今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

フィリピン版チャイルドプレイ!?「生き人形マリア」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、フィリピン発のホラー映画『生き人形マリア』ですよー!
一言で言うならフィリピン版「チャイルドプレイ」って感じの作品なんですが、全体的にゆる~~~い感じがクセになる?映画でしたねー。

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概要

激しい情念が宿る人形の恐怖を描いたフィリピン発のホラー。娘を失った親たちが、娘そっくりの人形を渡された後に不吉な出来事に見舞われる。監督は『肝っ玉母ちゃん、大統領になる』などのウェン・V・デラマス。第12回大阪アジアン映画祭で薬師真珠賞を受賞したイザ・カルザドをはじめ、ザンジョー・マルード、ジョディ・サンタ・マリアらが出演した。(シネマトゥディより引用)

感想

「チャイルドプレイ」+「ペットセメタリ―」÷100

この作品はYouTubeで動画をアップしている「シネマンション/映画好きチャンネル」で紹介していて、ちょっと気になったのでレンタルしてきました。

なんとフィリピン発のホラー映画で、「チャイルドプレイ」+「ペット・セメタリ―」を1/100くらいの予算で作った感じでした。

ここ2回、「マーダー・ミー・モンスター」からの「霊的ボリシェヴィキ」と、難解というか“考えオチ”みたいな作品を立て続けに観たせいか、思ったよりちゃんとエンタメホラーしてるー!って思ってしまいましたねーw

ざっくりストーリー紹介

物語は地元の小学校、リトル・マグノリアに新しい校舎が建設されたことの祝いの行事からスタート。
自分の娘たちが揃いの衣装を着て楽しそうに踊る姿を、学校理事の妻フェイス、夫婦仲の悪く娘の低学力に悩むステラ、学校の教師でシングルファーザーのフリオが、目を細めて見ています。

そんな中、トイレに行ったフェイスは子供の幽霊を見てしまうんですね。
実はこの学校は火事で少年が事故死するという痛ましい事故があり、校舎を改装したのです。

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その翌日、遠足に出かけた娘たちを交通事故で無くした彼女らはすっかり心を病んでしまうんですが、そこに精神科医を名乗る男ノロが現れ、「亡くなった娘そっくりの人形を愛することで鬱の治療に役立つ」と、娘そっくりの人形を持ってくるんですね。

その無神経な行為に最初は激高し拒むフェイスとステラでしたが、人形を手にしたフリオの助言もあり、娘そっくりの生き人形を可愛がるようになるのだが……というストーリー。

まぁ、その後はお察しの通り人形たちが大暴れするわけですが、このマノロが持ってくる人形のクオリティーがビックリするくらい低くてですねw
「そりゃママンたちも激高するよ」っていう出来なのです。

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“生き人形“って普通、まるで生きてるような精巧な人形で、生前の娘ソックリだからこそ我が子を無くした親も受け入れると思うんですが、この映画に出てくる3体の人形はどれもビックリするくらい造形が雑だし可愛くないw

で、この人形をどうやって動かしているかというと、多分、娘役の子の顔にメイクしたり、”アノニマス“みたいな半透明っぽいマスクを被せて人形っぽメイクをして演じさせていると思うんですよ。(細かいところはCGで修正かな?)

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子供たちはみんな6才前後の小さい子で、冒頭から登場する焼死した男の子の幽霊も、非常に可愛らしい顔立ちの子なので全然怖くないし、全体的にちっちゃい子たちが頑張ってる感が透けて見えて、怖いっていうより微笑ましさが先に立つんですよねw

気になったところ

いや、気になるところを上げればキリがないくらい、全体的にストーリーも演出や設定も雑でブレブレなんですが、その中でも特に気になったのが、シングルファーザーのフリオがゲイだという設定。

多分、敬虔なキリスト教徒の多いフィリピンなので、フリオがシングルであることの理由づけとしてこの設定になったんだと思うんですが(カトリックは離婚が認められてないから?)、別に「奥さんとは死別した」でよくね?っていう。

ただでさえとっ散らかったストーリーなのに、この設定を足すことで余計な引っ掛かりや疑問が増えてしまうし、ある意味で彼がこの惨劇の要因の一つでもあるので、ストーリー自体はシンプルな「因果応報系ホラー」なのに、このゲイ設定に(製作者が意図してるかは別にして)変な意味や意図のようなものが付け足されてしまうというか、コッチが勝手に勘ぐってしまうというか。

それがなければ、もっと素直に楽しめたと思うんですけどねー。

まぁ、そんな感じで色々雑で安っぽいし、ぶっちゃけ全然怖くもないし、例えば三体の人形がノリノリでフェイスの旦那を車で何度も轢くシーンなんかは思わず笑っちゃうんですが、ストーリーや設定には「ひと捻りいれてやろう」という意気込みも見えて、個人的には結構楽しく観ることができましたよ。

ただまぁ、好みはかなり分かれると思いますけどもw

興味のある方は是非!

 

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オカルトde革命だー!「霊的ボリシェヴィキ」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「リング」「女優霊」などの脚本家として知られるジャパニーズホラーの巨匠・高橋洋監督のホラー映画『霊的ボリシェヴィキ』ですよー!

Twitterで話題になっていてずっと気になってたんですが、先日TSUTAYAで見つけたので早速レンタルしてきましたよー!!

感想を一言で言うと、前回ご紹介した「マーダー・ミー・モンスター」に負けず劣らずのヘンテコな映画でしたよ。引きがいいのか悪いのかw

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概要

『女優霊』や『リング』シリーズ、『発狂する唇』などの脚本を手掛けてきた高橋洋がメガホンを取ったホラー。奇妙な心霊実験が恐怖の世界へと移っていくさまを描き出す。『んで、全部、海さ流した。』などの韓英恵や『NOEL ノエル』などの長宗我部陽子、ベテランの伊藤洋三郎などが出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

霊的ボリシェヴィキ」というパワーワード

僕が本作を知ったのはTwitterでした。
本作公開時に結構な熱量で話題にしている人のツイートが結構回ってきて、「霊的ボリシェヴィキ」というタイトルのインパクトに強く惹かれたんですね。

恥ずかしながら「ボリシェヴィキ」という単語の意味は知らなかったんですが、言葉の響きからロシア語なんだろうって事だけは分かるじゃないですか。
そこに「霊的」というワードが連結されることで、強烈に興味を掻き立てられるパワーワードになってるんですよね。

この「ボリシェヴィキ」を超雑に説明すると、ロシアの革命家レーニン率いる左派の一派で、旧ロシアで革命を起こしてソビエト連邦を作ったわけです。
そしてレーニンの死後、スターリンが跡目を継ぐ形になるんですね。

で、本作のタイトルでもある「霊的ボリシェヴィキ」というパワーワードの生みだしたのが月刊『ムー』創刊顧問・武田崇元氏で、こちらも超雑に説明すると、1968に起こった世界的な革命運動とアングラ演劇やヒッピームーブメントなどの左翼的文化にオカルトをくっつけて作った造語で、「オカルト“で”革命を起こす」的な事らしい。
「オカルト”に“」ではなく「オカルト“で”世界を変える」ってことらしい?ですよ。

そんな武田氏との対談を通して「霊的ボリシェヴィキ」という言葉を甚く気に入った高橋監督が、紆余曲折の末に制作・公開したのが本作なんですね。

ざっくりストーリー紹介

舞台は集音マイクがアチコチに仕掛けられ、壁にレーニンスターリン肖像画が飾られた奇妙な施設。
そこに、”実験“の主催者である教授の浅野(高木公佑 )と助手の片岡(近藤笑菜)、霊能者の宮路澄江長宗我部陽子)、元刑務官の三田(伊藤洋三郎 )、昔は霊感が強かったらしいおばさんの長尾(南谷朝子)、幼い頃神隠しに遭った橘由紀子韓英恵)とその婚約者・安藤(巴山祐樹)という、人の死の瞬間に触れた経験を持つ7人が集められます。

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画像出展元URL:http://eiga.com / 謎の私設に集められた7人。ちなみにここは給食センターなのだとか。

ここで行われる実験の目的は、そんな彼らが体験談を語る事で場の霊力を高めて「あの世」を呼び出すこと。

霊障でデジタル機器が使えなくなるためアナログテープを回し実験が開始され、彼ら・彼女らが次々に体験を披露するにつれ、施設には不可思議な現象が起こり始め――というストーリー。

一応舞台は現代の日本で、やってることは要するに「百物語」なわけですが、壁に旧ソ連指導者の肖像画が飾ってある理由は語られる事なくスルー。
で、一人目の語り部、元刑務官の三田が死刑囚の執行に立ち会う話から実験がスタートするわけですが、内容は執行の日、死刑囚を迎えに行ったら超暴れて怖かったという話で、それを聞いた安藤が「それは一番怖いのは人間って話でしょ」と食って掛かるんですね。

すると、霊能者の宮路がおもむろに安藤を杖でぶん殴り、教授は平然と「それは禁句ですよ」なんて言う。え、そうなん?

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画像出展元URL:http://eiga.com / 「それは禁句ですよ」

そして、(安藤のツッコミのせいで)折角集まった霊気が散ってしまったのでみんなで歌いましょうと教授が提案し、何故かボリシェヴィキ党歌(後の旧ソ連・現ロシア国歌)を全員で合唱すんですよ…………って、

 

なんでやーーーっ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

 

全員、現代の、日本人、なのに、な・ん・で、ロシア国歌をソラで歌えるの!?

っていうか、なぜツッコまない安藤!!

なんだ、ババァに殴られてビビってんのか?
っていうか、お前も歌うんかーい!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

 

多分、このシーンをスルー出来るかどうかが、この作品に乗れるか乗れないかの分水嶺になると思いますw

僕はここで振り落とされてしまったというか、頭の中が「?」で埋まってしまって、その後の怖い話や怪奇現象が全然頭に入ってこなかったですよw

その後、参加者の怖い話が進むごとに徐々に施設に不穏な空気や怪奇現象が起こり始め、やがて物語は衝撃のクライマックスへと発展していくんですねー。

狙いなのか低予算ゆえなのか

前述したように設定面でも色々気になるところが多い本作ですが、演出の方も不思議というか。

まぁ劇中語られる体験談自体は、(役者さんの演技力もあって)怖いんですが、普通は映画なんだから役者さんが語り始める→回想シーンへ移行していくじゃないですか。

ところが本作にはそれがなくて、役者さんが話してる姿&その場のメンバーのリアクションを延々写してるだけなんですよね。

本作は映画美学校のカリキュラムの一環として、わずか6日間で作られた超低予算映画らしくて、なので回想シーンを入れない演出が「低予算だからやりたくても出来ない」のか、「最初から狙ってそうしているか」が分からないんですね。

個人的な印象としては後者な気がするんですが、このワンシチュエーションの演出で「映画」というより「アングラ演劇」の舞台を観ているような感覚でした。

リアクションや芝居が、やや大げさで唐突だからってのもありますが。

それもこれも少ない予算、72分という短い尺のなかに物語を収めるため仕方なくだったのかもですが、個人的に設定は面白かったし。劇中語られる”怪談“も怖かったので、それなりの予算をかけてがっつり映画的な演出だったらもっと怖かったんじゃないかな?って思いましたねー。

 面白いかと聞かれれば(´ε`;)ウーン…だけど

そんな感じで「結局、面白かったの?」と聞かれれば正直「ウ、(´ε`;)ウーン…」って感じですが、超のつく低予算で映像的にも正直かなり安っぽいにも関わらず、それでも最後までそれなりに楽しめたのは、脚本も担当した高橋洋監督の構成力が高さと、ホラー映画のルールがしっかり守られているからなんですよね。

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画像出展元URL:http://eiga.com / 壁に貼られたレーニンスターリン肖像画

いや、肖像画やロシア国家合唱の件はビタイチ意味が分かりませんでしたが

でも、そこを除けば面白かったし、実験の真の狙いなんかは「なるほど、そういう事だったのか」と納得したし、クライマックスからの超展開のあと、突然「終」の文字で(EDロールもなく)ぶつ切りに終わるラストの潔さも、逆に不穏な余韻を残してましたしね。

72分という時間も気軽に観られる丁度いい長さだったと思います。

正直、好き嫌いはハッキリと分かれそうな作品ですが、好きな人はハマる作品なんじゃないでしょうか。

興味のある方は是非!!

 

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ホラー版おっさんずラブ!?「マーダー・ミー・モンスター」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アルゼンチン発のホラー映画『マーダー・ミー・モンスター』ですよー!

この作品、映画監督・脚本家でありスプリクト・ドクターでもある三宅隆太氏が選ぶ2019年公開映画の1位だったので前々から気になっていて、今回やっとレンタルしてきましたよー!

というわけで、今回はネタバレありで考察もしたいと思いますので、これから本作を観る予定の人や、ネタバレは絶対に嫌!という人は作品を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね?注意しましたよ?

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概要

シッチェス・カタロニア国際映画祭をはじめジャンル映画の祭典で話題を集めた一方、2018年・第71回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門にも出品されたホラーミステリー。平穏で静かな村である日、首無し死体が発見され、捜査を担当する地元警察のクルスは不可解な事件に頭を抱える。すると今度は、クルスの不倫相手であるフランシスカが首無し死体となって発見され、彼女の夫ダビドが容疑者として逮捕される。しかし、死体の頭部には人間の仕業とは思えない、食いちぎられたような跡があり、クルスは人知を超えた怪物によるものとの仮説を立てる。一方、錯乱状態になっていたダビドは、頭の中で繰り返し声がすると訴え……。ヒューマントラストシネマ渋谷の特集「WCC ワンダーナイト・シネマカーニバル2019」内の「WEC ワールド・エクストリーム・シネマ2019」(10月25日~)上映作品。(映画.comより引用)

感想

謎が謎を呼び、謎だけが増えていく不思議ホラー

まず、この作品の凄いところを一言で言うなら、「内容がビタイチ分からない」ってとこだと思いますw

物語的には、のどかな田舎町で起こった連続首なし殺人事件。
すぐに容疑者が逮捕され事件は解決したかに見えたが、違和感を感じた主人公の刑事は独自に調査を続けるうち、やがて精神がおかしくなって虚実が曖昧に。という、まぁ、よくあるストーリーなんです。が、途中、あまりにも気になる事が多すぎてストーリーがまったく頭に入ってこない……というか、ストーリー自体を見失ってしまうというか。

まず、会話のセリフが観念的な上、ちゃんとかみ合っていなかったり、キャラのテンションやリアクションがおかしかったり。
場面が脈絡なく飛んだかと思えば、意図が全く分からない謎シーンが挿入されたりと、謎がまったく解明されないどころか、ストーリーが進むごとに雪だるま式に増えていくという物語というより夢(悪夢)でも観ているような、不思議過ぎて不安な気持ちになる映画なんですねー。

ざっくりストーリー紹介

冒頭、アンデス山脈で羊飼いの女が死ぬシーンから物語はスタート。
彼女は首から大量の血を流しながら絶命するんですね。

事件を調査にやってきた地元警察の刑事クルス(ビクトル・ロペス)らが、容疑者として捕らえた女の亭主である老人の取り調べで、老人は近くの山小屋で放心状態の男の姿を見たと言います。

その男とは、どうもクルスの不倫相手フランシスカ(タニア・カスチアーニ)の亭主、ダビドエステバン・ビリャルディ)。

フランシスカの頼みで山小屋に隠れていたダビドを保護し自宅に送り届けたクルスでしたが、その後、フランシスカが首なし死体で発見されたことでダビドは連続殺人犯として逮捕されてしまいます。

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しかしクルスは、両被害者の首に残る獣に食いちぎられたような傷跡や傷跡に残る牙に違和感を感じ、独自に捜査を始めるのだが――というストーリー。

つまり、本作はミステリーホラー映画なんですが、前述したように物語はどんどん観念的な方向に進み、(悪)夢と現実の境目がどんどん曖昧になって謎だけが増えていくわけです。

そんな難解すぎるストーリーゆえ、作品の評価も賛否が分かれているようです。

ヘンテコ描写やヘンテコな編集、そして……

正直、僕もまったく意味が分からなくて( ゚д゚)ポカーンだったんですが、観終わったあとネットでいくつかのレビューを読んでみたところ、様々な考察がされていました。

というわけで、ここからはそれらの考察を参考に、ネタバレありで僕なりの考察をしていこうと思いますよー!

 

この作品がなぜ分かりづらいのかと言うと、(乱暴に言えば)1・説明不足であること。2・謎の描写が多すぎる。という2点に尽きると思います。

で言うと、捜査を進めるうち段々頭がヤバくなってくるルクスは、3台のバイクに遭遇したり、事故りそうになって急停車した車をのぞき込む謎の老人の幻影?を見たりするんですが、それも一切説明がないのでルクスの妄想なのか現実なのかがまったく分からないんですね。
もちろん、そういう虚実の境目を取っ払って並列に見せていく作品は少なくないんですが、普通そういう演出だと後で「あー、あれはそういう意味か!」って分かるもんですが、本作は最後まで観てもそれが現実か虚構か分からず、モヤモヤだけが残るのです。

あと、シーンやカットが繋がってるような繋がってないような感じで、変なところでカットが切れたり、(多分)物語上飛ばしちゃいけないシーンが飛ばされてたりするんですよね。

もちろんどれも意図的な演出だと思うんですが、その意図がコッチに伝わってこないのです。

で言うと、例えばルクスとフランシスカのベッドシーン。

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二人とも年相応に緩すぎる体なので、そこからちょっとキツいんですが、フランシスカの願いに応えルクスが全裸でダンスを踊るっていうシーンがあるんですが、この踊りが何かもう……とにかく謎だしヘンテコなんですよ。
しかもルクスも楽しそうに踊ればいいのに、なんかずっと真顔なので余計にヘンテコに見えるんですよね。しかもルクスはフランシスカが殺された後も、ボーリング場の壁に向かって一人でこのヘンテコダンスを踊ったりするんですよね。
何だろう。アルゼンチンでは有名なダンスなのかしらん。

で、ルクスの不倫相手のフランシスカなんですが、演じる女優さんがいかにも南米系の顔立ちなのはいいんだけど、とにかく立派過ぎる眉毛が気になって話が頭に入ってこないw(フリーダ・カーロみたいな感じ)
それでいうと、ルクス役の人もデッサンの狂ったモーガン・フリーマンみたいな顔立ちなんですが、多分物語のテーマを踏まえ、意図的に先住民系の役者さんを配役してるのかな?

 

あと、開始1時間過ぎても、肝心のモンスターが出てこない。

あまりに出てこないので、「ははーん、この“モンスター“ってのは概念的な意味で、本当は存在しないんだな」って思ってたら、最後の最後に突然登場。しかもその姿が、尻尾は男性器、顔は女性器っていう完全18禁使用の卑猥すぎるモンスターで、観た瞬間思わず爆笑してしまいましたよw

そのモンスターの正体は警察署長だったんですが、クライマックス?でその卑猥な顔を近づけてルクスを食べようとするんですね。
それを止めようとルクスが手を出すと、手にかぶりつくんですけど、バクンっ!って食いちぎる感じじゃなくて、何て言うんでしょうね……歯のないおじいちゃんがスルメ食べる時みたいにモッチャモッチャモッチャモッチャ食べるんですよ。
さそれだけならまだしも、腕を食べながらその卑猥すぎる尻尾でルクスのオカマを掘るんですよね。オッサンxオッサンの薄い本かよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッっていう。

社会問題とLGBTを反映?

他のレビューでも語られてましたが、この映画はホラーという型を使って性差別を描いた作品ってことなんだと思います。

それは、女性警官も含めた被害者が強姦され殺されていること、また首を食いちぎられていること、そしてモンスターのデザインから一目瞭然で、つまり強姦殺人は閉ざされた保守的な地域で女性が性的に搾取されているという事の暗喩だろうし、首を食いちぎられ捨てられるのは女性の発言や権利が弾圧されていることの暗喩だと思われます。

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モンスターの『口』に無数の牙が生えているのは、ミソジニー的な意味もあるのかも?

また、劇中で、署長のルクスに対しての態度を観ると、彼がゲイでありルクスに好意以上の感情を持っている事と、ルクスにその素質?を見出していることが分かるので、ルクスの腕を食べながらオカマを掘る行為は、そのままSEX描写なんですよね。
だから、腕を食べられるルクスが、苦悶とも快楽ともつかない表情を浮かべていたのでしょう。

つまりですね、この映画はホラー版おっさんずラブなんですよ!ナンダッテー!

ただ、だとするとモンスターの正体が署長というのは若干違和感があります。
署長がゲイなのだとしたら、女性被害者たちの首を食いちぎるのはともかく、強姦はしないんじゃないかな?と。

だとすれば、実はモンスターの正体は本作に登場する男たち全員だったのかもしれません。

つまり、羊飼いの奥さんを殺したモンスターは老人だし、フランシスカを殺したモンスターはダビド。女性警官を殺したモンスターは同僚警官みたいな。

そして、全員が死んでただ一人生き残った?ルクスは、ラストシーンでモンスターになり誰もいないアンデスの山に向かって歩いていくっていう。

そう考えると、中々切ない物語といえるかもしれませんね。

あと、本作では「MURDER ME, MONSTER(私を殺せ怪物よ)」というタイトルの頭文字、3つのMがキーワードになっているんですが、シーンの切り替わりで差し込まれる3つの山(Mに見える)がM字開脚で寝転ぶ女性の姿に見えるのも何か物語的意味があるのかもしれないし、結局バイクや老人が何を表しているのかは分かりませんでしたが、テーマに深く関わる何かであることは間違いないんでしょう。

アルゼンチンの人なら見た瞬間ピンとくるのかな??

まぁ、正直面白いかと聞かれれば答えに悩んでしまうし、怖くはないんだけどグロ描写は生理的にキツイものがあるので、積極的におススメは出来ませんが、案外ハマる人はハマる作品かもしれません。

興味のある方は是非!!

 

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キャラ萌え映画「スクービー・ドゥー」(2002)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、かつて日本でも放送された同名米アニメの実写映画版『スクービー・ドゥー』ですよー!

この作品、別に観る気はなかったんですが、ジェームズ・ガンが脚本を担当しているという事で、今回レンタルしてきました。

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概要

これまでみんなで協力しあってさまざまな珍事件を解決してきたミステリー社の4人と一匹だったが、フレッド、ダフネ、ヴェルマの3人はそれぞれ独立してみなバラバラになってしまう。ミステリー社にはシャギーと臆病犬スクービーだけが取り残される。そんな彼らは2年後、学生たちの人気スポットであるアミューズメント・パークのオーナー、エミールからそれぞれ別々に調査依頼を受ける。楽しげに訪れた学生たちが、帰るときにはみな無愛想になってしまっているというのだ。思わぬ再会を果たしたミステリー社の面々はさっそく謎の解明に取り掛かるのだった。(allcinema ONLINEより引用 )

感想

原作は米国を代表するアニメーション

本作の元ネタとなる「Scooby-Doo,」は、米国では1969年からスタートし現在も続いている長寿アニメで、日本で言えば「サザエさん」的な国民的アニメです。

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約50年にわたるご長寿アニメゆえに米カルチャーにも深く浸透していて、多ジャンルのカルチャーやコンテンツでもこの名前を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

日本でも1970年NHKで「弱虫クルッパー」と言うタイトルで放映。
その後スカパー・カートゥーン ネットワークの再放送では原題の「スクービー・ドゥー」で再放送されたりもしてるらしいですね。

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ちなみに僕は、日本放送時に観ていたか記憶が曖昧なんですが、観てたとしても当時は幼児だったので殆ど記憶にないんですよねー。

原作の大まかなストーリーは、ドジな主人公シャギー、二枚目で自称リーダーのフレッド、美人でいつも誘拐されちゃうダフネ、メガネっ子で謎解き大好きなヴェルマの4人と、シャギーのペットで相棒の大型犬スクービー・ドゥーが結成した探偵団「ミステリー社」が、超常現象に見せかけた事件のカラクリを暴くという1話完結形式のコメディーシリーズらしいです。

ジェームズ・ガンが脚本を担当

そんなアニメ原作を2002年に初めて実写映画化したのが本作で、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のジェームズ・ガンが脚本を担当。
これがヒットして、ガンは続編「スクービー・ドゥー2 モンスターパニック」の脚本も担当したようです。

ちなみにストーリーは、いつものように事件を解決したミステリー社ですが、その後メンバーの不満が爆発し解散してから2年後、シャギー(マシュー・リラード)とスクービー・ドゥー(ニール・ファニング:声)にスプーキー島(恐怖の島)へ仕事の依頼が。

渋る二人(1人と1匹)でしたが、食べ物につられ飛行場に向かうと、そこにはフレッド(フレディ・プリンゼ・ジュニア)、ダフネサラ・ミシェル・ゲラー)、ヴェルマ(リンダ・カーデリーニ)の姿も。どうもミステリー社全員に招待状が送られたらしいんですね。

ギクシャクしながらも島に到着した4人と1匹は、依頼人モンタヴェリアスローワン・アトキンソン)から島にかけられた呪いを解いてほしいと依頼され――というストーリー。

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これまでのアニメでは、オカルト事件にはカラクリがあって、それをミステリー社のメンバーが暴くという展開だったわけですが、本作ではこのアニメ版の設定を逆手にとって、作中の呪いも登場するモンスターも実は本物だったという展開になっていて、メンバーたちはかつてないピンチに見舞われるのです。

正直、アニメ版を観てない身としては、クライマックスの真犯人登場のシーンで「…お、おう……」って感じになるんですが、劇中でも一応は伏線が張られているので、「お前誰やねん!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ」ということはないです。

ただ、原作のイメージを守ろうとしたのか、それともターゲットが子供だからなのかは分かりませんが、基本キャストの演技はオーバーだし、作品のテイストやセットのデザインなども明らかに子供向き。

ストーリーもまぁ、原作ファンなら楽しめるのかな?と言う感じ(ただ本作はゴールデンラズベリー賞を受賞してるようなのでファン受けもあまり良くなかったのかも)で、大人も楽しめる作品とまでは言えないんですが、物語としての構成はしっかりしてるので、一言さんお断り的な感じにはなってないですよ。

キャラクターが良い

あと、原作を知らなくてもそれなりに楽しいのは、メインキャラクターの役割や性格がハッキリしてるし、ベタだけど彼らの友情やほんのり恋模様も描かれていて、そういう意味でキャラ映画として楽しめるからなんですよね。

特にスクービー・ドゥーは、原作だとかなりオッサンっぽいデザインなんですが、本作ではCGで本当の犬に寄せている分、原作よりも圧倒的に可愛らしいですしね。

それと、島のオーナー・モンタヴェリアスを「ミスター・ビーン」のローワン・アトキンソンが演じているんですが、彼の普通に話す演技を観られるのはある意味で貴重な体験なのかもしれませんw

それぞれの関係性萌え的な部分もあり、特にシャギーとスクービー・ドゥーのブロマンス的な感じも中々良かったですねー。

興味のある方は是非!

 

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ゾンビと辿るアメリカ史「ゾンビランド/ダブルタップ」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、あの大ヒットゾンビコメディー10年ぶりの続編『ゾンビランド/ダブルタップ』ですよー!

役者としてすっかり大物になった4人が前作と同役で続投、10年の年月を感じさせない“楽しい週末世界“で大暴れしてましたねー!

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概要

ホラーコメディー『ゾンビランド』の続編。前作から10年後、生き残った四人が進化したゾンビに新たなルールで対抗する。『ヴェノム』などのルーベン・フライシャーが監督を続投。『スリー・ビルボード』などのウディ・ハレルソン、『ソーシャル・ネットワーク』などのジェシー・アイゼンバーグをはじめ、アビゲイル・ブレスリンエマ・ストーンらおなじみのキャストが集結した。(シネマトゥディより引用)

感想

”奴ら”が帰ってきた

前作「ゾンビランド」は、ゾンビウィルスの蔓延によって壊滅した世界を舞台に、オタク、脳筋、詐欺師姉妹という普通なら絶対交ることのない4人が、主人公(というか語り部?)のコロンバスが定めた「ゾンビの世界で生き残る32のルール」というゾンビあるあるを駆使しながらサバイブするというお気楽ゾンビコメディーで、これがゾンビ好きにもそうでない人にもウケて異例の大ヒット。
また、ただのゾンビパロディーに終始するのではなく、最初は相容れない4人が、一緒に旅を続けるうち疑似家族になっていくという内容も、当時の潮流にも上手くハマっていたように思います。

そんな前作の後、大人の事情から10年ぶりに待望の続編となる本作が公開されたんですね。

この10年の間に、
タラハシー役のウディ・ハレルソンは「スリー・ビルボード」でアカデミー助演男優賞に2度目のノミネート。

コロンバス役のジェシー・アイゼンバーグは「ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー主演男優賞ノミネート。「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」のレックス・ルーサー役ではゴールデンラズベリー賞 最低助演男優賞を受賞。

ウィチタ役のエマ・ストーンは「ラ・ラ・ランド」のヒロイン役でアカデミー主演女優賞受賞。

前作当時13歳だったリトルロック役のアビゲイル・ブレスリンは……すっかり大人になるなど(色んな作品で活躍&ブロードウェイデビューも果たしてます)、役者としてすっかり格の上がった4人が前作と同役で出演、10年の年月を感じさせないアンサンブルを見せてくれているんですね。

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画像出展元URL:http://eiga.com / 10年ぶりに4人が帰ってきた!

さらに「ヴェノム」を大ヒットさせた監督のルーベン・フライシャー、「デッド・プール」シリーズの脚本も担当した レット・リース、ポール・ワーニックも続投。

そこに、おバカ女子のマディソン(ゾーイ・ドゥイッチ)やエルヴィス好きな女傑のネバダロザリオ・ドーソン)ら新キャラも加わり、前作のテイストはそのままに、さらにパワーアップした続編になっているのです。

ざっくりストーリー紹介

前作の後、朽ち果てたホワイトハウスに定住していた4人ですが、ウィチタは彼氏面で結婚を迫るコロンバスに、リトルロックは父親面で自分を子ども扱いするタラハシーにうんざりし、政府専用車を改造した「ビースト」を盗んで消えてしまうんですね。(前作からの踏襲)

傷心の二人は気晴らしに行ったショッピングモールで、冷凍庫に暮らしていたおバカ女子マディソンと出会います。
で、コロンバスとマディソンがHしそうになったところにウィチタがカムバック。
リトルロックが頼りないヒッピーの若者バークレー(アヴァン・ジョーギア)と駆け落ちしてしまったというんですね。

リトルロックを連れ戻すため、3人+マディソンは安住の地ホワイトハウスを後にする――というストーリー。

その後、4人は“キング・オブ・ロック“ことエルヴィス・プレスリーファンの聖地グレイスランドを経由し、ヒッピーの若者たちが集うコミュニティー「バビロン」へと向かうのです。

ゾンビで辿るアメリカ史

本作で監督らは、コロンバスたちが生きる無法な世界を西部開拓時代として捉え、その後プレスリーの聖地、ヒッピーコミュニティーへと舞台を移すわけですが、これはつまりカルチャーを通してアメリカの歴史を辿っているんですよね。
バークレーリトルロックがバビロンに向かう道中、バークレーがボブ・デュランの歌を歌うシーンもありますしね。(そして自作の歌だと嘘をつく)

「バビロン」というコミュニティーには、ゾンビパニック時子供だったと思われる若者たちが集まり、銃や武器を溶かしてラヴ&ピースマークのネックレスに加工して非暴力を謳い、大麻と音楽とオーガニックでみんなハッピーという、ある種のユートピアを築いていています。
まぁ、クライマックスでは当然のようにゾンビ集団に襲われるわけですが、面白いのは、ここで若者たちが凄惨な目に遭うのではなく、4人と若者たちが協力して脅威(ゾンビ)からバビロンを守るというところなんですね。

もちろんコメディー映画だからってのもあるでしょうけど、大人であるタラハシー、コロンバス、ウィチタが彼らを見捨てずに、武器のないピンチの中で今までのサバイブ経験を基に計画を立て、自ら危険な役目を負って彼ら(の理想郷)を守るという展開は、分断の時代である現代に対する制作側の強いメッセージを感じましたねー。

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画像出展元URL:http://eiga.com / エルヴィスに扮するウディ・ハレルソン

で、ここで効いてくるのがグレイスランドでのシークエンスで、タラハシーがエルヴィスの大ファンだということが分かるんですね。
ここで披露されるウディ・ハレルソンのエルヴィス物まねが超絶上手くてビックリなんですけど、彼は実際、学生時代にエルヴィスの物まねで人気者だったんだそうです。
そして、ここで同世代のネバダとのロマンスも生まれたりします。

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画像出展元URL:http://eiga.com / タラハシーにもついにロマンスが

本作では、このタラハシーが自分の青春時代を思い出すグレイスランドのシークエンスが、バビロンでのクライマックスへの布石になっているわけです。

ぱっと見バカバカしいだけのコメディー映画に、(作品の空気感を損なわないよう)サラっと大事なメッセージを入れ込む手腕は、さすが「デッドプール」の脚本陣だなーと思いましたねー。

あと、本作では10年の間に、ゾンビ側も進化したりしてるんですけど、これはロメロからなるゾンビ映画の歴史をまるっとパロディーにしてて、ゾンビ映画好きとしては思わずニヤニヤしてしまいますし、さすがに今回は出ないだろうと思ってた”あの人”も最後の最後で登場して、個人的には大満足でしたよー!

まぁ、あえて言えばジェシー・アイゼンバーグのナレーションが早口すぎて、字幕に目が追いつけないのが唯一難点でしたかねw

興味のある方は是非!!!

 

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手に負えない「母なる証明」(2009)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ポン・ジュノ監督の『母なる証明』ですよー!
実はこの作品、個人的にずっと食指が伸びなかったんですが、これまで「パラサイト」から遡って「スノーピアサー」「グエムル -漢江の怪物-」「殺人の追憶」とポン・ジュノ作品を観てきたので、この作品も観ないわけにはいかないと腹を決めて観ることに。

で、先に感想を一言で言っちゃうと「これは僕の手には負えない」でしたねーw

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画像出展元URL:https://www.amazon.co.jp/

概要

凄惨な女子高生殺人事件を皮切りに、事件の容疑者となった息子と、息子の無実を信じて真犯人を追う母の姿を追ったサスペンス。監督は『殺人の追憶』などで国際的に評価される名匠ポン・ジュノ。主人公の母を“韓国の母”と称される国民的人気女優キム・ヘジャが演じ、その息子を『ブラザーフッド』のウォンビンが演じている。カンヌ国際映画祭でも絶賛されたポン・ジュノ監督の卓越した演出と、兵役後の復帰第1作となるウォンビンの熱演に注目だ。(シネマトゥディより引用)

感想

ポン・ジュノ作品の極み

ポン・ジュノ作品って、観てる間は面白いんだけど鑑賞後に喜怒哀楽のどれでもない(もしくは全部の)感情を揺さぶられてどっと疲れるっていう特徴があると思うんですね。

こう、いままで使ったことのない筋肉を酷使して筋肉痛になる的な。

で、本作はそんなポン・ジュノ作品の極みっていうか、鑑賞後、色んな感情や考えが細かい泡のように浮いてくるんですけど、それらがちっとも一つにまとまらなくて、「こういう映画」っていう結論が出てこないんですよ。

そう書くと、「ストーリーが理解できない難解な映画」って思われちゃうかもですが、そんな事は全くなくて劇中で描かれていることは全部理解できるし、物語も超面白い。

ポン・ジュノ作品の特徴でもある、ブラックでオフビートなコメディー描写には思わず笑っちゃいますしね。

ただ、映像やセリフで描かれなかった「余白」の中に、すごく大事な「何か」があるのは分かるんだけど、それが何かは上手く言葉にできないのです。

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画像出展元URL:http://eiga.com

「手に負えない」ってのはそういう意味で、分かったような顔で何を言ったところで全部上滑りしちゃうというか芯を捕らえられないというか。

なので感想を書くのに考えをまとめようとするんだけど、すぐバラバラに崩れてしまってどうしていいか分からないんですよねー。

ざっくりストーリー紹介

早くに夫を亡くして以来、ヘジャ(キム・ヘジャ)は知的障害を持つ一人息子のトジュンウォンビン)と、貧しいながら静かに暮らしています。

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画像出展元URL:http://eiga.com

そんなある日、人気のない場所に建つ空き家で女子高生が殺されるという事件が起こり、現場に持ち物が落ちていたことから、トジュンが第一容疑者にされてしまうんですね。

事件解決を急ぐ警察はトジュンを犯人と決めつけ、知的障害があり記憶が定かでないトジュンの証言は期待できず、無能な弁護士は頼りにならない。
そこでヘジャは息子の無実を晴らすため、自ら事件の調査を始めるのだが――というストーリー。

つまり、本作は息子にかけられた疑いをお母さんが晴らすというミステリー映画なのです。

開幕早々物語に引きずり込まれる

そんな本作は、枯れすすきが群生する野っ原の中、おばさんのダンスシーンからスタートします。

そのおばさんが主人公のヘジャなわけですが、彼女を演じるキム・ヘジャさんってのが、何というか実に絶妙な顔立ちの人でしてね。

決して美人というわけではなく、どこにでもいそうな普通のおばさんなんですよ。
そんなおばさんが、枯れすすきの野原でダンスを踊るっていう、この奇妙なオープニングに、「何が起こってるんだ!?」と観ているコッチの心を鷲掴みですよ。

で、場面は変わって薄暗い店?の中で、薬草をザクザク切りながらヘジャが道路を挟んだ向かいにいる息子のトジュンを眺めているシーン。

その時、突如走ってきたベンツにトジュンが轢かれそうになり、ヘジャが慌てて店から飛び出すというシーンでは、次第に注意が息子に向かうヘジャと徐々に短くなっていく薬草のショットで、小さなサスペンスを演出してるんですよね。

で、その後ヘジャの異常な過保護っぷりと、トジュンに知的障害があり、直前に起こった事すらすぐ忘れてしまう事が分かる描写がユーモアたっぷりに描かれます。

もちろんポン・ジュノの代名詞、”ドロップキック“もありますよw

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画像出展元URL:http://eiga.com

ここまで観た時点で、こっちはトジュンに知的障害がある”から“お母さんのヘジャは過保護なんだなと納得するんですが、それだけではない何かの違和感を感じる。

少なくとも見た目はしっかり大人のトジュン。そんな息子に薬を飲ませようと追いかけるヘジャが、道端で立ちションをしてるトジュンのオティンティンを凝視するシーンとかね。いくら過保護な母親とはいえ「んん??」ってなる。

そんな中で、まぁトジュンも年頃だし悪い友達のジンテの影響もあって、女の子とのHの話になるんですね。
で、ジンテにからかわれたトジュンが、「お母さんと寝てる」って言い返すんですが、それでコッチは「え、まさか……」ってドキッっとするわけですよ。

それまで見えていた世界が反転

まぁ、それは文字通り「お母さんと一つのベッドで眠っている」というだけで、ポン・ジュノの仕掛けた悪趣味なミスリードなんですが、それで僕がドキっとしてしまうのは、ヘジャが息子や、その友達のジンテ(チン・グ)にチラッと女の顔を見せるからなんですよね。

いや、「あれはヘジャの卑屈な表情だ。お前の考え過ぎだ」って言われるかもですが、“あの”ヘジャの表情は絶対ポン・ジュノの意図的な演出だと思うんですよね。

で、その後事件が起こって、物語は二転三転しながらクライマックスに向かっていくわけですが、ポン・ジュノはこの序盤の一見何てことないような前半部分のシーンに様々な伏線やミスリードを仕掛けていて、それが中盤以降の展開で次々に回収されていくので、観てるこっちは「あーーー!!そういう事だったのかーー!!」ってなるわけですね。

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画像出展元URL:http://eiga.com

まぁ、序盤から事が起こる中盤の頭で張り巡らせた伏線を、後半で一気に回収するのはポン・ジュノ作品ではおなじみですが、本作でもヘジャが収監されているトジュンに面会するシーンを境に、それまで見えていた景色が一気に反転する感覚を味わうことが出来るし、ヘジャが踊る(冒頭と対になる)ラストシーンには劇中で起こっている事以上の”何か“が見えて、背筋がヒヤッとするような戦慄が走るのです!(((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル

その「何か」を一言で言うなら、ヘジャ(母)が背負っている業の深さって事になるんですが、そんな陳腐な言葉では本作の芯を捕らえてなくて、そのもっと奥に、
イ――――!!」ってなる「何か」があるんだけど、僕の語彙ではそれを上手く言い表すことが出来ないんですよねー。

なので、まだ未見の人は本作を一度観て、僕に「何か」が何なのかを教えてくださいw

興味のある方は是非!!!

 

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Don’t think, feel 「海獣の子供」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは五十嵐大介の代表作をSTUDIO4°制作で劇場長編アニメ化した『海獣の子供』ですよー!

方々から「難解」というウワサは聞こえてきたので覚悟して観たんですけど、ウワサ通りの難解な作品でしたねーw

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概要

「リトル・フォレスト」などで知られる五十嵐大介のコミックを、『鉄コン筋クリート』などのSTUDIO4°Cの制作でアニメ映画化。居場所がない14歳の少女と不思議な兄弟の交流を描く。声の出演に『うさぎドロップ』などの芦田愛菜をはじめ、石橋陽彩、浦上晟周稲垣吾郎らが集結。監督を『宇宙兄弟#0(ナンバー・ゼロ)』などの渡辺歩、音楽を久石譲が担当している。(シネマトゥディより引用)

感想

言語からの解放

本作のテーマを一言で言うと「言語からの解放」に尽きると思います。
そしてこのテーマは原作者の五十嵐大介さんの作品全般に通底しているんですよね。

例えば遺伝子操作で生まれたカエル少女が主人公の「デザインズ」では、生物それぞれの持つ”環世界”が主題になっているし、本作でも、ジュゴンに育てられた少年・海と空は言語以外のコミュニケーションで100%分かり合っている描写がありますよね。

原作版のセリフには「言語は性能の悪い受信機みたいなもので、世界の姿を粗すぎたり、ゆがめすぎたり、ぼやかして見えにくくしてしまう。言語で考えるってことは、決められた型に無理に押し込めて、はみ出した部分は捨ててしまうということなんだ。

というセリフがあって、これは誰もが多かれ少なかれ感じた事があるのではないでしょうか。

五十嵐大介という人は、そうした人間が言語化(知覚)できない”感覚“を描く作家で、だから本作が「難解」と評されるのもある意味当然というか、この作品は「理解」するのではなく「感じ取る」物語、つまりは「Don’t think, feel」なのです。

ざっくりストーリー紹介

湘南に住む少女・安海琉花(芦田愛菜)は、母・加奈子と二人暮らしの中学生です。
夏休み初日、彼女は所属するハンドボール部の練習中に、チームメイトとトラブルを起こし部活から締め出されてしまうんですね。

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目標を失った琉花は、別居中の父が務める水族館でジュゴンに育てられたという不思議な少年・海(石橋陽彩)や、その兄・空(浦上晟周)と出会い、そして想像を絶する体験をすることに――という物語。

ストーリー上は、他者とのコミュニケーションに悩む少女が特別な経験を通して成長(というか進化?)するボーイミーツガール的展開になってますが、琉花の体験ってのが生命の誕生と輪廻の神秘ですからね。事があまりにも壮大すぎて観客は「え?どういうこと?(゚Д゚)」ってなっちゃうんだと思います。

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画像出展元URL:http://eiga.com

原作に忠実

そんな本作の白眉は、まるで五十嵐大介さんの漫画をそのまま動かしたような、映像の美しさとアニメーションの凄さ。
原作では、シーンの空気感や感情を表すため、あえてラフなタッチで描かれるコマもけっこうあったりするんですが、その辺も含め本作はかなり忠実に再現されています。

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画像出展元URL:http://eiga.com

対して物語の方は、全5巻に及ぶ長大な原作を約2時間の作品にするため主人公・琉花のエピソードに集約。かなりのエピソードを刈り込んでいます。

これによって本作を「分かりやすくなった」という人もいれば、逆に「分かりにくくなった」という人もいますが、僕的には一長一短というか、物語としては分かりやすくなったけど、原作の持つ世界観や細かいディテールの意味は伝わりにくくなったという印象でしたねー。

まぁ「分かりやすくなった」と言ってもそれは”物語の構成が“という話で、内容が難解なのは変わらないわけですけどもw

でも、誰でも分かりやすいように変えてしまったら「海獣の子供」ではなくなってしまうので、アニメ化作品としてはこれがベストだと思いましたよ。

あえて言えば

ただ、あえて言えば、もっと寄りの視点も欲しかったかなと。
これは技術的な話じゃなくてあくまで印象の話ですが、五十嵐さんの原作コミックって、どこかキャラクターを突き放したような「引きの視点」で描かれているんですね。

それは原作がある種の群像劇でもあるからなのかもだし、五十嵐さん自身の性分もあるのかもですが、それゆえ五十嵐作品は読者を選ぶわけです。

対して本作の場合は折角主人公・琉花が中心の物語になっているのだから、もう少し「寄りの視点」があれば、受ける印象は違っていたのかもしれないと思いました。

ただ、そうすると今度は五十嵐作品の持つ魅力からは離れてしまうかもしれないので、難しいところではあるんですがw

ともあれ、そもそもアニメ化がかなり難しい原作を、ここまで忠実に再現したことは素直に凄いと思うし、アニメーションとしてのクオリティーの高さも半端じゃないので、まだ未見の方は一度観てみる価値はあると思いますよ。

興味のある方は是非!!

 

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