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アバンは最高だった「シン・仮面ライダー」(2023)

ぷらすです。

庵野秀明最新作『シン・仮面ライダー』を劇場で観てきました。

公開2日目で土曜日ということもあって、お客さんの数はかなり多かった印象。

年齢層・性別は、「シン・ウルトラマン」の時に比べて、老若男女バランスよく入っていたように思いました。(とはいえ同世代のおじさん多めでしたがw)

というわけで、まだ公開されたばかりの作品でもあるので、出来るだけネタバレには気をつけますが、まだ未見でこれから本作を観る予定の人や、ネタバレ絶対許さないという人は気を付けてください。

いいですね?注意しましたよ?

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

1971年から1973年にかけて放送された石ノ森章太郎原作の「仮面ライダー」50周年プロジェクトとして、『シン・ゴジラ』などの庵野秀明が監督を務めた特撮アクション。仮面ライダーこと本郷猛を池松壮亮、ヒロインの緑川ルリ子を浜辺美波仮面ライダー第2号こと一文字隼人を柄本佑が演じ、西野七瀬塚本晋也森山未來などが共演する。(シネマトゥディより引用)

感想

ゴジラウルトラマン

今や日本を代表する監督の一人である庵野秀明

代表作エヴァンゲリオンシリーズを始めとしたアニメ作品のみならず、「ラブ&ポップ」や「式日」などの実写作品を手掛け、2016年公開の「シン・ゴジラ」の大ヒット、続く「シン・ウルトラマン」とヒット作を連発する彼が手掛けた最新作が、本作、「シン・仮面ライダー」なんですね。

で、僕は庵野秀明監督の中には二人の庵野秀明がいるって思っていて、一人は客観的視点を持つ「シン・ゴジラ」の庵野秀明。もう一人は”俺の考えた最強の○○”を衒いなく作っちゃう「シン・ウルトラマン」の庵野秀明

では、果たして本作は「シン・ゴジラ」と「シン・ウルトラマン」のどっち寄りなんだろうと思いながら劇場に行ったんですが、結論から言うとどちらでもなく、まさかの「キューティー・ハニー」でしたよw

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いや、こう書くとバカにしてるみたいに取られるかもですが、世間の評価はともかく、僕は庵野版「キューティー・ハニー」はかなり好きなのです。

特に、戦闘アクションシーンでの、実写とアニメを融合したようなあのCG描写は、リアリティを追求するハリウッドのCG表現とは違う、ジャパニメーションの監督ならではのオリジナリティと可能性を感じていましたしね。

で、本作の戦闘シーンを見て最初に思ったのが、「キューティー・ハニーみたい!」だったんですよね。まぁ、今回に限ってはそのCG描写が必ずしも良い方に働いてるとは言い難かったんですが。

アバンタイトル・サイコー!

映画は仮面ライダー/本郷猛と緑川ルリ子がショッカーに追われるチェイスシーンからスタート。

で、このチェイスシーンから森での戦闘シーンに移るんですが、このライダーと戦闘員の格闘シーンが個人的にはめっちゃツボで、仮面ライダーが敵戦闘員を殴ると顔が潰れてブシャッと血しぶきが出る。(そんなにグロくはないです)
それによって、仮面ライダーの強さを表現してるわけですが、このシーンがもうめっちゃカッコよくて「そうそう、こういうライダーが見たかった!」ってぶち上りましたよ。

その後、隠れ家に逃げ延びてヘルメットを取った本郷猛の素顔が見えるシーンも、おぉ、そう来たか!って感じで。

つまり、人間の顔や身体が仮面ライダー(や怪人)のあの形に変形するのではなく、ベースはあくまで強化人間である彼らが防護スーツやヘルメットで肉体を守って(強化して)いるという設定は、個人的にめっちゃ好きでしたよ。この辺の設定は恐らく原作から引用してるのかな。

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あとは普段は普通のバイクからサイクロンに変形するとことか、ライダーの変身とライダーベルトの関係とか、ライダー状態で話すと口の部分が少し動くトコとか、変身の瞬間、ヘルメットから素顔が少しだけ覗くトコとか、そういうガジェットのカッコよさにぶち上ってしまいましたよ。

なんていうか、子供時代の僕が感じてた(変身すると人間がライダーの身体になるという)違和感に、ちゃんと理屈をつけてくれていることで、仮面ライダーの実在を信じられるようになってるというか。

同じ事は「シン・ウルトラマン」でもやってるんですが、あっちはちょっとやり過ぎちゃってるというか、明らかに無理な元の設定を通そうとして逆にリアリティーがなくなっちゃうみたいな。ねぇ?

そんな感じでアバンからクモオーグとの対決シーンくらいまではホント最高で、「これは面白くなりそうだ!」とワクワクしたんですが、それが後半に行くにしたがって少しづつ尻すぼみになっていく感じが、個人的にはちょっと残念でしたねー。

で、その尻すぼみ感の原因の大部分はアクションシーンのCG描写にあって、観ていて「雑なCGだなー」って思っちゃう描写が中盤からクライマックスに続いちゃうんですよね。

ほら、マンガとかで早いパンチ連打を表現するのに拳を沢山描いたりするじゃないですか。僕はそもそもあの表現が嫌いで、それを実写映画のCGでやられちゃうと、正直(´ε`;)ウーン…ってなっちゃうというか。

これなら、普通に格闘アクションとカメラワークで見せたほうがカッコよくなるのになーと思うシーンが結構ありました。

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あと、緑川ルリ子(浜辺美波)を始めとした女性キャラのキャラ付けや仕草が、いかにもアニメ演出なのも気になりましたねー。ウルトラマンの時の長澤まさみもそうでしたが、やっぱ実写でアニメキャラ的な性格付けや仕草をされちゃうとちょっと違和感を感じちゃうというか。まぁ、庵野さんは元々アニメ畑に人だし仕方ないっちゃ仕方ないんでしょうけど、それ以前に女性キャラ全員に既視感があるというか、それ、エヴァで見ましたけどー!的な。庵野さん、女性キャラのバリエーション少ないよねっていう。

それで言えば、設定や感情を全部役者にセリフで説明させるのもどうかとは思うけど、これについてはもう庵野節というか庵野さんの作家性と考えた方がいいのかもですね。

連続ドラマの映画化

で、「シン・ウルトラマン」もそうでしたが、今回も「仮面ライダー」という連続ドラマの映画化ということで、物語がダイジェストっぽく見えちゃうのが気になりました。

本作には、ラスボスを除けば5人のヴィランが登場するわけですが、やっぱ2時間で描くには数が多すぎるし、その分、一人ひとりのドラマは希薄になってるんですよね。

もちろんそれは、約1年続いた連続ドラマを2時間前後にまとめるんだから致し方ない部分ではありますけども。ただ倒されるためだけに登場する怪人たちの使い捨て感は、もうちょっと何とかならなかったのかなって思ってしまいました。

キャスト

これだけ文句を書いていると「じゃぁ面白くなかったのかよ」って思われるかもですがそんな事は全然なくて、むしろウルトラマンの時よりも個人的には楽しく観たし、上記のアバンシーンじゃないですが、おぉ!と唸る部分も多々あったんですよ。

例えば主演の本郷武を演じた池松壮亮さんは、 藤岡弘、の本郷猛を知ってる人にしてみれば「なんかナヨナヨしてない?」と思うかもですが、本作の本郷は優しすぎて苦しんでいる男という、今風なキャラ設定に変わっていて、そんな彼のキャラクターは、池松壮亮さんのあの表情や佇まいにピッタリあっているんですよね。

また、こっちは多分観た人が全員好きになるであろう一文字隼人 / 仮面ライダー第2号。本郷とは正反対の明るくサッパリしたこのキャラ造形。こちらも観る前は演じる柄本佑さんに違和感があったんですが、実際観てみると柄本さんが本来持っている陽性のキャラクターも相まって、めっちゃ合ってたんですよね!

それで言えば、前述したようにアニメっぽいキャラ造形が気になった緑川ルリ子ですが、演じる浜辺美波さんの演技はとても良かったですしね。

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観る前は違和感があったキャスティングでしたが、観終わってみれば全員納得でしたよ。

エヴァっぽい問題

あと、本作についてエヴァっぽいという批判もちらほら見かけたんですが、恐らくはショッカーの目的がいかにもアレのアレっぽいからって事なんでしょうねw

ただ、そこは庵野監督も分かった上で意図的にそうしているわけで、そもそも庵野さんは、本作もゴジラウルトラマンも、もっと言えば「巨神兵東京に現る」や「ふしぎの海のナディア」に他の全監督作品、DAICOMフィルム時代の「帰ってきたウルトラマン」すらエヴァンゲリオンに繋げてて、その総称が「シン・ユニバース」なんですよね。

帰ってきた庵野秀明

シン・ゴジラ」は3.11と原発問題、「シン・ウルトラマン」は世界情勢など、シン・シリーズの実写2作では作品を通して社会問題にコミットしていた庵野監督ですが、本作は「絶望と救済」というより大きく日本や世界全体を覆う概念的な問題と本郷猛・緑川ルリ子らキャラクターの物語を直結させる、庵野さんが「エヴァンゲリオン」でやっていた、いわゆる”セカイ系“的な作劇法に戻ってきたなという印象でした。

シンジ君に自分自身を乗せて私小説的としてエヴァンゲリオンを描いていた庵野監督ですが、本作では本郷猛に自分自身を乗せている感じがしました。

そういう意味では、実写の中では本作が一番エヴァに近い作品なのかなと思ったりしました。

色々賛否は分かれていますが、例えば仮面ライダーを一本も見たことがないと言う人でも、本作だけ観れば内容は分かるし、僕も文句言いながらこんなに長文で感想を書くほどには面白かったですよ。

興味のある方は是非!!