今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

まさかの続編は地球空洞説だー!「アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲 」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、7年前にファンのカンパで制作されたSF映画アイアン・スカイ」の続編、『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』ですよー!

続編の情報を聞いてから心待ちにしてた作品ですが、ついにレンタルが開始されたので早速借りてきましたー!(僕の地元では上映されなかったから)

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

月の裏側に潜伏していたナチスの残党が地球を侵略するSFアクションの続編。月面ナチスの地球侵略から30年後を舞台に、ナチス月面基地で生き延びていた人類の姿が描かれる。前作に続きティモ・ヴオレンソラ監督がメガホンを取り、本作も資金をクラウドファンディングで調達。ララ・ロッシが主演を務め、ユリア・ディーツェウド・キアが再び出演している。(シネマトゥディより引用)

感想

衝撃の前作から7年まさかの続編!?

本作は、フィンランドの映画監督ティモ・ヴオレンソラが制作した、“月の裏側に逃げ延びたナチの残党が地球に攻めて来る”というトンデモ映画「アイアン・スカイ」の続編として、前作同様クラウドファンディングフィンランド映画財団とメディアボード・ベルリン=ブランデンブルクから提供された資金合わせて100万ドル以上の製作費で制作されました。

ヴオレンソラ監督は生粋のボンクラオタクで、2005年に公開したSFアクションコメディ自主映画「ターレック 皇帝の侵略」(スターレックじゃないですよw)が国内外のボンクラ映画ファンに高い評価を得たんですね。

www.youtube.com


「スターレック」で一躍注目を浴びた監督は前作の制作を発表。クラウドファンディングで制作費を募って前作を完成させます。
当時はまだ珍しかったクラウドファンディングの成功例として、前作は大変話題となったんですね。

で、僕も前作をDVDで観たわけですが、第二次世界大戦で敗れたナチスが、ロケットで逃げ延びた月の裏側で文明を作り上げていたっていう、都市伝説を元ネタに物語を膨らませた悪乗り全開のB級SFコメディーで、まぁ内容はハチャメチャでしたw

なんですが、監督自身がかなりのSFオタクということもあり、何気にSFオタクのツボを抑えた映像や展開。振り切ったバカバカしさ。そして、SF映画への情熱が画面から溢れるカルト的な作品として、(僕を含む)ボンクラ映画オタクのハートをガッチリとキャッチしてしまったのです。

それから7年、まさかの続編が作られるという情報を耳にし、しかも今回はヒトラーを始めとした古今東西歴史上の“支配者”たちと人類が戦うっていうじゃないですか!

いちボンクラ映画ファンとして、これは絶対に見逃せません!…よね?

フィンランド版「Fate

そんなわけで本作がどんな映画かというとですね。

前作のあと起きた核戦争によって人類はほぼ絶滅。
地球は放射能によって生物が住めない死の惑星になって30年が経っています。
僅かに残った人類は、かつて月面ナチの子孫で前作のヒロイン、レナーテ・リヒターユリア・ディーツェ)をリーダーに月面のナチ基地に逃げ延びるも、資源不足や老朽化によってジリ貧状態。しかもレナーテも病にかかり、今は主人公でレナーテの娘オビ・ワシントン(ララ・ロッシ)が一人で基地のメンテナンスを行っているありさま。

さらに、生き残った人類の中でも貧富の差があり、一部の富裕層の間ではスティーブ・ジョブスを崇める「ジョブズ教」なる宗教まで登場するんですね。(もちろん聖典iPhoneアプリ

そんなある日、青年サーシャ(ウラジミール・ブルラコフ)を始め地球で僅かに生き残っていたロシアの人々を乗せた宇宙船が月面基地にやってきます。
サーシャは廃品を継ぎ合せて、宇宙船を自作したというんですね。

その中に前作のラスボスで、死んだはずの月面ナチ総統のコーツフライシュアドルフ・ヒトラーと二役 : ウド・キア)も乗り込んでいて――というストーリー。

なんと今回は「地球空洞説」を元に、ヒトラーを始めとした古今東西の“支配者”たちが、実は恐竜時代にやってきたレプタリアン・ヴリル族という宇宙人で、今も地球の空洞「ロストワールド」に暮らし、しかも人類を造ったのは彼らだった――。という前作以上のトンデモ設定。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ロストワールドで食事する“独裁者”たち。ダビンチの「最後の晩餐」をしれっとオマージュ。

また“支配者”の面々というのがヒトラースターリンカリギュラローマ法王ビンラディン、ジンギス・ハン、毛沢東金正恩サッチャージョブズザッカーバーグなど、まさに新旧オールスター勢ぞろいのアベンジャーズ状態なんですよねーw

オビたちは月面基地の人類を救うため、彼らの命の源である超エネルギー、ヴリル・ヤーの入った「聖杯」を手に入れるべく、ヒトラーが支配するロストワールドに決死の潜入作戦を決行する――という物語なのです。

つまり聖杯戦争ですよw

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画像出典元URL:http://eiga.com / ヒトラーTレックスに乗って登場。

前作ヒロイン、レナーテや娘であるオビやその仲間たち人類が、恐竜を操るヒトラーと戦い、歴代の“支配者”たちと聖杯をめぐってチェイスするのは観ていて単純に面白いし、ストーリーや映像も前作よりずっとまとまっているのでかなり観やすくなっていました。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 「聖杯」を巡り鉄の女サッチャー古代ローマの戦車でチェイス

ただ、その分、全体的に前作のハチャメチャ感は影を潜め、小さくまとまってしまっててる感じは否めないかも。(まぁ、続編だから仕方ないかもですが)

いや、もちろん自主制作映画としてはとんでもないクオリティーですけどね。

あと、折角沢山登場している歴史上の“支配者”たちがただの出オチ要員で、物語的にほとんど活かされていないのも残念でしたねー。

とはいえ、約90分の短い映画ながら盛りだくさんだし、そもそも、原題である「The Coming Race」は、エドワード・ブルワー=リットンの同名小説「The Coming Race/来るべき種族」からの引用(“ヴリル・ヤー”も同作からの引用)で、設定も明らかにこの小説を元にしているし、詳しくは分かりませんがアーリア人地球外起源説なんてのもあるらしく、それらが本作のヒントになっているのは間違いないようです。

一見、ただのバカ映画に見えるけど、SF要素がふんだんに盛り込まれてるので、オカルトやSF関係に詳しい人なら思わずニヤリとしてしまうかもだし、もちろんそんなの知らなくても普通に楽しめます。

この年末年始、前作と合わせて、友達とワイワイ観るにはうってつけの作品なんじゃないでしょうか。

興味のある方は是非!!

 

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待望のシリーズ完結編!「ヒックとドラゴン/聖地への冒険」(2019)

ぷらすです。

世界中のファン待望のシリーズ作最新作にして3部作完結編がついに本日公開ということで、僕も劇場に観に行ってきましたよ。

ヒックとドラゴン/聖地への冒険』をね!(*゚∀゚)=3

え、スターウォーズ? あーはいはい。もちろん近々劇場に観に行く予定ですよ。

っていうか、なぜSWと同日公開!映画を ヒットさせる気あんのかドリームワークスアニメーション!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッって話ですよ!

というわけで、今回は本日公開したばかりの作品なので、できる限りネタバレはしないよう気をつけますが、これから本作を観る予定の人や「ネタバレは絶対に嫌!」という人は、映画を先に観てから、この感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

人間とドラゴンの友情を描いた『ヒックとドラゴン』シリーズの第3弾。人間とドラゴンが共に生きることを選択してから6年後、主人公のヒックらが新天地を追い求める様子を映し出す。1作目から監督を務めてきたディーン・デュボア、アニメシリーズを含めてヒックの声を担当してきたジェイ・バルシェルが続投している。(シネマトゥディより引用)

感想

ついに劇場の大画面で!

このシリーズ、僕は1作目をレンタルDVDで観て、「次回作は絶対劇場に観に行こう!」と思ったら2作目は(日本のみ)ネット配信限定。結局後にDVDで見るハメに。
そして今回、3作目にしてやっと劇場で観られるということで、この日のために前2作をもう一度見直して、復習バッチリ状態で今日に臨みました!

その感想を一言で言うなら「やっぱこのシリーズは劇場の大画面で観たほうが断然いい!」ですかね。

まぁ、それは最初から分かっていたことですが、お馴染みトゥースとヒックのコンビが大空を飛び回るシーンは大画面で観ると迫力や臨場感、カタルシスも桁違いでしたよ。

また、本作で登場するドラゴンたちの「聖域」描写は、それだけで感動してしまう美しさでした。

ホント、シリーズ三部作の最後だけとはいえ、劇場の大画面で観られたのはラッキーでしたねー。

ずっと一緒にいられると思ったけれど

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そんな本シリーズ。
1作目では、長年敵対するバーク島のバイキングとドラゴン。
そんな中、バイクングの長ストイックの息子ながら、もやしっ子のヒックと幻のドラゴン“ナイトフューリー”のトゥースの活躍によってバイキング、ドラゴン両者が共存するまでを描き、
続く2作目ではドラゴンの力を悪用し世界を支配しようとする悪のドラゴンマスター、ドラゴから島とドラゴンたちを守るため、ヒックとトゥース、仲間たちが死闘を繰り広げるという物語で、ヒックは若きバイキングの長に、トゥースはドラゴンの王になるまでを描いていました。

そして完結編となる本作。

ずっと一緒にいられると思っていたヒックとトゥースの前に新たな敵で“ナイトフューリー”専門のハンターのグリメルが現れます。

さらに、バーク島はただでさえバイキングとドラゴンが増え続けて超過密状態。
なのに、ヒックたちがハンターに捕まったドラゴンをじゃんじゃん救っては連れてきてしまうので島はパンク寸前なのです。

そこでヒックは、子供の頃に父ストイックから聞かされた「地の果てにあるドラゴンの聖地」へ、バーク島のバイキングとドラゴンみんなで引越ししようと決意するのだが――というストーリー。

しかし、策を弄してヒックに揺さぶりをかけてくるグリメル。そしてトゥースは白いナイトフューリーのメスにメロメロに。

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相棒とずっと一緒にいたいヒックでしたが、ドラゴンたちの本当の幸せを考えて出した決断とは――という物語なんですね。(ネタバレじゃないよ!)

ドラゴンの敵は

1作目ではボスドラゴン、2作目では悪のドラゴン使いドラゴが、ヒックの乗り越える敵としてそれぞれ登場しましたが、本作の敵グリメルは、まさに人間そのもの。

幻のドラゴンであるナイトフューリーを、名声を得る(承認欲求)ためだけに狩り続け、目的のためならどんな卑怯な手段も辞さないという身も蓋もなさは、シリーズ中もっとも現代的な敵と言えるかもしれません。

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一方のヒックはといえば、もちろんトゥースやドラゴンたちを愛していますが、同時に、他のバイキングのように力もなく、父のようなリーダーシップもない自分が長になれたのは、トゥースの力があったから――と思い込んでいる。

前作の敵ドラゴはドラゴン使いという意味でヒックと鏡合わせでしたが、本作のグリメルはそんなヒックの心のエゴを映し出す鏡として登場するんですね。

だからこそグリメルの卑劣な罠でトゥースを奪われたヒックが、我が身と知恵と仲間を武器に「親友」のトゥースを救いに行くという展開は、トゥースという「力」を失うことで、初めてヒックがエゴを捨てて独り立ちする瞬間でもあるのです。

これぞヒックの成長物語の最後を飾るにふさわしい作品と言えるんじゃないでしょうか。

アニメというより実写映画に近い映像

そんな本作が、ディズニーやピクサーなどの作品と一線を画すのは、何と言っても実写的なライティングやカメラワーク。

『アミスタッド』以降、ほぼすべてのスピルバーグ監督作品を制作しているドリームワークスを母体に持つ制作会社だからかは分かりませんが、CGの使い方やカメラワークなどが他の3Dアニメーションとはどこか違う感じがするし、それが本作の説得力や魅力に繋がっているような気がします。

本作でも、要所要所で実写映画を思わせるようなカットやシーン、特に空を飛ぶシーンなんかはディズニーやピクサーとは一味違うカタルシスがありました!

もちろんSWも劇場で観るべき作品ですが、本作も劇場の大画面で観て欲しい作品だと思いました!

興味のある方は是非!!

 

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ミニマムで壮大な物語「A・GHOST・STORY / ア・ゴースト・ストーリー」(2018)*ネタバレ

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ずっと気になっていた映画『A・GHOST・STORY / ア・ゴースト・ストーリー』ですよー!

写真を見てもらえば分かるように、一応オバケが主人公の映画なんですが、いわゆるホラーではないし、コメディーやラブストーリーでもない、あえて言うなら哲学的?な映画で、僕は手塚治虫の「火の鳥」を連想したりしましたねー。

ちなみに、今回はネタバレ全開で感想を書くので、これから本作を観る予定の人や「ネタバレは絶対に嫌」という人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

事故死した男が幽霊になって残された妻を見守る姿を描いたファンタジー。シーツ姿の幽霊としてさまよい続ける夫を『マンチェスター・バイ・ザ・シー』などのケイシー・アフレック、彼の妻を『キャロル』などのルーニー・マーラが演じる。メガホンを取るのは、二人と『セインツ -約束の果て-』で組んだデヴィッド・ロウリー監督。(シネマトゥデイより引用)

感想

デヴィッド・ロウリーが自身の体験を元に

この奇妙な映画の監督は、ディズニー映画「ピートと秘密の友達」の監督でもある デヴィッド・ロウリーで、本作は、彼と奥さんのケンカが発想の元になっているのだとか。

元々テキサスに住んでいたロウリーと奥さんでしたが、彼の仕事が忙しくなったことで、話し合いの末に両者納得ずくでロスアンゼルスに引っ越すことに。
しかし、ロウリーはどうしても奥さんと初めて暮らしたテキサスの家が忘れられずに「今の仕事が終わったらテキサスに戻ろう」と蒸し返したことで、離婚寸前の大ケンカになったというんですね。

本作でも、ミュージシャンCと奥さんのMが住み慣れた家から引っ越すかどうかで揉めるシーンがあるんですが、それはロウリー監督の実体験が元になっているのです。

がっつりストーリー紹介(ネタバレ)

若夫婦のC(ケイシー・アフレック)とM(ルーニー・マーラ)は、田舎町の小さな家で幸せに暮らしていましいたが、ある日、Cが交通事故で急死してしまいます。

病院で夫の遺体を確認したMは遺体にシーツをかぶせてその場を後にしますが、死んだはずのCはシーツをかぶった状態で起き上がり、Mと暮らしていたわが家へ。

幽霊になったCは、自分の存在に気付かず悲しみに暮れるMを見守り続けるのだった――というストーリー。

このあらすじだけだと、「ゴースト/ニューヨークの恋人」的なラブストーリーかと思われるかもですが、さにあらず。
やがて時間が経ち、心の傷が癒えたMは、この家を去っていくんですが幽霊となったCは、その後もこの家に残り続けるのです。

はい、ここからネタバレ

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Cが生前、Mが幼少の頃から引越しが多く、引越しの日に短いメモをその家に隠すと告白をMから聞くエピソードがあり、彼の死後、この家を出ていく時も彼女は柱の隙間にメモを隠して、その上から白ペンキで覆い隠すんですね。

最初は彼女自身に執着していたC(幽霊)ですが、彼女が出て行ったあとはこのメモを読む事に執着し、二人で暮らした家に残り続けます。

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柱のペンキを一生懸命に剥がそうとするCでしたが、そんなある日、この家に母親と子供2人の家族が引っ越してきます。
二人の「家」を“土足で踏み荒らす”家族に怒ったCは、ポルターガイストを起こしてこの母子を追い出してしまう。

そこからさらに時間が経ち、今度は若者たちが引っ越してきてパーティーを開いています。
そこで酔った一人の男がこういう事を話し出すんですね。

宇宙が消滅してしまえば、人類が残した優れた芸術も意味がなくなる。だから人間が創造物を残す行為は無意味だ」(意訳)と、ベートーベンの「第九」を例に出して持論を述べます。(ドイツの詩人シラーの「歓喜の歌」という詩にベートーヴェンが感動して音楽をつけた)

そして彼らも引っ越してゆき、さらに時が経って、家は朽ち果ててボロボロに。
そんな中Cが柱の隙間から、ついにMのメモを取り出せると思った瞬間。
巨大な重機が家を破壊してしまいます。

瓦礫の上に呆然と立つC。同じく破壊された隣家に住むゴーストは「(まっていた人は)もう来ないみたい」と言い残し消えてしまい、後には彼女が被っていたシーツだけが残されるんですね。

やがて彼の家だった場所には高層ビルが経ち、街はすっかり開発され大都会に。

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絶望し、ビルから飛び降りたCが次に目覚めると、そこは西部開拓時代に。
そこに家を建てて暮らそうとする家族がやってきます。
そして、末っ子はノートの切れっ端に何かを書いて、土の下に隠すんですね。
しかし、ふと気づくと、家族はネイティブアメリカンに襲われて皆殺しになってしまいます。

そこから時が流れ、再び見慣れた家の中にいるC。
そこに、不動産屋に連れられたCとMがやってきます。

家を気に入った二人は、この家で幸せに暮らすも、やがてMが引越しの話を持ち出します。渋るCでしたがやがて引越しに同意。
そして引越しの直前、事故で死亡したCの幽霊が悲しみに暮れるMを見守っている。
そんな“2人”をCは後ろから見ているんですね。

そして、時空を超えた長い旅路の末にMが柱の隙間に隠したメモを取り出したCは、ついにその内容を読み、そして消えてしまったところで、物語は終ります。

メモの存在

このメモに何が書かれているのかは劇中では明かされていません。
ロウリー監督は、M役のルーニー・マーラに内容を一任し、そのメモは家の解体でなくなっているんですね。そしてメモを書いたルーニー・マーラ自身も「書いた内容は忘れてしまった」と言っているそう。(それが本当か嘘かは分かりませんが)

まぁ実際、作劇上メモの内容はどうでもいいんですね。

本作で大事なのは、Mが残したメモを、長い旅路の果てにCが読むこと。ですから。

これは、パーティーで男が言っていたことへのカウンターです。
Mのメモは、もしも自分が再びその家に戻ったとき、以前に書いたメモを読むと「嬉しい」から書いていて、誰かに何かを伝えるためではないんですね。
しかし、彼女が引越した家に戻ったことは一度もない。つまりメモは本来、まったく無意味なモノです。

でも、Mがその話をCにしたことで、メモは“二人が共通する歴史”になる。

つまり本作におけるメモは、Cを愛した女性Mが確かに存在し、二人が確かにこの場所で生きた証拠であり、Cの“人生”が無意味でなかったこと証明してくれるアイテムで、この物語を通してロウリー監督は「生命賛歌」「人間賛歌」を描いているのです。

実験映画

そんな本作は非常に実験的な映画です。
監督は「ピートと~」の完成から2日と経たないうちに、秘密裏に本作のカメラを回し始めたのだとか。
そして、本作でCとMを演じたケイシー・アフレックルーニー・マーラは詳細も知らぬまま、ただロウリー監督と何かに取り組みたいという思いだけを胸に、自分のエージェントにも内緒でこの現場に参加したそうですよ。

普通の映画製作は、まず企画が立ち上がると、その権利価値をマーケットで測って資金を集めるパターンが多いですが、本作はとにかくカメラを回し始めること、創造しながら撮ることからスタートしているのです。

監督によれば「本作に関しては、世間の注目や期待といったプレッシャーから解放された状態で制作したかった」のだとか。

しかも、映画本編の2/3以上、主演のケイシー・アフレックはシーツを被ってますからね。しかもずっと無言。アカデミー俳優なのにね。

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ちなみに彼にシーツを被せただけでは、本作のオバケのシルエットが再現できず、スタッフは試行錯誤の末に、ケーシー・アフレックにフェルト製の帽子をかぶらせ、ペチコートを着用させることで、あのシルエットを実現させたのだとか。

映画本編も、ビックリするくらいの長回しと大胆なジャンプカットで、時間を自在に伸縮させてみせる。
Cを亡くしたMが、友人が持ってきたパイをボールごと延々食べ続けたかと思ったら、トイレに駆け込み吐いてしまうまでを長回しワンカットで見せたり(これが長い)、パーティーシーンの直後、家が朽ち果てていたり、西武時代の女の子がメモを石の下に隠す→Cのアップ→女の子が死んでいる→Cのアップ→女の子が骨になってる。みたいな。

これはつまり、幽霊になったCの目線での時間間隔を映像で再現する試みなんですよね。

あと、家が壊されビルが建つまでは時系列通りに進んでいるのに、Cが飛び降りると西部開拓時代まで時間が戻されるシーンは、最初ビックリするというか混乱するかもですが、ラストまで観れば、作劇上の意図が分かると思います。

実験的ではあっても、そんなに難しい作品ではないですしね。

まぁ、序盤は長回しが多用されたり作品の意図が中々掴めないので、退屈に感じてしまうかもですが、観終わった後には不思議な手触りが残る印象的な作品です。

興味のある方は是非!!

 

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ウィル・スミスがハマり役「アラジン」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ディズニー名作アニメの実写化作品『アラジン』ですよー!
何度も書いてますけど、僕は個人的にディズニーアニメ実写化の流れには否定的でして。

なので、本作も最初は観る気がなかったんですが、監督があのガイ・リッチーと知って、それなら観てみようって思いました。

結論から言うと、普通に楽しめる作品に仕上がってましたねー。

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概要

アニメ『アラジン』を実写化したファンタジー。青年アラジンと王女ジャスミンの身分違いの恋と、魔法のランプに関わる冒険が描かれる。監督は『シャーロック・ホームズ』シリーズなどのガイ・リッチー。メナ・マスードがアラジン、『パワーレンジャー』などのナオミ・スコットがジャスミン、『メン・イン・ブラック』シリーズや『幸せのちから』などのウィル・スミスがランプの魔人を演じる。(シネマトゥデイより引用)

感想

ディズニープリンセス路線の変遷

ディズニーアニメと言えば、1937年制作の「白雪姫」から続くプリンセスストーリーという印象が強い人もいるのではないかと思います。

本作の元ネタであるアニメ版「アラジン」もそうした系譜の一本ではあるんですが、先に告白すると、僕はこのアニメ版「アラジン」は観ていないんですよ。

なので、ウィキペディアであらすじを調べたところ、アニメ版と今回の実写リメイク版のストーリーは、大筋は変わってないものの、プリンセスのジャスミンのキャラ造形や彼女が関わるシーンはかなり改変されている様子。

というのも、これまでディズニーアニメは、
ウォルト・ディズニー自身が制作に関わる第1次黄金期。

ウォルト・ディズニーの死や、ディズニー黄金期を支えたアニメーターの引退によって人気が下がり、テコ入れのためディズニー映画部門の責任者に就任したジェフリー・カッツェンバーグ指揮の元、「リトルマーメイド」や本作の元ネタでもあるアニメ版「アラジン」などを次々にヒットさせるディズニールネッサンスと言われた第2次黄金期。

ピクサージョン・ラセターがチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任して以降の第3次黄金時代を経て、ラセター退社後の現在、第4期に突入してるんですね。

で、プリンセスものの多くは、カッツェンバーグが指揮を取った第2次黄金期に作られているわけですが、2000年以降、ディズニープリンセスに変化が訪れます。

その変化の先鞭をつけたのが、多分初の3Dで描かれたプリンセスものである「塔の上のラプンツェル」で、これまでの王子様との結婚がゴールのディズニープリンセスと違い、能動的に自分の道を切り開いていくという新たなプリンセス像を打ち出し大ヒットとなったのです。

以降、「シュガー・ラッシュ」「アナと雪の女王」「モアナと伝説の海」などニュープリンセスが誕生するのと並行するように、実写版や3DCGで過去作のリメイクが行われ、過去の名作を時代に合わせて再解釈する流れが出来上がっていったんですね。

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そして本作のプリンセスであるジャスミンも、こうした一連の流れを受け、キャラクター像に変更が加えられたのではないかと思います。

ウィル・スミスのハマり役

そんな本作でアラジンの相棒として活躍するのが、魔法のランプに住む魔人ジニー。

アニメ版では今は亡き名優、ロビン・ウィリアムズが声優を務めていますが、本作ではウィル・スミスが演じています。

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最初、ジニー役のビジュアルを見たときは「2pカラーのウィル・スミスかよ」という印象でしたが、実際に映画で観てみるとウィル・スミスのジニーが実に上手くハマっているんですよねw

正確に言うと、ウィル・スミス自身の陽性なキャラクターや、振り切ったオーバーアクト、また元々ラッパー(ミュージシャン)だった経歴も含め、アニメ版のジニーを知らない(僕みたいな)人には丁度いいというか。(アニメ版を観た人が受ける印象は違うかもですが)

ウィル・スミスのジニーがあまりにハマり過ぎてて、アラジン役のメナ・マスードを食っちゃってるシーンもチラホラあって、終わってみればウィル・スミスの映画だったなーと。
いや、メナ・マスードジャスミン役のナオミ・スコットも全然悪くないんですけどね。

ガイ・リッチー感は控えめ?

あと、やはりディズニー作品ということもあってか、本作でのガイ・リッチー感はかなり控えめな印象を受けました。

もちろんテンポの早さや映像のところどころに、ガイ・リッチー節は見え隠れするものの、全体を通して観ると、ガイ・リッチー作品というよりディズニー作品に落ち着いているという印象だったと思います。

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まぁ、今回は完全に“雇われ監督”という立場なので、職人監督に徹したということかもしれません。

「me too」運動以降のディズニー

前述したように、本作ではジャスミンのキャラ造形にかなり変更があります。
本作のジャスミンは、他国の王子と結婚させようとする父や、事あるごとに「王女は政治を考えなくていい」と言うジャファー(マーワン・ケンザリ)に反発し、自ら王座を次いで「民の為の政治」を行いたいと考えているんですね。

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この変更は、近年のポリコレだったりme too運動を受けてのディズニーとしての意思表示でもあるわけですが、個人的には、あまり上手くいってないなーと。

もちろん、ポリコレやme too運動そのものが悪いという事ではないし大いにやってほしいけれど、こと“物語”や“作品”に組み込む場合、そこには物語的必然があって欲しいというか。
個人的には、そうした“主張”が物語より前に出てくると、(´ε`;)ウーン…ってなっちゃうのですよ。

これは何も本作に限ったことではなくて、第4期ディズニー作品やハリウッド映画では、こうした、物語より主張が前面に出てる作品が多いような気がするし、そういうテーマを大上段に掲げる作品は、正直食傷気味というか。
それが、元々のアラジンとジニーのストーリーや、アラジンとジャスミンラブロマンスと上手く絡んでいれば文句はないんですけどね。

古典的な物語やキャラクターを、今の時代に合うようにアップデートしたい気持ちは分かるけど、やるからには、元の物語にただ要素を“付け加える”のではなく、物語を根本から解体・再構成するくらいの気概を持って欲しいと思いましたねー。

 

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やつらがまたやってくれた「サマー・オブ・84/SUMMER・OF・84」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、一部のボンクラ映画ファンを熱狂させたカルト映画「ターボキッド」を制作したカナダの映像集団ROADKILL SUPERSTARS(RKSS)の新作『サマー・オブ・84』ですよー!

「ターボ・キッド」はメンバーが少年期に熱狂した80年代コンテンツへの愛とオマージュに溢れたバイオレンス映画でしたが、対する本作はPKSSメンバーの分身のようなキャラたちの、84年を舞台に一夏の冒険とその結末を描いたノスタルジー溢れる作品でしたねー。

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概要

E.T.』『スタンド・バイ・ミー』などが公開された1980年代にオマージュをささげた青春ドラマ。近隣で起きた連続殺人事件の犯人を突き止めようとする少年たちを描く。 RKSSというユニット名でさまざまな短編を撮り、『ターボキッド』の監督を務めたフランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセルがメガホンを取る。グラハム・バーシャー、ジュダ・ルイスらが出演した。(シネマトゥディより引用)

感想

RKSS版「スタンド・バイ・ミー

80年代と言えば、スピルバーグやルーカスを始めとしたスター監督のビックバジェット映画が次々大ヒット作を生み出し、スタローンやシュワルツェネッガーのアクション大作や「13日の金曜日」「エルム街の悪夢」などのスラッシャーホラーが量産された
サブカルチャーや各種コンテンツが最も花開いた時代です。

そんな80年代コンテンツに囲まれて少年期を過ごし、立派なボンクラに育ったカナダの映像集団ROADKILL SUPERSTARS(RKSS)は、短編作品を次々に発表。

そして、本作の監督でもあるフランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセルの3人は、2015年、SFアクション「ターボキッド」で長編デビュー。

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「ターボ・キッド」は名作「マッドマックス2」の世界観と同じポストアポカリプスもので、文明が崩壊し荒れ果てた荒野で主人公が悪の軍団と戦うという物語。
ただし、文明崩壊によって水も石油燃料も尽きているため、彼らが乗り回しているのは車でもバイクでもなく自転車っていう。
そこにアンドロイドの少女が登場したり、むやみに血しぶきや人体破損といったB級SFやスラッシャー映画のような要素と、電子音バリバリのBGMが入れ込まれるというカオスっぷりに、一部のボンクラ映画ファンが熱狂。
今も、カルト的人気を誇っているんですね。

そんな彼らが本作で挑んだのが、RKSS版「スタンド・バイ・ミー
80年代に少年期を過ごした彼らの原体験を元に、84年のアメリオレゴン州の郊外を舞台にしたジュブナイル映画を作り上げたのです。

ジュブナイルでありホラー

都市伝説や陰謀論大好きな15歳のオタク少年デイヴィー( グラハム・ヴァーチャー)、エロで頭がいっぱいのイーツ(ジュダ・ルイス)、精神が不安定な母を持つ太っちょのウッディ(ケイレブ・エメリー)、科学オタクでメガネ小僧のファラデイ(コリー・グルーター=アンドリュー)の4人が、ある事をキッカケに、少年ばかりを狙う連続殺人事件を調査するという物語。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 秘密基地に集まるボンクラ4人組

スタンド・バイ・ミー」は、少年たちが死体を探しに行く=少年から大人への通過儀礼を描いた物語でしたが、本作ではシリアルキラーの正体を暴く事が通過儀礼となるんですね。

深夜、同年代の少年たちと隠れんぼをしていたデイヴィーは、隣人で警官のマッキー(リッチ・ソマー)の部屋で、MTVのTシャツを着た少年といるのを見かけます。
しかしマッキーは独身。デイヴィーは訝しく思い、彼が近年巷を賑わせるシリアルキラーではないかと疑いを持つようになるんですが、話を聞いた3人は警官であるマッキーが犯人のハズがないと、デイヴィーの話を信じません。

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それでも、半信半疑でマッキーの調査を始めた4人は、次々と怪しげな事実を見つけていき――という物語。

もちろん物語の中心は、シリアルキラーの正体が本当に警察官のマッキーなのか、それともただのデイヴィーの妄想かという部分なんですが、そこにサブストーリーとして年上のヒロイン、ニッキー(ティエラ・スコビー)への淡い恋心だったり、仲間たちの複雑な家庭事情や思春期の少年らしいエピソードが織り込まれて行くんですね。

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その辺は、まさに名作「スタンド・バイ・ミー」や、近年なら「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」にも通じる正統派ジュブナイル映画といった流れなんですが、中盤以降はガラリと様相を変えて、一気にホラー展開になっていくのです。

そして(おそらく)誰もが驚愕するであろうラストの展開には、観ていて思わず「(゚д゚)ファッ!?」っと変な声が出ちゃいましたよw

しかもこのラストの展開が、本作を「少年が大人に成長するジュブナイル作品として完成させるさせるわけです。
しかも爽やかさとは無縁の、苦々しい形で。

ほんと「やられた!」って思いましたよ。RKSS怖い子!!

正直、(衝撃的なラストも含めて)万人にオススメ出来る作品ではないですが、ホラー映画が好きな人なら、きっと楽しめると思いますよ。

興味のある方は是非!!

 

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ハリウッドだからこそ「名探偵ピカチュー」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、日本の国民的アニメのハリウッド実写化作品『名探偵ピカチュー』ですよー!

ポケモン世代でもなく、ポケモンもぼんやりと知ってる程度の知識しかないので心配でしたが、実際に観たら普通に楽しめる作品でしたねー。

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概要

ポケットモンスター』シリーズ初の実写作品となるアクションアドベンチャー。かつてポケモン好きだった青年が、父親を捜すために名探偵ピカチュウとコンビを組む。名探偵ピカチュウの声を『デッドプール』シリーズなどのライアン・レイノルズが担当するほか、ジャスティス・スミス、キャスリン・ニュートン渡辺謙らが出演。監督を『ガリバー旅行記』などのロブ・レターマンが務める。(シネマトゥディより引用)

感想

初の実写化がハリウッドだからこそ成功した作品

ポケモンのアニメが始まったのは、僕が社会人になってからの話でして。
もちろん、あれだけの人気シリーズなのでタイトルは知ってるし、設定やピカチューを始めとしたポケモン&登場キャラもぼんやりとは分かるんですが、正直「ポケモン」にそれほど思い入れはないんですよね。ポケモンGO!もしたことないし。

なので、ハリウッドでポケモンが実写化と聞いても、最初まったく食指が動かなかったわけですが、「デッドプール」のライアン・レイノルズがピカチューの声優を務め、Twitter上であの眉根を寄せるピカチューの表情を見て、ずっと気になってはいたのです。いざ公開された後はわりと評判も良かったですしね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / モフモフでカワイイピカチューのビジュアル。(でも声はライアン・レイノルズ

一方で日本のマンガやアニメ、ゲームなどのハリウッド実写化に関しては、これまで辛酸を舐めてきた歴史があるので、正直、若干の不安もあったりしたわけですが、実際観るとそうした心配は杞憂で、普通に面白かったです。

昨今の日本制作のCGアニメ事情を見るに、正直、最初の実写化がハリウッドだったのはむしろ良かったというか、日本制作だったらここまでのクオリティーにはならなかったのかなと思いました。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 同じ傷を抱えた二人はコンビを組んで事件を追う事に

物語は、父ハリーの訃報を知った21歳のティム(ジャスティス・スミス)が、ポケモンと人間が共存するライムシティーで、記憶喪失でオッサン声で人語を喋るピカチューと組んで、ハリーが事故の前に追っていた謎の薬品「R」を巡る事件について調べ始める。という内容。

もちろん、かなり端折っている部分もあるんだろうけど、物語の大筋は任天堂の同名ゲーム準拠なのかな?

父ハリーにわだかまりがあり、大好きだったポケモンから遠ざかっていたティムがピカチューと一緒に事件を追ううち、父子の絆を再確認するという展開は、ベタではあるけど素直に楽しめましたよ。

あと、劇中のピカチューが眉間に皺を寄せたり、オッサン声でジョークを言ったりティムと軽妙な会話をしたり、コーヒー中毒だったりと表情豊かなのも、大谷育江さん演じるカワイイ声のピカチューしか知らない僕的には新鮮でした。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 眉間にシワを寄せるピカチュー。カワイイ

あと、本作の舞台であるライムシティー、特に夜の街並みは「ブレードランナー」を思わせるオリエンタルなカオス感があって、僕みたいなオッサンも思わずニヤリとしてしまったし、人間と一緒にポケモンたちが当たり前に生活している描写は「ズートピア」的なパラダイス感も楽しかったです。

とはいえ

とはいえ、ストーリーの方は(原作準拠だからかもですが)捻りが足りないというか。本作のラスボスになるある人物が、登場した瞬間に「あ、コイツがラスボスだな」って思ったらその通りだったり、父ハリーに関する謎もわりと早い段階で分かっちゃうとかね。

まぁ、本作のターゲットは子供なのだろうから、あまり込み入った内容には出来ないってのもあるでしょうし、ハリウッド的作劇法に沿ってしっかりと作られてるし、序盤はピカチューたちポケモンの可愛さやライムタウンの魅力を存分に見せてから、中盤以降~クライマックスへの盛り上がりもバッチリなので、僕みたいな捻たオッサンがグチャグチャ文句言うのも筋違いなのでしょう。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ケン・ワタナベも出演

少なくとも観てる間は退屈しないで楽しめるし、時間的にも長すぎず短すぎず丁度いいし、お子さんがいる方は、一緒に観るに最適な作品だと思いました。

興味のある方は是非!!

 

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キューブリック版新訳聖書「2001年宇宙の旅」(1968)*ネタバレ

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、スタンリー・キューブリックの代表作『2001年宇宙の旅』ですよー!
これまで何度も挑戦しては途中で寝てしまうを繰り返した作品でしたが、さすがにそろそろ最後まで観られるだろうとレンタル。
そしたら、やっぱり途中で寝てしまい、結局2回に分けて何とか最後まで観る事ができましたよ。ε-(´∀`*)ホッ

というわけで、今回は昔の作品だしネタバレありで感想を書くので、これから本作を観る予定のある人や、ネタバレは絶対にイヤ!って人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

アーサー・C・クラークの原作を基に、S・キューブリックが映像化したSF映画の金字塔。人類の夜明けから月面そして木星への旅を通し、謎の黒石板“モノリス”と知的生命体の接触を、クラシックをBGMに色褪せることのない壮観かつ哲学的な映像で描いていく。(allcinema ONLINE より引用)

感想

「2001年~」との戦いの歴史

僕と「2001年~」の出会いは、多分高校生の頃で、確かSF好きの友人に勧められてレンタルビデオで借りてきたんだと思います。

ところが、ヒトザルが宙に骨を投げたあたりまでの記憶しかないんですよね。
多分、そのあたりで意識を失ったんだと思います。

その後、20代、30代と何度か挑戦するものの、何故か宙を舞う骨の記憶しか残らない。
僕がバカだからキューブリックを理解できずに眠ってしまうんだろうかと、すっかり自信を失った僕は、その後キューブリックの他の作品もずっと敬遠していたんですが、ふとした機会に観た「時計じかけのオレンジ」や「博士の異常な愛情~」は面白かったし、キューブリックとは知らずに観ていた「シャイニング」も面白かった。

だったら、「2001年~」だって楽しめるハズだ!と思って今回チャレンジしたけど、やっぱり途中で寝てしまうんですよ。(今回はディスカバリー号登場までは記憶にあった)

で、Twitterに「やっぱ今回もダメだった」と書き込んだところ、ある人から「(寝ちゃった)続きから観ればいいのでは?」という旨の返信を貰い、( ゚д゚)ハッ!としたんですね。その手があったか!っていうw
そう、途中で寝るなら、寝ちゃったところから観ればいいじゃない!と。

というわけで今回2回に分けて、やっと最後まで完走ことが出来ましたよ!(長い戦いだった…)

難解だから寝ちゃうわけではなかった

で、今回やっと気づいたんですが、僕は別に本作が難しいから寝ちゃってたわけではないんですよね。

とにかく、1カット1シーンがゆっくりで長い上に、ずっとセリフもなく延々猿のケンカやら宇宙旅客機やらの中の風景を見せられるし、BGMはクラッシック。

その間、ストーリーは別に進まないわけで、そりゃ寝るわ!と。

昔の映画だから1カット1シーンがゆっくりなのかしらんと思ったら、当時の人も同じこと言ってたらしいので、この映画が特別だったんですね。

もちろん、そこにはキューブリックの意図が込められていて、小説で言うト書き。つまり世界観や技術面などの説明文にあたる部分を、全部、映像だけで見せようという試みだったわけです。なので必然的にストーリー的に意味のないディテール描写だけのカットやシーンが多くなるし、2019年の今なら観客のSFリテラシーも上がっているけど、当時はまだ人類が月にも行っていない時代。

その分、観客に(未来の)宇宙での生活描写を飲み込ませるには、ディテールをじっくり見せる必要があったわけですね。多分。

で、難解だと言われているストーリーも、要点だけ拾えば実は単純な物語で。

ざっくり要約すれば、人類を猿から進化させた上位の存在である宇宙人(神)との接触によって、人類が次の段階に進化するというだけの話ですからね。

今まで色んな映画・小説・マンガ・アニメなどで、繰り返し観てきた題材なのです。
ただ、本作が凄いのは、それらのSF的アイデアが“ここから始まっている”ってことだし、キューブリックはこの単純なプロットの中に“生命”とは何かという、根源的なテーマを入れ込んでいるのです。

本物より本物

そんな本作で特に特筆すべきは、やはり映像の凄さ。

まだCGのシの字もない1968年に作られた作品とは思えない映像の数々は、当然、当時の観客を驚かせたと思いますが、逆にすっかりCGによるリアルな映像に慣れた2019年の今観ても、まったく古臭さを感じないどころか、本物の宇宙空間や宇宙船より本物らしく見えるっていう。

そこには、共同脚本を手がけたSF作家アーサー・C・クラークや専門家に科学検証と監修を依頼、NASAにも徹底的に取材した、キューブリックのディテールのリアリティーと己の美的センスに徹底的にこだわり抜いた本作に対する姿勢があるんですよね。

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本作で木星探査船ディスカバリー号のボーマン船長(キア・デュリア)と並ぶ主役の“1人”、コンピューター(AI)のHAL9000も、当時のSF映画の常識に習うなら人間に寄せたロボット型にしそうなものなのに、ディスカバリー号に組み込まれ、音声とカメラのみの姿というのも現代を先取りした感覚で驚くし、そんな高性能AIのHALが、いつしか自意識に目覚め、ある事をキッカケに(自衛のため)乗組員を次々殺害するという内容は、後に公開される「ブレードランナー」など数多の作品へと受け継がれていくテーマでもありますよね。

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また、この章でのボーマン船長とHALの“殺し合い”は、冒頭のヒトザルが始めて手にした“道具”(骨)を使って別グループのヒトザルを殺害するシーンと呼応していて、そこにはキューブリックの強烈な皮肉が込められているわけです。

新・新訳聖書

では、キューブリックがこの映画で一体何をしようとしたかったのかと言えば、キューブリック版の聖書を作る、もしくは(科学的に)聖書をアップデートする事だったではないかと思います。

まぁ、キューブリックユダヤ系なので聖書という表現が正しいのかは分かりませんけど、彼の他作品や言動。
「シャイニング」の制作時に原作者スティーブン・キングに突然電話を掛けて「君は幽霊を信じるか」と聞き、キングが「信じる」と答えた途端、電話を切って現場にキングを立ち入り禁止にしたというエピソードから察するに、彼はいわゆる神話的というか、オカルト的ロジックからなる現在の「神」や「宗教」のあり方を嫌悪していたのだと思うんですね。

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で、「だったらワシが愚民どもに本当の神を見せてやる!」と、徹底した科学的ロジックで作り上げたのが本作で、もし神がいるとしたら、それは人類よりも遥かに進んだ、上位生命体(宇宙人)であり、“彼ら”が、猿から人へと進化した人類を次の段階へ進化させるという物語を作り上げたんだろうと。

だとすれば、キューブリックが脚本段階ではあったナレーションや説明を全部端折って、映像と音楽によるイメージで物語を伝えるという本作の構成にも納得がいきます。

「言葉」を最小限に抑えることで、言語の違う他人種の人にも、キューブリック頭の中にあるイメージを直接伝えることが出来ますもんね。

実際、当時本作を観た若者たちが、後に多くの名作SF作品を生み出し、観客のSFリテラシーが飛躍的に“進化”した歴史を観ると、実はこの作品自体がキューブリックが送り込んだモノリスだった――

というオチを思いついたんですが、どうですかね?w

っていうか、今頃「2001年~」を熱く語っている僕自身がどうなんだって話ですけどもw

興味のある方は是非!!

 

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