今日観た映画の感想

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リベンジ映画化と思ったらマンハント映画だった「狼よさらば」(1974)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「うーんマンダム」である世代にお馴染みのチャールズ・ブロンソン主演作『狼よさらば』ですよー!

現在ブルース・ウィリス主演で公開中の「デス・ウィッシュ」の元ネタだと聞いたので、久しぶりに観返してみました。

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あらすじ

ニューヨークの会社員ポール。ある日、彼のもとに1本の電話が入る。それは、妻と娘が病院に運び込まれたという信じられない知らせだった。そしてポールが病院へ駆けつけた時には、妻は死亡していた。そこで、妻が何者かに襲われた挙げ句に殺され、娘も暴行されたことを聞かされたポールは憤り、悲しみに打ちひしがれる。そんな時、ひょんなことから銃を手に入れたポール。彼はその銃を密かに携え、公園で襲いかかってきたチンピラを射殺。これをきっかけに沈鬱な状態が吹っ切れ、以来、次々とチンピラたちを仕留めていくポールだが…。(allcinema ONLINE より引用)

感想

狼よさらば」は多分、小学生の時にテレビ洋画劇場で観たっきりで、てっきり奥さんを殺された男が犯人に復讐するストーリーだと思い込んでいたんですが、久しぶりに観返してみたら全然違って、チャールズ・ブロンソン、まったく復讐してなかったです。

本作をざっくり一言で説明するなら、平和主義者だった男が拳銃を手に入れて殺人鬼になるという物語なんですね。

時代背景

本作の原作「デス・ウィッシュ」(死の願望)は、1972年にブライアン・ガーフィールドが発表した小説です。

その当時のニューヨークは非常に治安が悪く、特に貧困層が多かったハーレム地区は世界一危険な街みたいな感じで言われていたんですね。
この当時、僕はまだ子供でしたがテレビなんかでも、いかにニューヨークが危険か みたいな特集をよくやってたのを覚えています。

というのも、富裕層が危険で住みにくいニューヨークから、郊外の町に移り住んだことでニューヨークの税収が落ち、警官の給料は下がり、また予算削減のため人員削減までされたせいで、警察が機能しなくなっていたんだそうです。

その後、1990年代にルドルフ・ジュリアーニ市長の改革によって、治安が回復し徐々に安全な街になったらしいんですね。

本作は、そんな最も危険だった1970年代のニューヨークが舞台になっています。

ビジランテ

ビジランテは日本語で「自警団」という意味です。
つまり、警察などの公的機関とは別に、自分たちの安全を自分たちの手で守るための組織で、西部劇を観れば分かるように、アメリカでは開拓時代からずっと、このビジランテ精神が根付いているんですよね。(アメリカが銃社会なのもそのため)

マーベルやDCのスーパーヒーローたちも、基本、全員ビジランテです。

で、本作でチャールズ・ブロンソン演じるポール・カージーは、字幕では「アマチュア刑事」と書かれてますが、英語ではハッキリ「ビジランテ」と呼ばれているんですね。

ビジランテ? いえいえマン・ハンターです

暴漢どもに奥さんを殺され、娘を嬲りもの(彼女はそのショックで精神病に)にされてしまった平和主義者のポール・カージーですが、この時点ではまだ復讐などは考えていなくて、自分の身を守るために靴下に25セント硬貨を沢山入れた武器を携帯。

金目当てに近づいてきた強盗をこれでぶん殴ります。

この時、強盗相手とはいえ暴力をふるってしまった自分に強いショックを受けたカージーですが、同時に、この時に彼の中に “ある衝動” が目覚めるんですね。

その後、出張先のアリゾナで取引先の社長から銃を貰ったカージーは、衝動が抑えられずに銃を隠し持ち、夜の街をうろうろします。

そして、人目のない場所で現れた強盗を射殺したことで、彼の中のタガが外れるんですねー。

カージーの父親はハンターで、彼自身小さな頃から銃の扱いを仕込まれていたんですが、狩猟中に父親が鹿と間違えられて射殺されてから銃を憎むようになり、朝鮮戦争でも良心的兵役拒否として医療班に従事していた平和主義者。

しかし、愛する奥さんを殺され娘を嬲りものにされた事、自警・自衛という建前と、拳銃というチカラを行使する快感によって、彼は「人を狩るマン・ハンター」として狂気に目覚めてしまうのです。

そこからカージーは、夜な夜な危険な場所に出かけては、チンピラどもを処刑して周り、彼の行為は結果的にニューヨークの犯罪率を引き下げ、市民の中には「アマチュア刑事」に習って強盗に立ち向かう者まで出る始末。

英雄のように祭り上げられた彼は、すっかり気持ちよくなって、西部劇のヒーロー気取りでマン・ハントを繰り返すようになるのです。

メッセージを180度取り違えられる

少なくとも原作者は作品を通して、チカラに取り憑かれた男=銃社会の危険性をテーマに書いていて、本作を見る限り、そのテーマや社会へのエクスキューズは踏襲しているように見えます。

しかし公開時アメリカでは「銃や私刑を賞賛する映画」として批判も多かったのだとか。

まぁ、そう言われればそう見えなくもない……っていうか主演が「荒野の七人」のチャールズ・ブロンソンですからね。そう思われても仕方ない……のかなー?

ブロンソン自身、オファーを受けて「カージーダスティン・ホフマンみたいな(優男の)俳優が演じるべき役なのでは?」とかなり悩んだそうですしね。

皮肉なことにブロンソンが危惧したとおり、彼が演じたポール・カージーは、世界中の(僕みたいな)ボンクラどもからヒーロー扱いされて大ヒット。
全5作にも及ぶ人気シリーズになってしまったんですねー。

いやー、だって最後の “カージーポーズ” を決めるブロンソンは、今見てもカッコイイもんなーww

その後に公開されたタクシードライバー」のトラビスもカージーと同じ運命を辿るんですよねー

作品のテーマが、キャラクターの魅力に食われちゃうんですよね。

途中から死んだ奥さんや娘のことはそっちのけで、チンピラ処刑にどハマりするカージーに、復讐しないんかーい!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ というモヤモヤは残るし、全体的に歪でヘンテコな映画ですけど目が離せない魅力のある映画でしたねー。

興味のある方は是非!!

 

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現代のドン・キホーテは実在の人物だった!?「オレの獲物はビンラディン」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ニコラス・ケイジ主演のコメディー映画『オレの獲物はビンラディン』ですよー!

コロラド州の田舎に住む中年男が“神の啓示”を受け、9.11テロの首謀者と言われるオサマ・ビンラディンを生け捕りにするために、単身パキスタンに乗り込むというブッ飛んだ内容なんですが、コレ、実話を元にした映画で、主人公は実在の人物なんだそうですよ!

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概要

祖国を愛するあまりたった一人でオサマ・ビンラディン捕獲に挑み、2010年にパキスタン当局に拘束されたアメリカ人男性の実話に基づくコメディー。ビンラディンを捕まえよと神から啓示を受け使命感に燃える主人公を、ニコラス・ケイジが熱演する。共演は『ベッドタイム・ストーリー』などのラッセル・ブランド、ドラマシリーズ「それいけ!ゴールドバーグ家」などのウェンディ・マクレンドン=コーヴィら。『ブルーノ』などのラリー・チャールズがメガホンを取った。(シネマトゥデイ より引用)

感想

実在の人物をニコラス・ケイジが怪演

本作でニコラス・ケイジが演じる主人公 ゲイリー・フォークナーは、2010年にパキスタン当局に拘束され、全世界的に有名になった人物(らしい)です。

何故かというと、彼の目的は9.11テロの首謀者と言われるオサマ・ビンラディンを捕まえることだったからです。

といっても、ゲイリーさんは別に軍人でもCIAでもなく、コロラドの片田舎に住むただの便利屋で、2004年のある日 “神の啓示” を受けて、ビンラディンを自らの手で捕まえる事を決意。なんと7回もパキスタンに単独で乗り込んだらしいんですね。

この事件は全米でたちまち話題となり、ゲイリーさんは瞬く間に有名人に。
映画化が決まると、ニコラス・ケイジと監督のラリー・チャールズは、ラスベガスに住んでいた本人に長時間インタビューをして、彼の話をもとに映画の脚本を書いたそうです。

アカデミー賞俳優ニコラス・ケイジ、ブッ飛びオヤジを完コピ

さらにニコラス・ケイジは白髪の長髪にヒゲを伸ばし、体重を増やして、インタビュー中、高い声でマシンガンのように喋り続けていたゲイリーさんを完コピ

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その完成度の高さは、エンドロールで登場する本人を見れば一発で分かると思います。

劇場では見かけないけど、レンタル屋の棚にはいつも新作が並んでいるでお馴染みのニコラス・ケイジ主演作。
以前も書いたかもですが、個人的に彼はシリアスな役よりコメディーの方が絶対向いてるって思うんですよね。
超シリアスな役を演じていても、どこか可笑しみや愛嬌があるし、コメディーセンスも抜群。そんなニコラス・ケイジにとって、ブッ飛びオヤジが暴れまわる本作は、まさにうってつけの作品なんじゃないかと思いました。

ざっくりストーリー紹介

ゲイリー・フォークナーは、敬虔なクリスチャンであり強烈な愛国主義者。
糖尿病で腎臓を患って週2回の透析をしながら、便利屋をしているんですね。

とにかくテンションが高く、場所・相手構わず甲高い大声でずーーーーーーっと喋り続けているかなりの迷惑オヤジです。

愛国心が強すぎて、ホームセンターで他国の商品を買おうとする人に片っ端から文句をつけまくり、ビンラディン関連のニュースを見ては大声でアレコレ言うものだから、バーで海兵隊に詰め寄られたり。

たまたま再開した高校時代の同級生マーシ・ミッチェル(ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ)に、「高校時代は君を想って、ティッシュ100箱は使ったよ!」とかサイテーな事を悪気なく言っちゃうんですよね。(そして二人は何故か付き合うことに)

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そんな彼が透析中、なんと神様が現れて「お前がビンラディンを生け捕りにするのだー」とお告げをもらってしまったからさぁ大変。

彼はヨットでパキスタンに行くため、ラスベガスのカジノでギャンブルしたり(そして負ける)、かかりつけの医師に嘘をついて1000ドル借りたりして中古のヨットを購入し、(今まで触ったこともない)ヨットで船出するも、あっという間に転覆してメキシコに打ち上げられます。

しかし懲りないゲイリーは、イスラエルからハンググライダーパキスタン入国を試みるも墜落。(そして骨折)

それでも諦めない彼は、深夜のテレビショッピングで日本刀を購入し、飛行機でパキスタンに入国します。(税関でひと悶着)

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しかしパキスタンに来たとは言っても、ビンラディンの居場所など分かるはずもなく、ただただ腰に日本刀をぶら下げてパキスタンをうろうろし、現地の人達と仲良くなり、心が折れそうになると神様の叱咤激励を貰い、結果、パキスタンの山で倒れているところをパキスタン当局に保護されるんですねー。

まぁ、傍から見れば明らかにアレな人なんですが、それでも何故か友達や高校時代の同級生マーシには嫌われませんw

というのも、マーシに対しては弱みを見せるし、メキシコに漂着しても、ハンググライダーで墜落しても、ちゃんとマーシと彼女が育てている姪っ子ちゃんにお土産を買ってくるというチャーミングさがあるのです。

本作の彼は、別に狂っているわけでも英雄でもなく、幼少期からのコンプレックスをハイテンションキャラとして覆い隠し、強い信仰と愛国心、そして病気のせいで、たまに妄想を見る変わり者で、ただの人騒がせな困ったオッサンというバランスで描かれているのです。

そこに、ニコラス・ケイジの可笑しみや愛嬌が加わって、近くにいたら嫌すぎるけど、そっと離れた場所から見ていたい愛すべきキャラになっているんですね。

ただ、まぁ、コメディー映画として観たときに「はたしてこれは笑っていいのか悪いのか」と、ちょっと悩んでしまう部分もあったりしますけどw

現代版ドン・キホーテ

本作を観た、多くの人が恐らく最初に頭に思い浮かべるのはスペインの物語ドン・キホーテじゃないでしょうか。

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それは、製作陣も間違いなく意識していて、人から笑われながらもビンラディン捕獲という無謀を通り越して突拍子もない目的に向かって突き進むゲイリーさんを、現代版ドン・キホーテとして描いているんですよね。(妄想癖があり、本人の証言が当てにならない部分も含めて)

その一方で、他国にまったく興味のないアメリカ人を揶揄する象徴として描かれているし、彼を通して保守派に傾倒するホワイトラッシュ(貧乏白人)に対する皮肉もそれとなく(ハッキリと?)盛り込まれていて、その辺の攻めっぷりはさすが『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』や『レリジュラス ~世界宗教おちょくりツアー~』を監督しているラリー・チャールズだなーという感じでしたねー。

内容的には正直微妙だったけど、キレッキレなニコラス・ケイジを愛でたい人には、サイコーの映画なんじゃないでしょうか。

興味のある方は是非!

 

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ダークヒーロー映画かと思ったら萌えキャラ映画だった「ヴェノム」(2018)

ぷらすです。

ヴェノム』公開初日に行ってきましたよー!

今年最後のアメコミヒーロー映画ということや、禍々しいヴェノムのビジュアル、主演はみんな大好き「トムハ」ことトム・ハーディ

こんだけ要素が揃えば、それはもう期待のハードルもガン上がりですよ!

ガン上がりだったんだけど…(´ε`;)ウーン?… いや、面白かったですよ? 面白かったんだけど…。って感じでしたねー。

というわけで、今回は公開されたばかりの映画なので、出来るだけネタバレしないように書きますが、これから本作を観に行く予定の人や、ネタバレは嫌という人は、映画を観てから、この感想を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

マーベルコミックスに登場するキャラクター、ヴェノムが主人公のアクション。地球外生命体に寄生されたのを機に、特別な力を身につけたジャーナリストの戦いが描かれる。メガホンを取るのは『L.A. ギャング ストーリー』などのルーベン・フライシャー。『レヴェナント:蘇えりし者』などのトム・ハーディ、『ブルーバレンタイン』などのミシェル・ウィリアムズらが出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

まーね、上記の期待ポイントの一方で、正直いくつかの心配ポイントもあったんですよ。
まずは、レーティングが「RG12」(親の同意があれば観ても12歳以下がいい映画)だったこと。
つまり、残酷描写はほぼありません。

もう一つは、本作がソニーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクター」(SUMC)第一弾だということ。
マーベルから版権を買い取って、サム・ライミ版「スパイダーマン」3部作のすぐあとに、リブート版の「アメージング・スパイダーマンを制作し、大コケした前科を持つソニー・ピクチャーズ。(個人的にアメスパ2は面白かったけどね)

現在はマーベルと提携を結んで、スパイダーマンの権利はソニーとマーベルが共有していますが、ほかのキャラクターはほぼソニーが権利を持っているんですね。
で、ソニーは自社が権利を持っているキャラを使ってMCUアベンジャーズ)的な流れを作ろうとしてるらしいのです。

って、なんかもう不安しかないわー

ヴェノムとは

ヴェノムは、原作ではスパイダーマンヴィラン(悪役)として登場。
カプコン対戦格闘ゲームや、サム・ライミ版の「スパイダーマン・3」でヴェノムを知った人も多いんじゃないかと思います。(僕もそうですが)

ヴェノムは生物に寄生し、宿主の能力を引き上げたり、コピーしたり出来る宇宙生物<シンビオート>の中の一人。

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長くなるので細かい経緯は省きますが、原作では最初スパイダーマンに寄生したヴェノム。(「スパイダーマン3」でも出てきますよね)
スパイダーマンことピーター・パーカーが大好きでしたが、無理やり引き離されたことで可愛さ余ってにくさ100倍状態に。

で、あることからスパイダーマンに恨みを持つ、敏腕記者エディ・ブロックと合体してスパイダーマンの能力を持った最強の悪役として大人気に。
その後、ヴェノム単体のコミックも沢山出ているらしいです。

で、このシンビオートは寄生した相手の力や精神状態を増幅させるけど、自分も宿主の性質に影響を受けるので、善人に寄生するとヒーローに、悪人に寄生すると悪者になってしまうらしいんですね。

ちなみに、原作版でのヴェノムの食料は、宿主の脳が出すアドレナリンとフェネルチルアミンですが、本作ではもっと直接的に人間そのものが食料という設定になってました。

ざっくりストーリー紹介

その正義感からトラブルも多い敏腕記者エディ・ブロック(トム・ハーディ)は、人体実験で死者を出しているという組織<ライフ財団>の真相を追ううち、彼らが宇宙から持ち帰ってきた寄生生物<シンビオート/ヴェノム>に寄生されスーパーパワーを得る。
その事からエディは<ライフ財団>に狙われることに。

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最初は反発していたが、色々あってヴェノムを相棒として受け入れたエディは、<ライフ財団>の企みを阻止するためタッグを組むことにする。

というストーリーなんですね。

日本で言えば寄生獣」x「うしおととら」÷2みたいなな感じでしたねー。

良かった点

マーベル屈指の人気キャラ「ヴェノム」の映画化で、しかも主演はみんな大好きトムハですからね。それはもう「面白い」が大前提なわけですよ。

特に中盤のバイクチェイスや、クライマックスの敵との戦いは、不定形ゆえに自在に形を変えながらトムハを助ける姿が、いかにもヴェノム的で見ごたえがあるし、トムハとヴェノム(声はトムハが担当)の掛け合いも超楽しい。

ヴェノムに寄生され体を操られて、一人でアワアワしてるヘタレマッチョなトムハの一人芝居(というかコントっぽい)には思わず笑ってしまう楽しさがあるし、何よりも、ヴェノムが存外可愛いんですよねー。

超怖いポスタービジュアルとか予告編から、「トムハを乗っ取り悪事を働こうとするヴェノムと、正義感と良心からヴェノムに抗うトムハ」的なストーリーをイメージしてたんですが、ヴェノムは案外最初からトムハLOVE♡な感じで協力的なんですよね。

基本、正義感があるけど独りよがりで独善的なトムハ(それが原因で仕事と嫁を失う)と、どうやら母星では、落ちこぼれで負け犬だったらしいヴェノムは、お互いに足りない部分を補い合いながら、相棒として共にラスボスに挑む事にになります。
ぶっちゃけ理屈は飲み込みづらいけど、こういう展開はやっぱ胸アツじゃないですか!

中盤では元嫁によってトムハから引き離されてしまったヴェノムが、チワワや元嫁に寄生しながら<ライフ財団>に囚われたトムハを助け出しに行ったり、超強いラスボスとの戦いでは引き離されるも、ついにエディから手を伸ばし…って展開は、何ていうか…萌える!

お前ら日本のアニメだったら、速攻で薄い本が出るからな! っていうねw

気になった点

ただ、映画的には全体的にストーリー構成が悪いっていうか、ヴェノムとトムハが出会うまでが無駄に長い!
特に前半、宇宙船が地球に墜落する件なんか丸々いらないだろうと。
なんなら<ライフ財団>のシーンからで十分に話は通じるしね。
やりたいことは分かるけど、全体的なストーリー運びや、テンポの悪さがホント気になってしまいましたねー。

もう一つは、観る前に危惧したとおり、残酷シーンがほぼゼロだったこと。
いや、何度も言うけど別に残酷シーンが観たいわけではないんですよ?
でも1シーンくらいはゴアシーンを入れて、視覚的にヴェノム本来の怖さやヤバさを見せておかないと、後に彼がトムハと相棒になる時のカタルシスに繋がらないんですよ。

っていうか、最初は「よっしゃ地球人食ったるでー!」って感じだったヴェノムが、なぜ途中で心変わりしたのかが、よく分からないんですよね。
セリフで「地球やトムハが気に入った」「俺は母性では負け犬だった」的な事は言うけど、なんか唐突感があるけど説得力はなくて、ご都合主義に感じちゃうんですよ。

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だったら、序盤のいらないシーンをまるっと削って、トムハとベノムが徐々にシンクロしていく様子を描いた方が良かったんじゃないかと思いましたねー。

もしかしたら、続編やSUMCシリーズに続く事を前提にしてるのかもしれないけど、ソニーさん、それで「アメスパ」失敗したでしょ! っていうね。

中盤以降はアクションも満載で尻上りに面白くなっていったけど、似たようなシーンが2回も入るとか、全体的に脚本のマズさは気になってしまいました。

ただ、まぁ残虐シーンがないことで、初見の人や残酷なシーンが苦手な人でも、安心して観られるようにはなってるので、それはそれでいいのかもしれませんけど。

要は、ストーリー的にはちょっとアレだけど、キャラ萌え映画としては面白いし、ヴェノムを知らない人でも十分に楽しめる作品だったんじゃないでしょうか。

興味のある方は是非!

 

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魔法の国のすぐ裏は地獄でした映画「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アカデミー賞ウィレム・デフォー助演男優賞にノミネートされた事でも話題になった『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』ですよー!

映画を観たあとだと、「真夏の魔法」という副題の「天丼( パクチー、チーズたっぷりトッピング) 」的な余計なことすんなっぷりに辟易してしまいました。
いや、まぁ、一人でも多くの人に映画を観てもらうための企業努力に文句つけるのもアレですけども。

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概要

全編iPhoneで撮影した『タンジェリン』などのショーン・ベイカーが監督・脚本を務めた人間ドラマ。フロリダで貧しい生活をしている母娘と二人を取り巻く人々の日常を、6歳の少女の視点から描く。主人公を子役のブルックリン・キンバリー・プリンスが演じ、母親役にベイカー監督がインスタグラムで発掘したブリア・ヴィネイトを抜てき。モーテルの管理人を演じたウィレム・デフォーは、第90回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。(シネマトゥデイより引用)

感想

この作品、僕はテレビ・ラジオ・ネットなどの映画評である程度どんな内容かを分かった状態で観たんですが、劇場公開時に、カラフルで多幸感あふれるポスタービジュアル&副題に騙されて観てしまった人は一体どんな気持ちになったんだろうと他人事ながら心配になってしまいましたよw

この映画は、一言で言うなら「魔法の国のすぐ裏は地獄でした」という内容。

フロリダのディズニーワールドのすぐ近くにある安モーテルを舞台に、最底辺の貧困層母子の“最後の夏休み”を、子供の視点をメインに淡々と描いていく作品なのです。

ざっくりストーリー紹介

家を失った無職の母親ヘイリーと娘のムーニーは、ディズニーワールドのすぐ近くにある安モーテル「マジック・キャッスル」で暮らしています。

母親のヘイリー(ブリア・ヴィネイト)は誰にでも悪態をついて法的にギリアウトな商売で日銭を稼いでるDQNだし、娘のムーニー(ブルックリン・キンバリー・プリンス)は言葉使いも汚くて、友達と悪さばかりしている悪ガキを通り越したクソガキで、管理人のボビーウィレム・デフォー)を困らせてばかり。

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そんなある日、ムーニーが起こしたある事件をキッカケに、唯一の親友アシュリーからも見捨てられたヘイリーは、いよいよ追い詰められて……。

という内容。

ネット評では、多くの人に高い評価を受ける一方で、まったく成長しないDQNママのヘイリーに「同情も感情移入も出来ない」「自業自得」という批判もあって賛否両論という感じでしたねー。

確かに、ヘイリーの言動は母親として間違っても褒められたものではないし、批判する人の気持ちも分からなくはないはないです。
が、彼女が置かれた環境は、努力で変えられるような生易しいものではなかったのではないかとも思えるんですよね。

まぁ、彼女の風体や態度をみれば、若い頃からロクでもない人生を歩んできたのは間違いないだろうし、今の状況も、そのツケが回ってたのだと見れば自業自得と言えなくもないけれど、彼女がそういう風にしか生きられないくらい、貧富の差が固定化されたアメリカのシステムが背景にあるのではないかとも思うんですよね。

そして、外から見ればダメな母親ではあるけど、少なくともムーニーにとって彼女はサイコーの母親だということがよく分かります。

どれだけ追い詰められても、ヘイリーは決してムーニーに暴力を振るったり当たり散らしたりはしないし、常にムーニーを楽しませようとしてるんですね。

タイトルの意味

で、本作のタイトル「フロリダ・プロジェクト」のプロジェクトって何かというと、低所得者のために用意された集合住宅のことだそうです。

しかしながら、このマジック・キャッスルは当然、低所得者用の集合住宅ではなくて観光客狙いの安モーテル。

映画評論家の町山さんによれば、低所得者向け集合住宅には、犯罪歴や逮捕歴があると入れないんだそうで、そういう人たちは一週間分ずつ料金を払って安モーテルに暮らしている、いわば「隠れホームレス」なんですね。

つまり「フロリダ・プロジェクト」というタイトルは、それ自体が監督ショーン・ベイカーの強烈な皮肉になっているのです。

子供たちの視線で描く「魔法の国」と大人視点の現実

そんな風に書くと、どんだけ悲惨な映画なのかと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。いや、物語自体は悲惨なんですよ?
でも、そういうのは全部物語の裏側に回して、表面的にはムーニーや友達のジャンシー、スクーティなど子供の視線で大部分が描かれていているんですね。

モーテルの階段の下を秘密基地に友達とおしゃべりしたり、手入れがされてない草をかき分けて走り回ったり、倒木に座ってジャムをたっぷり塗ったパンを食べたり、プールサイドのトップレスおばさんを冷やかしたり、ソフトクリームを買うために子連れのお母さんに小銭をねだったり、一個のソフトを三人で回し食べしたり。

真夏の高い空や、ディズニーワールドを意識したパステルカラーの町並みも相まって、どこまでも続く「魔法の国」の大冒険のようなワクワク感で満たされています。

しかし、一旦大人の視点で引いて見ると、子供たちの周りには危険がいっぱい。

ムーニーたちが遊ぶ廃墟は、麻薬取り引きに使われているし、道路には車がビュンビュン走ってるし、子供たちが集まって遊んでいると変質者が寄ってくる。

そんな時、強面管理人のボビーが、さっと駆けつけて変質者から子供たちを守り、仕事の合間にそれとなく子供たちを見守っているわけです。

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デフォー演じるボビーは、顔は怖いけど実は優しいオッサンなのです。

しかし、ボビーはただの雇われ管理人なので、もどかしく思いながらも子供たちを見守ったり、変質者から子供を守るくらいしか出来ないんですよね。切ない。

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それでも何とか楽しく暮らしていたヘイリーとムーニーでしたが、ムーニーが起こしたある事件をキッカケに親友アシュリーから見捨てられ、経済的にも追い詰められたヘイリーはとうとうある一線を超えてしまいます。

その様子を大人目線でハッキリ映すのではなく、最初は一緒にお風呂に入っていた二人が、やがてムーニー1人で大音量で音楽をかけながらお風呂に入るようになる。という描写でそれとなく分からせる演出が、逆に辛さ倍増なのです。

“夏休み”の終わり

そんな環境でもムーニーは、親友のジャンシーと楽しく無邪気に遊びまくっているんですが、そんな“夏休み”にもいよいよ終わりが近づいて。

多分、敏い子なムーニーは、母親のやっている事や自分の身に迫る現実をちゃんと分かっていて、それでも楽しい事だけに目を向けることで、もうすぐ子供でいられなくなる辛い現実を少しでも遠ざけようとしていたんじゃないかと思うんですね。

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なので、いつもキャッキャと楽しそうに笑って、悪さをして、走り回って、決して弱みを見せないように気丈に振舞っていた彼女が、親友の前で堰を切ったように感情を顕にするシーンは、もうね、辛すぎて涙なしでは見てられません。

そして、親友ジャンシーに手を取られ、二人で現実から逃げる先が……っていう最高に皮肉の効いたキレのいいあのラスト、曲なしでうっすら環境音だけが流れるEDロールも相まって……、もうね、嗚咽ですよ!

一見、特に脈絡なく小さなエピソードが連なっているだけの日常系作品に見える本作ですが、実は物語的にも映像的にも、伏線や見せ方がしっかり練られていて、巧みに組立られた見事な構成なんですよね。

本作は、フロリダの安モーテルを舞台にしたミニマムな物語ですが、それはそのまま世界の縮図だし、この映画で描かれる貧困問題は日本だって決して他人事ではないですよね。

ヘイリーが叫ぶ「ファッ〇・ユー!」が、一体誰に向けられた言葉なのか、見終わったあとに色々考えずにはいられない傑作でした!

興味のある方は是非!!

 

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88歳の鬼才は未だ進化中「エンドレス・ポエトリー」(2018)*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、みんな大好きアレハンドロ・ホドロフスキーの最新作『エンドレス・ポエトリー』ですよー!

84歳で23年ぶりの前作「リアリティのダンス」を発表して世界を驚かせ、ファンを熱狂させたホドロフスキーですが、本作はそんな「リアリティ~」のまさかの続編です!

で、この作品はあまりネタバレとか関係ないと思うので、文中に多少ネタバレがあります。
なので、これから本作を観る人や、ネタバレは嫌という人は、本作を先に観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

チリの鬼才アレハンドロ・ホドロフスキーが監督を務め、久々に発表した新作『リアリティのダンス』の続編となる自伝的ドラマ。監督自身の人生を反映させ、若き日の両親との葛藤や初恋、その後の人生を左右する数々の出会いが描かれる。ウォン・カーウァイ監督作品『楽園の瑕(きず)』などで知られるクリストファー・ドイルが撮影を担当。80歳を超えている監督の作品とは思えないほど、エネルギーに満ちあふれた映像に魅了される。(シネマトゥディより引用)

感想

アレハンドロ・ホドロフスキーの自叙伝的映画 青春編

前作「リアリティ~」と本作を一言で言うなら、アレハンドロ・ホドロフスキー監督が自らの過去を振り返る「自叙伝映画」です。

なぜ自叙伝「的」なのかといえば、この2作が「ホドロフスキーの脳内」をそのまま映像化してるからで、つまり基本的には事実に沿って描きながら、その時にホドロフスキー視点で彼が感じた感情やイメージまでを全て(極端にデフォルメしたり抽象化した、幻想的とも言える映像で)一つの画面に収めているからなんですね。(マジックレアリズム)

前作では強権的な父親との関係を描いた少年編が描かれ、本作はホドロフスキーが成長し詩人としての自我を確立するまでを描いた青春編になっています。

少年期のアレハンドロ、父親のハイメ、母親のサラは前作から引き続きイェレミアス・ハースコヴィッツホドロフスキー家長男のブロンティス・ホドロフスキーパメラ・フローレスが演じ、青年期の成長したホドロフスキーホドロフスキー家の末っ子で前作・本作で音楽も担当したアダン・ホドロフスキーが演じています。

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画像出典元URL:http://eiga.com  / 父親役のブロンティス・ホドロフスキーと母親役のパメラ・フローレス

前作では色んな体験を経て変わったように見えたハイメでしたが、故郷トコピージャを離れ、家族と共に引っ越した首都サンティアゴでのタフな暮らしの中、すっかり元の強権的な父親に逆戻り。アレハンドロに対しても医者になることを強要するんですね。

そんなある日、店に入った万引き娘が落としていった一冊の詩集に出会ったアレハンドロ。すっかり心を奪われて将来詩人になりたいと思うようになります。

しかし、強権的な父がそんなことを許すはずもなく、ぶち切れたアレハンドロは母の実家の木を斧で切り「詩人に俺はなる!」と家出。

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画像出典元URL:http://eiga.com

従兄弟リカルドの紹介で、さまざまな芸術家が集うコミューンで生活するようになり……。というストーリー。

コミューンで初めて自分の詩作を認められたアレハンドロは一気に詩人としての才能を開花させ、従兄弟に告白されたり、パンクな女性詩人ステラに夢中になったり、ゲイバーでオカマを掘られそうになったり、パリに移住する芸術家にアトリエを貰ったり、詩人の親友が出来たり、親友の彼女を寝取って絶交されたり、仲直りしたり。

しかし、チリでの活動に限界を感じた彼は、父親の制止を振り切ってパリに向かうのです。

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画像出典元URL:http://eiga.com

まるで舞台劇…というかほとんど歌舞伎!?

前作では低予算ながらもCGなどを使って色鮮やかで幻想的な世界を描いたホドロフスキーですが、本作ではさらに予算は少なかったようで、クラウドファンディングで資金を得たけれど、VFX(CG加工)はおろか、セットや大道具、エキストラを雇う予算もなかったようで。

そこで考え出したのが前作でも行った、書き割りを使う方法。

ロケ地の家の前に白黒で印刷した巨大な書き割りを配し、蒸気機関車やエキストラも同じ手法で書き割りに。機関車に至っては後ろに配したスタッフが書き割りを持ち上げて移動したりしていますからね。

あと、キャストの芝居を黒子がアシストしたりしてて、まるで舞台演劇のようでしたねー。

っていうか、ホドロフスキー自身が監督・出演し、長男が父親を演じ、末っ子がアレハンドロ本人を演じ(劇伴や音楽も)、奥さんが衣装を担当してと、ほぼホドロフスキー家が総力戦で「ホドロフスキー家の歴史」を作っている姿は最早、ホドロフスキー一座っていうか、どこか歌舞伎っぽいなーとすら思いました。

ここまで読んでくれた人は「え、それってショボイんじゃないの?」と思われるかもですが、驚くべきことにCGなどを使った前作よりもずっと映像がリッチに見えるんですよねー!

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画像出典元URL:http://eiga.com

カメラマンが「恋する惑星」などを担当したクリストファー・ドイルということはもちろんですが、「書き割りも映像的、物語的な効果を狙って最初からそうしたように見えるし、赤い服と骸骨模様の黒タイツを着たエキストラ(ボランティアのみなさん)が大勢登場するシーンは度肝を抜かれましたよ。

実在した女流詩人ステラ

で、アレハンドロが一目惚れする豪快な女流詩人ステラ・ディアス・バリン

真っ赤な髪に毒々しい化粧、豊満な肉体で2リットルのビールを飲み干し、近づく男をパンチで叩きのめし、背骨に沿うようにドクロの刺青を入れている、悪役女子プロレスラーのような彼女を、お母さん役のパメラ・フローレス一人二役で演じているんですねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 悪役女子プロレスラーのようなステラ姐さん

恥ずかしながら、僕はネットで調べるまで二役だと気づきませんでしたねー。

で、さらに驚いたのは、このステラ・ディアス・バリンは実在の詩人だそうで、元秘密警察の一員でカラテを習っていて、酒豪だったのも当時は映画のように真っ赤に髪を染め、顔を化粧する代わりに絵の具を塗っていたのも本当だったという、かなりパンクな女性だったようです。(出典元:http://aribaba39.asablo.jp/blog/2017/10/31/8718629

過去改変でホドロフスキー家の呪いを解く

 この二作では、主人公のアレハンドロが精神的窮地に陥ったときに、現在のアレハンドロが本人役(アレハンドロの祖父説もあり)で登場し、少年時代、青年時代の自分に助言をしたり抱きしめたりするシーンが度々登場します。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ちょいちょい登場しては過去の自分に助言するアレハンドロ・ホドロフスキー(現在)

本作でも、自分のアイデンティティを見失って悩むアレハンドロに助言を与え、パリへの旅立ちを止めようとする父との殴り合いの喧嘩に「そうじゃない!」と割って入って、和解させたり。

アレハンドロ・ホドロフスキーは自身が抱える強い後悔を、自叙伝的映画で過去に戻って改変することで、自分自身、ひいてはホドロフスキー家の呪いを解いているんですね。

同時に、現在のホドロフスキーが発する言葉は、多くの若者や、かつて若者だった大人たちが抱える悩みや後悔、苦悩などをひっくるめて全肯定した上で、背中を押してくれる応援詩のようでもあるのです。

個人的に本作は、アレハンドロ・ホドロフスキー作品の中でも一番の傑作だと思ったし、80代を越えても尚、進化し続け、これだけ美しく生命力溢れる映画を作るホドロフスキーのパワーや芸術的信念にはただただ脱帽ですよ。

とはいえ、ぶっちゃけ少々ショッキングなシーンもあるし、ホドロフスキーリテラシーのない人は多少面食らってしまうかもですが、本作はホドロフスキー作品の中では多分、一番ストレートで観やすいと思うし、共感出来るのではないかと思います。

www.youtube.com

より楽しみたい人は、「ホドロフスキーのDUNE」→「リアリティーのダンス」→本作の順に観るのが個人的にオススメですよー。

興味のある方は是非!!

 

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ヘンテコ熊がだんだん愛おしくなる「ブリグズビー・ベア」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、その、あまりにも奇抜なストーリーが話題を呼んだ『ブリグズビー・ベア』ですよー!

スターウォーズ」でルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルが出演しているというので、気になっていたんですがレンタルして観たら個人的にガツンとツボな作品で、最後は思わず泣いてしまいましたYO!

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概要

アメリカのコメディー番組「Saturday Night Live」などで人気のコメディアン、カイル・ムーニーが脚本と主演を担当した個性派ヒューマンドラマ。25歳までシェルターで育った青年がいきなり外の世界に放り出され、思いもしなかった現実と向き合う姿を映し出す。『スター・ウォーズ』シリーズなどのマーク・ハミルが主人公の育ての親を好演している。共演は、グレッグ・キニア、マット・ウォルシュ、クレア・デインズら。(シネマトゥディより引用)

感想

この作品、例えば映画やアニメ、ドラマ、マンガ、小説、ゲームなど、いわゆる「フィクション」を子供の頃に観て育った人なら、思わずグッとくるんじゃないかと思います。

ストーリーをざっくり説明すると、25歳のジェームスは、赤ん坊の頃から外の世界を知らず、小さなシェルターで両親と一緒に生活しています。

どうやら、外の世界は空気汚染などでガスマスクなしでは出られない模様。
そんな彼が、楽しみにしているのが毎週ポストに届く子供向け教育番組“ブリグズビー・ベア”で、ジェームスは子供の頃からずっとブリグズビー・ベアを観て育ち、感想や研究をネットフォーラムで友人たち語り合っているんですね。

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少々退屈ではあるけど、何不自由ない生活。

そんな彼のシェルターに、ある日突然警察が踏み込んできて…!? という物語。

マーク・ハミルが誘拐犯!?

実はジェームスの両親は、彼が赤ん坊の時に誘拐して25年間の間シェルターに監禁していた誘拐犯だったんですね。

そして警察によって救出されたジェームスは、「外の世界」で本当の家族と暮らし始める事になるのです。

で、そんな誘拐犯でジェームスを25年間育てた偽物の父親を演じるのが、「スター・ウォーズ」でルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミル

劇中、一見、人徳者で優しい父親といった感じの彼ですが、観客にはこのシェルターでの生活や、家族の会話や儀式、地上に作られたガラスドームから見える景色、そしてマーク・ハミル演じる偽の父親や、ジェーン・アダムス演じる偽の母親、そしてジェームスが毎週楽しみにしている「ブリグズビー・ベア」など、ジェームスを取り巻く全てが歪で違和感を感じる作りになっているんですよね。

そんなある日、ガラスドームの中で偽の父親テッドはジェームスに「人間は辛い現実の中にあっても、想像力で自由になれる。頭の中の自由だけは、何者にも侵されないんだ」と言います。

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実はこのセリフこそが本作を貫く根幹のテーマで、そのセリフを「スター・ウォーズ」のルーク・スカイウォーカー役のイメージを長年に渡って引きずってきた、マーク・ハミルが語るというのが、何とも絶妙だなーと思いましたねー。

また、テッドがジェームスの為だけに、長年作り続けてきた「ブリグズビー・ベア」も、(映像こそショボイものの)作りこまれた設定や世界観(の欠片)は「スター・ウォーズ」(どちらかといえばスター・トレック?)と重なるんじゃないかと思います。

つまり、この偽父のテッドにマーク・ハミルをキャスティングすることで、フィクションと現実、メタ構造も合わせて何重もの多層構造になっているのです。

そして冒頭から真実までが、僅か10分程度でサクっと分かる構成も見事だなーと思いました。

映画「ルーム」との相似と違い

ここまで読んでくれた人の中には、本作が2015年の映画「ルーム」に似ていると思った人もいるのではないでしょうか。

実は、この映画の基本的な構造は「ルーム」とほぼ一緒で、主人公が隔絶された小さなスペースから救い出され、初めて家族や「世界」と対峙し、受け入れるまでを描いた作品なんですね。

ただ、両作品を見ている人なら、この作品に“ぬるさ”を感じてしまうかもしれません。

「ルーム」では監禁中の地獄のような時間を描き、開放された後も親子は人々の悪意や無理解に苦しむことになります。

しかし本作では、いわゆる悪人はほとんど出てきません。
なにしろ偽両親のテッドやエイプリルすら、ジェームスを虐待したりはしないし、実の子のように可愛がっていますからね。
そういう意味で、この作品にリアリティーがない。ご都合主義と感じる人がいるのも仕方ないかなーと。

ただ、この作品の主題はソコではないんですよね。
新しい生活に馴染めないジェームスは、子供の頃から観ていたブリグズビー・ベア固執し、パーティーで出会ったスペンサーや友人の協力を得ながら、自らの手でブリグズビー・ベアの最終回(劇場版)を制作するのです。

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しかし、ジェームスの本当の両親にしてみればブリグズビー・ベアはそれ自体が、25年間の間我が子を洗脳するために作られ続けた忌まわしい道具であり、ジェームスが夢中になるのは当然面白くないし、そんなものは早く忘れて前に進んで欲しいわけです。

けれど、ジェームスにとっては、両親もネット友達も(シェルターのパソコンはネットに繋がってなくて、テッドとエイプリルが友達を偽装してコメントを書いていた)、全てが嘘っぱちで、そんな彼の手の中にある唯一の「本物」がブリグズビー・ベアだったのに、それすら途中で取り上げられてしまったわけで。

だから、彼がブリグズビー・ベアを自らの手で終わらせる事は、「本物の世界」と対峙し受け入れるためには絶対に必要な通過儀礼。つまり形を変えた「父殺し」の儀式なんです。

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ジェームスにとってのブリグズビー・ベアは、僕らにとってのウルトラマン仮面ライダーであり、ゴジラガメラであり、ワンピースのルフィやDBの悟空なんですね。

彼らは子供にとってヒーローであると同時に、もっとも近しい友人、つまりイマジナリーフレンドであり、彼らとの別れを経験することで僕らは成長し大人になっていくわけです。ジェームスにとってはそれがブリグズビー・ベアで、だからブリグズビー・ベアの最終回はジェームスが前に進む(成長する)ためには絶対に必要なんですね。

作り手と作品は分けて考えるべき

また、本作が劇中で語っているもう一つの主張は、「作り手と作品(の評価)は分けて考えるべき」ということだと思います。

劇中、テディがジェームスのために制作した「ブリグズビー・ベア」は、友人スペンサーによってYouTubeにアップされるや、多くのファンを掴んでいきます。

これは近年、製作者やキャストの不祥事によって、人気映画の続編が立ち消えになったり、キャストが入れ替えになったり、遡って、彼らが手がけた過去作品の価値までが貶められるという事へのカウンターというか皮肉というか。

例え誰が作ったとしても、その作品が大好きで、作品に助けられたり人生が変わるほどの影響を受けた人はいるわけで、その気持ちを否定することは誰にも出来ないし、彼らにはその作品をなかった事になんか出来ない。
という事を、誘拐犯の作った偽番組の大ファンで自ら続きを作るジェームスというキャラクターを通して、監督のデイヴ・マッカリー、脚本のケヴィン・コステロ、主演・原案・脚本のカイル・ムーニーは言いたかったんじゃないかと思うし、僕もその主張には100%同意なんですよねー。

別に、不祥事を起こした製作者やキャストの罪がどうでもいい ということではなく、罪に対して罰は必要だが、それと彼らが残してきた作品や功績は分けて考えましょうっていうのは至極当前のことですから。

興味のある方は是非!!

 

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ジェット・リーvsジェット・リー頂上対決の行方は!「ザ・ワン」(2001)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2001年のSFアクション映画『ザ・ワン』ですよー!

125人のジェット・リーによるバトル・ロワイアル」という衝撃的な設定に思わずレンタルしてしまいましたよー!

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概要

この宇宙全体には125のパラレルワールドが存在し、その均衡を守るため多次元宇宙捜査局=MVAが監視に当たっていた。が、捜査官の一人ユーロウがその特権を利用して、他世界の自分を次々と殺し始めた。ユーロウは一人殺すたびにそのエネルギーを吸収するかのように超人化していく――。ロサンゼルス。アメリカ大統領をゴアが務める世界。留置場から出てきた男ロウレスをユーロウが襲い殺してしまう。そしてこの時、ユーロウの標的はついに、ブッシュが大統領を務める世界に住む、ロサンゼルス郡保安官ゲイブひとりとなった……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

カンフースターから世界的アクションスターになったジェット・リー
僕と同年代のファンならジェット・リーよりも、リー・リンチェイという名前の方がしっくりくるファンも多いんじゃないでしょうか。

ジャッキー、サモハン、ユンピョウなどのスターが次々と現れて大ブームとなった香港カンフー映画

そんな香港映画に、中国全国武術大会5年連続個人総合優勝という輝かしい看板を引っさげ、1982年公開の「少林寺」で、鮮烈なデビューを飾ったリーリン・チェイは、香港・中国映画で活躍し、1998年公開の『リーサル・ウェポン4』でハリウッドデビュー。

アジア人としては、ブルース・リーやジャッキーと並ぶ世界的アクションスターの先駆者となったんですね。

本作は、そんなジェット・リーが二役を演じるSFアクション映画で、監督は香港生まれの映画監督ジェームズ・ウォン

公開当時は「125人のジェット・リーバトル・ロワイアル”が始まる!!」という「ドキッ!丸ごと水着!女だらけの水泳大会(ポロリもあるよ)」並にワクワクさせられるキャッチコピーがついたそうですが、蓋を開けてみたら123人はすでに敗戦済で、結局登場するジェット・リーは3人しかいなかった(しかも1人は早々に殺されるので実質2人)っていうね。………うん、分かってた…。125人はさすがに無理があるよね…。

ざっくりストーリー紹介

で、本作のストーリーをザックリ紹介すると、

全宇宙には125の平行世界(パラレルワールド)があって、それぞれの世界にはちょっとずつ違う同一人物が暮らしているわけですね。

で、“彼ら”は一つのエネルギーを等分に分け与えられてて、誰かが死ねば余ったエネルギーは残りの“彼ら”に分け与えられる、という理屈らしい。

「だったら、ほかの並行世界の自分を全員殺してエネルギーを独り占めしたら万能の神になれるんじゃね?」

と考える不届き者を逮捕するのが多次元宇宙捜査局(MVA)。要するに警察です。

ジェット・リー演じるユーロウは元MVAエージェントでしたが、ジェット・リー王に俺はなる!」という野望を抱き、別次元の自分を122人もぶっ殺し、MVAの目を逃れながら123人目のジェット・リーも見事に殺害。

しかし、MVAエージェントで元同僚のローデッカー(デルロイ・リンドー)とファンチ(ジェイソン・ステイサム)によって逮捕され犯罪者コロニー(刑務所)に送られる寸前、恋人の手助けで逃げ出し、最後の一人ゲイブを殺しに行くのだった。

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という物語なんですねー。

思ったよりSFしていた

正直、観る前はもっとバカっぽい映画だと思ってたんですが、実際観てみると思ったよりしっかりSFしてるなーというのが第一印象でしたねー。

いや、なんで平行宇宙が125しかないのかとか、ユーロウ(悪リー)はなぜ全能の神になりたいのかとか、並行世界の自分に等分に与えられるエネルギーとは何かとか、全員殺して悪リーが唯一のジェット・リーになると宇宙が滅亡、でも迂闊に悪リーを殺しても宇宙が滅亡するかもしれないとか、ステイサム髪の毛フサフサだけどもしかしてカツラなん? とか、とにかくツッコミどころは満載なんですけどね。

でもまぁ、何となくSFっぽい雰囲気は楽しめるようになってるし、ところどころ気の利いた描写もあるので許容範囲かなーと。

映像的には、2001年の作品ということもあってCGのショボさが目に付くんですが、別次元に移動するシーンだけは力が入ってて「おぉ! 中々カッコいい!」と思いましたねー。

ジェット・リー最強決定戦

そして舞台は(多分)僕たちが住む次元のアメリカに。

冒頭で悪リーに殺された囚人だったジェット・リーは、この世界では警察官のゲイブ(善リー)になっていて、別の囚人を護送する途中に悪リーの襲撃を受けるんですが、死んだ123人分のエネルギーの半分(61.5人分?)は善リーにも分け与えられていて、しかもステイサムたちの手助けもあって何とか生き延びるんですね。

そこから、すったもんだあって最終的にジェット・リー最強決定戦のクライマックスへと向かうわけですが、ここで悪リーは八卦掌、善リーは形意拳を使って対決するという趣向はかなりにワクワクしましたねー!

あえて言えば、善リーは蟷螂拳だろ! と思わなくもなかったけど、それは「ドラゴン・キングダム 」のジャッキー戦で見せてくれてるし、今回はまぁいいかと。

どちらかといえば、61.5人分のエネルギーを得て、ほぼ超人化した悪リーの力を見せるために、超光速で動いたり、白バイを片手で持ち上げたりするシーンが、なんかインド映画の「ロボット」っぽっくて笑っちゃうですよね。

その辺のアクション演出はもうちょっと考えて欲しかったかなーと。

でも写真だけで登場する122人のジェット・リーは、金髪あり、ドレッドヘアーありと違和感バリバリで面白かったのでアリだと思いましたw

あと、劇中で善リーは大切な人を失う事になるんだけど、ラストでステイサムが恋人の生きている次元(その次元のジェット・リーは死んでいる)に送ってあげるという粋な計らいではあるけど、それ大丈夫なん? というシーンは、若干「それでいいのか」感あるけど、まぁご愛嬌かなーと思いました。

ステイサムがアクションスターへの第一歩を踏み出した作品という歴史的価値も含めて、まぁまぁ楽しい映画でしたねー。

興味のある方は是非!!

 

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