽性に転化している。(allcinema ONLINEより引用)

感想

僕にとって実写版「バットマン」はティム・バートン版がスタートです。
なので、第3作となる本作から監督が交代すると聞いて、「だったら観なくてもいいか」と、本作と 「バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲」はずっとスルーしてたんですね。

その後、2005年からスタートしたクリストファー・ノーラン版のダークナイト3部作で、バットマン=ダークヒーローのイメージが決定づけられるわけです。(ティム・バートン版ではまだバットマンのキャラがそれほど浸透してなかった)

ノーラン版については、言いたいことがないわけではないけど、とはいえ、ティム・バートン版、ノーラン版はどちらも「(バットマンも含む)キャラクターの狂気」を描く描いているし、特にティム・バートン2作目の「バットマン リターンズ」はティム・バートンの持ち味が活かされた傑作だと思うんですが……。

この、ジョエル・シュマッカー版の2作は、ティム・バートンのダーク路線からファミリー路線にシフトチェンジ。

概要でもあるように、陽性なバットマンになってるわけです。

って、陽性なバットマンってなんだよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

豪華キャストの無駄遣い

そして、本作からはキャストも一新。
マイケル・キートンに変わりバットマンを演じるのは、「トップガン」でアイスマン、「ドアーズ」で主役のジム・モリスンを演じたヴァル・キルマー

いや、確かにマイケル・キートンバットマンも「それはどうかなー? 」って思いましたよ。だってビートルジュースだもん。

それに比べたら、ヴァル・キルマーは確かにニ枚目だし背も高い。
だけど、なんかこう……うっっっっっすいんですよ。

如何にもエエとこのボンボンって感じの風貌。いや、実際ブルース・ウェインはエエとこのボンですけどね。でも、幼少期に目の前で両親を殺されたことで心に深い闇と狂気を持ってしまうっていう、かなり屈折したキャラクターなんですよ。

で、本作ではしっかりその描写もあるんですが、肝心のヴァル・キルマーからは一切、狂気を感じないわけです。

一目惚れした精神科医ニコール・キッドマンに「毎晩悪夢を見るんだ」なんてメソメソ相談したりしやがって。

まぁ、それも、多分ファミリー向けに希釈したバットマン/ブルース・ウェイン像ってことなんでしょうけども。

じゃぁ、狂気の部分は誰が背負ってるかというと、当然、本作のヴィラんであるトゥーフェイスリドラーです。
どちらも、バットマンの敵役として人気のキャラ。(トゥーフェイスは「ダークナイト」でも登場しますよね)

本作で、トゥーフェイスを演じるのは缶コーヒーのボスの宣伝でもお馴染みトミー・リー・ジョーンズリドラーは「マスク」のジム・キャリーです。

二人共言わずと知れたハリウッドのビックネーム。

な・ん・で・す・が!この二人、肝心のバットマンそっちのけでずぅぅぅぅぅっとコントを繰り広げてます

トゥーフェイスは、部下を率いて強盗しまくるただの輩だし、リドラーはブルースの会社の社員時代からずっとイっちゃってるアレなやつだし。

で、ただただ、二人共「ギャハハハ」「ウヒヒヒヒ」と笑いながら暴れているだけで、何の中身もないんですよね。

っていうか、リドラーの作り出した装置の理屈が全くわかりません。

そんな二人の(誰が見ても一瞬で見抜けるような策略に)ブルースとアルフレッド(マイケル・ガフ)はまんまと引っかかり、バットケイブバットモービルを破壊されるわ、ニコール・キッドマンを誘拐されるわ。

いや、お前ら間抜けすぎだろ。っていうか、ブルースに至っては自分から正体バラシにいってるしね!

事のついでに言うと、ブルースとラブラブしてるニコール・キッドマンも、全然精神科医に見えなくて、なんか安いコルガールみたいでしたよ。
これはもう、完全に脚本と撮り方の問題で、特に撮り方には悪意さえ感じました

唯一、まともなのは、バットマンの相棒であるロビン(クリス・オドネル)くらい。……いや、そうでもないか?

で、まぁ色々あってリドラーにバットケイブを破壊されたブルース、ニコール・キッドマンを助けるためにバットスーツに着替えていざ出陣! となるわけですが、この時、バットマンの尻がアップになるという謎演には思わず笑ってしまいましたねーw
なぜ尻w(いや、ホントはちゃんと分かってますよ?)

事ほど左様に、超豪華キャスト&大予算にも関わらず、隅から隅まで酷い出来で、特にアクションシーンは目も当てられない有様

観終わったあと、「色々文句言ってゴメンねノーラン。これに比べたらバットマンビギンズ』ダークナイトライジング』も超いい映画だったよ…」と反省することしきりでしたねー。

まぁ、ダークナイト三部作を観たあとで、友達と集まってツッコミを入れながら観るには丁度いい映画なんじゃないでしょうか。

興味のある方は是非。

 

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あの高倉健がテロリスト役!? 日本発本格パニックサスペンス「新幹線大爆破」(1975)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは1975年の東映映画『新幹線大爆破』ですよー!
高倉健が、新幹線に爆弾を仕掛けるテロリスト役を演じた本格パニックサスペンス映画です。

この作品は初見なんですが、最後までずっとハラハラしっぱなしでとても面白い映画でしたねー!

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概要

新幹線の乗客を人質にとった爆弾脅迫事件が発生した。爆弾は走行中の新幹線に仕掛けられており、列車の速度が時速80キロ以下になると爆発するという。巧みなポイント切り替えによって、新幹線は速度を維持したまま南下していく。だが、その終点は間近に迫りつつあった……。『スピード』という洋画が大ヒットしたことがあったが、それを20年ほど前に先取りした作品。(allcinema ONLINE より引用)

感想

「スピード」の元ネタ?

本作の内容をざっくり紹介すると「新幹線が時速80km以下にスピードを落とすと爆発する爆弾を仕掛けられたため止まれなくなる」というパニック映画です。
キアヌ・リーブス主演の「スピード」(1994)の元ネタと言われている本作ですが、映画評論家の町山智浩さんによれば、スピードの元ネタは「暴走機関車」で黒澤明の書いたオリジナル脚本らしく、実は本作の設定も同じくこのシナリオをが元ネタになっているのではないかと言われているようです。

また、同じく黒澤監督の「天国と地獄」(63)やスタンリー・キューブリック監督の「現金に体を張れ 」(56)の影響もあるのではないかとのことでした。

元々は、新幹線が出来た当時、緊急の場合は自動的に停車するシステムが売りだった新幹線。「じゃぁ、そんな新幹線が、もし止まれなくなったら」という発想から本作は作られたのだそうです。

“あの”高倉健がテロリスト役!?

で、新幹線に爆弾を仕掛けて身代金を要求する犯人グループの主犯を演じるのが、当時任侠シリーズなどで大スターだった高倉健です。
彼が演じるのは、不況で倒産した精密機械工場の元経営者・沖田哲男。
そんな彼が、左翼過激派崩れの古賀勝(山本圭)、バイク事故で仕事を失い沖田に拾われた大城浩(織田あきら)と3人で、新幹線に件の爆弾を仕掛け、乗客1500人を人質に政府に500万ドルを要求するわけです。

当時の新幹線は東京・博多間までの路線しかなく、その限られた時間の中で犯人グループを逮捕しようとする警察、爆弾を解除し乗客1500人の命を守ろうとする国鉄、500万ドルを手に入れようとする沖田たちという、三つ巴のドラマが展開していくのが本作の見所なんですね。

また町山さんによれば、沖田の経営する工場が潰れた背景には、当時、経費の安い外国に仕事を奪われた零細工場が潰れていったという背景があるのだそうで、真面目で面倒見の良かった沖田はそのせいで妻子とも別れ、工場も失い、古賀は革命を夢見て学生運動で戦ったものの結局は夢破れ、大城は一度は沖田に救われたものの会社が潰れ、日雇いで働いていた大企業の工事現場の事故で大怪我を負ったにも関わらず、治療費を値切られ。

そんな負け犬三人が、完全犯罪を成し遂げることで日本に復讐しようとする。というのが犯行の動機なんですね。

パニック映画というより、サスペンス映画として素晴らしい

本作の見所は、新幹線に仕掛けられた爆弾を乗務員や乗客が発見し解除する――ではなく、主に、犯人グループと警察の攻防だったりします。

イタズラではないことを示すため、夕張の貨物車に同じ爆弾を仕掛ける古賀、新幹線の清掃係のバイトに入って爆弾を仕掛ける大城、逆探知を避けるため移動を繰り返しながら公衆電話で警察と交渉する沖田。

序盤は、警察の必死の捜査を嘲笑うように、周到に用意した計画通りに事を進めていく三人ですが、受け子役の大城がアクシデントから死亡したことで、徐々に三人の計画が狂っていくんですね。

この序盤から中盤にかけての展開は、ずっとハラハラしっぱなしだったし、同時に沖田たちの計画が綺麗にハマっていくケイパーもの的な気持ちよさもあり、どんどん物語に引き込まれていくんですよ。

まぁ、警察があまりにも間抜けすぎるという弱点はあって、少ない情報から手がかりを掴んでいくという展開も、ツッコミどころは多いんです。

ただ、その合間に宇津井健演じる倉持運転指令室長と、新幹線運転手の千葉真一との緊迫したやり取りや、タイムトライアル的なサスペンスが入ってくるので、途中で緊張感が途切れることがないんですよね。

そういう意味ではパニックものとしてというより、サスペンスものとしてとても良く出来ている映画だし、日本でもこんな映画が作れたんだなーと感動してしまいましたねー。

まぁ、ラストの方はいくらなんでも(サスペンス展開を)盛り込みすぎではないかと思わなくもないですけども。

日本よりも海外での評価が高い作品

この作品、予算が5億3000万円というから、当時としてはかなりの超大作なんですが、公開当時、日本では思ったほど当たらなかったのだとか。

というのも、映画史研究家の春日太一さんによれば、まず東映自体の人気が落ち込んでいたことと、製作期間が短く十分な宣伝が打てなかったことで、本作公開があまり周知されていなかったというのが大きな理由らしいです。

逆に、アメリカやフランスなど海外の方が本作の評価は高かったらしいんですね。
確かに言われてみれば、この作品はどこか、邦画というより洋画の香りがある気がしますし、海外版では三人が犯行に至る背景のシーンをばっさりカットして、アメリカでは110分、フランスでは100分に短縮されているらしいんですね。

この映画の弱点は、やはり約2時間30分と長いことで、特に三人の背景を語るシーンは本筋にはほぼ関係ないし、浪花節的というかエモいというか、言いたいことやりたいことは分かるけど、やっぱどうしても冗長だと思うんですね。

個人的にはむしろ、その部分を削った海外バージョンがあるなら、そっちを観てみたいなーと思ったりしました。

豪華キャストの無駄遣い

あと、本作は無駄にキャストが豪華だったりします。
予告を見ると、千葉真一、多岐川裕美、志穂美悦子北大路欣也丹波哲郎志村喬などなど、そうそうたる名前が並んでるんですが、こうしたキャストの殆どはカメオ出演的なチョイ役で、役者の無駄遣いにも程があるなーとw

しかも、予告のシーンは殆ど本編には登場しなくって、何故かと言うと本作が完成したのが公開の三日前で、予告は役者たちが別の映画で出演してるシーンを切り張りしてるからなんですよね。

予告編だけ観ると、いかにも千葉真一が猛スピードで走る新幹線を舞台にアクションを繰り広げそうな感じなんですが、本編ではずっと運転席で座ってるっていうねw

今風に言うなら予告編詐欺ってやつですが、この当時の映画ではよくある事だったようです。

ともあれ、やっぱり高倉健の存在感は大きくて、彼が登場するだけで画面がピリっと引き締まる感じ。やっぱ健さんはカッコイイです!

確かにツッコミどころも多いけど、(当時の熱量も含め)今の邦画では中々観られない面白い映画でしたねー!

興味のある方は是非!!!

 

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“イタイ”JKの一年間を追った青春映画「レディ・バード」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ゴールデングローブ賞で作品賞&主演女優賞受賞。アカデミー賞5部門にノミネートされた『レディ・バード』ですよー!

「フランシス・ハ」「20センチュリー・ウーマン」で女優を務めたグレタ・ガーウィグが脚本・監督を務めた半自伝的青春映画です!

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『フランシス・ハ』『20センチュリー・ウーマン』などの女優グレタ・ガーウィグが、自伝的要素を取り入れながら監督・脚本を手掛けた青春ドラマ。カリフォルニアの片田舎で生活している女子高校生が、さまざまなことに悩みながら成長していく姿を映す。『ブルックリン』などのシアーシャ・ローナン、ドラマシリーズ「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」などのローリー・メトカーフ、『アンダーカバー』などのトレイシー・レッツ、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』などのルーカス・ヘッジズらが出演。(シネマトゥディより引用)

感想

本作をザックリ一言で言うなら、「故郷の良さは離れてみないと分からない」系映画です。
別に大きな事件は起こらず、淡々と、でも丁寧に主人公“レディ・バード”の心情に寄り添っていく作品なんですね。

僕はこれは「これは男には書けない物語だなー」と思いましたねー。

本作は少女と大人の女性の間を行き来して、そんな自分を持て余している高校生女子の不安定さをリアルに描いてるんですよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 此処ではない何処かへ行きたいと思っているレディ・バード

ザックリストーリー紹介

2002年、サクラメントに住む女子高生のクリスティン(シアーシャ・ローナン)は、友達・家族・学校の先生にまで「私のことはレディ・バードって呼んで」とか言っちゃう、ちょっとイタイ17歳。

進学を巡って看護師の母親マリオン(ローリー・メトカーフ)と衝突したり、シスターにイタズラしたり(彼女はカトリック系の学校に通っている)、演劇を始めたり、初恋したり失恋したり、友達を傷つけたり、仲直りしたり。

そんな彼女が、18歳で高校を卒業するまでの一年間を描く。

というストーリー。

監督・脚本のグレタ・ガーウィグサクラメント出身で、この物語は彼女の半自伝的なストーリーになっているのだそうです。

確かに、メイキングのインタビューなんかを観ると、グレタ・ガーウィグの立ち居振る舞いは、主人公のクリスティンによく似てるんですよねー。

母親との確執

レディ・バードと母親は似たもの親子で、互いに自己主張が強くいので衝突するんですね。

映画冒頭、一緒に大学見学からの帰りの車中で最初は仲良く話していたのに、進学の話でレディ・バードがNYの大学に行くと言い出した途端言い争いになり、イキナリ走行中の車から飛び降りて腕を折ってしまうんですよね。
レディ・バード、エキセントリックすぎるだろw

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画像出典元URL:http://eiga.com / 仲がいいかと思ったら秒速でケンカを始める似たもの親子

彼女の家は、サクラメントでもどちらかといえば低所得者層でして、多分中の下くらい。兄で養子のミゲルはバークレイ大学に行ったのに、自分はサクラメントの大学に自宅から通えと言われるのが不満なレディ・バード

しかし、テロや不景気もあってミゲルは立派な大学に行ったのに、卒業後も仕事がなく、スーパーのレジ係をやっていること。また経済的にも地元の大学に家から通わせたい母親(というかずっと手元に置いておきたいというのが本音?)。

これで、レディ・バードが成績優秀なら母親も考えるかもですが、なんせ彼女は別に成績は良くないし、特に数学は壊滅的なんですよねーw

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画像出典元URL:http://eiga.com / スクールカーストで言えば中の下くらいにいるレディ・バードと親友のジュリー。

それでシッカリ勉強してるならまだしも、彼女は親友のジュリー(ビーニー・フェルドスタイン)と学校で聖餅をスナック感覚でボリボリ食べながらオ「私はバスタブで」「私はシャワーヘッドよ」なんて下話をするわ、テスト中カンニングするわ、シスターの車にイタズラするわ、停学になるわ、親友を裏切ってヒエラルキー上位の女の子と友達を始めるわ。

その度に母親と大ケンカになるんですよねw

ここではない何処かに

サクラメントはカリフォルニアの州都ではあるものの、ぶっちゃけ退屈な田舎町。
おまけに、兄が通う公立校で暴力事件が起こったので、彼女は両親が無理してカトリック系の私立高校に通わせていて、なので同級生はみんなお金持ちだったりすんですよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / レディ・バードが憧れる家に住んでいる初恋の彼。しかし彼にはある秘密が…

そのコンプレックスも手伝って、レディ・バード“ここではない何処か”にさえ行けば、全てが変わるハズ。って思い込んでるわけです。

まぁ、彼女くらいの年頃には多かれ少なかれそういう気持ちになったりするのは、僕も経験があるし気持ちは分からなくもないんですが、年齢的にもどちらかといえばご両親の方に感情移入してしまいましてね。

レディ・バードの身勝手な行動にイラっとしてしまうシーンもいくつかあったりしましたねーw

その分、ラストシーンには思わずグッときてしまったんですけどね。
彼女にとって、サクラメントは母親とイコールなのです。

女性ならではの視点

そんな、ある意味で自身の分身ともい言うべき主人公レディ・バードの心情を、監督のグレタ・ガーウィグは淡々と、でも寄り添うように繊細にフィルムに焼き付けていきます。

劇中のレディ・バードの言動は、大人から見ると身勝手で奔放で危なっかしくて、でも愛おしい。
逆に、同世代の女の子ならレディ・バードの気持ちにがっつりリンクしてしまうんじゃないかと。それって、やはり女性監督ならではの作劇なのだと思いました。

なので、多分この映画はどちらかといえば男性よりも女性の方が、ずっと深く刺さるだろうし共感できるのではないかと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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ディズニー復活の先鞭をつけた作品「ボルト」(2008)

ぷらすです。

今回ご紹介するのはディズニー3Dアニメ『ボルト』ですよー!
ナルトの息子じゃなくて、ワンコの方ね。
僕は「塔の上のラプンツェル」以前のディズニー映画って殆ど観てなくて、本作も何となく見逃してたんですが、先日TSUTAYAでDVD探してる時にふと目に入ったのでレンタルしてみましたよ。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

大人気のテレビショーで活躍中のスター犬、ボルトが迷子になり、アメリカ横断の大冒険を繰り広げるアニメ。『ムーラン』の原案者クリス・ウィリアムズと『チキン・リトル』のアニメーター、バイロン・ハワードがタッグを組んでいる。主人公ボルトの声を担当するのは『ヘアスプレー』のジョン・トラヴォルタ。ボルトとテレビショーで共演する人間の女の子の声をマイリー・サイラスが務めている。お騒がせ犬ボルトら、登場する愛嬌(あいきょう)たっぷりなキャラクターたちに注目だ。(シネマトゥディより引用)

感想

ジョン・ラセター体制のディズニー初作品

ご存知、世界初の3DCG長編アニメ「トイ・ストーリー」の監督でピクサーのドンだったジョン・ラセター
ディズニーに入社したものの「CGアニメを作りたい」と言ったらクビになり、ジョージ・ルーカスのILMに入るも、彼の部署がスティーブ・ジョブズに売却されピクサーに改名。

そこで上手いことジョブズをだまs…ゲフンゲフン、乗せて制作した「トイ・ストーリー」が大ヒットして以降、次々とヒット作を量産すると、会社がディズニーに買収されてラセターは両スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)に就任し、瀕死のディズニーを立て直したんですね。

(まぁ、その後色々あったけどそこは割愛して)その第一弾となったのが本作「ボルト」だったわけです。

ざっくりストーリー紹介

科学者でペニーの父親に改造されたボルトは、ペニーと共に悪の化学者ドクター・キャリコに誘拐された父親を救い出すべく、悪の組織と戦い続けているスーパードッグ。

しかし、それはTVドラマで、ディレクターは迫真の演技を引き出すため、ボルトに自分が本物のスーパードッグだと思い込ませていたのだった。

そんなある日、ダンボールに紛れ込んでしまったボルトは、誰にも気づかれないままニューヨークに送られてしまうのだった。

というストーリー。

そしてボルトはペニーのいるハリウッドに戻るため、ニューヨークで出会った野良猫のミトンズ、キャンプ場で出会ったハムスターのライノと共に、長い冒険をするわけですねー。

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最初は正直ナメてたんですが、実際に観たら凄くいい映画でしたよ!

キャスト

まず、何が驚いたかって主人公ボルトの声を演じているのが、あのジョン・トラボルタだったってこと。
僕の中のトラボルタは「パルプ・フィクション」や「パニッシャー」「フェイス/オフ」のイメージなので、この子犬の声がトラボルタだと知ってビックリでしたよ!

そんなボルトの飼い主で相棒のペニーを演じるのは、アメリカで大人気の歌手マイリー・サイラスで、EDテーマはこの二人が歌ってたんですねー。

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ちなみに吹き替え版では、ボルトが佐々木蔵之介、ペニーは白石 涼子が演じ、野良猫のミトンズは江角マキコ(原語版ではスージーエスマン)、ハムスターのライノはキャイーン天野ひろゆき(原語版ではディズニーのストーリーボードアーティスト、マーク・ウォルトン)がそれぞれ演じています。

字幕版、吹き替え版のどちらもいい感じでしたが、キャラクターの声は吹き替え版の方が合ってたかもですねー。(ライノは原語版の方が好きだけど)

ヒーロー映画

先日の「タクシー運転手」でも、ヒーローがヒーローたりうる理由は、強さではなくヒーローであろうとする精神性と書きましたが、そういう意味で本作は間違いなくヒーロー映画でした。
映画のSFXだと気づかす、ニューヨークでも自分はスーパードッグだと思い込んでいるボルトですが、当然のことながら強靭な肉体も、目からビームも、必殺技のスーパーボイスも使えず、映画中盤で自分が本当はただの無力な犬だったことを知ってしまうボルト。

そんな彼をヒーローだと信じて疑わないライノと、普通の犬の振る舞いや楽しみをレクチャーしつつ、一緒に旅を続けるミトンズに励まされボルトは真実を受け入れて成長し、クライマックスでボルトは真のヒーローになるという熱いストーリーなのです。

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途中、ある事情からミトンズとボルトが喧嘩別れをしたとき、ミトンズを動かすライノのセリフには、思わずグッときてしまいましたよー!

冒頭のマイケル・ベイ映画を彷彿とさせるアクションシーンが、そのままクライマックスへの伏線になってるのも、上手いなーと思いましたねー。

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まさにストーリー第一主義のラセターが指揮した作品って感じでした。

2008年の作品なので、今見るとCGはまだ発展途上って感じだし、ディズニー作品としては地味目というかイマイチ評価低めな感じの作品ですが、この作品があったから後のベイマックスズートピアといった名作を生み出す現在のディズニーに繋がっていったんじゃないかと思いますねー!

興味のある方は是非!!!

 

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ファンタジーでホラーでミュージカル?「ゆれる人魚」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ポーランド発、アンデルセンの「人魚姫」をアレンジした異色ホラー『ゆれる人魚』ですよー!

基本「人魚姫」に沿ったベーシックなストーリーなんですが、キッチュでグロテスクな絵面とか、80年代東欧の耳馴染みのない音楽、物語をぶつ切りにするような編集が相まって「俺は今、何を観せられているんだ」という気持ちになる映画でしたねー。

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画像出典元UL:http://eiga.com

概要

ポーランドアグニェシュカ・スモチンスカ監督がメガホンを取り、アンデルセンの「人魚姫」をアレンジした異色ホラー。共産主義時代のポーランドを舞台に、海から上がった肉食人魚姉妹が成長する過程をパワフルに映し出す。『アンナと過ごした4日間』『ソハの地下水道』などのキンガ・プレイスや、『愛の原罪』などのヤクブ・ギェルシャウ、テレビドラマなどで活躍するマルタ・マズレクらが共演。(シネマトゥディより引用)

感想

人魚姫+セイレーン

本作のストーリーをざっくり紹介すると、
共産主義下にあった1980年代のポーランド
人魚の仲良し姉妹、ゴールデン(以降、金さん)、シルバー(以降、銀さん)が興味本位で陸にあがり、ダンスとストリップが売りのナイトクラブに出演。

一夜で人気者になるも、妹の銀さんがバンド仲間の色男ミェテクに恋したことで、姉妹仲が悪くなっていき…。という物語。

本作に登場する人魚、金さん銀さんの造形は下半身の魚部分はくすんだ色でニョロニョロしてるし、主食は人間のオスだったり、あと、その歌声で人間の男を惑わせる能力があるっぽいので、「人魚姫」というよりも歌声で誘惑して船を難破させ、船乗りを食べるセイレーンをベースにしている感じで結構グロめ。

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画像出典元UL:http://eiga.com  / 向かって左が金さん、右が銀さん

あと、二人は尾びれを人間の足に変化させられるという設定(水を掛けると元に戻る)なんですが、元々は尻尾なので、性器がなくて「バービー人形」みたいにツルツルだったりします。(ちなみに人魚姿の時は尻尾に性器というか排卵口?があるのが説明される)

最初、ボカシが掛かってるのかと思いながら観てたら、セリフで「バービー人形みたい~」ってあって「あぁ、そういう事なのね」って思いましたよ。

え、ミュージカル?

元々、アグニェシュカ・スモチンスカ監督は、ポーランドのインディ音楽シーンで有名なヴロンスキ姉妹(本作で音楽を担当)の伝記映画を考えていたそうですが、脚本家のアイディアで人魚の物語になったんだそう。

なので、劇中、監督が子供の頃に聴いていた80年代のテクノっぽい東欧音楽満載。
っていうか、この映画ミュージカルなのです。

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画像出典元UL:http://eiga.com

冒頭、海辺で歌っているバンドメンバーの3人につられるように、金さん銀さんも歌に入ってくるんですが、その歌詞が「私たちはあなたたちを食べたりしない~。だから怖がらないで~」みたいな感じだったり。

以降も重要なシーンや、二人の心情は歌で語られていくんですが、曲調は80年代の電子音バリバリの東欧ポップス(?)

www.youtube.com  劇中で歌われる「You Were The Beat Of My Heart 」


独特で耳馴染みのないメロディーラインと「リザとキツネと恋する死者たち」を思い出すキッチュな背景美術、ストーリーの流れをぶつ切りにするような編集も相まって、アート映画っぽいというか「俺は今、何を観せられているんだ…」っていう不安定な気持ちにさせられるんですよね。
多分、監督は意図的にやってるんだと思いますが。

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画像出典元UL:http://eiga.com

そんな感じで、出だしは上々だった二人ですが、姉の金さんがナンパした男を食べてしまったことと、妹の銀さんが二枚目ベーシストのミェテクに恋したことで、事態は悲劇へと傾いていくんですねー。

ミェテクに告白すると、やんわり「魚類と恋とか無理」と断られた銀さんは、人間になる事を決意。「尻尾を失うと声が出なくなる」という金さんの忠告も無視して人間になるんですが、その方法が魔術師の婆さん人魚の薬とかじゃなく闇医者の外科手術。尻尾の代わりに人間の下半身を移植するというもの。

っていうか、移植なんて可愛いもんじゃなくて、電ノコで真っ二つにされて人間の下半身を乱暴に縫い付けられるっていう、中々のゴアシーンがミュージカル調に繰り広げられます。 一体何を観せられてんだホントw

で、めでたく人間になった銀さんとミェテクは初Hに望むわけですが、つなぎ目からドボドボ出血してる銀さんにミェテクはドン引き。他の女の子と結婚するんですねー。

そんな彼をやさしげな瞳で見つめる銀さんに「海の泡になるから、夜明けまでにミェテクを食べろ」と言う金さん。そして銀さんは――。って感じ。

少女から女性になる物語

まぁ、言うまでもなく金さん銀さんは、思春期の少女のメタファーでして。
要は一人の女性を、少女のままでいたい金さんと、愛を知って大人の女性になる事を選んだ銀さんという二人のキャラに分けて描くことで、思春期のゆれる乙女心を表現してるわけです。

「人魚姫」の物語は大抵の人が知っているだろうし、物語自体はシンプルなので観ていて混乱するような事はなく、あとはアグニェシュカ・スモチンスカ監督の描き方や世界観が好きか嫌いかで、この映画の評価は別れるんじゃないかと思いましたねー。

興味のある方は是非!

 

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