今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

ヒーロー映画でファミリー“の”映画「シャザム!」(2019)

ぷらすです。

観てきましたよー!
DC映画最新作『シャザム!』を!

吹き替え監修を、「勇者ヨシヒコ」シリーズや「変態仮面」の福田 雄一監督が担当したことで本編より場外の方が話題になってしまった本作。

僕は字幕で観たんですが(映画館が字幕オンリーだったから)、1月公開の「アクアマン」と共に、今後アメコミ映画の勢力図を変えるかもしれない作品だと思いましたねー!

というわけで、今回は公開したばかりの作品なので出来るだけネタバレしないよう注意して書きますが、これから本作を観る予定の人やネタバレは絶対に嫌! という人は先に映画を観てから、この感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

少年が最強のヒーローに変身し騒動を巻き起こすコメディー。DCコミックスの異色ヒーロー、シャザムをドラマシリーズ「CHUCK/チャック」などのザカリー・リーヴァイが演じるほか、『キングスマン』シリーズなどのマーク・ストロング、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』などのジャック・ディラン・グレイザーらが出演。『アナベル 死霊人形の誕生』などのデヴィッド・F・サンドバーグがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

「シャザム!」ってどんなヒーロー?

「シャザム!」はざっくり言うと、魔法の力で戦うスーパーヒーローです。
といっても、マーベルの「ドクター・ストレンジ」的な感じではなくて、長年人知れず世界を守っていた魔術師シャザムが高齢化。
14歳の少年ビリーに跡目を次ぐ事になり、「シャザム!」と叫ぶと大人でマッチョなスーパーヒーローに変身するわけです。

要は「魔女っ子」の男子版みたいな感じですかね。

で、シャザムはその綴り(S.H.A.Z.A.M.)がそれぞれ神の頭文字になっていて、変身すると

Solomon(ソロモン)の叡智
Hercules(ハーキュリーズ)の剛力
Atlas(アトラース)の体力
Zeus(ゼウス)の全能
Achilles(アキレス)の勇気
Mercury(マーキュリー)の神速

の力を得るんですね。

初代キャプテンマーベル

すでにアチコチのサイトで書かれてますが、「シャザム」は元々「キャプテン・マーベル」という名前のヒーローでした。

デビューはDCでもマーベルでもなく、フォーセットコミックスという会社から出版された『ウィズ・コミックス』第2号。

少年がスーパーヒーローに変身するという設定がウケて大ヒットし、一時はスーパーマンを凌ぐ人気に。
これに焦ったDCコミックは「スーパーマンのパクリやんけー」と告訴して、すったもんだの末にフォーセットコミックスはコミック出版から撤退し、宙に浮いた「キャプテン・マーベル」の権利をDCコミックが買い取ります。

しかし、その頃すでにマーベル・コミックが「キャプテン・マーベル」という名前の(別の)ヒーローのコミックを出版していたので、DCコミックはビリーに力を与えた魔術師の名前を取って「シャザム」に改名したんですね。

その後、色々あってDCヒーローの世界感を全面リニューアルした「NEW52」以降の原作コミックを元に、本作が作られたのです。

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ざっくりストーリー紹介

孤児のビリー・バットソン(アッシャー・エンジェル)は、ビクター(クーパー・アンドリュース)とローザ( マルタ・ミランズ)夫婦が運営するグループホーム(孤児院)に引き取られることになります。

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画像出典元URL:http://eiga.com  / ビリー(左)とフレディ(右)の初対面

そこには、
足に障害を持つビリーと同い年のフレディ(ジャック・ディラン・グレイザー)
大学進学に悩むメアリー(グレイス・フルトン)
ゲーマーでハッカーのアジア系少年ユージー(イアン・チェン)
無口な少年ペドロ(ジョバン・アルマンド
人懐っこくてハグ癖のある黒人少女のダーラ(フェイス・ハーマン )

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画像出典元URL:http://eiga.com / 一番年下のダーラ。人懐っこくて可愛い

が暮らしていますが、ビリーはグループホームに中々馴染めないんですね。

そんなある日、学校でいじめっ子に暴行されるフレディを助けたビリーが地下鉄から降りると、そこは不思議な洞窟。

そこには白髪白ひげの老魔術師シャザムジャイモン・フンスー)が待っていて、杖を握り自分の名を呼べと迫ってくるのです。
仕方なく「シャザム?」とその名を呼ぶと、ビリーは筋肉モリモリのスーパーヒーロー“シャザム”(ザッカリー・リーヴァイ)に変身して――というストーリー。

最初はヒーローオタクのフレディと一緒に、何が出来るのかを試したり、大人な見た目を利用してビールを買って飲んでみたり、ストリップバーに潜入したり、ついでに強盗をやっつけたりと、大人ライフを満喫するビリーでしたが、そこに現れたのがシャザムのパワーを我が物にしようと狙うDr.サデウス・シヴァナマーク・ストロング)。

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画像出典元URL:http://eiga.com / Dr・シヴァナ役は「キングスマン」のマーク・ストロング

グループホームの仲間たちを誘拐されたビリーは、シヴァナと戦う事を決意するわけですねー。

第1作としては満点の出来

本作で僕が関心したのは、ストーリーの中でシャザムというヒーローの特徴や弱点を全て説明仕切っているところでした。
シャザムは他のDCヒーローとは少し違う特徴やルールを持っているんですが、それをフレディーとのイタズラやDr・シヴァナとの戦いといったストーリーの中で説明臭さを感じさせることなく、ヒーロー映画を観たことがない人でも楽しみながら分かるように描いているんですね。

また、初めからあまり風呂敷を広げずに物語のテーマを“家族”に絞ってコンパクトにまとめているので観やすく、紹介編となる第1作としては満点の出来だったんじゃないかと思いしたねー。

同じく今年公開された「アクアマン」は「ジャスティスリーグ」で既にお披露目が済んでいるので海中を舞台にド派手なバトルを楽しめましたが、本作はそれとは方向性が真逆というか、印象としてはMCUの「アントマン」に近いと思いました。

擬似家族もの

本作は、単に地球を守るためスーパーヒーローが悪者を倒すことではなく、14歳の孤児、ビリー少年が同じような環境の仲間たちと家族になるまでの物語です。

幼くして親と離れた彼は、ずっと心を閉ざし一人ぼっちだったわけですが、グループホームと新たな家族と出会い、協力し合ううちに心を開き「居場所」を得るという“擬似家族もの”で、これは近年、世界中の映画で描かれるようになったテーマですね。(日本で言えば「万引き家族」とか)

彼らはいわば、自分のせいではないのに世間の枠組みから外されてしまった、はみ出し者たちで、心に同じ傷を抱えた彼らが、自分たちも孤児だった夫婦に引き取られ家族になるという“ファミリーの映画”なのです。

それを、これまでのDC映画のように暗く重苦しく描くのではなく、大人の容姿とスーパーパワーを手に入れたビリーが、中学生男子ならみんな憧れるアレコレや、悪者と戦うというヒーロー願望を、カラッと明るく叶えてくれるんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / スーパーパワーを悪用してコーラ飲み放題

さらに、DCコミックや原作のファンならニヤリとする目配せもしっかり盛り込んでいるのも上手いなーと思いました。

吹き替え版騒動

そんなこんなで、本作の公開をファンは楽しみにしていたわけですが、そこに降って沸いたのが、吹き替え監修を福田 雄一監督が担当し、シャザムの声を菅田将暉が当てるというニュース。

これに長年DC映画を応援してきたファンはざわつき、また福田監督がよせばいいのに「銀魂」と本作を混同するような余計なコメントを言ったことでちょっとした炎上状態になってしまったんですよね。

まぁ、ただでさえ日本では当たらないアメコミ映画(しかも無名のヒーロー)で、一週間後には「アベンジャーズ/エンドゲーム」公開を控えているという危機的状況に、日本の宣伝部の人たちが何とか一般客を巻き込みたい気持ちはよく分かるし、「変態仮面」を観るかぎり福田監督がはヒーローモノのツボは分かってる人だと思うので、個人的にはそこまで心配してないんですけどね。

実際、観てきた人の感想を読むと「目くじらを立てるほどではない」という意見が目立ちますし。(映画序盤で菅田将暉の声に違和感を感じる人は多かったみたいですが)

僕もオタク畑の人間なのでファン側の気持ちは痛いほど分かるけど、観る前からあーだこーだとヒステリックに騒ぐのもどうかと思うし、嫌な気分になりたくない人は最初から字幕版を観ればいいだけの話ですしねー。

正直な気持ちとしては、映画の内容より場外乱闘の方が話題になってる現状はちょっと残念だし、字幕でも吹き替えでもいいから一日も早く観に行ってくれよ。面白いから!

って思いました。

興味のある方は是非!!

 

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本当の子供向け映画ってこういうことだ!「グーニーズ」(1985)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、みんな大好き『グーニーズ』ですよー!

この映画の公開当時、僕はもう17~8歳だったので厳密にはドンピシャ世代ではないし、観たハズなんですが内容の方もうろ覚え。

なので今回レンタルして久しぶりに観たんですが、「これは子供の頃に観てたら生涯ベストに入る映画だなー」って思いましたねー。

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概要

開発せまる港町を舞台に、海賊の財宝を捜して悪ガキ集団“グーニーズ”が繰り広げる冒険を描く。地下に広がる大洞窟でのアクションがみどころ。スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮。主題歌はシンディ・ローパー。(allcinema ONLINEより引用)

感想

制作総指揮スピルバーグ、監督リチャードドナー、脚本クリス・コロンバス

本作で制作総指揮を務めたのは、当時押しも押されぬヒットメーカーだったスティーブン・スピルバーグで、監督を務めたのは1978年公開の「スーパーマン」を世界的大ヒットに導いたリチャード・ドナー

さらに脚本は、本作の前年に公開された「グレムリン」1990年公開の「ホーム・アローン」と立て続けに大ヒットを飛ばすクリス・コロンバスという正に鉄壁の布陣

そんな彼らが挑んだのは、悪ガキ集団「グーニーズ」が海賊の遺した宝探しをするというジュブナイル映画だったんですねー。

ちなみに翌年には、4人の少年たちが“死体探し”の冒険に出る「スタンド・バイ・ミー」が公開され大ヒット。両作とも今やジュブナイル映画の古典として映画史に名を残しているんですよね。

もちろん両作に直接的な繋がりはないしテイストも違うんですけど、当時子役のコリー・フェルドマンが出演している、作品の舞台はオレゴン州という共通点があり、また両作とも「子供から大人に成長するための通過儀礼を描いているんですよね。

ざっくりストーリー紹介

海賊の伝説が残る海辺の田舎町グーンドックに住む、喘息持ちの少年マイキーショーン・アスティン)と、食いしん坊でホラ吹きでおっちょこちょいのチャンク(ジェフ・コーエン)。
口が達者でお調子者のマウスコリー・フェルドマン)と、ヘンテコな発明ばかりしている中国系のデータキー・ホイ・クァン)の4人は、グーニーズ(まぬけな連中とグーンドックの町の名をひっかけた造語)と呼ばれるワルガキ集団。

マイキーの家はグーンドック一帯のゴルフ場開発を目論む資産家から多額の借金をしていて、翌日までに返済できなければ土地を明け渡さなければいけないんですね。

そんな中、マイキーたちは屋根裏部屋で伝説の大海賊「片目のウィリー」が遺した宝の地図を発見。

家を守るため、連れ戻しに来た兄のブランドジョシュ・ブローリン)、チアリーダーでブランドの恋人アンディ( ケリー・グリーン)、成り行きで同行するステフ(マーサ・プリンプトン)も巻き込み、宝探しの冒険に出ます。

ところが、地図に記された宝のありかに建つレストランは、ギャング家族のフラッテリー一家(母親と三人の息子)のアジトになっていて……という物語。

グーニーズのメンバーは、フラッテリー一家に追われながら「片目のウィリー」の宝を探すためレストラン地下にある“仕掛けだらけ”の洞窟を探検するのです。

完全な子供視点

洞窟には、泥棒撃退のための様々なブービートラップが仕掛けられてします。
洞窟・お宝・トラップと言えば、インディー・ジョーンズ第一作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」を連想する人も多いかもですが、本作はまさに「子供版レイダース」で、つまりは子供たちの大好物だけを集めた“子供向け”の映画なんですね。

なので、本作は常に子供たちの視点に設定されていて、大人からの視点(説教臭さや物語のつじつま合わせ)は全て排除されています。

ブルーレイ特典映像を観ると、恐らくクリス・コロンバスの脚本段階ではもっと物語の筋道が立っていて、子供たちが抱える悩みやコンプレックスを吐露するようなシーンが入っていたと思われるし、実際に撮影もしてた形跡があるんですが、監督のリチャード・ドナーが編集段階でそういった“大人を納得させる要素”を片っ端からぶった切っていったんだと思うんですよね。

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その分、子役たちのノリやテンション、自然な表情のシーンを最大限、例えば子役が間違えて役名ではなく本名で呼んでしまうようなNGカットすら全て活かして、映画を構築しているのです。

そういう意味で本作は劇映画でありながらドキュメンタリー的でもあって、演出でも(先の展開が分からないように)子役たちにはその日の撮影分の台本しか渡さず、クライマックスの海賊船のセットは本番まで黒幕で隠し、ぶっつけ本番でシーンを撮影。初めて海賊船を見た彼らがマジで驚いている表情を捉えているんですね。(ただし、マウス役のコリー・フェルドマンは「事前にセットを見ていた」と、オーディオコメンタリーで告白してたけどw)

そんなドナー、子役たちに演出する時も「目を大きく開けろ」「大きな声で」「カメラは友達」くらいしか言わず、あとは彼らから出てくるアンサンブルによるグルーブ感を大事にしていたんだとか。

中盤では、グーニーズがウォータースライダーを滑り降りるシーンがありますが、夜に子役たちが帰ったあと、リチャード・ドナー自らウォータースライダーを滑って遊んでいた事もオーディオコメンタリーで告白していて、結果、なんやかんやでドナーが一番楽しんでいたんじゃないかっていうw

そんなドナーに居ても立ってもいられず、制作のスピルバーグも自ら2シーンを撮影したらしいですよ。

つまり、(もちろん意図的ではあるんだろうけど)監督のドナーとスピルバーグが、子供たちと同じ視線に立って作ったことで、本作は(当時)世界中の子供たちが熱狂する映画になったんですねー。

ただ楽しいだけではなく、例えば、薄暗い洞窟で遭遇するトラップや骸骨、コウモリ、死体。チャンクがフラッテリー一家に捕まり「ミキサーに手を突っ込む」と脅されるシーン、スロースなどなど、子供向けの映画としては今なら躊躇してしまうようなシーンもちゃんと描いていて、決して子供向けに“漂白された”世界観ではなく、怖さもスリルもロマンスも全てが本作には入ってますからね。

お子様カレーではなく、辛さこそ控えめだけど大人用のルーを使ったスパイシーカレーみたいな感じって言えば伝わりやすいですかね?

子供は幼いけどバカではないので両者の違いはすぐに見抜くし、逆に大人が自分たちのために本気で作ってくれた映画はずっと忘れないのです

通過儀礼の物語

本作でマイキーは、資本家に家を奪われそうになっていて引越しせざるを得ないという大人の世界=理不尽に直面します。

そして偶然、宝の地図(理不尽に対抗しうる手段)を手に入れた彼は、仲間と一緒に立ち向かう事を決意。数々の試練を乗り越えることで理不尽に打ち勝ちます。

それは彼らがこれからも子供時代を続けられるヤッター! ということではなく、仲間と共に資産家、フラッテリー一家、片目のウィリーのトラップと対決し乗り越えることで成長し、大人への階段を登るということなんですね。

家は追い出されないで済んだし、仲間とも一緒にいられる。けれど今までの子供の自分とは違う。

本作で描かれているのは、マイキーたちが子供でいられた“最後の一日”の物語で、彼らが乗り越える困難の数々は、子供が大人への階段を登るための通過儀礼なのです。

そういう意味では、最高に楽しくてハッピーな映画だけど、ちょっぴり切ない物語でもあるんですよね。

その成長はマイキーだけでなく一緒に冒険した仲間たちも同様で、例えばお兄ちゃんのブランドは年上だけど免許の試験=通過儀礼に一度は失敗。けれど、グーニーズとの冒険で通過儀礼をクリアしたわけです。

チャンクは、食いしん坊でホラ吹きでおっちょこちょいで、はみ出し者揃いのグーニーズの中でも一番のみそっかす扱いですが、同じくフラッテリー一家のみそっかすであるスロースと一緒に仲間のピンチを救うことで成長します。

ラスト、見た目が化物のように醜いスロースに、警察が向けた銃口の前にチャンクが立ちはだかって彼を守り「一緒に暮らそう。大好きだよ」って言うんですよ!!

チャンクウゥゥゥ!!・゜・(ノД`)・゜・

ちなみに、フラッテリー一家はボスであるお母さんと一緒に悪事を働いてきた。いわば親離れ出来ていない子供で、グーニーズとは鏡合わせの存在として描かれますが、スロースだけはクライマックスで母親と対決=成長するんですよね。

ルックは完全にお子様映画だし、ある意味で作劇的にはバランスが崩れている(あえてそうしている)ので、当時の評論家たちからは低く見られていた本作ですが、ちゃんと描くべきところは描いているし、世界中の子供たちは本作のそうした肝の部分はちゃんと感じ取っていて、だからあれだけの大ヒットに繋がったんだと僕は思うし、今観ても全然色褪せない最高の映画でした!

興味のある方は是非!!!

 

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世界を熱狂せたあのバンド“最後”のワールドツアー!「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは米ミュージシャンのライ・クーダーキューバの老ミュージシャンが共同で制作し1997年に出した同名アルバムをキッカケに、1999年に制作したドキュメンタリー映画ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」から18年後の続編となる『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』ですよー!

実は、日本では2000年に公開された前作を僕はリアルタイムで観ていて、アルバムも買っているんですよね。
なので、今回は久しぶりにアルバムを引っ張り出して聴きながら感想を書いていきますよー!

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作品概要

キューバのベテランミュージシャンを中心に結成されたバンドにスポットを当てた『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の続編。ステージ活動の終わりを決めた彼らが敢行したワールドツアーの模様が映し出される。前作で監督を務めたヴィム・ヴェンダースが製作総指揮を務め、『ヴィック・ムニーズ ごみアートの奇跡』などのルーシー・ウォーカーが監督を務める。(シネマトゥディより引用)

感想

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」とは

前作は米ミュージシャンでギタリストのライ・クーダーキューバに旅行に行った折、地元の老ミュージシャンとセッションしたのをキッカケに共同でアルバムを制作することに。
レコーディングから米国でのライブ、そしてバンドメンバーたちの背景を交えながら、バンドによるクライマックスでのカーネギーホールライブまでを追ったドキュメンタリー映画です。

CD・映画のタイトルにもなった「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は元々、1950年代にあった黒人専用クラブの名前。
当時は黒人差別が強く、音楽を楽しむクラブも分けられていたそうです。

元はスペインの植民地だったキューバは、西洋音楽ラテン音楽、奴隷として入植した黒人たちの音楽やリズムの要素が加わり、キューバの伝統的な音楽「ソン」が誕生。
1950年代に隆盛を極めますが、その後時代の移り変わりとともに衰退していきます。

しかし、ライ・クーダーが老ミュージシャンたちと制作したアルバム、映画と合わせてアルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」が大ヒットとなり、一躍人気ミュージシャンになった彼らはワールドツアーを成功させるのです。

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それから18年、メンバーの約半数を失った「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は、若いメンバーを加えて「アディオス・ツアー」と銘打って、最後の世界ツアーを敢行。

そんなツアーと合わせて、この18年に彼らの身に起こったこと、高齢によりなくなったメンバーたちの最後の姿、前作では描かれていなかったキューバの成り立ちと歴史、黒人差別問題やキューバ音楽の歴史など、前作では描かれなかった(もしくは描かれても舌っ足らずだった)アレコレを、膨大なインタビューや記録映像を交えてより立体的に描いたのが本作「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」なのです。

続編にして完全版

そんな訳で、本作は一応「続編」という形になってますが、個人的には前作で足りなかった要素を付け加えた「完全版」というイメージの方が強かったです。

前作では、メインボーカルだったイブライム・フェレールを中心に据えたバンドメンバーの人となりや演奏、撮影当時のキューバの日常風景などで構成されていたんですが、本作ではその後のワールドツアーで各国のファンに熱狂的に迎えられた彼らの様子や、渡航ビザが降りずにグラミー賞に出席できなかったこと、オバマ大統領に招かれたホワイトハウスでのライブ風景、亡くなったメンバーの最後のライブ風景やお葬式の様子などなど。

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映画公開からの18年間の彼らの様子や言葉を余すところなく伝えてくれているんですね。

クラシカルで新しく、都会的だけど土着的な音楽

前作が公開された時、彼らの音楽を聞いた僕は驚き痺れました。
元々僕は、その国や土地の風土や文化から生まれた土着的な音楽が好きで、特にラテン系の音楽が大好きなのです。

彼らの音楽「ソン」はキューバ起源のラテン音楽
サルサの原型になった音楽と言われ、マンボやチャチャチャも基本的にはソンを土台に作られたらしいんですね。
クラシカルだけど新しく、洗練された都会的な音楽のようで何処か土着的な匂いがあり、また、(当時)上は90代~若くても60代後半という超高齢バンドながら、楽器の腕前や伸びやかな歌声は年齢を感じさせません。

それでいてその歌声には彼ら自身の積み重ねた歴史が乗っていて、歌詞の意味は分からないけど何故か響くんですよね。
とても、寄せ集めのバンドとは思えないくらい息もピッタリです。(既に引退したり、第一線を退いた“忘れられた”ミュージシャンがほとんど)

映画では、歌詞の一部に字幕がついているんですが、素朴な農民の歌であり、労働階級の歌であり、また黒人差別の歌であり、日本で言えば民謡に近い感じでしょうか。

メンバーのその後

メインボーカルのイブライム・フェレールは幼くして両親を亡くし、歌手として才能に恵まれながらもメインボーカルにはなれず、またジャズなどの台頭でソンが衰退していくことに絶望し、音楽を辞めて靴磨きをしながら暮らしていたのをブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブに呼ばれ60代後半になって突然、世界的な大スターになったんですよね。

そんな彼も2005年に亡くなり、他にも最長老でピアノのルベーン・ゴンサーレスなど、オリジナルメインのメンバーの半分以上が亡くなっているのです。

まぁ、みんな前作の時点でお爺ちゃんだったし、それから約20年経ってるんだからそりゃそうだろうって話ではありますが、「アディオス・ツアー」の中に彼らの姿が無いと、やっぱり寂しいと思っちゃうんですよね。

まぁ、ずっと忘れてたくせに我ながら勝手なもんだと思いますけども。

本作では、前作で描かれなかったカーネギーホールライブ以降の彼らの姿や、最晩年の様子なども映っていて、(日本も含めた)世界中をツアーし熱狂的に迎えられて楽しそうに演奏し歌う彼らの姿は、観ていて「(この人たちが報われて)本当に良かった」と思うし、その一方で「ノリノリで聴いてるけど、彼ら(観客)は、この歌詞の意味が分かってるんだろうか」というイブライムの声にドキっとしてしまったり。

「人は人を殺すことはできても音楽は殺せない」という女性ボーカルのオマーラ・ポルトゥオンドの言葉には、激動のキューバを生き抜いてきた彼女の強い信念を感じずにはいられませんでした。

そしてそれは多分、キューバ人としての彼女の矜持でもあるんでしょう。

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ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の音楽が政治的に対立していた米国とキューバを直接的に繋いだというような事はもちろんありませんが、彼らの紡いだ音楽が両国だけでなく、国境を超えて多くの人々に届き、(政治とは別に)各国の人々の距離をほんの少し近づけたのは間違いなく、つまりはそれが文化なんだと、本作を観て思いましたねー。

もちろん、本作だけ観ても面白いと思いますけど、出来れば前作と合わせて観た方が、より楽しめるのではないかと思います。

興味のある方は是非!!

 

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タワーリング・インフェルノxダイ・ハード「スカイスクレイパー」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ロック様ことドウェイン・ジョンソン主演のアクション映画『スカイスクレイパー』ですよー!

今や、ジェイソン・ステイサムとともに、ハリウッドアクション映画界の二大巨頭となったロック様の新作は「タワーリング・インフェルノ」x「ダイ・ハード」でしたねー!

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概要

カリフォルニア・ダウン』などのドウェイン・ジョンソン主演のアクション。超高層ビルから家族を助け出そうとする男の姿が描かれる。監督は『セントラル・インテリジェンス』でドウェインと組んだローソン・マーシャル・サーバー。『スクリーム』シリーズなどのネーヴ・キャンベル、『13時間 ベンガジの秘密の兵士』のパブロ・シュレイバーらが共演。ドウェインが体を張ったアクションを見せる。(シネマトゥデイより引用)

感想

ざっくりストーリー紹介

海兵隊員のロック様は、ある任務中の事故で片足を亡くし義足での生活に。
現在は元同僚の紹介で家族とともに香港に移り住み、高さ約1,000メートルを誇る250階建ての超高層ビル、ザ・パールのセキュリティーを担当していた。

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そんなある日、ロック様は罠にハメられセキュリティー管理用のタブレットを奪われ、潜入したテロ組織がザ・パールに放火。火の海と化した超高層ビルには、彼の妻と二人の子供が取り残されていた。

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ロック様、家族を救うため、燃え盛るザ・パールに飛び込んでいく。

というストーリー。

火事で炎に包まれる超高層ビルの消火と脱出という70年代の名作パニック映画タワーリング・インフェルノと、テロ組織を相手に孤軍奮闘するというブルース・ウィリス主演のダイ・ハードという二つの大ヒット作品を何の臆面もなく合体させ、さらに香港が舞台ということで燃えよドラゴン要素まで付け加えるあたり、さすがはレジェンダリー作品だなーと思いましたねーw

しかも主演は今や、ジェイソン・ステイサムと共にハリウッドアクション映画を引っ張るロック様ことドウェイン・ジョンソンという鉄壁の布陣ですよ!

今回のロック様は一味違う

ドウェイン・ジョンソンと言えば、レスキュー隊員の仕事そっちのけでヘリに乗って家族を救いに行き、12mのゴリラとタッグを組んで怪獣化したワニと狼をやっつけ、氷上で潜水艦と対決し、テレビゲームの中でサバイブする。まさにマッチョなアメリカンヒーローを体現する男。

ぶっちゃけ強さのイメージがインフレし過ぎて、彼がどんなピンチに陥っても「まぁ、ロック様だし」と観客も安心して観てしまうんですよね。
でも、本作のロック様はこれまでの役とは一味違って、ずっと必死でジタバタとカッコよくない“お父さん”なんですよ。

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いや、やってることはいつものロック様なんですけど、本作では義足というガジェットと、(クライマックスまで)銃器を使用せずに、“そこにある物”とアイデアでピンチを凌ぐという制約をつけることで、(いつものロック様が100%だとしたら)70%くらいにデチューンしてるんですね。

それによって、やってることはいつも通りのロック様だけど、ギリギリ感や必死感が伝わってくるし、ロック様だけじゃなく家族で協力して難局を乗り切るという作劇も相まって観ているコッチも応援したくなる作りになっているのです。

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義足

本作のロック様は、過去の事件で片足が義足になっている設定。
それは、作中ロック様の(動きの)ハンデにもなるんですが、一方で義足を“道具”として使うことでピンチを切り抜けたり、義足ならではのサスペンス描写を生んだり。
単純に義足をハンデとしてだけではなく、時にはロック様を助ける相棒的役割としても描かれています。

ちなみに特典映像を見ると、パラリンピックの選手がアドバイザーとして義足をつけての動き(歩き方や走り方のフォームなど)を指導していて、それが絵的な説得力に繋がっているんですね。

やってる事はトンデモアクション映画ですが、専門家にアドバイスを乞うて一定のリアリティーと説得力を担保する姿勢は好感が持てました。

キャスト

テロリストの標的となった世界一の高層ビル「ザ・パール」のオーナー、ジャオを演じるのはシンガポールの俳優チン・ハン。
この人、良くも悪くも“何かを企んでる顔”で、なので最初はテロリスト側と通じてるんだと思いながら観てたんですよね。
最初のビル施設紹介のシーンで、「燃えよドラゴン」のクライマックス、鏡の間を想起させるハイテクルームが登場するので、「ははーん、さてはこの男がラスボスで、ロック様とこの部屋で最終決戦をするんだな」って。

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それにしても、どこかで見たことあるなーって思ったら、この人「ダークナイト」の作中、香港でバットマンに捕まるラウ役も演じてたんですね。

中国資本のレジェンダリー制作ということで他にも中国系の俳優が多数出演。
それ以外の俳優も含め、ぶっちゃけロック様以外あまり有名な俳優が出てないので、(多分、制作側は意図してないと思いますが)結果的に先入観がない分、作劇上の意図がダイレクトに伝わるというプラス面もあったり。

とはいえ、作劇としても映画としても大味で、それが結果としてプラスに働いている部分はあるけど、全体的にはポップコーンムービーの域は出ていないと思いました。

それはつまり、少なくとも観ている間は楽しいアトラクション映画ってことでもあって、そういう意味で本作は正しいと思うし、僕は面白かったですよー。

興味のある方は是非!!

 

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時代劇なのに銃撃戦!? 時代劇は自由なのだ!「子連れ狼 地獄へ行くぞ!大五郎」(1974)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、若山富三郎主演の劇場版「子連れ狼シリーズ」第6弾、『子連れ狼 地獄へ行くぞ!大五郎』ですよー!
ラジオやネット番組で、時代劇評論家の春日太一さんが度々紹介していて、あまりに気になったのでAmazonプライムビデオで観ました!

漫画が原作でもあり、子供の頃に観たテレビ版もかなり自由な時代劇だとは思ってましたが、この若山御大の劇場版はそれどころじゃなかったですねー!www

あまりに自由すぎて爆笑してしまいましたよ!!

ちなみに今回は45年も前の古い作品ですし、本作の面白さを余すところなくご紹介したいので、ネタバレ&ツッコミ全開で感想を書いていこうと思います。
なので、ネタバレは嫌! っていう人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

子連れ狼”シリーズ第六作目。柳生一族の陰謀のために妻を殺され、怨念の旅を続け、冥府魔道に生きる拝一刀、大五郎親子を描く。脚本は「子連れ狼 冥府魔道」の中村努、監督は「海兵四号生徒」の黒田義之、撮影は「御用牙 鬼の半蔵やわ肌小判」の牧浦地志がそれぞれ担当。(映画.comより引用)

感想

子連れ狼とは

一応知らない人のために説明すると、「子連れ狼」は1970年から1976年まで漫画アクションで連載された小池一夫原作・小島剛夕作画の劇画作品。

柳生一族の陰謀で妻を失い、遺された息子・大五郎と共にさすらいの旅に出る元・公儀介錯人拝一刀と、彼らの命を狙う柳生一族との死闘を描いたハードボイルドな作品で、1973年から1976年にかけて萬屋錦之介主演でテレビドラマ化されたことで、社会現象とも言える大ヒットになりました。

ただ、実はテレビドラマよりも一年早い1972年に、勝新のお兄さん、若山富三郎主演で映画化されてたんですね。
こちらも大人気で、2年間にわたって全6作が作られていて、本作はその最終作なのです。

ざっくりストーリー解説&ツッコミ

vs香織編

柳生の陰謀により公儀介錯人の座を追われ、刺客として復讐の旅を続ける拝 一刀若山富三郎)と息子の大五郎(富川晶宏)。
二人の命を狙い、これまで三人の息子を刺客として差し向けるも全員返り討ちにされた柳生一族当主の烈堂大木実)は“上様”に「これ以上失敗するなら“表攻め”に切り替える」と言われてしまいます。

“表攻め”とは今風に言うなら「全国指名手配」のことで、幕府が全国の大名に御布令を出して、拝親子をサーチ&デストロイするように命じるということ。
そうなれば、その任務を任されていた柳生一族の面子は丸つぶれということで、烈堂は娘の香織(瞳順子)に拝親子成敗を命じるわけです。

この香織の必殺技は、3本の短刀の1本を真上に放り投げて、残りの2本で斬りかかるというその名もお手玉の剣」(←ネーミングセンス!)
頭上から落ちてくる短刀を躱せば香織に斬られ、香織の剣を避ければ頭上から落ちてくる短剣に脳天を貫かれるという恐ろしい? 必殺技です。

さらに烈堂は、手練の三人の門人相手にリハーサルをさせる念の入れよう。
っていうか、三人の部下はTHE★無駄死にですよ!
4人で協力して襲わせたほうが確率が上がりそうだけどなーw

三人の脳天に短刀をぶっ刺した香織は拝親子を追って出発し、村の子供たちと遊ぶ大五郎を発見。一緒にお手玉で遊びながら一刀を待ちます。
そして現れた一刀とついに対決。
必殺「お手玉の剣」を見破った一刀、なんと大五郎を肩車して対抗
自分の息子を盾に使うっていうまさに冥府魔道の非道っぷりで刺客の香織を撃破します。

いくら命令とは言え、さすがに小さな子供に短刀を投げるのは躊躇した香織は、死に際に「なんと卑怯な…」って言うんですが、うん、僕もまったく同意見ですよw

もう、完全に悪役の手口だよ!

vs柳生の刺客

そして、亡き妻の墓参りに行き「烈堂をぶっ殺すからな」(意訳)と墓前に誓う一刀。
敵の気配を察知すると、漆喰塀に向かって大五郎を乗せる乳母車に仕込んだ機関銃を乱射。(←時代劇です)

すると、漆喰の塀に空いた銃跡から血が垂れ、壁をぶち破って刺客たちが倒れ込むんですね。

なんと、刺客たちは壁に穴を掘って潜み、上から漆喰で塗り固めて身を隠していたのです。

時代劇で機関銃を乱射するのもアレだけど、お前ら壁の中からどうやって攻撃するつもりだったんだよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

vs土蜘蛛三人衆1

4人の子供を失って、いよいよジリ貧になった柳生烈堂ですが、彼にはもう一人生まれてすぐに山に捨てた妾の子兵衛木村功)がいまして、山に行って「柳生のために拝親子をサツガイするのじゃ!( ゚д゚)クワッ」とか言うわけですが、いや、お前…っていうねw

案の定兵衛は「お前、生まれたばっかのワシを捨てて何言ってんねん! ワシは育ててくれた土蜘蛛一族じゃこのハゲ!」と、突っぱねます。
まぁ、そうなりますよね。っていうか、何で協力してもらえると思ってたんだって話ですよ。

仕方なく、烈堂は兵衛の妹(こっちは養子にしてた)に、兵衛を説得するように頼もうとするも、なんと兵衛はさっさと土蜘蛛一族と一刀を倒しに出かけちゃうんですね。
と言っても、別に親父に言われたからじゃなく、(親父に倒せなかった)一刀を倒して、柳生のポジションを土蜘蛛一族が奪ってやろうっていう作戦

……いや、もし一刀を倒しても柳生の手柄になっちゃうし、むしろ放っておけばオヤジ勝手に自滅するじゃん? その後で一刀を倒せばいいじゃん?

ともあれ、兵衛は土蜘蛛三人衆、無堂(草野大悟)、無我(宮口二郎)、無門(石橋蓮司)を一刀のもとへと送り込りこみます。
この三人、土の中を自由に移動できる能力を持ってる、土蜘蛛一族最強の三人衆なんですね。

しかし、一刀の強さに真正面から行けば負けると思った三人は、拝親子に関わった人間を片っ端から殺し、二人の精神を削るという作戦を実行。

道すがら大五郎に蛇笛をくれた女の人をバスーカーでドーン!(←時代劇です)、大五郎に飴を売った飴売りをバラバラ死体にして川に流し、二人が泊まった宿の従業員&宿泊客も皆殺し。「(ΦωΦ)フフフ…お前らに関わった人間はみんな死んじゃうぞ~」と脅す“術”を敢行。
うん、それは別に「術」じゃなくてただのいやがらせけどね。

とはいえ、これには流石の一刀も参ってしまい、誰とも関わらないように旅を続けます。

vs兵衛

で、ある藩の家老から刺客依頼を受けた一刀は待ち合わせ場所に向かいますが、その依頼は破棄されます。
理由を聞くと、「君ら“表攻め”されることになったから」と。
そんな彼らに下手に関わると、自分たちにもあらぬ疑いがかかってしまうというんですね。
そして、乗ってきた小船をあげるからこっそり逃げるように勧める家老にイキナリ斬りかかる一刀。
彼はこの家老が武士の命である刀を、船から上がる時に踏み台にしたのを見て、家老が変装した土蜘蛛一族の兵衛で、これは罠だと見破っていたのです。

そこから、土蜘蛛一族を相手に大立ち回りをする一刀。
しかし、川原に出たところで土蜘蛛三人衆に土の中に引き込まれ、身動きが取れなくなってしまいます。一刀危機一髪!

しかし一刀、兵衛に向かって「お前、闇討ちとか卑怯だぞ! 『武士』なら堂々とタイマンで勝負しろや!……って、

お前が言うな!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

お前は息子を自分の盾にしたり、マシンガン打ちまくっとるやないかい! っていうねw

ただ、兵衛はバカなので「ほんなら『武士』として正々堂々タイマンで勝負つけたるわいハゲー!」と、一刀と一騎打ち。そしてサクッと負けます。

vs土蜘蛛三人衆2

そこから色々あって兵衛が死に、彼の遺言で土蜘蛛三人衆は拝親子を倒すため、雪山にかまくらを作って身を潜める二人のもとに向かうんですが、土の中では自由に動ける三人も、極寒の雪の中ではそうはいかず「だめだ凍える…_:('Θ' 」 ∠):_プルプルプル」とか言い出す始末。

雪から顔を出したところを一刀に見つかり機関銃で蜂の巣にされながらも、最後の手段と3人はジェットストリームアタック
しかし乳母車の仕込み槍で串刺しにされてアッサリ絶命するんですねー。

一刀、ちょ、おまっ……ww

vs柳生軍団

そして、ついにクライマックス。
ソリ仕様に改造した乳母車で一刀が軽快に雪山の斜面を滑っていると、烈堂率いるスキーを履いた柳生軍団が襲いかかってきます。

まずはいつも通り機関銃乱射で敵の数を減らすと、ソリ乳母車で柳生スキー軍団と抜きつ抜かれつ、斬ったはったの大チェイス

あげく、烈堂は自分のソリに設置したバズーカーを撃ちまくり一刀も機関銃で応戦という、 サム・ペキンパーばりの銃撃アクションを展開。拝親子の乳母車に至っては、マッドマックスみたいになってましたからねw

死闘の末にギリギリまで追い込むものの、烈堂に逃げられた一刀。
途中で乗り捨てた乳母車(ソリ)の中には大五郎がいなくて、もしやソリから放り出されて……と必死に息子を探す背後から「ちゃん」と呼ぶ声が。
最後は一刀が大五郎を抱きしめて、物語は終わるのでしたとさ。チャンチャン。

www.youtube.com

和風007

事ほど左様に、本作は時代劇というよりマカロニウエスタン。っていうかほぼ「007」でしたよ。
だって機関銃撃ちまくり、バズーカー撃たれまくり、挙句スキーチェイスですもん。

元々、体が大きくてぽっちゃり体型の若山富三郎ですが、この人実は運動神経抜群
本作のクライマックスでは、蔵王のスキー場を滑るソリ(乳母車)の上に(両手に鎖を巻かれた状態で)仁王立ちですよ!
そしてソリから転がり落ちると直ぐに立ち上がって敵を斬り倒すという一連のアクションを、ワンカットで撮影してるんですね。

他にも、何度かトンボを切って(空中一回転のこと)見せたりもしてます。

若山富三郎は元々柔道の有段者で、殺陣も出来れば馬にも乗れるし、実は何でもできる器用な役者だし、こと殺陣とアクションに関してはあの千葉真一の師匠なのです。

後年は演技派として慣らした名優の若山御大ですが、一方で元祖アクション俳優でもあったんですねー。

まぁ、本作もストーリーは正直あってないようなものですが、このスーパーアクションだけでも十分見ごたえがあると思いましたよー!

シリーズ途中で終了

ちなみに、大人気だったシリーズ途中にも関わらず劇場版「子連れ狼」シリーズは本作で終了してしまいます。

これは、原作者の小池一夫が制作の勝プロダクションと契約してたにも関わらず、日本テレビにも「子連れ狼」ドラマ化の契約をしちゃったからで、若山富三郎はそれに激怒。(そりゃそうだ)
勝新がテレビ局に抗議に行くも、結局は映像化権をテレビ側に譲っちゃったという経緯があるそうで、そのせいで一時期この兄弟は絶交状態になったそうです。

その後、お詫びに日本テレビ若山富三郎主演で好きなドラマをやってくれていいという事になり、勝プロも全面協力したことで、事は丸く収まったみたいですね。

 

「時代劇」というと、年寄りの観る堅苦しい昔話と思われるかもですが、春日太一さんも言うように本来の時代劇は(一定の基準さえクリアすれば)すごく自由で何でもアリだし、本作はまさにそれを体現した一作と言えるんじゃないでしょうか。

本作はAmazonプライムで手軽に観られるので、時代劇を普段観ない人にこそ、是非観て欲しい作品ですねー。

興味のある方は是非!!!

 

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全てが完璧!「若おかみは小学生!」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは昨年公開されるやネットを中心に大評判になったアニメ映画『若おかみは小学生!』ですよー!

実は僕、友人に「試写会のチケットあるけど行く?」と聞かれて「でも子供向けアニメでしょ?」とスルーしてしまったんですよねー。
もし過去に戻れるなら、あの時の自分を殴ってやりたい! と思うくらい、素晴らしい作品でした!

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概要

交通事故で両親を亡くし温泉旅館を営む祖母に引き取られた少女が、若おかみの修業に奮闘する児童文学シリーズをアニメ映画化。劇場版では原作、テレビシリーズで描かれていない両親と少女の物語が展開する。ボイスキャストは、テレビアニメ版と同じく小林星蘭松田颯水水樹奈々らが担当。監督は『茄子 アンダルシアの夏』などの高坂希太郎、脚本は『けいおん』『ガールズ&パンツァー』シリーズなどの吉田玲子が務めた。(シネマトゥデイより引用)

感想

ざっくりストーリー紹介

本作の原作は、20巻+スピンオフ4巻に及ぶ令丈ヒロ子の児童向け同名小説。
交通事故で両親を亡くした小学6年生の女の子「おっこ」が、祖母が経営する旅館「春の屋」に引き取られて若おかみの修行を始めることになり、旅館に住み着く幽霊や大手旅館の跡取り娘、様々なお客さんとの交流を通して自身の辛い過去を受け入れ成長していく。というストーリー。

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本作を観る前に僕が一番引っかかったのは、小学生が若おかみとして旅館で働くという荒唐無稽な設定なんですけど、転校先の温泉街の子たちは子供ながら家業のお店を手伝っているのが普通という設定を入れることでクリアしてるんですね。
さらに旅館と縁のある男の子の幽霊“うり坊”との出会いというファンタジー要素を絡めて、なし崩し的におっこが旅館を手伝うよう物語を持っていく展開が上手いなーと思いましたねー。

完璧な映画化

祖母の経営する旅館「春の屋」のある温泉街のお祭りに両親と来ていた主人公おっこが、神社の子供神楽を観ているシーンから物語はスタート。
その帰りに交通事故に巻き込まれ両親を亡くし、祖母の旅館に行くまでのアバンタイトルを手際よく描き、本編に入ってからは彼女が新しい土地や暮らし、若おかみの仕事に次第に慣れて成長していく様子を、クモやヤモリを使ってサラリと観せる映画的演出。

両親を失うという小学生には辛すぎる現実に対して、おっこが不自然すぎるくらい普通にしている違和感が全て、クライマックスに向けての仕掛けだった事が分かったときの衝撃。

そして切れ味のいいラストの小気味よさ。と、もうね作劇が完璧なんですよ!!

もちろん、ジブリ作品を始め数々の名作で経験を積み、「茄子 アンダルシアの夏」「 茄子 スーツケースの渡り鳥」で監督を務めたあの高坂希太郎監督ですから、アニメーションの方も素晴らしい。

何気ない動きの一つ一つや、食べ物の描写がアニメ的に気持ちよかったり超美味しそうだったり。
いわゆるアニメ的な誇張は最小限に、でも高い技術で凄い事をしてるんですが、それを感じさせないくらいサラリと観せているのです。

児童向けアニメだからと子供だましな作劇や演出をするのではなく、子供たちに向けて本気で作っている超良質なアニメーション映画なんですね。

膨大な原作を90分に再構成

前述したように、本作の原作となる同名小説は20巻+スピンオフ4巻という人気シリーズ。
テレビアニメ化もされていて、こちらは24話が放送されていて(僕は未見ですが)かなり原作に忠実に作られているみたいですね。

ちなみに脚本はたまこラブストーリー」「映画 聲の形」「リズと青い鳥などの吉田玲子
原作小説からその賞味90分間の長編映画用に、高坂希太郎監督自身がキモとなるエッセンスを抽出して整理、再構成してまとめた基本プロットを吉田玲子が脚本化という手順で作られたそうです。

主人公おっこを始め登場キャラクターに語らせ過ぎず、一見、何てことないセリフの中に心情を忍び込ませる。しかし児童向けアニメとしてのバランスは崩さないように語るべきところはしっかり語らせる脚本も実に見事でした。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 左から、うり坊、鈴鬼、美陽

両親を失い心に深い傷を負ったおっこが、彼女だけに見える幽霊のうり坊や美陽、子鬼の鈴鬼といったイマジナリーフレンド的存在、優しくも厳しい祖母や旅館の中居さんと料理長、大手旅館「秋好旅館」の跡取り娘で同級生の秋野真月との交流やぶつかり合いを通して、現実を受け入れて成長するまでに物語を絞っているんですね。

三組の宿泊客、三つのエピソード

本作では三組の宿泊客とおっこのエピソードが描かれるんですが、監督によると、彼ら(彼女ら)は、それぞれ「過去・現在・未来」のおっこの象徴なんだそうです。

最初はおっこが自ら招く最初の父子。
息子のあかねはお母さんを亡くした少年なんですが、彼は両親を亡くした現実を受け入れられずにいる「現在のおっこ」に重なるキャラクターです。

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画像出典元URL:http://eiga.com

悲しみに打ちひしがれている彼をもてなし傷を癒すことは、つまりおっこが自分自身を励ましているという事なんですね。

次に、占い師のグローリー水領という女性。
彼女は「未来のおっこ」で、彼女の成長したイメージなんだそうです。
水領が気晴らしにおっこを連れ出して買い物をいく、その車中で事故を思い出し過呼吸になるおっこから話を聞くというエピソードは、「未来のおっこ」が両親の代わりとして「現在のおっこ」を一旦、子供に戻してあげるわけです。

三組目、3人家族の子供、翔太は「過去のおっこ」
彼は何の心配もなく両親に甘えていられた頃の、ただ子供でいればよかった頃のおっこで、二つのエピソードで成長したおっこが、今度は翔太(過去の自分)を辛い過去もろとも抱きしめることで受け入れるのです。

なので、あの衝撃的なクライマックスは、それまでの三つのエピソード、(過去・現在・未来)三人のおっこの物語が全て集約され、それまで抑えていた感情がついに爆発したおっこが、水領(未来のおっこ)に全てを受け止めてもらうことで、辛すぎる過去を受け入れ、春の屋で「これから」を生きる覚悟を決めるシーンなんですね……って、

泣き死にするかと思ったわ!!

DVDの特典映像で観られるテレビアニメ版第一話では、春の屋に到着し部屋で一人になったおっこが亡き両親を想って泣いてて、(多分)その後話数を重ねることで徐々に現実を受け入れていく構成だと思うんですが、本作ではそれをクライマックスに持ってきているんですね。

それと並行してイマジナリーフレンドであるうり坊や美陽が、徐々に見えなくなるという描写で、おっこの成長を表すという2重構造になっているのです。

ラストの切れ味の良さ

で、ラストではアバンと対になるように、神社の子供神楽を今度はおっこと真月が舞うんですが、ここで真月の心情が明かされ二人は本当の意味で認め合う友達になる。

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画像出典元URL:http://eiga.com / おっこ(右)にライバル心を抱く真月(左)

同時にうり坊と美陽との別れが刻一刻と近づくわけですが、この別れのシーンを変にベタベタ描かずに、サラリと、でも、とても印象的に描いているのが個人的に凄く良かったです。

そして、神楽を舞終わったところで、物語をスパっと切り上げる切れ味の良さ。
普通なら、うり坊と美陽との別れでもう一山作りたくなるところを、サクッと切り上げる事で、逆に二人との別れが印象に残る設計になっているんですよね。

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あえて言えば

事ほど左様に、長編小説シリーズの映画化としても、一本の映画としても「完璧」な本作ですが、あえて言うなら、あまりに完璧すぎて隙がないところが若干気になりました。

物語に惚れ込んで映画化する時って、大抵は監督自身が映画に乗っかる分、どうしても多少は形が歪になるものですが、本作はまるで映画のお手本みたいに整っていて、テクニックと経験と計算で完璧に作らり上げられた職人仕事のように見えてしてしまうんですよね。

もっと端的に言えば、高坂希太郎監督自身の顔が作品からあまり見えてこないというか。

もちろんテクニックと計算だけでこれだけの作品を作れたとしたら、それはそれで凄いけど、多分それはただの邪推で、監督の情熱や心情は作品の中に当然入ってるんでしょうけど、子供向けの作品ということもあって、言いたいこと、やりたいことはかなり抑えているのではないかなー? という印象を受けました。

「茄子 アンダルシアの夏」の、作品としては少々歪だけど湧き上がるような熱量に圧倒された僕としては、ちょっとだけ「おや?」と思ってしまったんですよね。

うん、つまりただの言いがかりです

最初ナメてたのが恥ずかしくなるくらい作劇も映像演出も素晴らしい作品だし、なんなら僕はこの感想を書きながら思い出し泣きするくらい感動しました。いやマジで。

なので、「とはいえ子供向きアニメでしょ」と観るのを躊躇っている人は、騙されたと思って一回観てください
「どらえもんのび太の恐竜」や「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲」と並ぶ大傑作ですので!

興味のある方は是非!!

 

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アバンタイトル“は”最高!「移動都市/モータル・エンジン」(2019)

ぷらすです。

3月に公開された、「ホビット」シリーズのピーター・ジャクソンが製作を務めたSFファンタジー映画『移動都市/モータル・エンジン』が、地元の映画館でもひと月遅れで公開されたので、朝一の回で観てきました!

タイヤ付きの巨大都市が荒廃した地球を走り回って、文字通り弱肉強食の争いを繰り広げるという設定が超気になってたんですよねー。

というわけで、今回はまだ公開中の作品なので出来るだけネタバレに気をつけて感想を書きますが、これから本作を観る予定の人や、ネタバレは絶対嫌! って人は先に映画を観てから、この感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

イギリスの作家フィリップ・リーヴの小説「移動都市」シリーズを原作にしたSFファンタジー。人々が巨大な移動都市に暮らす世界を舞台に、ある目的のために移動都市に潜入した少女の戦いが描かれる。『ホビット』シリーズなどのピーター・ジャクソンが製作を務め、クリスチャン・リヴァーズがメガホンを取る。主演は『殺意の誓約』などのヘラ・ヒルマー。(シネマトゥディより引用)

感想

ざっくりストーリー紹介

本作はイギリスの作家フィリップ・リーヴの小説「移動都市」シリーズを原作にしたSFファンタジー
古代人による“60分戦争”によって世界は崩壊。生き残った人類の多くは巨大なエンジンとタイヤの上に築いた移動都市で移動生活をしていた。
この世界は、資源確保のため巨大都市が小都市を“捕食”する文字通り弱肉強食の世界
しかし次第に資源は底をつき始め、新たな資源確保のため巨大移動都市ロンドンの実力者ヴァレンタイン( ヒューゴ・ウィーヴィング)は、鉄壁の防御を誇る反移動都市同盟を守る巨大な壁を崩すため、古代世界を滅ぼしたロストテクノロジーメデューサ」を起動させようと企んでいる。

一方、幼い頃ヴァレンタインに母を殺され復讐を誓うヘスター・ショウ( ヘラ・ヒルマー)と、下層階級出の青年トム・ナッツワーシー (ロバート・シーハン)は、反移動都市同盟とともに、ヴァレンタインの野望を食い止めようと奮闘する。というストーリーで、なんて言うかこう、非常に既視感があるっていうか、「あ、これ知ってる!」っていうストーリーでしたねーw

アバンタイトル“は”最高!

巨大移動都市ロンドンが、小さな採掘都市ソルツヘイクンを発見。
(比喩ではなく文字通り)“捕食”するまでのチェイスシーンが描かれるアバンタイトル

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画像出典元URL:http://eiga.com / わー逃げろー!

平和なソルツヘイクンがロンドンから逃げるために、走行モードにトランスフォームする描写は萌えるし、中々エンジンが掛からずにどんどんロンドンが迫って来るシークエンスにはドキドキハラハラ。
エンジンが掛かって急発進し、全速力で逃げるソルツヘイクンの様子を高台に集まって見ながら歓声を挙げるロンドン市民の様子。
ロンドンでは通れない峰の合間を見つけ「これで逃げ切れる!」と思ったら、その手前にの地面には大きな亀裂があって急カーブ。
ロンドンから発射された銛に貫かれ、ジリジリと大口を開けるロンドンに引き込まれていき、完全に飲み込まれたところでロンドンの“口”が閉じてタイトルバーン!

……もうね、最高ですよ!!

その合間にも、主要キャラを一通り登場させて、それぞれの役割をサラッと説明して、本編に移行するのも良かったし、スチームパンク的なデザインも個人的に大好物でしたねー。

ただ、いざ本編がスタートすると急に鈍重になる感じで、そこはかなりもったいないと思ったし、登場キャラが多い割に各キャラクターの背景の描かれ方が全体に薄いんですよね。

これ、本来だったら全3部作くらいのスケールの物語だと思うんですけど、それを約2時間にギュッと圧縮してしまったためにダイジェスト感が出てしまった感は否めませんでしたねー。

ジブリ

あと、本作を観た多くの人が指摘するように、この映画全体に漂うジブリ感が凄かったですねー。

設定は風の谷のナウシカストーリーは天空の城ラピュタ
移動都市のデザインはハウルの動く城主人公のヘスターはもののけ姫のサンを連想させます。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 天空都市も出る

まぁ、この手の作品の設定やテーマを描く以上、どうしたってストーリーや世界感は似てしまうだろうし、そもそも宮崎さんの初期作品も海外のファンタジー小説を元ネタに発想してるわけですから、世界観が似るのは当たり前ですよね。

モチーフ

そんな本作のモチーフになっているのは、大航海時代のイギリス(というか西洋諸国)です。
産業革命で世界のトップに立ったイギリスが、資源確保のために諸外国を次々に植民地化していった歴史を、本作では終末SFファンタジーとして描いているんですね。
対する、反移動都市同盟は中国(というかチベットっぽいけど)を中心とした東洋諸国をモデルにしています。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 見た目はいかにも悪役っぽいヴァレンタイン

そこに、核兵器原子力のメタファーとなる「メデューサ」を登場させることで、権力に取り憑かれたヴァレンタインがコントロール不能な行き過ぎたテクノロジーに手を出してしまう愚かさをプラスし、苦難の末にヴァレンタインの野望を食い止めるのが未来の象徴であるヘスターとトムを中心とした若者たちという構造になってるわけですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88165/photo/da10c5eeecca1fc8/640.jpg?1550723135

画像出典元URL:http://eiga.com / 主人公ヘスターとトム

まぁ、日本のオタクなら100万回観た例のヤツです。

そこに色んな人種の多様なキャラクターが絡んで物語は進んでいくわけですが、時間の関係もあってどうも舌っ足らずな印象を受けてしまうんですよね。

密度が低い

前述した最高のアバンから本編に移ると、飲み込まれたソルツヘイクンの市民たちはどうやら登録されてロンドン市民になるらしい事がわかります。
恐らくは最下層の労働力として――って事だと思うけど、それにしても市民を食わせるため、不足している資源を確保しようとロンドンは小都市を捕食しているわけで、普通に考えたら人口増やすのはおかしくね? と。

人口が増えるなら、小都市を襲って資源を確保したところでプラマイゼロでは? って思うんですよ。

普通に考えたらロンドンに恨みがある小都市の人間を受け入れたりせずに、奴隷として売り払うなり、捨てるなり、殺すなりしそうなもんじゃないですか。

なんでそこだけ人道的(に見えちゃう)なんだと。

本作では捕まった人間が何らかの酷い目に遭うという描写がないので、普通に衣食住を揃えてくれるならわざわざ逃げることなくね? って思っちゃうし、逆に彼らが非人道的な扱いを受ける描写がないことで、ロンドンやヴァレンタインの悪役っぷりがボヤけちゃうんですよね。

それだけでなく、映画のキャパの割にキャラクターや物語や世界感の説明が圧倒的に不足してるので、全てが抽象的というかスカスカで、前述したようにダイジェスト版みたいな印象を受けてしまうのです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88165/photo/833f17527b09f4d8/640.jpg?1551678520

画像出典元URL:http://eiga.com / へスターを付け狙うシュライク

ロンドン博物館に飾られている「古代アメリカの神とされる銅像」がミニオンでしたみたいな小ネタを入れるヒマがあるなら、もっと脚本や設定の密度を上げて物語に反映させたほうが良かったのでは? と思いました。

まぁ、全年齢向き(というかぶっちゃけ子供向き)の映画みたいだし、あまりハードな描写は出来なかったのかもしれないし、個人的には大画面であの“都市チェイス”の映像を観れただけでも映画館で観る価値はありましたけどねw

興味のある方は是非!

 

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