今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

アメコミ映画の枠を超えた傑作「LOGAN/ローガン」 (2017) *R-15

ぷらすです。

今回ご紹介するのは「X-MEN」スピンオフで、名優ヒュー・ジャックマンの当たり役であるウルヴァリンシリーズ第3弾『LOGAN/ローガン』ですよー!

個人的にアメコミヒーロー映画は好きだけど、「X-MEN」にはそれほど思い入れがないんですが、そんな僕でも本作はアメコミ映画の枠を超えた傑作だと思いました!

で、今回はまだDVDレンタルが始まったばかりの作品なので、出来るだけ確信には触れないように書きますが、軽いネタバレがあるので未見の方はご注意くださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

X-MEN』シリーズのウルヴァリンが、傷つきながらもミュータント存亡の危機を救おうと突き進む姿を描くアクション大作。超金属の爪と超人的な治癒能力を持つ不老不死のヒーロー、ウルヴァリン老いて傷跡残る体で、ミュータントの未来の鍵を握る少女を守るべく戦う姿を活写する。主演をシリーズ同様ヒュー・ジャックマンが務め、監督を『ウルヴァリン:SAMURAI』などのジェームズ・マンゴールドが担当。能力を失ったウルヴァリンの衝撃の姿と壮絶なバトルに注目。

ストーリー:近未来では、ミュータントが絶滅の危機に直面していた。治癒能力を失いつつあるローガン(ヒュー・ジャックマン)に、チャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)は最後のミッションを託す。その内容は、ミュータントが生き残るための唯一の希望となる少女、ローラ(ダフネ・キーン)を守り抜くことだった。武装組織の襲撃を避けながら、車で荒野を突き進むローガンたちだったが……。(シネマトゥデイより引用)

感想

X-MEN」とウルヴァリン

本作はマーベルコミックの人気シリーズ「X-MEN」の人気キャラクター、ウルヴァリンのスピンオフです。
X-MEN」とウルヴァリンを知らない方にざっくり説明すると、「X-MEN」というのは突然変異で生まれてきた異能・異形の超能力者<ミュータント>を束ねるリーダー、プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビア率いるスーパーヒーローチームです。

そして、「X-MEN」に登場する様々な能力者の中でも一番人気なのが、不死身の体を持ち、指の間から伸びる鋼鉄の爪で戦うウルヴァリン(ローガン)。

で、2000年公開の第1作から17年間、そんなウルヴァリンを演じてきたのが「レ・ミゼラブル」などにも出演した名優ヒュー・ジャックマンです。

当時まだ無名の俳優だった彼が演じたウルヴァリンは、まるでコミックから飛び出てきたようだとヒュー・ジャックマンの当たり役になり、「X-MEN」は6作、ウルヴァリンが主役のスピンオフも(本作を含め)3作作られる大人気シリーズになったんですね。

本作はそんなヒュー・ジャックマン版の「ウルヴァリン」シリーズ完結編にあたる作品ということで公開前から話題を呼び、公開後はアメコミ映画としてだけでなく、映画史に名を残す名作と、ファンだけでなく評論家や一般の人びとからも高い評価を受けているのです。

人種差別をモチーフにしたシリーズ

この「X-MEN」シリーズは、他のマーベルヒーローコミックとは少しテイストが違っていて、ストーリーやキャラクターの背景が、アメリカの公民権運動を元にした人種差別のメタファーという出自です。
このシリーズに登場するミュータントはその能力や異形の姿から人間に差別され、悩みながらも様々な驚異から人間を守り共存の道を模索するヒーローチームなんですね。

本作はそんな「X-MEN」シリーズに対して一つの答えを出してみせた作品なのです。

贖罪の物語

2029年のアメリカ。
驚異的な治癒能力を持ち、200年を生きる不死身の男ウルヴァリンことローガン(ヒュー・ジャックマン)ですが、本作の彼は白髪だらけでヨボヨボの中年になっています。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ヨボヨボになってもかっこいいローガン

彼は、ある組織(米政府?)のスーパーソルジャー製造計画「ウェポンX」によって、骨格に世界最硬の金属であるアダマンチウム合金を組み込まれるんですが、それは彼の肉体を劇的に強化する反面、アダマンチウムの毒素が彼の体を蝕み、老化や治癒能力の低下を引き起こしているわけです。

そんな彼はエルパソでリムジンタクシーの運転手をしながら、メキシコの田舎で老いさらばえ、アルツハイマーにかかっているプロフェッサーXことチャールズ(パトリック・スチュワート)を匿いながら介護しているわけです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / プロフェッサーXのショッキングな老後にはある秘密が

なんと、ある事故でミュータントの殆どが絶滅。25年もの間新たなミュータントは生まれておらず、チャールズはその能力から命を狙われている。
そこでローガンは運転手で稼いだ金で船を買って、海の上で暮らそうと考えているんですね。

そんな彼がある組織(政府?)に追われた少女ローラ(ダフネ・キーン)と出会うことから、彼の最後の物語はスタートするのです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 可愛さと荒々しさを合わせ持つローラを演じるダフネ・キーン

本作の世界では「X-MEN」は事実を元にしているものの、彼らが主役のコミックに描かれているのはフィクションである。という設定。
ローガンは、コミックの持ち主のローラに何度も「ここに描かれているのは嘘っぱちだ」と言うんですね。

それはつまり、これまで出た「X-MEN」のコミックや映画、もっと言えばアメコミヒーローそのものに対する批評的視点を物語に持ち込んだ入れ子構造になっていて、「本当の戦いは綺麗事でも格好良くもない。凄惨な殺し合いだ」という事を観客に伝えているわけです。

事実、本作ではアクションの結果としてのゴア(残酷)シーンがこれでもかと描かれてますしね。

そして劇中で、チャールズとローラがテレビで西部劇の「シェーン」を観ているわけですが、そこで映っているのがシェーンの「人間は生き方を変えることはできない。正しい行いをしても人を殺した烙印からは逃れられない…。」という名セリフのシーンなんですよ。

本作では、今までコミックや映画でX-MENウルヴァリン(ローガン)がやってきた事は、(たとえそれが正しくても)ただの人殺しなのだと、ローラを通して繰り返し観客に伝えているわけです。

それは、数多のヒーロー映画というジャンルを相対的に批評して、本当にリアルに描けばそれは残酷な世界になるのだという「リアル」を観客につきつけ、同時本作のストーリーは米国や世界の姿を描いているのだということを、暗に示しているわけですね。

つまり、本作はローガン=ウルヴァリンヒュー・ジャックマンの、贖罪の物語であるうと同時に非常に内省的な作品でもあるわけです。

そういう意味では、クリント・イーストウッド監督の「許されざる者」「グラントリノ」やスタローンの「ランボー/最後の戦場」と同じ構造の物語と言えるのかもしれません。

その上で、ローガンの遺伝子を持つ少女ローラと、同じ研究所で「作られた」ミュータントの少年少女たちが、アメリカから逃げる(アメリカを見捨てる)という内容は、まさにトランプ政権以降の排他的なアメリカや世界への警告とも取れるかもしれません。

個人的には「暗くて陰惨な物語=リアル」というアメコミ映画の風潮はあまり好きじゃないんですけど、本作に限っては上記した物語の出自もあって、映画のラストも含めてこれ以上ない終わり方だったんじゃないかと思いますねー。

独立した作品

そんな感じで、本作は一応それまでの「X-MEN」の文脈は踏まえているものの、それまでの作品とは一歩距離を置いた独立した作品と言えると思います。
なので、これまで「X-MEN」シリーズを観てない人でも、本作単体で観ても十分楽しめるんじゃないかと思いますし、むしろアメコミ映画を食わず嫌いしている大人の人たちに観て欲しい作品なんですよね。

かなりハードな作品ではありますが、チャールズ、ローガン、ローラの逃避行は、(血の繋がりはなくても)祖父・父・娘のロードムービーとしても観られますし、ローラ役のダフネ・キーンの可愛らしい容姿に似合わない大人顔負けの演技、パトリック・スチュワートヒュー・ジャックマンの名演も素晴らしいです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 本当の家族みたいな3人

何より、ヒュー・ジャックマンパトリック・スチュワートが演じる
最後の「X-MEN必見ですよ!

興味のある方は是非!!

 

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ブレラン好きによるブレラン好きの為のブレランっぽい作品「バーチャル・レボリューション」(2016 )

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2016年公開のフランス・アメリカ合同映画『バーチャル・レボリューション』ですよー!
先々週のタマフルブレラン特集」で、ゲストの高橋ヨシキさんが「ブレラン2047』と言っていい内容」と推していたので、早速レンタルしてきましたよー!

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

テロリストとの戦いの場が仮想世界へと移行した近未来を舞台に、私立探偵とテロリストがバトルを繰り広げるSFサイバーアクション。仮想世界のシステムを脅かすテロリストに挑む私立探偵の活躍を活写する。『マキシマム・ブロウ』などのマイク・ドプドらが出演。ガジェットや圧倒的な世界観が見どころ。

ストーリー2047年、NEOパリ。仮想世界と現実世界を行き来する私立探偵ナッシュの任務は、仮想世界のシステムにとって脅威と化したテロリストの追跡と暗殺。事件を追っていくつもの仮想世界を駆け抜ける中、テロ集団や多国籍企業、インターポールが交差する危険なゲームに巻き込まれ……。(シネマトゥディより引用)

感想

ざっくりストーリー解説

本作は、2047年の近未来を描いたSF作品。

映画冒頭では、突然ドラゴンが飛び交うファンタジーな世界で戦士や魔術師のパーティーが敵と戦うシーンからスタート。
あれ? 違う映画を借りてきた??」と思ったら、主人公ナッシュが“ログアウト”し現実世界に戻ってくるんですね。

実は劇中の世界では、テクノロジーは発展したものの、デストピア的な未来に絶望した人類の75%が、VRゲームの中に住んでいる<コネクト>になっているという設定なのです。

イス型専用デバイスでゲームの世界に入るんですが、ゲーム世界と現実世界の違いはほとんどないくらいテクノロジーが進んでるらしく、つまりアニメ「ソードアートオンライン」的なアレです。

主人公ナッシュは仮想世界と現実世界を行き来する<ハイブリット>で私立探偵。
そんな彼は雇い主で、VR世界のシステムを管理する多国籍企業シンターニス社から、ある依頼を受けます。

VR世界に接続中の人々<コネクト>がシステムに放たれたウイルスによって148人も殺されるという事件が発生し、今現在も多くのコネクトが殺されているというんですね。
で、事態をインターポールに嗅ぎつけられる前に、ウィルスを作ったテロ集団を探し出して抹殺してほしいと。

そこでナッシュはスラムに住むスーパーハッカーの友人モレルの協力を得ながら、調査を開始し、危険な目に会いながらも、テロリストのリーダー・カミーユとの接触に成功するのだが……。

というストーリーなんですね。

低予算映画ながらブレランの世界を再現

こうして仮想と現実、二つの世界で物語は進んでいくんですが、現実世界のビジュアルはもう完全にブレードランナーでしたw

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画像出典元URL / この「ブレラン」感!

監督・製作・脚本・音楽と一人4役を勤める新進気鋭のギイ=ロジェ・デュヴェールですが、本作を観ると彼がかなり熱烈なブレランフォロワーであることが、画面一発で分かります。

ブレランっぽい雑多なスラムの雰囲気、ブレランっぽいコンクリート打ちっぱなしの部屋、その空中にはスピナーが飛び交っていて、主人公ナッシュは無精ひげでヨレヨレのロングコートにブラスターっぽい銃を持ち、カップラーメンをズルズル啜ってますからねw

もう「俺はブレランが大好きだー!」という叫び声が聞こえてくるようでしたよw

ラジオで高橋ヨシキさんが「本当に涙が出るぐらい、よく乏しい予算で再現している」と話してましたが、実際観てみたら、確かに再現度の高さに驚きましたねー。

正直ブレラン好きなら、このビジュアルだけでも一見の価値ありだと思いますよ。

というわけで、ここからネタバレするので、未見の方はご注意を。

 

 

ブレランソードアートオンラインマトリックス

あとですね、多分この監督は結構なオタクなんじゃないかと思いました。
現実世界のビジュアルはブレランですが、多分それだけじゃなくて、ほかのSF映画や日本のアニメの影響も結構受けてる匂いがするんですよね。
テロリストの設定はまんま「マトリックス」だし、仮想現実の世界云々は多分「ソードアートオンライン」の影響なんじゃないかなと。他にも僕が気づいてないだけで色んな作品の影響があるかもしれません。

ただ、肝心のストーリーの方はちょと(´ε`;)ウーン…な感じでして、現実に嫌気がさした人類が仮想世界で暮らすという設定自体は面白いんですが、語り口があまり上手くないし、全体的に回りくどいわりには説明不足なので、観ていて内容が分からないまま物語が進んでいくんですよね。

コネクトとハイブリット

本作には、仮想空間に暮らす<コネクト>と、仮想空間と現実世界を行き来する<ハイブリット>という2種類の人類がいることが分かります。

コネクトの方は仮想空間に暮らしていて、ハイブリットの方は現実世界と仮想世界を行ったり来たりしているという設定らしいんですね。
ただ、コネクトが仮想世界で暮らすためには当然それだけのお金が必要なわけで、彼らは一体どうやって稼いでいるんだろう? と。

もし現実世界で仕事して仮想空間に住んでるなら、それってハイブリットと変わらないんですよね。

ハイブリットは多分、仮想空間で暮らせるお金がない貧困層で、なので仮想空間に行くために現実世界で働いているんじゃないかと思うんですが、だとしたらコネクトは一生分の料金を先払いして、肉体が死なないようにサーバーの管理会社に預けて肉体管理をしてもらってるってことかな?(´ε`;)ウーン…

死の概念

本作でゲーム会社にウィルス攻撃を仕掛けコネクトの大量虐殺を行うカミーユ率いるテロ集団「黒魔術師」。
彼らは仮想世界を管理する大企業が人類を仮想現実に縛っていると考えていて、仮想世界から人類を開放するためにテロを仕掛けているわけです。

ただ、殺人とは言ってもそれはあくまで仮想現実の世界なので、べつに殺された人も別アカを取って再度ログインすればいいだけのような気もするんですが、ナッシュの恋人ヘレナはウィルス攻撃で本当に死んじゃってるっぽくて、ナッシュは彼女がいないことを分かっていながら、多分、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)になってるヘレナの幻影に会うために仮想現実の世界に行りびたっているんですね。

この、「ウィルスによる死」がリアルな死なのか、あくまで仮想現実内での死なのかがハッキリ分からないので、観ていて混乱しちゃうんですよね。(´ε`;)ウーン…

ログイン中に死亡した場合、リアルでも脳に深刻なダメージを与えられて植物状態になるって事なのかなー?

 シンターニス社はなぜインターポールに通報しないのか

で、そのテロリストたちに対しシンターニス社はナッシュを雇って抹殺することで内々に解決を図ります。

シンターニス社がインターポールに通報しないで内密に解決しようとした理由は、実はウィルスを作ったのがシンターニス社だったから らしいんですが、大企業でサイバー管理をしているシンターニス社がなぜ殺人ウィルスを作ったのかはよく分かりません。

後半で明らかになるんですが、ヘレンはシンターニス社の社員でありながら黒魔術師の仲間だったらしいので、ウィルスを作ったのはヘレンだったって事なのかな?
(´ε`;)ウーン…

事ほど左様に、この世界が一体どんなルールで機能しているのかが分からないので、観ていて混乱するし、いろいろノイズになっちゃうんですね。

でも、そんなことはどうでもいいのです!w

この映画はブレラン大好きな監督が、乏しい予算の中で創意工夫しながら、大好きなブレランのビジュアルを再現しようと頑張って作り上げたブレランっぽい作品なので、(内容はともかく同志的な意味で)ブレラン好きな人なら案外憎めない作品じゃないかって思うんですよね。
時間も1時間30分程度だし、「お、この辺は中々ブレランぽいじゃん!」とか言いながら観れば、結構楽しめるんじゃないでしょうか。

まぁ、ブレランに興味のない人にはオススメできませんけどもw

興味のある方は是非!

 

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計算しつくされた作りで低予算を感じさせない秀作!「REC / レック」(2008)*R-15

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、スペイン発スパニッシュホラーの大ヒット作『REC / レック』ですよー!
主観映像(POV形式)のみで撮影された本作。「超怖い!」というネット評が多かったので、ずっと観るのを躊躇していたんですが(ビックリ系ホラーが苦手)、ツイッターのやり取りで、久しぶりに名前を見て、「よし! 一丁観てみっか!」と覚悟を決めてレンタルしてきましたよー!

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

封鎖されたアパートで起こった伝染病の惨劇を、テレビ番組クルーの手持ちカメラ視点でとらえた、ドキュメンタリー調の臨場感あふれるパニック・ホラー。『機械じかけの小児病棟』などで知られるスパニッシュ・ホラーの旗手ジャウマ・バラゲロとパコ・プラサがメガホンを取り、スペインで大ヒットを記録。ラストに映し出される衝撃映像に目がくぎ付けになる。

ストーリー:レポーターのアンヘラ(マニュエラ・ヴェラスコ)は、あるアパートに出動する消防団に同行取材を行う。現場にいたのは血まみれの老婆。老婆は警官にかみ付き、建物は外から封鎖されてしまう。救出に来た衛生士の口から、この建物で発生したと思われる人や動物を凶暴にする病原菌の存在を知らされ……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

まず最初に本作の感想を一言で言うと「超怖ぇえええ!!((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタ」でしたよ!

本作の怖さは、いわゆる「お化け怖い」的な生理的恐怖というより、お化け屋敷的な恐怖、つまりビックリさせられる系の怖さで、僕が最も苦手なタイプのホラーでしたw

ただ、同時に映画として超面白くて、劇中何度も関心してしまったんですね。

スペイン映画の規模を考えるとかなりの低予算作品だと思うんですが、それを感じさせない計算しつくされた作りで、観客を恐怖のどん底に引きずり込んでいく秀作でした。

ゾンビ映画

本作はいわゆるゾンビ映画です。(いきなりのネタバレ)
消防隊員に密着していたテレビクルーが、街中のアパートでゾンビに襲われるという非常にシンプルな物語なんですね。

POV形式

POV形式とは日本語で言うと「主観映像」の事。
登場人物の誰かが持っているカメラに記録された映像で物語が進むという設定で、モキュメンタリー(ドキュメンタリーっぽい劇映画)作品でよく使われます。

ホラー映画だと「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」、SF? だと「クローバーフィールド/HAKAISHA」が有名ですよね。

ただ、このPOV形式は観客に臨場感や没入感を与える一方で、かなり上手くやらないと映像が観ずらかったりとか、「こんな状況で撮影なんかしないだろう」とか「この映像は、誰が撮影してるの?」という違和感が目立つデメリットがあったりします。

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画像出典元URL:http://eiga.com

本作の場合、消防隊員の密着取材について行ったレポーターとカメラマンが、そのまま事件に巻き込まれるという設定なんですが、これが非常に上手い!
テレビクルーなら、どんな状況でも絶対カメラを手放さないのは違和感がないし、撮影してるのはプロのカメラマンなので、手ブレも最小限でストレスが少なく、観客は物語に集中できますからね。

ちなみに、本作でカメラマン役を演じているパブロ・ロッソさんは本職のカメラマンで、本作ではカメラマン役と撮影を兼任してるそうですw

登場人物

本作の主な登場人物は以下のとおり。

アンヘラ:深夜枠で放送してそうな情報番組のリポーターで仕事熱心。

パブロ:同番組のカメラマン。アンヘラと一緒に行動する。

消防隊員:「住人の部屋から悲鳴が聞こえた」という通報でレスキュー出動。

警官:同じく住民の通報でやってきていた。アパートの住人に責められてかわいそう。

老夫妻:アパートの住人で通報者。

扁桃炎の娘と母親:アパートの住人。父親は娘の薬を買いアパートから出ていた。

日本人一家:劇中、中国人と言われてるけど日本語だったので多分日本人。

研修医・ギレム:アパートの住人。老婆に噛まれた警官と消防隊員の手当てをする。

衛生検査員:調査のため重装備でアパートに乗り込んでくる。ゾンビウィルスの秘密を知ってるっぽい。

限定された空間

本作の舞台はスペインの街中にあるボロアパート。
消防隊員に密着取材していたレポーターのアンヘラ(マヌエラ・ベラスコ)とカメラマンのパブロ(パブロ・ロッソ)が、通報を受けて出動する消防隊員についていくと、現場のアパートでゾンビに遭遇、逃げ出そうとするも、政府機関 によってアパートは完全に封鎖され陸の孤島状態で、狭いアパートの中を次々ゾンビ化していく住人や警察官、消防隊員から逃げ回るんですが、この設定も上手い。

舞台をアパート内に限定してある種の密室状態にすることで、物語にサスペンスと臨場感が生まれるし、広さがない分、通常のゾンビ映画とは違い縦の移動がメインになるんですね。
さらに撮影場所が限定されているので予算も抑えられる上に、物語に必然性があるので映像の安っぽさを感じませんでした。

ゾンビではない

そして、本作のゾンビは厳密に言うとゾンビではありません。
彼らはウィルスに感染して凶暴化した人間という設定なんですね。(ダニー・ボイルの「28日後...」と同じ設定)

感染と感染のルールは、

1・感染者に噛み付かれると唾液・血液から感染する。

2・感染者は頭を撃たないと死なない。

3・感染者はとにかく噛み付いてくる。

の3点で、ほぼゾンビと一緒。
ですが、死人ではないので猛スピードで追いかけてくるんですねー。Σ(||゚Д゚)ヒィ~!!

そして、ゾンビじゃないから傷のメイクと血糊だけで、ゾンビメイクはしなくていいわけです。
それが逆に生々しさや凄惨さを増していて、より怖さに繋がってるんですよね。

セリフ

本作では、偶然事件に巻き込まれたアンヘラとパブロの「取材」によって、徐々に事件の「概要」が見えてくる作りになっているんですが、この設定が絶妙で、状況説明のセリフに説明感を感じないんですよね。

アパートの構造や中で何が起こっているのか、何階に誰がいるのかなど、物語に必要な情報が彼らのインタビューや警察の質問に答える形で登場キャラクターたちよって語られるし、さらに一見パニックになって怒鳴りあっているだけに見えるシーンでも、しっかり現状や誰が感染しているのかなどが分かるように、セリフが設計されているんです。

なので、観客は込み入った状況でも混乱することなく純粋に怖がれるし、一連の「感染の秘密」が隠された場所に、テレビクルー二人が自然にたどり着くようにストーリーが構成されているんですね。

また序盤の消防署のシーンでも、人間だった時の消防隊員の姿や、彼らが火事以外の通報でも出動する理由もしっかり説明されてて、上手いなーって思いました。

 

ただ、あえて文句をつけるなら、あまりにもストーリーをしっかり作り込みすぎている分、キャラクターがストーリーを進めるための駒っぽく感じたり、POV形式ゆえにホラーゲーム感を感じてしまったりするかもしれません。

それでも、僕がこれまでに観たPOV形式の作品の中では一番、違和感なく最後まで楽しめた(怖がれた)し、「ゾンビ映画」としても非常に新鮮でしたねー。

あと、アンヘラが可愛かったです。

どうやら、続編では本作ではまだ明かされてない謎も徐々に明かされるっぽいので、絶対観なくちゃって思いましたよー!(でも怖いw

興味のある方は是非!!!

 

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シリーズ再始動! 「ワイルド・スピード ICE BREAK」 (2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ヴィン様ことヴィン・ディーゼルの超人気シリーズ最新作『ワイルド・スピード ICE BREAK 』ですよー!

ここ最近、当ブログでは『トリプルX』シリーズや『リディック』シリーズの感想をアレコレ書いてきましたが、本作を観て「結局ヴィン様はワイスピが一番だな!」って思いましたよー!

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

世界的なヒットを記録したカーアクション『ワイルド・スピード』シリーズの第8弾。ヴィン・ディーゼルふんする主人公ドミニクの裏切りによって、強固な絆で結ばれていたファミリーが崩壊の危機にひんするさまを描く。ドウェイン・ジョンソンミシェル・ロドリゲスといった続投組のほか、オスカー女優のシャーリーズ・セロンヘレン・ミレンクリント・イーストウッドの息子スコット・イーストウッドら豪華キャストが新たに参戦。意表を突く波乱の展開に加え、巨大潜水艦まで登場する氷上カーチェイスにも注目。

ストーリー:誰よりも仲間を愛し大切にしてきたドミニク(ヴィン・ディーゼル)の裏切りにより、彼らの結束は崩れようとしていた。だが、彼の行動には謎のサイバーテロリストシャーリーズ・セロン)が関与していることがわかる。レティ(ミシェル・ロドリゲス)やローマン(タイリース・ギブソン)らはドミニクを取り戻すため、最大の敵デッカート・ショウ(ジェイソン・ステイサム)と手を組むが……。(シネマトゥディより引用)

感想

「ワイスピ」新章 開幕!

前作「ワイルド・スピード SKY MISSION」(2015年)の撮影の最中に、ブライアン・オコナー役のポール・ウォーカーが不慮の事故(プライベートでの交通事故)で亡くなって一時は継続も危ぶまれた本シリーズでしたが、「~SKY MISSION」では、脚本を変更し、途中まで撮影していた本人の映像+ポールの兄弟による吹き替えやCGで残されたシーンを撮影・編集して公開されました。
シリーズの立役者でもあるポール・ウォーカーに捧げたあのラストシーンは涙なしでは観られませんでしたねー。

そして、シリーズ最新となる本作は、ワイスピシリーズ最終章(三部作)の第一弾であり、シリーズ再始動となる作品でもあります!

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画像出典元URL:http://eiga.com /お馴染みのファミリーのみなさん

ヴィン様自身インタビューで「ポールから受け継いだ作品」と言うように、本作ではお馴染みのメンバーに加え、前作に引き続きミスター・ノーバディ役で登場のカート・ラッセル、本作から登場する助手リトル・ノーバディーとして、クリント・イーストウッドの息子でポール・ウォーカーとも親交の深かったスコット・イーストウッドも参戦。

さらに、前々作 「~EURO MISSION」のラスボス、オーウェン・ショウ(ルーク・エヴァンズ)と、前作「~SKY MISSION」のデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)兄弟。さらにふたりの母親役として大女優ヘレン・ミレンも登場します。

そんな本作で最強のスーパーハッカーサイファー”を演じるのは、「マッドマックス怒りのデスロード」のフェリオサ役でみんなのハートを鷲掴みにした、あのシャーリーズ・セロン姐さんですよー!

って、なんなのこの超豪華メンバー!((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタ

ストーリー

ドム(ヴィン・ディーゼル)と恋人レティ(ミシェル・ロドリゲス)がイチャイチャしているキューバで、車の故障を装ってドムに接近してきたサイファー。

実は彼女、前々作・前作の事件の首謀者だったんですね。
そんな彼女はドムの「ある弱み」を握っていて、強制的にドムを仲間に引き入れます。

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画像出典元URL:http://eiga.com / シャーリーズ姐さんとヴィン様、夢の共演

後日、外交保安部の指令で、ドムたち「ファミリー」と共に大量破壊兵器・電磁パルス砲の奪還を成功させたホブス(ドウェイン・ジョンソン)でしたが、ドムが突如裏切り、電磁パルス砲を盗まれた上にホブスは刑務所送りになってしまいます。

その刑務所には、前作でホブスが捕らえた最強の敵、デッカード・ショウも収監されていて……。という物語。

絶対的リーダーのドムを敵に回した「ファミリー」はどうなるのか、そしてドムはどうして裏切ったのか、果たして「ファミリー」はどうなるのか!? という流れなんですが、まぁ、その後の展開は、多分みなさんが察した通りなんですよね。

なので、ぶっちゃけストーリー的には何ら目新しいことはないんですが、本シリーズの魅力はストーリーじゃないですからねーw

全部実車! 驚愕のカーチェイスシーン

で、シャーリーズ姐さんことサイファーの次なる狙いは、ロシアの核ミサイルの発射スイッチ。
ドムに命じて、ロシア国防大臣が持つ核ミサイル発射スイッチを狙うわけですが、ここでシャーリーズ姉さんのスーパーハッカーぶりが発揮されます。(大臣もそんな危ないモノを持ち歩くなよって話ですがw)

アジトでもある飛行機からコンピューター制御の車を次々にハッキングした、何十台もの「ゾンビカー」で大臣の車を襲わせ、さらには立体駐車場の車を雨あられと落としまくるという荒業を披露。この一連のシーン、CGじゃなくて全部実車を使ってるので、超見ごたえがありましたねー!

結果、60数台もの車をクラッシュさせたそうで、これぞワイスピ! って感じでしたねー!

名車多数、戦車も登場!

ワイスピでは登場するスーパーカーやマッスルカーの数々は、本シリーズに登場するキャラクターの大事な相棒でもあり、ある意味ではそれぞれがキャラクターと同等の存在と言えるのではないでしょうか。
本作で登場する車を紹介すると、

ドムが乗るダッジ・チャレンジャー SRT デーモン 17年型&プリムス・ロードランナー GTX 72年式&ダッジ・アイス・チャージャー。
(ドムといえばダッジダッジといえばドム)

ホブスが乗るランドローバー・ディフェンダー 90・アイス・ラム(キャタピラ仕様)
(4WDのゴツイ車がいかにもホブスらしい)

ローマンが乗るランボルギーニ・ムルシエラゴ LP640
(一目惚れで決めるも、鮮やかなイタリアンレッド裏目にw)

スコット・イーストウッド演じるリトル・ノーバディーが乗るスバル・BRZ
(ブライアンの後継者といえば日本車ですね!)

テズが乗る高速戦車ハウ&ハウテクノロジーズ・リップソー
(超早いし運転席で操作できる機関銃も標準装備のハイテク戦車!)

などなど。

今回も名車・スーパーカー・マッスルカー・戦車と超かっこいいカスタムカーがバリバリ走りまくったり戦ったりしますよ!

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画像出典元URL:http://eiga.com / 今回の敵は巨大潜水艦!

そして、これらの車と戦うのがロシア製の潜水艦ですからね!
クライマックスでは、凍った海の上で潜水艦とスーパーな車が熱いバトルを繰り広げますよー!(*゚∀゚)=3 ムハー!
前々作では戦車・前作では戦闘ヘリ・そして本作では潜水艦と、これで陸・海・空オールコンプリートですよ!w

ロック様とステイサムの熱いバトルも見逃せない!

もちろんカーアクションだけでなく、本作では前作「~SKY MISSION」で熱いバトルを繰り広げたロック様ことドウェイン・ジョンソンと、ジェイソン・ステイサムのアクションも堪能できますよー!

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画像出典元URL:http://eiga.com / ステイサムvsロック様

二人の直接対決はないですが、アクロバティックな動きとスピードのステイサムに対し、パワーファイターで鋼の体を持つロック様が刑務所で無数の囚人や看守を相手に大乱闘を繰り広げます。

ステイサムはさらに飛行機の中でも子連れガン・フー? を繰り広げ、ロック様は迫り来る魚雷を足で蹴ったりと、相変わらずのハチャメチャぶり。

まぁステイサム演じるデッカードが過去にやってきたことを考えれば、シリーズのファンとしては少々複雑ではありますが、でもステイサムのアクションはやっぱりカッコイイんですよねー!

シャーリーズ姐さんの存在感

そんな強烈なキャラクターたちにも、一歩も引かないのが我らがシャーリーズ姐さん。
ヴィン様やステイサム、ロック様を向こうに回して、強烈な存在感と、(もし僕がドMだったらひと睨みで昇天してしまう程の)見事なドSっぷりを発揮、非常に憎っっっっっったらしい悪役を好演してました。

特に中盤のある展開は「コイツ、マジ許さん! ι(`ロ´)ノムキー」と思わせる悪辣さでドムをも圧倒、さすがシャーリーズ姐さんだなーって思いましたねー!

アクション映画ではなく「ワイルド・スピード

もちろん映画として特別素晴らしいとか、ストーリーやアクションが際立って素晴らしいなんて事はなく、物語は相変わらず大味だし、内容や設定にも首を傾げてしまう部分もないではないんですが、そこを指摘したら負けっていうか、ぶっちゃけ観客に、細けぇこたぁいいんだよ! って思わせてしまう時点で勝ちっていうか。

このシリーズ(特に「~MEGA MAX」以降は)は、もう映画の枠では収まらない、もはやワイルド・スピード」というジャンルなんですよねー。

例えば、何も起こらなくてもドムを中心とした「ファミリー」が集まってバカ話しているだけでも、それはそれで楽しめちゃうみたいな、そんな魅力が本シリーズにはあると思います。

興味のある方は是非!!

 

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カイザー・ソゼは何者だ! 「ユージュアル・サスペクツ」(1996)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、日本では1995年にアメリカで公開されたサスペンス映画、『ユージュアル・サスペクツ』ですよー!

僕は恥ずかしながらこの作品を知らなかったんですが、先日ツイッターでネットのお友達から教えてもらって早速観てみたら、超面白かったです!!

ただ、ネタバレなしで感想を書くのがほぼ不可能な映画なので、今回は後半部分でネタバレしますが、多分、最初の1回目は何も情報を入れずに見たほうが絶対楽しめる作品だと思うんですね。

なので、もしまだ本作を未見で興味のある方は、是非、先に本作を観てから、この感想を読んでくださいねー!

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

船舶の炎上事故を調べていた捜査官クイヤンは尋問していたヴァーバルから奇妙な話を聞かされる。6週間前に銃器強奪事件の容疑者として集められた5人が、釈放後、協力して宝石強奪を決行。ブツをさばくためにLAの故買屋と接触した5人は、そこで新たなヤマを依頼されるが、宝石と聞かされていた獲物は麻薬で、トラブルから相手を射殺してしまう。そして恐慌状態の彼らの前に、伝説のギャング“カイザー・ソゼ”の右腕と名乗る弁護士が現れたというのだ……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

サンペドロ港に停泊中の貨物船が大炎上し27人もの死者が出る大事件が起こり、その場にいた生き残りヴァーバル・キント(ケヴィン・スペイシー)という、体に障害を持つ男が警察に連行されます。

この事件に至る全容をヴァーバルが刑事に語るうちに、謎の全容が次第に明らかになっていくんですが、そこには思いもよらない真実が隠されているというのが本作のストーリーなんですね。
ただ、これがホントに一筋縄ではいかないというか、何重にもトラップが仕掛けられていて観終わったあとに考えているうちに「あれ? あれれれ????」ってどんどん混乱していくんですよ!

スタッフ

本作は「X-MEN」シリーズの監督としてお馴染み、ブライアン・シンガーの長編2作目の作品です。
彼は本作で一躍脚光を浴び、「X-MEN」(2000)の監督に抜擢されたんだそうですね。

そして、アカデミー賞を受賞した本作の脚本を務めたのが、トム・クルーズ主演の「アウトロー」や「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」で監督も務めたクリストファー・マッカリー。この人もやはり、本作がキッカケで活躍の幅が広がったみたいですねー。

キャスト

本作では、ガブリエル・バーンケヴィン・スペイシーベニチオ・デル・トロなど、名だたる俳優が出演しているんですが、中でも実質、主役といっても過言ではないケヴィン・スペイシーの存在感のある熱演(怪演?)は素晴らしかったですねー!

主な重要登場人物

本作で重要と思われる、主な登場人物がこちらです。

まずは事件に関わるメインの5人。

ディーン・キートンガブリエル・バーン

本作の主役。
汚職から詐欺や殺人まであらゆる悪事に手を染めてきた元警官だが、堅気に戻りレストランを経営中。

ロジャー・”ヴァーバル”・キント(ケヴィン・スペイシー

左半身不随の詐欺師で本作の“語り部
貨物船爆破事件で、唯一無傷で生き残った男。

トッド・ホックニー(ケヴィン・ポラック)

爆破のスペシャリスト

マイケル・マクマナス(スティーヴン・ボールドウィン

フェンスターと共に数々の強盗や犯罪を犯してきた根っからのワル。

フレッド・フェンスター(ベニチオ・デル・トロ

マクマナスとコンビを組むチンピラ。

 

事件を追う刑事と↑の5人の関係者。 

イーディ・フィネラン(スージー・エイミス)

キートンの恋人で、有能な弁護士。

デビッド・クイヤン(チャズ・パルミンテリ

ニューヨーク関税局特別捜査官。
警官時代のキートンとは同僚。
船舶爆破事件にキートン絡んでいると知りサンペドロまで飛んできた捜査の鬼。

ジャック・ベア(ジャンカルロ・エスポジート

FBI捜査官。
ポーランド人による麻薬密輸事件を追っていた。

ジェフリー・レイビン(ダン・ヘダヤ)

サンペドロ警察刑事。

 

事件の謎を深める登場人物。

カイザー・ソゼ(?)

もはや都市伝説と化した謎の大物ギャング。
その正体を知るものはいない。
ポーランド人ギャングと抗争したらしい。

コバヤシ(ピート・ポスルスウェイト

カイザー・ソゼに使える謎の弁護士?。

アーコシュ・コバッシュ( モーガン・ハンター)

ハンガリー人組織の下っ端で、船舶爆破事件の生き残り。
貨物船の爆発で火傷を負うが、カイザー・ソゼの顔を見ている。

アルトゥーロ・マルケス(カスチュロ・ゲッラ)

アルゼンチン組織の密告屋で脱走犯。
カイザー・ソゼの正体を知る? 男。

レッドフット(ピーター・グリーン)

ロサンゼルスのチンピラで闇取引の仲介人。

ストーリー

船舶爆破事件から始まった物語は、6週間前に銃器強奪事件の容疑者として「面通し」のために5人の前科者(ユージュアル・サスペクツ=常連の容疑者)が集められる場面に飛びます。

そしてこの事件で知り合った5人はNY警察への復讐も兼ねて、警官の汚職が絡んだ宝石強奪を実行。盗んだ宝石を金に変えるためカリフォルニアで取引相手の故買屋レッドフットに会います。

そこで、レッドフットに新たな宝石強奪をもちかけられ実行するも、ターゲットが運んでいたのは宝石ではなく麻薬で、しかも抵抗されてターゲット3人を殺害してしまうんですね。(強盗だけならターゲットも警察に言えないけど、殺人になると警察が動くのでピンチに陥る5人)

話が違うと詰め寄る彼らに、レッドフットは依頼人に会わせると言い、5人が指定された場所に行くと、そこにはコバヤシと名乗る謎の老人が。

彼は、自らを伝説のギャング、カイザー・ソゼの代理人であると説明。
彼らはそれぞれ過去に、(知らなかったとはいえ)カイザー・ソゼの計画を邪魔してしまった事を知らされ、その“借り”を返すため、カイザー・ソゼと敵対する組織の麻薬密輸船舶を爆破、乗組員を皆殺しにするよう“命令”されて前述の事件を起こした事が、ヴァーバルの回想で語られていきます。

 

というわけで、ここから先はネタバレするので、未見の方はご注意を。

 

 

 

カイザー・ソゼの正体

本作を観た人なら分かると思うんですが、この作品の中盤以降でカイザー・ソゼの正体は、ヴァーバルじゃないかと察しがつくし、ラストまで観ると「ほらやっぱり」って思いませんでしたか? 僕は思いました。

でも観終わって物語を振り返ると「あれ? あれれれ?」ってなるんですね。で、気づいたんですが、実はこの映画は表面的には、カイザー・ソゼの正体を探るミステリー形式の物語になってますが、実はカイザー・ソゼの正体はどうでもいいんですよねー。

つまり、カイザー・ソゼの正体を推理し始めた時点で、刑事たちも僕らも、ヴァーバルの術中にハメられているんです。

本作では、語り手のヴァーバルの証言(回想)を、聞き手のクイヤン捜査官(と観客)が聞く形式で物語が進みますが、そもそもクイヤンはヴァーバルではなく、警官時代に数々の犯罪を犯し、隠蔽してきたキートンの罪を立証するためにサンペドロまで来ているわけです。

つまり本来、本作の主人公は、キートンなんですが、それがいつの間にかヴァーバルの語りによってカイザー・ソゼの正体を追う物語にすり変えられてしまったんですね。

そして壁に貼られた紙やコーヒーカップの文字などから分かる、あの衝撃のラストで、ヴァーバルが語った事件の概要や、キートンら5人との関係、彼の経歴の多く(もしかしたら全部?)が、彼の作り話であることが分かります。

ヴァーバルは最初から「信頼できない語り手」だったわけです。

カイザー・ソゼという人物が実在するのかしないのか。
ソゼの正体は本当にヴァーバルなのか、コバヤシとは本当は何者なのか。
キートンは本当に死んでいるのか、もしかしたらキートン自身がカイザー・ソゼではなかったのか。

今まで観てきた物語はどこまで本当でどこから嘘なのか

物語の真実は、ラストシーンでヴァーバルが吐き出したタバコの煙みたいに霧散してうやむやになってしまいます。

で、それに気づいた瞬間に、劇中に残されたわずかな手がかりから僕らは物語の真実を探ろうと躍起になるわけで、つまりこの映画は、終わってからが本番なんですね。

そして、真実を探して2回目を観た時には、最初に観ていた物語とはその姿を変えているし、それ自体がヴァーバル……というか、本作スタッフの術中にハマっている証拠でもあるんですよね。
何故なら、いくら検証しても劇中に本当の真実があるかないかすら分からないんですから。

ホント、まんまと騙されたー! って思うんですが、あまりに綺麗に騙されすぎてムカつくどころか逆に感動してしまうのは、この虚実入り混じった物語に真実味を持って観客を引き込む、ケヴィン・スペイシーの名演と脚本の見事さ。それを見事に、そしてスタイリッシュに映像化して見せた監督ブライアン・シンガーとスタッフの手腕なんですよねー。

もう20年以上前の作品ですが、まったく古さを感じなかったし、脳みそをグラグラ揺さぶられるような名作でした!
「カイザー・ソゼ!!」

興味のある方は是非!!

 

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ダメおやじが愛する息子のためヒーローに!? 「アメリカン・ヒーロー」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのはダメ~~~~~~~~~な中年男が、愛する息子のためにヒーローになるコメディ映画『アメリカン・ヒーロー』ですよー!

ほかの作品のDVDで予告を観て「これ多分好きな映画」と思って、早速レンタルしてきました。
で、まだ新譜レンタル期間ではありますが、今回は、後半部分はネタバレありで書くので、これから観てみようという方はご注意を。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

ブレイド』『ブレーキ』などのスティーヴン・ドーフが主演するSFコメディー。酒、女、ドラッグざんまいの超能力者が、息子のためにギャングに戦いを挑む。メガホンを取るのは、プロデューサーとしても活躍している『ロンドン・ヒート』などのニック・ラヴ。『アンダーカバー・ブラザー』などのエディ・グリフィン、『リベンジ・リスト』などのルイス・ダ・シルバ・Jrらが共演。ダメ男からヒーローへの過程に注目。

ストーリー:実家暮らしでまともに働こうとせず、酒と女とドラッグに溺れながら連日のようにパーティーに明け暮れているメルヴィン(スティーヴン・ドーフ)。彼は特殊なパワーを持つ能力者だが、その力を使った余興でこづかいを稼ぐ始末。別れた妻に親権を奪われて息子との対面もままならないメルヴィンは、心を入れ替えようと決意する。やがて、街のギャングが少年たちを犯罪に巻き込もうとしているのを知った彼は……。(シネマトゥディより引用)

感想

本作の内容を一言で言うなら「超スゴイ能力を持っていながら、ダメ男すぎて妻子に捨てられた中年が、愛する息子のため一念発起してヒーローになる」物語です。

この映画、僕はほかの映画のDVDで流れる予告編で知りまして。
個人的に負け犬主人公の映画が大好物なので「これは見なくては!」とレンタルしてきたんですよねー。

結果、個人的には当たりの映画だったし、多分、ヒーロー映画だと思って観てしまうと肩透かしを食らってしまうと思うんですが、(超能力を除けば)ダメだけど気のいい男の日常を描いた小さな物語として観ると、中々いい感じの物語なんじゃないかと思いましたねー。

主な登場人物

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画像出典元URL:http://eiga.com / ダメ男だけどスーパーパワーの持ち主メルヴィン

メルヴィン(スティーブン・ドーフ)
女・酒・ドラッグに溺れて実家で自堕落に暮らすダメ中年。
ダメすぎて裁判で一人息子との面会を禁止されているが、実は念じるだけで何でも好きなように動かせるサイコキネシス能力を持っている。

 

http://eiga.k-img.com/images/movie/87253/photo/f2e1da09eb134a40/640.jpg?1500622253

画像出典元URL:http://eiga.com / 口は悪いけどメルヴィンを心配してるルシール(左)

ルシール(エディ・グリフィン)
メルヴィンの親友。
口は悪いがいつもメルヴィンを心配している親友。
イラク戦争に従軍し、敵の銃弾で下半身不随になり車椅子生活。

 

ドリーン(キーナ・ファーグソン)
メルビンの元妻。息子の親権をもち、メルビンと息子の面会を禁じている。

 

ルーカス(ヨハンス・マイラス)
メルヴィンの友達。
地元高校の数学教師で長年メルヴィンの能力を調べている。

 

ネイソン
地元を牛耳るギャングのボス。
平気で人殺しや子供にもドラッグを売る非情な男。

 

メルヴィンは12歳の頃に両親が離婚し、以来、貧困地域に暮らしているので、基本メルヴィン・妹・母親以外の住人はほぼ全員黒人です。

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画像出典元URL:http://eiga.com / せっかくの能力も使い道が分からず見世物に

30を過ぎても実家暮らしで、定職も持たず(自分の能力を使って大道芸でマジックショーをしてる)自堕落な生活をしている彼ですが、街の住人たちはほぼ顔見知りで、人柄の良さからかメルヴィンはわりと人気者なんですよねー。
しかし、彼は離婚調停の結果、愛する息子に会えないのが寂しくて仕方ないんですね。

そんな寂しさを紛らわせるかのように、過剰摂取していた頭痛薬・ドラッグ・酒が祟り、極度の心不全で倒れたのをキッカケに「自分を変えたい」と一念発起。
酒もドラッグもやめて、身体と能力制御のトレーニングを始めます。

そんなある日、ギャングのネイサンが自分の息子の友達(小学生)にドラッグを売りつけているのを見つけたメルヴィンは……。という物語。

こんなふうに書くと、クライマックスで能力を使った大バトルが……なんて思うかもですが、なんせ制作費が日本円で一億ちょっとという、アメリカ映画としてはかなり低予算映画なので、そんなに大したことは起こりません。(相手も地元のチンピラだし)

本作の肝はアクションではなく、メルヴィンと友人や家族との関わりや、「負け犬が立ち上がり小さな成功を掴む」という人間ドラマですからねー。

というわけで、ここからネタバレしていきますよ!

 

 

インタビュー形式

本作ではちょいちょい、メルヴィンを取り巻く人びとがインタビューで、彼の人となりを語るシーンが挿入さる半モキュメンタリー形式で進みます。
このインタビューで、メルヴィンが街の人びとや友人に好かれる理由が分かるし、本人の気持ちも分かる作りになってるんですね。

メルヴィンは2005年のハリケーンカトリーナの時に、その能力(テレキネシス)で、知り合いを救っていたり、従軍で車椅子生活になり奥さんに捨てられ傷ついたルシールを家に住まわせたりしてるんですね。
劇中でもルシールの恋の手助けに一役買ったりもしています。

つまり、メルヴィンは自堕落でどうしようもない男ですが善人で気のイイやつで、だからこそ街の人たちは彼のことを好いているし心配もしてるんだと思うんですね。

能力と代償

これもハッキリとは語られてないので間違ってるかもですが、どうもメルヴィンの能力は彼の感情の起伏と直結しているようで、つまり怒りや悲しみなど強い感情によって、能力が暴走してしまうのではないかと思うんですよね。

で、彼の能力は魔法の便利アイテムではなく、使う力が大きければ大きいほど身体にかかる負担も大きく、メルヴィンは頭痛や心臓が弱るなどの副作用が出るようです。

だから彼は、能力が暴走しないよう感情をある程度フラットに抑えるために、酒やドラッグに頼っていたのではないかと思ったりするんですね。

また、彼の父親が家族を捨てた原因も、多分メルヴィンの能力が原因だと思うし、もしかしたら奥さんとの離婚も彼の能力が関わってるかもしれません。

つまり彼にとって超能力は、彼の人生の大半を不幸にしてきた呪いのようなものだったんじゃないかと思うんですね。

しかし、不摂生からの心肺停止を経験した彼は、人生を変えようと酒やドラッグに逃げることをやめ、次第に前向きになっていきます。
そんなある日、下校中の息子を物陰からそっと見守っていると、息子の友達にネイサンの手下がドラッグを売っているのを目撃。
怒ったメルヴィンは能力を使って、ネイサンに「子供達を傷つけないように」と脅します。ところが、それに怒ったネイサンは報復としてメルヴィンの親友ルシールを銃撃、怪我を負わせるんですね。

で、それが原因で、ルシールや他の友人にも避けられるようになったメルヴィンの怒りと自己嫌悪がないまぜになった感情は暴走寸前で、近くの建物を壊してしまうほど。

しかも、さらに友人を狙われたメルヴィンは、ついにネイサンのアジトに乗り込み…という展開になっていくんですねー。

ただ、これはメルヴィンの個人の復讐(リベンジ)ではなく、ネイサンから家族や友人を守るための復讐(アベンジ)で、だからタイトルが「アメリカン・ヒーロー」なんだと思うんですよね。

アメリカン・ヒーローは常にアベンジの為に戦っているので。

深読みしすぎかなー?w

もしもキリストがダメ男だったら

本作を観た人なら分かると思いますが、この作品が聖書が元ネタにした物語なのは明白ですよね。
メルヴィンが数々の「奇跡」を起こしたり心停止から回復するのは、あからさまにキリスト復活のメタファーですしね。

つまり、本作は「もしも現代アメリカにキリストが現れたら」という物語です。

まぁ、本作のキリスト(メルヴィン)は、死ぬほど徳が低くて自堕落でどうしようもないダメ男ですけどもw

 

ネットレビューを見ると、本作はわりと酷評が多くて、映画的欠点については確かにその通りって思う部分も多いんですが、個人的には嫌いになれない作品でした。

興味のある方は是非!

 

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元ジブリの作画監督が描くロードレースの世界「茄子 アンダルシアの夏」(2003) 「茄子 スーツケースの渡り鳥」(2007)OVA

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、黒田硫黄原作の短編漫画集「茄子」に収録された「アンダルシアの夏」「スーツケースの渡り鳥」を、元ジブリ作画監督でアニメ界きってのサイクリストでもある高坂希太郎が、監督・脚本・キャラクターデザイン・作画監督を務めてアニメ化した同名作品、『茄子 アンダルシアの夏』と続編『茄子 スーツケースの渡り鳥』ですよー!

「~アンダルシア」の方は公開当時観たんですが、「~スーツケース」の方は出てたことに気づかず、ツイッターの紹介で知り「だったら、両作一緒に観てしまえ!」と今回レンタルしました。

というわけで、今回は2本一気に感想を書きますよー!

 

茄子 アンダルシアの夏 (2003)

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画像出典元URL:https://www.amazon.co.jp

あらすじと概要

スペイン・アンダルシア地方。そこでは現在、世界3大自転車レースの1つ“ブエルタ・ア・エスパーニャ”が行われていた。ペペはチームの一員としてこのレースに参加していたが、その最中にスポンサーから解雇通告を受けてしまう。やがてレースは彼が生まれ育った村にさしかかった。その頃、村の教会ではペペの兄アンヘルとぺぺのかつての恋人カルメンの結婚式が行われていた。ぺぺの心にこれまでの人生が駆け巡る。それを振り払うようにひたすらペダルを漕ぐペペ。そんな時、突然黒いネコが道に飛び出し、レースは思わぬ展開をみせるのだった…。(allcinema ONLINEより引用)

感想

実は本作の公開当時、僕はてっきりジブリ作品だと思ってました。(制作はマッドハウス
キャラがいかにもジブリだったし、ワイドショーの紹介でもジブリというワードが多かったからだった気がします。
それもその筈で、監督の高坂希太郎は「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」といったスタジオジブリ作品で作画監督を務めていて、宮崎駿の右腕と呼ばれたアニメーターだったんですね。

同時に、アニメ界きってのサイクリストでもあり、自転車ロードレースにも造形が深い香坂氏だけに、今回改めて観直してみると、ロードレースの駆け引きや迫力、緊迫感や臨場感が伝わってくる熱い作品でしたねー!

ロードレース終盤 47分をリアルタイムで体感!

僕のロードレースの知識は「弱虫ペダル」だけだったので、本作の感想を書くにあたってネットで調べてみたんですが、1チーム9人編成で、8人のアシストが、風よけになったり、他のチームを牽制したり、勝負を仕掛け攪乱したり。そんな駆け引きを繰り広げながら、エースをゴールに運ぶチームスポーツなんですね。

面白いのは、勝負に勝つために敵のチームの選手と協力することもあるってところ。

本作の主人公ぺぺは、普段脚光を浴びないそんなアシストの1人なんですが、地元スペイン開催の自転車ロードレース「ヴェルタ・ア・エスパーニャ」参戦中に、所属するチームの不振を彼のせいにされ、レース中に解雇の危機に立たされます。
しかし、あるアクシデントから、急遽エースとして勝負を任されることになるという物語なんですね。

しかも、その日は兄の結婚式で、相手はペペが兵役中(スペインは2001年まで徴兵制があった)兄に取られた元カノで、灼熱のスペインでのトップ争いと、ペペの故郷や家族への愛蔵入り混じる複雑な思いを同時並行で描いていくのです。

そんな本作で圧巻なのは、なんといってもロードレースの描写で、空撮カットやギアチェンジのディテール、監督と選手の無線でのやりとり、強風での陣形、ロードレーサー(競技用自転車)のスピード感などなど、ロードレースの面白さを47分という短い時間にギュッと詰め込んで、(僕を含め)ロードレースを知らない人にも、臨場感や興奮が伝わる作りになっているところ!
ラストのゴール争いは、観ているこっちも思わず体に力が入ってしまいました!

 

茄子 スーツケースの渡り鳥 (2007)*OVA

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あらすじと概要

黒田硫黄の漫画『茄子』の短編『スーツケースの渡り鳥』を原作としたサイクルロードレースアニメ。2003年に劇場公開された『茄子 アンダルシアの夏』の続編にして、日本アニメとして初めてカンヌ国際映画祭の監督週間に正式出品されている。“ヴェルタ・ア・エスパーニャ”の最終日前日に国民的英雄レーサーのマルコ・ロンダーニが自殺……。ぺぺのチームメイトのチョッチは同郷レーサーの死から、レーサーとしての生活に疑問を感じはじめるのだった。来年でチームがなくなってしまうパオパオビールだが、ジャパンカップの舞台・宇都宮は地元の応援で盛り上がる。そのレース前日、チョッチは引退をぺぺに告白。ぺぺは勝つために生きていると聞こうとしない。チーム・パオパオはレースに勝つことができるのだろうか?(allcinema ONLINE より引用)

感想

そんな前作から4年。
続編としてOVAで発表されたのが、続編となる本作「茄子 スーツケースの渡り鳥」です。日本では劇場公開されなかったものの、日本アニメとして初めてカンヌ国際映画祭の監督週間に正式出品されたそうですよ。

本作は毎年10月に栃木県宇都宮市森林公園周回コースで2日間にわたり開催される開催されている「ジャパンカップサイクルロードレース」が舞台で、前作とは真逆で大雨の中で、日本らしいテクニカルなコースを10周するレースなんですね。

本作では、前作の主人公ぺぺはアシストに回り、チームメイトでイタリア人のチョッチが実質的な主人公になってましたねー。

夢を手に入れた男と、夢に届かない男の物語

本作では冒頭、ぺぺのレースシーンから物語はスタートします。
街中を猛スピードで疾走するぺぺの後ろをサポートカーで追いながら「ベンガベンガ」言ってるのは、ぺぺ役の大泉洋が出演してる北海道テレビの深夜番組「水曜どうでしょう」のデレクター藤村忠寿さん、運転手はカメラマンの嬉野雅道さんです。

そういえば、ジブリ内で「水曜どうでしょう」が流行って、その縁で大泉くんが「千と千尋の神隠し」に出演することになったんだっけw

まぁ、それは置いておいて。

そんなレースの様子とオーバーラップするように、イタリアの国民的英雄レーサーのマルコ・ロンダーニが自殺していたことが分かるようになってます。(モデルはマルコ・パンターニ?)

マルコと同郷で、彼を慕っていたぺぺのチームメイト チョッチは彼の死にショックを受け、また自分のレーサーとしての人生に疑問と葛藤を抱きながら、ジャパンカップに挑むという物語なんですね。

チョッチにとってマルコは同業ではあるものの大スターの『持つ者』で、チョッチ自身はその他大勢の『持たざる者』。なのに自分が望む物を全て手に入れたマルコが自ら死を選んだことに彼は怒りを感じているし、同時に『持たざる』自分がいつまでもレースにしがみついたところで将来何も残らないのではと悩むわけです。

そして本作ではもう一人の重要人物ザンコーニという選手も登場します。
彼もまた過去に世界選手権やジロ・デ・イタリアを制した名選手で『持つ者』なんですね。

本作では、ジャパンカップのレースを通して、ペペとチョッチ、マルコとザンコーニがそれぞれ対比として描かれていて、『持つ者』『持たざる者』が夢を追い続けることに対する、彼らそれぞれの「答え」を描いていると思ったし、これってスポーツだけの話ではなく、あらゆる人が感じる普遍的な物語なんですよね。

で、本作でもレースシーンの描写は迫力満点ですが、前作に比べるとドラマ部分に重点が置かれている分、若干控えめな印象を受けましたねー。

あと、前作でバルの亭主と息子として登場したエルナンデスとフランキーが、なんの説明もなく寺の住職と息子して登場してるんですが、これはいかがなものかと。

多分、ファンサービス的なノリなんでしょうけど、日本の寺の住職なのに(劇中では出ないですが)役名はそのままなので観てて混乱したし、もし彼らが日本人だとしたら外国人のペペたちと普通に会話してるのは変じゃない? っていうノイズにもなっちゃうんですよね。

まぁ、それ自体は物語に直接影響しないし、些細なことではあるんですが。

あと、ペペのキャラデザがルパンっぽいなーって思いましたw

 

ともあれ、日本ではマイナースポーツであるロードレースの世界を体感出来る貴重なアニメなのは間違いないし、変に説明過多にしないで登場人物の心情やテーマを物語の流れとセリフ、絵で見せていく演出は映画的で個人的に好感が持てました。

両作合わせても101分しかない短い作品なので、映画を一本観たつもりで両作を一気に観てみるのも面白いかもしれませんね。

興味のある方は是非!!

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