今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

老境に差し掛かったジャッキーの新境地「ザ・フォーリナー/復讐者」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ジャッキー・チェンと007役者でもあるピアース・ブロスナンという二大スターが共演した『ザ・フォーリナー/復讐者』ですよー!
この映画、公開を超楽しみにしてたんですが僕の地元では上映されず。
今回レンタルが始まっていたので、やっと観ることが出来ました!!

いわゆる“ジャッキー映画”のテイストではないけど、老境の差し掛かったジャッキーだからこハマる役柄で、個人的には大満足でしたねー!!(*゚∀゚)=3

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概要

アジアのアクションスター、ジャッキー・チェンが製作と主演を兼任したサスペンスアクション。元特殊部隊員の男が、テロで亡くなった娘の復讐(ふくしゅう)を果たそうと、事件の裏に隠された真相に近づく。メガホンを取るのは『007』シリーズなどのマーティン・キャンベル。『マンマ・ミーア!』シリーズや、キャンベル監督と組んだ『007/ゴールデンアイ』のピアース・ブロスナンらが共演する。脚本は『エネミー・オブ・アメリカ』などのデヴィッド・マルコーニ。(シネマトゥディより引用)

感想

IRAvs元ベトナム戦士

本作はスティーブン・レザーの小説「チャイナマン」が原作。

ロンドンの爆弾テロに巻き込まれて愛する娘を失った、中華料理店を営む60絡みの男クァン・ノク・ミンジャッキー・チェン)が、復讐のためテロリストを追うというストーリーで、犯人を追うクァンがたどり着いたのは、かつてIRAアイルランド共和軍)の活動家だったが現在は北アイルランド副首相となっているリアム・ヘネシーピアース・ブロスナン)だったんですね。

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*ちなみに、本作でテロを行う組織は、中国版字幕や日本版字幕では「UDI」という架空の組織名になってますが、インターナショナル版ではIRAと表記されています。

最初こそ警察に「犯人を捕まえて罰してください」と言って同情されていたクァンですが、どうやらIRA絡みの事件らしい事は分かっているのに一向に捜査が進展しない事に号を煮やし、「犯人を教えて欲しい」としつこく警察やリアムの事務所を訪ねて回るんですね。
で、警察やリアムを含めた事務所の面々は、相手が小柄で初老の中国人だから当然ナメて掛かるわけですよ。「またチャイナマン(中国人への別称)が来たわ」なんつって。

ところがこのクァンは元々、ベトナム戦争アメリカ側の特殊工作員として戦っていた兵士。手近な材料でサクッと爆弾を作っちゃうような超ヤバイおじさんなのです。

一方のリアムは、今でこそ北アイルランドの副首相ですが、元はIRAの“戦士”(しかもかなりの武闘派)だったという過去の持ち主。

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*このキャラクターには実在のモデルがいて、歴史的にIRA暫定派と関係が深い「シン・フェイン党」のジェリー・アダムスという人らしいです。
IRAが起こしたテロに関わっていたのではと疑われている人でもあるらしく、本作では演じるピアース・ブロスナンも外見などをかなり寄せていています。

で、テロの犯人をリアムが知っていると直感したクァンは、直接リアムの事務所に乗り込むものの、リアムは知らぬ存ぜぬ(いや、本当に知らないんだけど)を決め込むわけですが、帰り際クァンが「考えが変わりますよ」と言い残し、トイレに即席の爆弾を仕掛けてボーン!
事務所の面々が慌てふためいているところに電話が鳴り、リアムが出ると「考えは変わりましたか?」とクァン。

うほほぉーー、怖ぇーーー!!((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

映画だけだとよく分からないと思うんですが、このクァンの過去は凄まじく、ベトナム国境近くの広西チワン族自治区出身。本人言うところの少数民族ですね。
最初は北ベトナム軍のベトコンゲリラとしてゲリラ戦を身に付けるも、お父さんが内ゲバというか内輪もめで殺されちゃったのをきっかけに南ベトナム軍に投降。今度はアメリカ軍の特殊部隊で活動します。

米軍からは「戦争が終わったらアメリカに亡命させる」という約束でしたが、アメリカが負けたので約束は保護にされて家族と取り残され。それで北ベトナム軍の捕虜になって拷問され、開放後に家族と亡命しようと乗り込んだボートがタイの海賊に襲われて妻と娘二人が殺されてしまう。

そして、イギリスで奥さんと死別して、3女の成長だけを楽しみに平穏な生活を送っていたのに、その娘は爆破テロで無残に殺されてしまうっていう。

つまり、クァンという男は、人生や家族を国家やイデオロギーによって理不尽に奪われてきた男なのです。そりゃ復讐もするでしょ。(。_。(゚д゚(。_。(゚д゚ )ウンウン

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そんなクァンを、幽鬼のような佇まいや終始死んだ目で演じたジャッキーがホント素晴らしくてですね。

渋いジャッキーに大興奮

これまで、カンフー映画チャップリンバスター・キートンといった無声映画のコミカル要素を盛り込み人気を得る一方、役者としては中々評価して貰えない事に一時はかなり苦しんだ彼ですが、年齢を経て、近年アクション以外の演技も評価されるようになり、そして本作では「ジャッキー・チェン」というパブリックイメージを覆すような、このクァンという老戦士役を見事に演じきっていました。

アクションの方も、いつもの明るく楽しい“ジャッキー印”とは一線を画していて、ジャッキー独特のアクションは残しつつ、あくまでシリアスなアクションを貫いているし、すでに60歳を超えたジャッキーなので、当然全盛期のような動きのキレはないものの、逆にそれが、ロートルながらベテランの凄みを見せるゲリラ戦の達人という役柄にピッタリハマっていたのではないでしょうか。

ただまぁ、日本&中国版で付け足されたというトレーニングシーンは余計かなとは思いましたが。

IRAの内部分裂が物語の推進力に

とはいえ、ここでひたすらジャッキーが復讐するだけなら、単なる小粒なアクション映画で終わるところなんですが、本作ではIRAの内部分裂というストーリーラインがあって、かつてのIRAに戻したい過激な分派が起こした爆破テロによって、リアムの立場はどんどん危うくなっていくのです。

クァンに悩まさられながら、リアムがテロの実行犯と裏で糸を引く“裏切り者”の正体を探るというもう一本のストーリーラインが本作の推進力になっていて、かつては暴力の中心にいた彼が、今度は仲間の暴力によって追い詰められてくわけですね。

この辺のアレコレに関しては、イギリスが複数の国の連合国であり、その歴史の中で様々な諍いがあったという事実を知ってないと、若干混乱してしまうかもしれません。

ただ、このほんの少し「裏切りのサーカス」を思わせる歴史的事実に基づいたストーリーと、ピアース・ブロスナンらの重厚な演技が、クァンのストーリーと絡み合って、本作を一筋縄ではいかない作品に押し上げているのです。

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というか、むしろIRAの内部分裂に翻弄されるリアムの物語こそが本作のメインストーリーであって、そこに“異物”としてのクァンが入り込むことで物語がを面白くしていると言う方が正しいかも。

そんな二人を、アジア随一のアクションスターであるジャッキーと、007役で一世を風靡したピアース・ブロスナンが共に老境に差し掛かった今演じる事に、映画史的な意味があるのかな?なんて思いましたねー。

興味のある方は是非!!!

 

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ジョンからサラへ「ターミネーター:ニュー・フェイト」(2019)

ぷらすです。

今日、劇場で『ターミネーター:ニュー・フェイト』を観てきました!
アメリカで大コケ、日本でも賛否別れているらしいと聞いてたので、正直、あまりハードルを上げずに観に行ったんですが、個人的には思ったよりずっと面白かったです!

というわけで、今回はまだ公開中の作品なので極端なネタバレはしないよう気をつけて感想を書きますが、これから本作を観る予定の人や、ネタバレは絶対にイヤ!という人は、本作を観たあとで、この感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

SFアクション『ターミネーター2』の続編。未来のためにターミネーターに立ち向かう人々を待ち受ける運命を映し出す。ジェームズ・キャメロンが製作としてシリーズに復帰し、『デッドプール』などのティム・ミラーが監督を担当。『ターミネーター2』でT-800を演じたアーノルド・シュワルツェネッガーと、サラ・コナー役のリンダ・ハミルトンが再共演を果たす。(シネマトゥディより引用)

感想

ざっくりシリーズ解説

まず、まだ「ターミネーター」を一回も観たことがないという人に、大まかな内容をざっくり説明すると、

・人間が開発したA・I「スカイネット」が暴走(審判の日)、人類が絶滅しかける。
・ジョン・コナーというリーダーが現れ人類の反撃開始。
・「ジョン・コナーが生まれないように、ママを殺しちゃおう」と考えたスカイネットが、殺人ロボット・ターミネーターを過去に送り込む。

ターミネーターvsサラ・コナー&助っ人の死闘が始まる。

というもの。

ターミネーター(T1)」(84)では、シュワちゃん演じるT-800に追い回されながら、リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーが、トンチを効かせて返り討ちに。

ターミネーター2(T2)」(91)では、まだ子供のジョン・コナーを殺しに、スカイネットが新型のT-1000を、未来のジョン・コナーは改造したT-800を過去に送り、ターミネーター同士激戦の末に相打ち。何とか「審判の日」は回避されます。

その後、

T3」は“審判の日”が回避されたと思ったら延長されただけだったという話で、
T4」は“審判の日”以降の未来編で、
新起動ジェネシス」は、シュワちゃん復活祭
と迷走。
これが気に入らなかったシリーズ生みの親ジェームズ・キャメロンが「T3以降はなかったことにして、ワシがT2の正当な続編を作る!」と老害ぶりをいかんなく発揮して制作したのが本作「~ニュー・フェイト」なのです。

そんな本作の話題は、何と言ってもサラ・コナー役のリンダ・ハミルトン28年ぶりの復帰。

すっかりいい感じのお婆ちゃんになったリンダ・ハミルトンですが、主人公大ピンチに満を持して登場したリンダ・ハミルトンの貫禄たっぷりな姿には、ぶちアガりましたねー!

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 お婆ちゃんサラカッコイイー!

ざっくりストーリー紹介(ちょいネタバレ)

“前作”「T2」でT-1000を撃破し、スカイネットによる“審判の日”を回避したコナー母子は南の島でのんびり暮らしていたが、そこに現れたのはT-1000と共に溶鉱炉に落ちて死んだハズのT-800(シュワちゃん

“審判の日”は回避したはずなのに、何故か再び送り込まれた新たなターミネーターT-800によって、ジョン・コナーは命を落としてしまうんですね。
*ここ、ちょっと分かりにくいんですが、スカイネットはなくなったけど、それ以前に別働隊としてスカイネットから送り込まれたターミネーターは、そのまま残って活動を続けていたということらしいです。

それから22年後の2020年。

メキシコシティの自動車工場で働くダニー(ナタリア・レイエス)と、弟のディエゴ(ディエゴ・ボネータ)のもとに、突如やってきたターミネーター“REV-9”(ガブリエル・ルナ)は、二人の父親に姿を変えて工場に潜入。ダニーに襲い掛かります。

そこに現れたのが、ダニーを守るため未来からやってきた“強化人間”のグレース(マッケンジー・デイヴィス)。

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グレースは混乱する姉弟を連れて工場を逃げ出すも、追ってきた“REV-9”に弟を殺されたうえ、追い詰められて大ピンチ。
そこに現れたのが、ショットガンとグレネードランチャーを持ったサラ・コナーだったのです。
グレースによると、未来では人工知能「リージョン」の反乱で数十億人の人間が犠牲になる“審判の日”が起こり、リージョンに対抗するため立ち上がった人類の希望となるのがダニーだったというんですね。
そこでリージョンは、ターミネーターREV-9を過去に送り込み――。という物語。

つまり、スカイネットによる驚異はサラたちの活躍で回避されたものの、その事で歴史が変わり、新たな人間の驚異「リージョン」が生まれたというのです。

一方、一人息子のジョンを失ったサラは、何者かからスマホに送られてくる位置情報を元に、未来からやってきたターミネーターを狩るターミネーターハンターになっていました。

そこで3人は“情報提供者”の発信場所を特定。
しかして、REV-9の追跡を逃れながら、命からがら着いた発信元にいたのは、サラの愛息ジョンを抹殺したT-800だったーー。

デデン、デン、デデン。

というストーリー。

ジョンからサラへ

本作の、未来で人類とA・Iの戦争が起こり人類は絶滅しかける→人類の救世主が現れる→殺人ロボットが過去に戻って救世主を殺しに来る。というストーリーラインはT1・T2とまったく変わりません。っていうかこのストーリーラインを変えると「ターミネーター」じゃなくなっちゃいますからね、これは仕方ない。

「T3」や「T4」では、そこを変えようとした結果迷走したわけで、そもそも「ターミネーター」自体が、続編に向いてない作品と言えるわけです。

それともう一つ、このシリーズをジョン・コナーの物語にしようとしたことが、迷走の大きな要因だったのではと、本作の監督ティム・ミラーは語ってます。

ライムスターの宇多丸さんも自身のラジオで話してますが、「T1」でまだ生まれていなかったジョン・コナーは、物語上ただのマクガフィン(物語を始めたり動かすための動機付け)でしかなくて、主役はジョンの母親であるサラ・コナーだったわけです。

ところが、以降のシリーズでサラはジョンの母親以上の役割を与えられていなくて、マクガフィンでしかなかったジョンの物語へとシフトしていった。
それによって、このシリーズに歪みが生じたのではないかという話なんですね。

つまり、誰もが救世主=キリストの物語だと思っていたこのシリーズは、実は聖母アリアの物語だったわけです。

で、その原点に戻って、聖母マリア=サラの物語へと描き直したのが本作で、だからこそ、今回、リンダ・ハミルトンが28年ぶりにシリーズ復帰したのには、大きな意味があるんですね。

本作では、人類滅亡は回避したものの最愛の我が子を失ったサラが、「リージョン」による“審判の日”で家族と日常を奪われたグレースと、REV-9に愛する家族を奪われたダニーを救い、共に戦うことで使命と意思を引き継いでいくのです。

女性メインの物語であることから、「またポリコレかよ」と思う人もいるかもですが、本作ではそこにしっかりと物語上の必然性があるんですよね。

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一方で、ぶっちゃけこの物語にシュワちゃん必要かな?という問題はあるわけですが、本作でのシュワちゃんは3人のサポート役に徹していたし、(設定上のツッコミどころは多いけど)年を重ねた分、演技に説得力もあり、物語を締める文鎮的な役割として機能しているので、個人的には良かったと思いますねー。

ただ、じゃぁこの物語の続編が観たいかと言われれば、(´ε`;)ウーン…もうお腹いっぱいですって感じではありますが。(物語的にも綺麗に終わってたしね)

興味のある方は是非!! 

デデン、デン、デデン。

 

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これぞスパイク・リー映画「ブラック・クランズマン」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アカデミー賞で6部門にノミネートされ、脚色賞を受賞したスパイク・リー監督久々の新作『ブラック・クランズマン』ですよー!

公開前から気になっていた作品なんですが、公開時はタイミングが合わず、先日レンタルDVDが出たので借りてきました。

感想を一言で言うなら「これぞスパイク・リー作品」って感じでしたねー。

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概要

ドゥ・ザ・ライト・シング』などのスパイク・リーがメガホンを取り、第71回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した実録ドラマ。1970年代末のアメリカを舞台に、2人の刑事が過激な団体で潜入捜査する。ドラマシリーズ「Ballers/ボウラーズ」などのジョン・デヴィッド・ワシントン、『ハングリー・ハーツ』などのアダム・ドライヴァーのほか、ローラ・ハリアートファー・グレイスアレック・ボールドウィンらが出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

スパイク・リーという男

スパイク・リーは大学院卒業課題のために製作した「ジョーズ・バーバー・ショップ」で脚光を浴び、1985年に監督した初めての商業映画「シーズ・ガッタ・ハヴ・イット」が大ヒットをキッカケにCM監督として多くの話題作を制作します。

一方で、映画監督としては人種差別、メディアの役割、都市の犯罪と貧困、そして政治的な問題など、多くの社会問題を扱った作品を制作し、また、歯に絹着せぬ物言いで、政治家、メディア、映画監督などと論争を繰り広げるなど、政治・社会的発言でも度々話題になったりする人です。

僕と同世代の映画ファンには、何と言っても黒人解放運動家の生涯を描いた名作「マルコムX」のイメージが強いのではないでしょうか。

そんなスパイク・リーですが、同名韓国映画のリメイク版「オールド・ボーイ」(2013)以降は主に配信作品を作っていて、そんな彼が久しぶりに劇場長編映画にカムバックした作品が本作なんですね。

ブラック・クランズマンとは

本作は、コロラド・スプリングズで初の黒人警察官ロン・ストールワースの同名ノンフィクションを原作に、制作で「ゲット・アウト」「アス」などのジョーダン・ピールが「この映画を撮るならスパイク・リーしかない」と監督を依頼し実現したという流れらしいです。

題材といい、内容といい、確かにスパイク・リーが撮るべき映画ですよね。

物語をざっくり要約するなら「黒人刑事がKKKクー・クラックス・クラン)相手に一泡吹かせる」という内容。

アメリ中南部コロラド州コロラド・スプリングズの警察署でアフリカ系アメリカ人(黒人)として初めて警察官に採用されたロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、他の警官たちの“内面的”黒人差別にイライラが募る毎日。
そこで、署長に潜入捜査官になりたいと直訴、初めての任務は元ブラック・パンサー党(黒人開放運動グループ)のクワメ・トゥーレ(ストークリー・カーマイケル/演:コーリー・ホーキンズ)の演説会への潜入だったんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 主演のジョン・デヴィッド・ワシントンはデンゼル・ワシントンの実子

その後、情報部に配属されたロンはたまたま新聞に掲載されていたKKKの構成員募集広告を発見。電話でレイシストの白人を演じて気に入られた彼は、支部長に会う約束を取り付けるんですが、黒人の彼が会うわけにはいかず、同僚の白人警官フリップ・ジマーマンアダム・ドライバー)を潜入役、自らは電話交渉担当として二人一役で“ロン”を演じ、KKKへの潜入捜査を展開していく――というストーリー。

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いわゆるコンゲームもの(主人公が策略を用いて敵を罠にハメる物語)であり、バディムービーでもあり、サスペンスコメディーでもあるんですね。

ちなみに、KKKアメリカの白人至上主義で黒人差別主義者の団体として有名ですが、彼らの標的は何も黒人だけではなく、有色人種全般、さらにユダヤ系白人も差別の対象なのだそうです。
で、アダム・ドライバー演じるフィリップはユダヤ系白人なので、KKKの標的である二人が組んで、潜入調査するという物語でもあるわけです。

対比によってアメリカ近代史・映画史を批評する

そんな本作は、かの“名作”「風とともに去りぬ」の、アメリ南北戦争で大敗を喫した南軍の負傷兵たちが本当に大量に地べたに寝転がっている中で主人公のスカーレット・オハラが「神よ、南部連合を救いたまえ!」と嘆くシーンの引用からスタート。

南北戦争といえば、黒人の奴隷制度廃止を掲げる北軍と、継続を掲げる南軍によるアメリカを二分した内戦です。

続いて、アレック・ボールドウィン演じる博士が人種混交への嫌悪と恐怖に、ユダヤ人と共産主義がらみの陰謀論を交えてまくし立てる。そのバックでは中盤でも登場するD・W・グリフィスの「國民の創生」が映し出されている。

この「國民の創生」は後の映画の撮影技法を確立したという点では“名作”ではあるものの内容にかなり問題があり、この映画の公開後、現実では消滅していたハズのKKKが復活してしまったといういわくつきの問題作でもあるのです。

この冒頭シーン一発で、リー監督は、“その映画はKKK絡みの映画ですよ”と宣言していると同時に、KKKがどういう経緯、主義主張を掲げて誕生したのかという歴史をサクっと説明しているんですねー。

で、本編に入ると「こいつはマジでハンパねえ実話だぜ!」という字幕のあと、タイトルが出るんですが、このタイトルロゴや主人公を上から撮るカットなど、いかにも70年代ブラックスプロイテーション映画風。

ブラックスプロイテーション映画とは簡単に言うと、正義の黒人が悪い白人をやっつける映画で、劇中でも「シャフト」「スーパーフライ」など、当時のブラックスプロイテーション映画が引用されされていたりします。

これは、冒頭の「風とともに~」「國民の創生」との対比にもなっているし、黒人集会への潜入捜査で知り合った大学生で開放運動のリーダーでもあるパトリス ( ローラ・ハリアー)とロンによるブラックスプロイテーション映画の是非を巡る議論のシーンで登場するわけですね。

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つまり、リー監督は映画を通して、近代アメリカの歴史と映画史を重ね合わせながら同時に批評しているわけです。

パトリスはこれらの映画を「真の黒人開放には結びつかない、ただのまやかしである」という論調で、それに対してロンは「ただの映画だろ?」と返す。

彼女が警官も政府も白人が牛耳るものは全て“敵”だと言い、ロンは黒人開放には賛成だけど白人全てを敵視することには疑問があるというスタンスなんですね。
ただ、ロンにしろパトリスにしろ、大学出のインテリだし比較的裕福な家庭に育っている。

対して、潜入捜査に入ったフィリップが見るのは、KKKのあまりにもお粗末で間抜けな実態。
ポール・ウォーター・ハウザー演じるアイヴァンホーはいかにもボンクラな、いわゆるホワイト・トラッシュ(貧乏白人)ってやつで、フィリップをユダヤ人ではと疑うフェリックス(ヤスペル・ペーコネン)やその奥さんコニー(アシュリー・アトキンソン)は中流階級っぽいけど決して裕福ではなさそう。
それは支部長で冷静な切れ者に見えるウォルター(ライアン・エッゴールド)も同様で、要は、生活の不満や鬱憤をKKKで正義を行っているという自己承認でごまかしているわけですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 「ホワイトパワー!」と叫ぶKKKのみなさん

唯一、KKK幹部のデュークトファー・グレイス)は議員だけど、「黒人は黒人英語しか喋れない」という間抜けな先入観で、ロン(黒人)を白人だと信じこんでしまう間抜けですしね。

このように、前述した映画だけに限らず、本作では常に黒人側と白人側が対比構造で描かれるわけです。

だってスパイク・リーだもの

とはいえ、この映画がただの痛快なサスペンスコメディーなのかと言うと、決してそんな事はありません。だってスパイク・リーだもの

スパイク・リーと言えば、社会派の監督であり主義主張の強さが特徴。

本作でも例えば、ロンが潜入する黒人集会では元ブラック・パンサー党のクワメ・トゥーレの演説に、ロンを含め集まった黒人たちが強い感銘を受ける様子を、かなりの長尺と黒バックで彼らの表情をアップで撮ることで表現するという不思議な演出をしていたり、クライマックスではハリー・ベラフォンテ演じる老人が語る、ジェシー・ワシントンのリンチ事件をこれまた(カットバックを交えつつ)長尺で観せていきます。

多分、この二つのシーンは、スパイク・リーが絶対に語りたい部分だったんでしょうね。

そのせいで映画的には明らかにバランスを崩しているんだけど、そんなことはお構いなしだし、なんやかんやあってめでたしめでたしのハッピーエンドかと一旦安心させてからの、賛否両論を巻き起こした例のラストシーンと、ある事件のニュース映像で、最後の最後に観客をぶん殴りに来るっていう。

正直、そういうスパイク・リーの主義主張の強さが鼻につく人もいると思うけど、往年のスパイク・リーファンの人なら「これぞスパイク・リーの映画!」って嬉しくなると思うし、個人的には絵空事で終わらせず、人種や立場が違う人間同士が分かり合うのはそんなに簡単じゃねえぞ!っていうどストレートで強烈な彼の主張はもっともだし、この映画で語られているのは決して他人事ではなく、我が事として考えないといけないんだよなって思いましたねー。
まぁ、後味は悪いですけど、それもスパイク・リーの味ですしねw

興味のある方は是非!!!

 

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使者たちの過去に焦点を当てた続編「神と共に 第二章:因と縁」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは前回ご紹介した韓国映画「神と共に 第一章:罪と罰」の続編となる『神と共に 第二章:因と縁』ですよー!
本作では、前作で主人公を冥界に導く3人の使者の、前世での関係性が明らかに。
さらには、みんな大好きマ・ドンソクも出演していますよー!

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概要

『国家代表!?』『ミスターGO!』などのキム・ヨンファがメガホンを取ったファンタジーアクション2部作の第2弾。死者が転生するための裁判で、弁護と護衛を務める冥界の使者たちの行く末を、アクションを交えて活写する。『お嬢さん』などのハ・ジョンウをはじめ、チュ・ジフン、キム・ヒャンギのほか、第2章には『ファイティン!』などのマ・ドンソクらが出演した。(シネマトゥデイより引用)

感想

使者3人の因縁が明らかに

前作は、映画冒頭で主人公ジャホンが死亡。49日の間に7つの審問をクリアして輪廻転生させるため彼を導く3人の使者(死神?)の奮闘と、主人公と家族の関係性を描いた“あの世エンターテイメント”だったわけですが、その前作で非業の死を遂げて怨霊となるも、カンニムの活躍で消滅を免れた主人公の弟スホンに、審判を受けさせ輪廻転生させるというのが本作のざっくりしたストーリー。

なんですが、実は本作の真の主人公は、カンニム(ハ・ジョンウ)、ヘウォンメクチュ・ジフン)、ドクチュン(キム・ヒャンギ)という使者の3人だったりします。
前作でも少し語られてましたが、カンニムの方は前世の記憶を持っているけど、ヘウォンメクとドクチュンにはないんですね。
本作では、その3人の過去や関係性を描いているのです。

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スホンに審判を受けさせる代わりに閻魔大王が提示した条件は、とっくに寿命を迎えているのに屋敷神(マ・ドンソク)の妨害で使者が“お迎え”出来ないお爺ちゃんを冥界に連れてくること。

カンニムから命じられたヘウォンメクとドクチュンは、下界に降りてお爺ちゃんを迎えに行くわけですが、そこで2人の過去を知る屋敷神から自分たちが前世で何者だったかを語られるわけです。

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一方、冥界に残ったカンニムも、スホンとの道中で自らの前世を語っていき、やがて二つの視点から前世での3人の関係が明らかになっていくという趣向。

ただ、前作では、主人公ジャホンと家族の関係というのがメインテーマでもあったので、冥界パートと下界(現世)パートを並べることに意味があったわけですが、本作では既に家族3人の物語は解決しているので、ぶっちゃけ下界パートはヘウォンメクとドクチュンがなくした前世の記憶を(屋敷神の語りで)知る以上の意味はなくて、下界パートがなくても物語は成立させられるんですよね。

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逆に、下界での、お爺ちゃんと孫と屋敷神というエピソードをぶっこむことで、尺も伸びちゃうし、物語も散らかってしまう感じがしました。
前作と対になる構成にしたいという、製作者側の意図は分かりますけどね。

あと、3人の関係性が割と序盤でわかっちゃうので、クライマックスで「実はこういうことでしたー!」ってドヤ顔で謎解きをされても、「…うん、でしょうね」としか思わないんですよね。

三人三様の見せ場が欲しかった

あと、本作はアクションシーンも前作に比べるとかなり少なめだし、前作以上のものも出てきません。
X-MENっぽいとはいえ)前作ではアクションがかなり良かったので、本作も期待したんですが、そこはちょっと肩透かしを食らった感じでしたねー。

例えば、カンニムとヘウォンメクでは持ってる能力が違うとか、そういうひと工夫があれば良かった気がするんですが、予算の問題とかあったのかな?

それと、2作を通して紅一点のドクチュンに見せ場らしい見せ場がなかったのも、ちょっと残念でした。
基本、この「神と共に」はキャラ映画でもあると思うので、使者の3人それぞれに異なる能力があって、それがそれぞれの見せ場になるみたいなシーンがあれば、もっと盛り上がったんじゃないかと。

ストーリーに関して言えば、前作が「家族」の物語として決着したのに対し、本作は過去の因縁によって一度は心が離れかけた使者3人が、擬似家族的に元サヤに収まるという決着のつけ方をしていたし、前作に続き本作でもしっかりと現実の韓国とリンクさせているところは、個人的に良かったと思いした。

決着のつけ方も前作から韻を踏む形で、上手く繋げていたと思いますしね。

興味のある方は是非!

 

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韓国版大霊界?「神と共に 第一章:罪と罰」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、韓国で人気のWebマンガを実写映画化した作品『神と共に 第一章:罪と罰』ですよー!

死んだ人間が49日以内に、冥界で行われる7つの裁判を受けて量刑が決まるという仏教的思想? を元に、CGを駆使したビジュアルで死後の世界を描いた“あの世エンターテイメント”です。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

韓国のウェブコミックを原作にした、ファンタジーアクションシリーズの第1弾。地獄の裁判で死者に付き添う冥界の使者たちの旅を描く。『カンナさん大成功です!』『国家代表!?』などのキム・ヨンファがメガホンを取る。『群盗』などのハ・ジョンウ、『背徳の王宮』などのチュ・ジフン、『優しい嘘』などのキム・ヒャンギのほか、チャ・テヒョン、D.O.らが出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

死後の世界を描いた“あの世エンターテイメント”

日本でも死後の世界を描いたフィクションは沢山あって、マンガ・アニメ・ドラマなら「鬼灯の冷徹」や「死役所」「スカイハイ」など、映画なら「丹波哲郎大霊界 死んだらどうなる」や「地獄」「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」などなど。

で、本作は韓国のWebマンガを実写化した作品でして、映画冒頭で死んだ主人公キム・ジャホンチャ・テヒョン)が、3人の使者と共に7つの地獄で生前の行いについて裁判を行うという、仏教的死生観を元にした作品なんですね。

そういう意味では、日本を始めとした仏教圏では受け入れやすいように思うんですが、逆に死後の世界に対する細かい“差異”が、気になっちゃう部分はあるかも。
また、僕は原作の方は未読なのでハッキリとは分かりませんが、今回の実写映画とは内容的にもかなり違うようで、キャラやストーリーもかなり変えているみたいですね。

ざっくりストーリー紹介

ビル火災の現場で、子供の救出時に命を落とした消防士キム・ジャホンは、スーツ姿の三人の男女に出会う。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 若くして命を落とす主人公ジャホン

この三人は冥界(あの世)に死者を誘い、7つの審判で死者を弁護する使者。
リーダーであり7つの裁判で亡者を弁護するカンニム(ハ・ジョンウ)、護衛のヘウォンメクチュ・ジフン)、補助弁護士のドクチュン(キム・ヒャンギ)と共に冥界へと渡ったジャホンは、生前に善行を積んだ「貴人」であるため、下界への転生は確実かと思われたが、裁判が進むにつれて転生への道に暗雲が立ち込めるのだった――というストーリー。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ジャホンを守る3人の使者

生前、消防士として多くの命を救い、年老いた母や司法試験を目指す弟のため寝る間も惜しんで働いたジャホンは最初、7人の王が裁判官となる法廷でも無罪は確実。即生まれ変われる(裁判で有罪になると地獄に落ちて輪廻転生は出来ないらしい)と思われているわけですが、ストーリーが進むにつれ思いもよらなかった過去が明らかになっていくという、ミステリー的要素もあるんですね。

さらにジャホンの“肉親”が怨霊になったことで、ジャホンの行く手は地獄鬼や怨霊によって阻まれてしまうらしいのですが、個人的には、そうした作劇上の“ルール”が多めで正直飲み込みづらかったですねー。
例えば肉親が怨霊になると、なぜ冥府や主人公に影響が出るのか――とか、善人は極楽行きじゃなくて即、輪廻転生に入るんだ――とかね。

さらに、ジャホンのお母さんは聾唖者な上に過去に難病にかかって一時は寝たきりになっていたという設定や、兵役中の弟スホン(キム・ドンウク)のストーリーも入ることで、全体的にとっ散らかってしまった印象でした。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 閻魔大王

その一方で、物語クライマックスで明らかになるジャホンの衝撃的な行動の理由に、韓国に横たわる社会問題を入れ込んだ上で「家族」の物語に落とし込むなど、単に荒唐無稽なだけのファンタジーではなく、しっかりとしたテーマ性も盛り込むことで現実とリンクさせるあたりは、上手いなーとも思いましたけども。

VFXの見せ方

中盤では、使者のリーダーであるカンニムが、下界で怨霊の正体を探ったりチェイス・対決したりするシーンもあるんですが、この時のカンニムの移動などのVFXシーンは中々カッコイイし見ごたえもありましたねー。

ことVFXに関してのレベルで言えば、日本と韓国の間にそれほど差はないと思うので、やはり本作でのVFXの使い方が上手いんだろうと思いました。

まぁ、かなり「X-MEN」のナイトクローラーっぽいなーとは思いましたけどw

ちなみにこの作品、同時進行で第2章も作られていて、そちらもTSUTAYAで一緒にレンタルされているんですが、本作のラストカットでみんな大好きな“あの男”も登場してるので、こちらも楽しみです。

興味のある方は是非!

 

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ゾンビの皮を被った青春ミュージカル映画「アナと世界の終り」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ゾンビとミュージカルを融合させたイギリス映画『アナと世界の終り』ですよー!

この映画、超観たかったんですが地元では上映がなかったので、今回レンタルされてやっと観ることができましたよ!(*゚∀゚)=3

思ってたのとは随分違ったけど、歴代ゾンビ映画の中でもかなりよく出来た映画でしたねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭などで上映された異色のゾンビホラー。田舎町を舞台に、校舎に取り残された仲間をゾンビから救おうとする女子高校生たちをミュージカル形式で活写する。監督は短編などを手掛けてきたジョン・マクフェイル。『スティールワールド』などのエラ・ハントを筆頭に、マルコム・カミング、セーラ・スワイアらが出演した。凄惨(せいさん)な描写とミュージカルシーンを融合させている。(シネマトゥデイ より引用)

感想

ゾンビ+ミュージカル

ゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」から始まり、今も世界中で作られているモダンゾンビ映画

80~90年代は残酷さや怖さを競い合っていたこのジャンルは、2000年以降になると、いかにオリジナリティーを出して他作品と差別化出来るかという大喜利のようになっていくんですね。

また、子供の頃ゾンビを観て育ったゾンビネイティブ世代が大人になったことで、ゾンビはホラーという枠を飛び越えて、コメディーやアクション、パニック、ディザスター、ミステリー映画などと融合。今も順調に勢力を拡大しています。

例えば、ゾンビコメディーの最高峰「ショーン・オブ・ザ・デッド」や、韓国発のゾンビ映画新感染/ファイナル・エクスプレス」、ゾンビにJ・ホラーの要素を融合したマンガ原作の実写化作品「アイアムアヒーロー」、ゾンビと古典文学を融合した「高慢と偏見とゾンビ」などなど。

そして、本作ではついに、ゾンビとミュージカル映画が融合してしまったんですねー。

子供の頃に観た「ゾンビ」以来、数々のゾンビ映画を観てきた身としては、「ゾンビもとうとうここまで来たか」というある種の感慨を感じてしまいましたよw

まぁ正直、僕はこの作品を出オチ的なコメディー映画だろうとタカをくくっていたんですが、実際観てみると思っていたのとはかなり違ってて、劇中で描かれるゾンビやゾンビパンデミックによる世界の崩壊が、二重三重の意味を持つメタファーとして描かれた、かなりレベルの高い映画でしたねー。

ゾンビの皮を被ったど王道青春ミュージカル

本作の主人公アナ(エラ・ハント)は幼い頃に母を亡くし、イギリスの田舎町リトル・ヘイブンで学校の用務員の父親と二人暮らし。
しかし、旧態然として閉鎖的な町に辟易としている彼女は、バイトでお金を貯めて世界旅行を計画しているんですね。

しかし、その計画を知った父は大反対、二人が喧嘩をしたその翌朝、のどかな田舎町をゾンビパンデミックが襲い――という物語。

映画序盤では、そんなアナや、新聞部員でホームレスの真実を記事に書こうとするステフ(サラ・スワイヤー)、映研?で自主制作ホラーばかり作っているクリス(クリストファー・ルヴォー)など、高校の生徒たちによるミュージカルシーンが始まるんですが、これがまた思った以上にイイ曲だし、キャストたちもみんな歌が上手いし、ダンスの方はアナ役のサラ・スワイヤー自身がつけたらしいですね。

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で、歌っている歌詞をざっくり意訳すると、「この町から逃げ出したい」みたいな内容で、のどかで平和なこの町も、彼女たち高校生には窮屈で息苦しい。
もっと広くて自由な世界へ飛び立ちたいという、田舎の若者たちが抱える普遍的な苦悩だったりするわけです。

そんな田舎町で突如起こるゾンビパンデミックは、いわば若者たちを閉じ込めるこの田舎町そのもののメタファーでもあり、襲い来るゾンビ相手にサバイブするのは、彼女らが自立するための通過儀礼のメタファーでもあるわけですね。

もちろん、その合間にもミュージカルシーンは入ってくるんですけど、歌詞の字幕をちゃんと読んで欲しいです。
例えば、「(生の)人の声を聞きたい=(ネット越しじゃなく)直接繋がりたい」とか、現代に横たわる問題や誰もが心に秘めた苦しさみたいなものを、劇中の曲で歌い上げているのです。

結果、アナたちは友達や親しい人々を失いながらも何とか生き残り、車で故郷を後にするわけですが、しかしゾンビパンデミックは世界的に広がっているわけで、それは僕を含めた大人たちが作り消費してきた、現実の世界や文化の終焉のメタファーになっているのです。

平たく言えば、子供達にとっては世界そのものがオワコンであり、逃げ場などどこにもないという絶望を、高校生であるアナの視点で描いているわけですよね。
本作の原題は「ANNA AND THE APOCALYPSE」なんですけど、まさに“黙示録”というタイトルがしっくり来る苦いラストでした。

安易なハッピーエンドではなく、ラストにこれをぶっ込んでくるあたり、さすがイギリスは皮肉が効いてるなーって思いましたよ。
同時に、このラストは僕ら大人たちへの強烈なメッセージでもあるんですね。

ゾンビ映画としてもちゃんとしてる

その一方で、本作はゾンビ映画の“お約束”もしっかり守られているし、過去のゾンビやホラー、ミュージカル映画の名作のオマージュも盛りだくさん。

アナと“友達”のジョン(マルコム・カミング)が登校途中に墓地でゾンビに襲われるシーンは前述した「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」オマージュだろうし、予告編でも使われた歌うアナの後ろでゾンビに襲撃されている街の様子は、リメイク版「ドーン・オブ・ザ・デッド」か前述の「ショーン・オブ・ザ・デッド」オマージュ。

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クライマックスの体育館のシーンなんかはカルト的ミュージカル「ロッキー・ホラー・ショー」っぽいんですよね。

テーマ自体は重く強烈な皮肉も入っているけど、そうした遊び心も盛りだくさんなので誰もが楽しく観られる作品だと思いましたねー。

興味のある方は是非!!!

 

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世界の“ミフネ”入門編「MIHUNE TEH LAST SAMURAI」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、日系アメリカ人のスティーヴン・オカザキ監督によるドキュメント映画『MIHUNE TEH LAST SAMURAI』ですよー!

たまたまTSUTAYAで発見して気になったのでレンタルしてきましたよ。

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概要

『用心棒』『赤ひげ』でベネチア国際映画祭男優賞を2度受賞したほか、海外作品でも活躍した俳優・三船敏郎に迫るドキュメンタリー。黒澤明作品で共演した俳優たち、三船が出演した作品の監督、殺陣師や息子へのインタビューや映像資料から、世界のミフネと称された彼の魅力を解き明かす。監督は『ヒロシマナガサキ』などのスティーヴン・オカザキ。ナレーションをEXILEAKIRAが担当する。(シネマトゥディより引用)

感想

インタビューで浮かび上がる世界のミフネ

本作は、同時代を生きた俳優・女優や、家族、スコセッシとスピルバーグなどのインタビューを中心にした構成で、日本映画史や黒澤明との関係を絡めつつ、世界的大スターの三船敏郎の生涯を追うドキュメント映画です。

黒澤映画で演じた役柄での銅鑼声や目力、存在感の大きさから、豪放磊落な役者というイメージの強い三船敏郎の人となりを、近しい人々のインタビューを元に浮かび上がらせていくというコンセプト。

本作に登場するのは、香川京子中島春雄、土屋嘉男、加藤武八千草薫ら、三船と同時代を生きた俳優・女優たちと、中島貞夫、スコセッシ、スピルバーグ、そして三船の息子である三船史郎など錚々たるメンバーで、在りし日の三船や黒澤明との関係性などを語っていくんですね。ナレーターは英語版をキアヌ・リーブスが、日本語版をEXILEAKIRAがそれぞれ担当しています。

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戦前、中国山東省の青島で生まれた三船が、戦争で帰国後、軍隊で特攻隊の若者たちの教育係を経て、戦後はカメラマン助手として東宝を受けるも、そのルックスやスタイルの良さから、俳優に回されたこと。

その後、黒澤明と出会い「野良犬」「羅生門」「七人の侍」「隠し砦の三悪人」「蜘蛛巣城」「用心棒」などで日本のみならず海外からも高い評価を得たこと。

「赤ひげ」を最後に黒澤と離れたのち独立プロダクションを立ち上げ、映画やテレビで活躍、また多くの海外映画にも出演したこと。

しかし、晩年は軽度の認知症を発症、家族と静かに暮らし1997年にこの世を去ったことなどを、前述した人々の証言を交えてなぞっていきます。

黒澤&三船入門編

また、「七人の侍」や「用心棒」が世界に与えた影響の大きさにも触れ、三船敏郎という役者の偉大さと彼の人となりを並行に描いていくわけです。

ただ、インタビューが中心なので、たとえば在りし日の三船自身が何かを語る映像とか、映画メイキングや、プライベート映像のようなものはなく、関係者インタビューに合わせて、当時の写真や出演映画のワンシーンが差し込まれる程度。

また、そこで語られる内容も特に目新しいものはなくて、概ね古参の映画ファンなら既に知っているようなものばかり。なので映画ファンにとっては若干物足りない作品と言えるかもしれませんし、個人的には、海外のファンや、黒澤、三船の作品を観たことがないようなファンに向けての世界のミフネ“入門編”という感じがしました。

時間も80分と、丁度いい長さですしね。

映像特典の方が長い

で、レンタルDVDには、スティーヴン・オカザキ監督のインタビュー、スピルバーグのインタビューフルバージョン、映画評論家の町山智浩氏と映画史・時代劇研究家の春日太一氏による1時間のトークイベントが特典映像として入っているんですが、全部合わせると本編よりもそっちの方が長いんですよねw

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特に、町山・春日両氏のトークは、本編よりも内容が濃いので、本編のあとに観ると物足りなかった部分を補足してくれるんじゃないでしょうか。

そういえば、この映像特典で凄くきになったのが、スティーヴン・オカザキ監督のインタビュー中のカメラで、変に揺れたり、わけの分からないズームアップやズームアウトが繰り返されて、非常にイライラしましたねー。

多分、素人の人が撮ってるんでしょうけど、いらん事しないでカメラ据え置きで画角決めたら触るな!って思いました。

まぁ、本編とは何の関係もない話なんですけどねw

本編インタビューでは、今は亡き役者さんたちが三船敏郎を語っていて、例えば中島春雄さんは「ゴジラの中の人」として有名だけど俳優としては無名で、当時超スターだった三船敏郎がそうした無名俳優の人にも普通に接していたという事からも、彼の人となりが分かると思うしインタビューに答える人たちが、三船の事を語る時の表情がとても良くて、そういう意味でも観て損はない作品だと思いましたねー。
あと、本作を観たあとは蜘蛛巣城」を観たくなるんじゃないかと思いますよー!

興味のある方は是非!

 

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