ぷらすです。
今回ご紹介するのは「X-MEN」スピンオフで、名優ヒュー・ジャックマンの当たり役であるウルヴァリンシリーズ第3弾『LOGAN/ローガン』ですよー!
個人的にアメコミヒーロー映画は好きだけど、「X-MEN」にはそれほど思い入れがないんですが、そんな僕でも本作はアメコミ映画の枠を超えた傑作だと思いました!
で、今回はまだDVDレンタルが始まったばかりの作品なので、出来るだけ確信には触れないように書きますが、軽いネタバレがあるので未見の方はご注意くださいね。
いいですね? 注意しましたよ?
画像出典元URL:http://eiga.com
あらすじと概要
『X-MEN』シリーズのウルヴァリンが、傷つきながらもミュータント存亡の危機を救おうと突き進む姿を描くアクション大作。超金属の爪と超人的な治癒能力を持つ不老不死のヒーロー、ウルヴァリンが老いて傷跡残る体で、ミュータントの未来の鍵を握る少女を守るべく戦う姿を活写する。主演をシリーズ同様ヒュー・ジャックマンが務め、監督を『ウルヴァリン:SAMURAI』などのジェームズ・マンゴールドが担当。能力を失ったウルヴァリンの衝撃の姿と壮絶なバトルに注目。
ストーリー:近未来では、ミュータントが絶滅の危機に直面していた。治癒能力を失いつつあるローガン(ヒュー・ジャックマン)に、チャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)は最後のミッションを託す。その内容は、ミュータントが生き残るための唯一の希望となる少女、ローラ(ダフネ・キーン)を守り抜くことだった。武装組織の襲撃を避けながら、車で荒野を突き進むローガンたちだったが……。(シネマトゥデイより引用)
感想
「X-MEN」とウルヴァリン
本作はマーベルコミックの人気シリーズ「X-MEN」の人気キャラクター、ウルヴァリンのスピンオフです。
「X-MEN」とウルヴァリンを知らない方にざっくり説明すると、「X-MEN」というのは突然変異で生まれてきた異能・異形の超能力者<ミュータント>を束ねるリーダー、プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビア率いるスーパーヒーローチームです。
そして、「X-MEN」に登場する様々な能力者の中でも一番人気なのが、不死身の体を持ち、指の間から伸びる鋼鉄の爪で戦うウルヴァリン(ローガン)。
で、2000年公開の第1作から17年間、そんなウルヴァリンを演じてきたのが「レ・ミゼラブル」などにも出演した名優ヒュー・ジャックマンです。
当時まだ無名の俳優だった彼が演じたウルヴァリンは、まるでコミックから飛び出てきたようだとヒュー・ジャックマンの当たり役になり、「X-MEN」は6作、ウルヴァリンが主役のスピンオフも(本作を含め)3作作られる大人気シリーズになったんですね。
本作はそんなヒュー・ジャックマン版の「ウルヴァリン」シリーズ完結編にあたる作品ということで公開前から話題を呼び、公開後はアメコミ映画としてだけでなく、映画史に名を残す名作と、ファンだけでなく評論家や一般の人びとからも高い評価を受けているのです。
人種差別をモチーフにしたシリーズ
この「X-MEN」シリーズは、他のマーベルヒーローコミックとは少しテイストが違っていて、ストーリーやキャラクターの背景が、アメリカの公民権運動を元にした人種差別のメタファーという出自です。
このシリーズに登場するミュータントはその能力や異形の姿から人間に差別され、悩みながらも様々な驚異から人間を守り共存の道を模索するヒーローチームなんですね。
本作はそんな「X-MEN」シリーズに対して一つの答えを出してみせた作品なのです。
贖罪の物語
2029年のアメリカ。
驚異的な治癒能力を持ち、200年を生きる不死身の男ウルヴァリンことローガン(ヒュー・ジャックマン)ですが、本作の彼は白髪だらけでヨボヨボの中年になっています。
画像出典元URL:http://eiga.com / ヨボヨボになってもかっこいいローガン
彼は、ある組織(米政府?)のスーパーソルジャー製造計画「ウェポンX」によって、骨格に世界最硬の金属であるアダマンチウム合金を組み込まれるんですが、それは彼の肉体を劇的に強化する反面、アダマンチウムの毒素が彼の体を蝕み、老化や治癒能力の低下を引き起こしているわけです。
そんな彼はエルパソでリムジンタクシーの運転手をしながら、メキシコの田舎で老いさらばえ、アルツハイマーにかかっているプロフェッサーXことチャールズ(パトリック・スチュワート)を匿いながら介護しているわけです。
画像出典元URL:http://eiga.com / プロフェッサーXのショッキングな老後にはある秘密が
なんと、ある事故でミュータントの殆どが絶滅。25年もの間新たなミュータントは生まれておらず、チャールズはその能力から命を狙われている。
そこでローガンは運転手で稼いだ金で船を買って、海の上で暮らそうと考えているんですね。
そんな彼がある組織(政府?)に追われた少女ローラ(ダフネ・キーン)と出会うことから、彼の最後の物語はスタートするのです。
画像出典元URL:http://eiga.com / 可愛さと荒々しさを合わせ持つローラを演じるダフネ・キーン
本作の世界では「X-MEN」は事実を元にしているものの、彼らが主役のコミックに描かれているのはフィクションである。という設定。
ローガンは、コミックの持ち主のローラに何度も「ここに描かれているのは嘘っぱちだ」と言うんですね。
それはつまり、これまで出た「X-MEN」のコミックや映画、もっと言えばアメコミヒーローそのものに対する批評的視点を物語に持ち込んだ入れ子構造になっていて、「本当の戦いは綺麗事でも格好良くもない。凄惨な殺し合いだ」という事を観客に伝えているわけです。
事実、本作ではアクションの結果としてのゴア(残酷)シーンがこれでもかと描かれてますしね。
そして劇中で、チャールズとローラがテレビで西部劇の「シェーン」を観ているわけですが、そこで映っているのがシェーンの「人間は生き方を変えることはできない。正しい行いをしても人を殺した烙印からは逃れられない…。」という名セリフのシーンなんですよ。
本作では、今までコミックや映画でX-MENやウルヴァリン(ローガン)がやってきた事は、(たとえそれが正しくても)ただの人殺しなのだと、ローラを通して繰り返し観客に伝えているわけです。
それは、数多のヒーロー映画というジャンルを相対的に批評して、本当にリアルに描けばそれは残酷な世界になるのだという「リアル」を観客につきつけ、同時本作のストーリーは米国や世界の姿を描いているのだということを、暗に示しているわけですね。
つまり、本作はローガン=ウルヴァリン=ヒュー・ジャックマンの、贖罪の物語であるうと同時に非常に内省的な作品でもあるわけです。
そういう意味では、クリント・イーストウッド監督の「許されざる者」「グラントリノ」やスタローンの「ランボー/最後の戦場」と同じ構造の物語と言えるのかもしれません。
その上で、ローガンの遺伝子を持つ少女ローラと、同じ研究所で「作られた」ミュータントの少年少女たちが、アメリカから逃げる(アメリカを見捨てる)という内容は、まさにトランプ政権以降の排他的なアメリカや世界への警告とも取れるかもしれません。
個人的には「暗くて陰惨な物語=リアル」というアメコミ映画の風潮はあまり好きじゃないんですけど、本作に限っては上記した物語の出自もあって、映画のラストも含めてこれ以上ない終わり方だったんじゃないかと思いますねー。
独立した作品
そんな感じで、本作は一応それまでの「X-MEN」の文脈は踏まえているものの、それまでの作品とは一歩距離を置いた独立した作品と言えると思います。
なので、これまで「X-MEN」シリーズを観てない人でも、本作単体で観ても十分楽しめるんじゃないかと思いますし、むしろアメコミ映画を食わず嫌いしている大人の人たちに観て欲しい作品なんですよね。
かなりハードな作品ではありますが、チャールズ、ローガン、ローラの逃避行は、(血の繋がりはなくても)祖父・父・娘のロードムービーとしても観られますし、ローラ役のダフネ・キーンの可愛らしい容姿に似合わない大人顔負けの演技、パトリック・スチュワート、ヒュー・ジャックマンの名演も素晴らしいです。
画像出典元URL:http://eiga.com / 本当の家族みたいな3人
何より、ヒュー・ジャックマンとパトリック・スチュワートが演じる
最後の「X-MEN」は必見ですよ!
興味のある方は是非!!
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