今日観た映画の感想

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「すずめの戸締り」(2022)

ぷらすです。

先日Amazonレンタルで、『すずめの戸締り』を視聴したので今回はその感想です。

で、この作品は去年11月公開ということで観る人はもうとっくに観てるだろうから、今回はネタバレ気にせず感想を書いていこうと思いますのでご注意下さい。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

君の名は。』『天気の子』などの新海誠監督が、“災いの元となる扉”を閉めるために旅をする少女の姿を描いたアニメーション。九州の田舎に暮らす女子高校生が扉を探す不思議な青年と出会い、災いをもたらす扉を閉めるために日本各地の廃虚へおもむく。少女の声をオーディションで選ばれた原菜乃華、災いを招く扉を閉める“閉じ師”の青年の声をアイドルグループ「SixTONES」のメンバーで『ライアー×ライアー』などの松村北斗が担当する。(シネマトゥディより引用)

感想

エンタメに振り切った作品?

まず先に書いておきますが、僕は新海作品に関してはニワカというか、観ている作品は「ほしのこえ」「君の名は。」「天気の子」そして本作だけだったりします。

その上で新海監督の作家性を一言で言うならずばり「セカイ系」で、例えば

・運命の相手との時空を超えたすれ違い。

・少年少女の「精神的な心の距離」を「物理的な距離」で表現。

・モノローグ(独白)で心情を綴る。

・個人の行動が、世界を揺るがす出来事に直結。

・あり得たかもしれない「可能性」を肯定的に描く。

などなど。

そういった題材を繊細でセンチメンタル溢れる表現と、美しい情景で描くある意味でとても誌的な作品が多い印象で、好きな人はメッチャ好きだけど、決して万人受けするタイプの監督ではない。というのが僕から見た新海監督だったんですね。ところが、2016年に発表した「君の名は。」の爆発的なヒットで、一気に国民的監督に祭り上げられたわけです。

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君の名は。」の爆発的なヒットの要因としては、やはり川村元気プロデューサーの存在が大きくて、彼は新海監督の特徴は残しつつも、「入れ替わり」などのキャッチ―な要素やポップで分かりやすい物語、そこにRADWIMPSの音楽も加えて万人受けするようにチューニングを施したんですよね。その分、新海誠が持つ作家性はかなり抑え込まれてしまったわけですが。

そして、「君の名は。」の大ヒットを機に、新海監督自身の心情にも変化があったのか、続く「天気の子」では作品のテーマ性は残しつつ、よりマスに向けたエンターテイメント性を打ち出している印象を受けました。

そんな、前2作に続く本作「すずめの戸締り」では、個人的には新海作品が持つ香りは前2作以上にデオドラントされていて、よりキャッチ―で「普通」のエンターテイメントアニメに寄っている印象を受けましたねー。

もちろん、それが悪いということではないし、映像の方は流石の新海印で申し分なし。特に、椅子になった草太とダイジンのアクションシーンなどは、地面を蹴る椅子のカタカタという音の気持ちよさと動きがリンクしていて、観ててワクワクする演出でした。

災害三部作

そんな本作は、「君の名は。」「天気の子」に続く、いわゆる新海誠監督の“災害三部作“三本目となる作品。

君の名は。」では彗星落下を描いていますが、これは明らかに3.11東日本大震災のメタファー。奇しくも同年公開の「シン・ゴジラ」も同テーマを扱っていて、震災から5年経って、日本を代表する監督2人が震災をテーマにした作品を作ったのは、シンクロニシティじゃないですが、両監督が同時代の何かを感じていたのかななんて思ったりしました。

続く「天気の子」では異常気象を題材にしていて、これはそのまま世界で起こっている温暖化だったり環境破壊による異常気象に対して、新海監督なりのメッセージをわりとストレートに伝えているように感じましたねー。

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画像出展元URL:http://eiga.com

そして本作ではついに、3.11東日本大震災をダイレクトに作品内で取り上げたわけですが、新海監督はその理由として「震災という巨大な災害体験がコロナと言うある種の災害体験によって、ひとつ『過去』になってしまうのではないか」と感じた事を挙げています。

もう一つ、12才の娘さんがテレビで「君の名は。」を観て泣いたというメッセージをくれたのだけど、震災当初の記憶が殆どない彼女や同世代の子供たちには彗星が震災のメタファーであることは分からないと。もし3年後に出しても、もう震災は共通体験にならないのではないか。という気持ちから、本作を制作したと、監督はインタビューで語っているんですね。

そう言われてみると確かに、本作には東日本大震災の記憶、そしてそこに生きていた人々や生活を風化させてはならないという確固たるメッセージがあり、人々に忘れ去られた場所で後ろ戸は開くという設定だったり、宮崎県から愛媛、東京、宮城、そしてすずめの生まれ故郷・岩手へと移っていく舞台設定やストーリーも、メッセージに向かって逆算的に作られている事が分かります。

その上で、前二作と同じように災害と日本神話を掛け合わせたファンタジー作品に、主人公すずめと閉じ師・草太の恋模様、すずめが抱える喪失などの物語を絡めつつ、ポップなエンターテイメント作品として作り上げているんですね。

正直に言えば、本作のみならず「君の名は。」以降3作での災害の取り上げ方に対して個人的に思うところは多々あるものの、それについては僕自身まだ明確な答えが出せないでいるし、本作のメインターゲットは僕のようなスレたオッサンではなく、10代~20代の若者たちであるだろうから、本作が彼ら・彼女らの記憶に残る作品になれば、それは新海監督が本作に込めた狙いと想いは成功しているという事でもあるし、それはこの3部作を作った意義の証明でもあるのだと思いました。

興味のある方は是非!!