今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

”終活映画“の愛すべき秀作「ラスト・ムービースター」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、一時は一世を風靡した映画スター・バート・レイノルズ最後の主演作『ラスト・ムービースター』ですよー!

バート・レイノルズって僕が子供のころのスターという感じで、顔や名前は知ってるけど個人的には特に深い思い入れはないんですが、TSUTAYAで本作を見つけたのでレンタルしてきました。

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概要

ブギーナイツ』などで知られるバート・レイノルズの主演作。落ちぶれた映画スターがある行動を起こす。バートがセルフパロディーともいえる役どころをユーモアたっぷりに演じ、『ファール・プレイ』などのチェヴィー・チェイス、『6才のボクが、大人になるまで。』などのエラー・コルトレーンらが共演。『デトロイト・ロック・シティ』などのアダム・リフキンがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

バート・レイノルズって何者?

多分、ご存じない方もいると思うので、映画の感想の前にバート・レイノルズについてざっくり説明します。

バート・レイノルズは、全米屈指のフットボールの強豪フロリダ州立大学で、アメリカンフットボールの選手として活躍し将来を嘱望されましたが、ケガで選手を断念。

その後、1959年にテレビから俳優業をスタート、1961年に映画デビューを果たします。
逞しい肉体にヒゲが似合うタフガイとして人気を博し、米「コスモポリタン」誌ではヌードも披露、セックスシンボルにも選ばれるなど、かつて一世を風靡するほどの世界的人気スターに。

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ところが、「007」のジャームズ・ボンド役や「スター・ウォーズ」のハン・ソロ役を断るなど、作品選びに失敗して1980年代後半から人気が低迷、さらに私生活では離婚、自己破産と不幸が相次ぎ、不遇の時代を迎えます。

デ・ニーロやイーストウッド、レッドフォードなどがスター俳優から演技派にシフトしていったのに対し、レイノルズはそうした流れに上手く乗れなかったようです。

しかし、1997年に「ブギーナイツ」でゴールデングローブ賞では助演男優賞を受賞&アカデミー助演男優賞にノミネートされ、以降は演技派として大作の脇を固めるポジションを得るんですね。

そして、2019年公開の映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に出演する予定でしたが、2018年9月6日、残念ながらフロリダ州の病院で82年の生涯を閉じたのです。

個人的には、ジャッキー・チェンも出演していた「キャノンボール」の印象が強くて、マッチョで浅黒い肌にモジャモジャの胸毛が印象的な、ザ・ハリウッドスターという印象でしたねー。

本作は、そんなバート・レイノルズ”最後の主演作“として、監督・脚本にアダム・リフキン、「ミッドサマー」や「ムーンライト」など話題作を世に送り出しているインディペンデントの映画制作&配給会社「A24」が制作したんですね。

ざっくりストーリー紹介

かつて映画スターとして一時代を築くも、今は落ちぶれたヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)。
すっかり年老いて隠居生活のヴィックは、一緒に暮らしていた老犬の病死ですっかり気落ちしてしまいます。
そんな彼に、クリント・イーストウッドロバート・デ・ニーロも招待されたという「ナッシュビル国際映画祭」から招待状が届くんですね。

あまり気乗りのしないヴィックでしたが友人の勧めもあって参加を決意。
ところが、彼を空港に迎えに来たのはリムジンではなく、オンボロセダンに乗ったぽっちゃりパンク女子のリル(アリエル・ウィンター)。宿は街はずれの安いモーテルで会場はなんと町の小さなパブ。

「国際映画祭」と名乗っているものの、内容は映画オタクの有志が集まって手弁当で運営する、ただのファンイベントだったわけです。

これに怒ったヴィックは、泥酔したうえ悪態をつきまくり翌日の授賞式をボイコット。
リルに空港まで送らせようとしますが、その道すがらにある生まれ故郷のノックスビルに立ち寄り――というストーリー。

そして、二人はヴィックの思い出の地を巡っていくというある種のロードムービー的展開になっていきます。

終活映画

2010年以降、年老いたかつての大スターが主人公を務める、いわゆる「終活映画」が増えているような気がします。

例えば、クリント・イーストウッドの「運び屋」やロバート・レッドフォードの「さらば愛しきアウトロー」。
シルベスター・スタローンの「ロッキー・ザ・ファイナル」もこのジャンルの作品と言っていいと思います。

こうした「終活映画」は、作中の主人公に演者本人の人生を重ね合わせるメタフィクション的な作りが特徴。ある種の遺言状というか半自伝的な物語になっているんですよね。

本作の場合、これらの多作品と比べてもかなり露骨に主人公ヴィックと演じるバート・レイノルズ本人の人生が重ねられていて、ちょっとしたセミドキュメンタリーのような作りになっています。

それは、イーストウッド、レッドフォード、スタローンのように、主役を演じる役者自身が映画を企画制作するのではなく、アダム・リフキンという若い(といっても50代だけど)世代の監督が作ってるからだと思うんですね。

つまり他の「終活映画」と違って、本作はファンムービー的というか、一人称ではなく三人称の作品なのです。

愛おしいキャラクターたち

そんな本作、序盤は誰にも感情移入出来ません。
ヴィックはすっかり落ちぶれて過去の栄光にしがみつき、プライドが高くて気難しく、友達とオープンカフェでヨガをやってる女性のお尻を眺めながら「たまらんなー」なんて言ったり、酔った勢いでコールガールを買おうとするようなエロジジイ

そんなヴィックを迎えに来るリルは、ぽっちゃりというかムッチリボディのパンクガールで、そもそもヴィックに興味も敬意もなく、送迎中もずっとスマホでクズの彼氏と喧嘩するようなメンヘラ女子

映画祭を主催するリルの兄貴ダグ(クラーク・デューク)や、リルに片思いしているシェーン(エラー・コルトレーン)たちや会場に集まる観客たちは、田舎のボンクラ映画オタク
悪気がないのは分かるけど、詐欺まがいの招待状をヴィックに送ります。

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画像出展元URL:http://eiga.com / ボンクラ映画ファンたち

いわば全員が負け犬。そして当然揉めるわけです。

そんな流れが変わるのが、映画祭をブッチして帰ろうとしたヴィックと運転手のリルが生まれ故郷のノックスビルに立ち寄る中盤から。

生家を皮切りに、大学時代活躍したアメフトの会場や地元の名物菓子、スター時代に泊ったであろう高級ホテルなど。

そうした思い出の地を巡るうち、ヴィックの心境やリルとの関係に小さな変化が生まれていくのです。

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画像出展元URL:http://eiga.com / 最初は反発していた二人だが、次第にお爺ちゃんと孫娘のように

ヴィックの“顔”で泊まる事になる豪華ホテルのスイートルームではしゃぐリルと、そんな彼女を目を細めて眺めるヴィックははまるでお爺ちゃんと孫娘のようで、観てるこっちまでホッコリしてしまうし、ホテルのロビーでヴィックに声をかけてきたファンの娘の結婚式で彼が歌とスピーチを披露する姿を見て、リルがヴィックを見直すシーンもとてもいいんですよ。

というか、後に明かされるある事情からヴィックはずっとリルの事を気にかけていて、結構序盤から彼女に色々アドバイスしてるんですよね。

そして全てが丸く収まるラストでは、もう登場人物全員が愛おしく見えてしまうのです。

お爺ちゃんレイノルズvs若きレイノルズ

本作では、バート・レイノルズの過去作品映像がふんだんに使われています。(彼が若い頃のヌード写真まで出てくる)

そして一番の見どころは、年老いたヴィックが夢の中で若い頃の自分と共演するシーンVFXを駆使して、バート・レイノルズの過去作品(「トランザム7000」と「脱出」)に現在のバート・レイノルズを合成し、過去作品に合わせる形でヴィックのセリフを考え、“二人”を会話させているんですね。

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画像出展元URL:http://eiga.com / ジジイレイノルズとイケイケレイノルズ

爺さんヴィックが色々説教するけど、若くてイケイケなヴィックは意にも介さないっていう流れで、映像的にはハッキリ合成って分かるくらいショボいし、構成もそんなに上手くはないですが、でも、一連の流れの中で観ている分には気にならないクオリティーでしたよ。

未来は変えられる

映画祭でヴィックは「(自分は)いくつかの大事な選択を間違えた」と言ってるんですが、これはバート・レイノルズ自身が「007」や「スター・ウォーズ」などの出演を断った事、マーロン・ブランドロバート・デ・ニーロを指導したステラ・アドラーとトラブった?ことや私生活のイザコザを指しているんだと思います。

彼は、自らの選択でデ・ニーロやイーストウッドのように”なれたかもしれない“道を断ってしまったことをずっと悔いている=過去に囚われているわけですね。
しかし、故郷を巡った後で彼は「過去は変えられないが、結末は変えられる」という内容の事を話します。

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本作のテーマはまさにそれで、それに気づき行動したヴィックの言葉は自分だけでなく、リルやダグたちの未来にも小さな変化をもたらしていくのです。

そしてそれは、ヴィック=バート・レイノルズだけではなく、すべての人に当てはまることなんですよね。

正直、ストーリー的にはベタだし、全体的これと言って目新しいところもない小作品で、決して「傑作」とは言えませんが、個人的にはとても愛おしい愛すべき秀作だと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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ジェームズ・ガン版、美女と野獣?「スリザー」(2007)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のジェームズ・ガン2006年の作品『スリザー』ですよー!

前々から観たかった作品ですが、レンタル店には絶対ないだろうと高を括っていたらTSUTAYAで見つけたので、慌ててレンタルしてきましたよ!

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概要

グロテスクな宇宙生命体に寄生された人間たちが町中を襲うSFホラー。『ゾンビ』を現代的にリメークした『ドーン・オブ・ザ・デッド』で脚本を務めたジェームズ・ガンの初監督作。ある目的を秘めて地球を襲来した未知のエイリアンに立ち向かう警察署長に、『ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた』のネイサン・フィリオンがふんする。おぞましいエイリアンとの緊迫感あふれるサバイバルの中に、時折り入り交じるユーモアが笑いを誘う。(シネマトゥディより引用)

感想

ジェームズ・ガンという男

本作で監督・脚本を務めるジェームズ・ガンと言えば、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の大ヒットで一躍名を知られたわけですが、そんな彼のキャリアはB級映画専門の製作会社トロマ・エンターテインメントからスタートします。

大学在学中、アルバイトで入ったトロマで「ロミオとジュリエット」を現代版?にアレンジした「トロメオ&ジュリエット」の脚本(実質ノークレジットながら監督も兼任)を担当。
これで映画作りのノウハウを学んだ彼は、2002年公開で米アニメの実写化作品「スクービー・ドゥー」、2004年公開ジョージ・A・ロメロの同名映画のリメイク版「ドーン・オブ・ザ・デッド」で脚本を担当し、この2作が大ヒット。(スクービー・ドゥーでは続編の脚本も担当)

ついに本作で正式に監督デビューするわけです……が、これが米国でコケてしまい、ガンは、しばらくの間ハリウッドから干されてしまったらしいんですね。

といっても、本作の出来が悪いわけでは決してなく、単純に当時のホラー界のトレンドから本作が外れていた(「SAW」や「ホステル」がヒットしていた)事が、本作がヒットしなかった要因だったようです。

その後、2010年にほぼ自主制作体制で制作した監督作「スーパー!」で復活。
2014年公開の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」で一気に時の人になり、続く「~リミックス」も大ヒットし、人気監督の仲間入りをします。

ところが、2018年7月ディズニーの会長アラン・ホルンは、ガンのTwitterの投稿に不適切な内容があったとして、「ガーディアンズ~」シリーズ3作目の監督から解雇を発表。

どういうことかと言うと、左派として知られるガンは、日頃からドナルド・トランプ批判を繰り広げていて、その報復(というか嫌がらせ)で右派のコメンテーター・ジャック・ポソビエックらによって2008年〜2012年ごろにTwitterに投稿された小児性愛、レイプ、人種差別、ホロコーストエイズなどあらゆる不謹慎なジョークを掘り返され、これが問題になったわけです。

彼の名誉のために言っておくと、ガンは「ガーディアンズ~」の監督に就任する以前に、一連のツイートに対して既に謝罪済みでした。

しかし、2018年はハリウッド界隈にミートゥー運動やポリティカリーコレクトネスの風が吹き荒れていたこともあり、批判を恐れたディズニーがガンを解雇という決断をしたわけです。

しかし、これに「ガーディアンズ~」シリーズの出演者が復帰を求める公開書簡にサイン、ガンの再雇用を求めるオンライン請願サイトには、約35万人の署名が集まり、また解雇後もガンとホルンは話し合いを続けていて、最終的にホルン自身が彼の再雇用を決断したんですね。仕事を愛し、仲間を大事にするガンの姿勢と人柄が彼自身の窮地を救ったわけです。(まぁ、もちろんそれだけが理由ではないでしょうけども)

って、前置きが長いよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

ということでここから本編ですよ。

寄生型エイリアン映画

本作を一言で言うなら、いわゆる「寄生型エイリアン映画」です。
体内に寄生して人間を支配・増殖していくタイプの地球外生命体ですね。

有名どころで言えば「エイリアン」「遊星からの物体X」「寄生獣」「ヴェノム」などなど。

映画評論家の町山智弘さんによれば、ガン監督はロバート・A. ハインラインの「人形遣い」という小説と「クリープス」(86)という映画に発想を得て本作のストーリーを作ったみたいです。

ざっくりストーリー紹介

アメリカ合衆国南西部のとある田舎町にある日隕石が落下するところから物語はスタート。
鹿狩り前夜祭に盛り上がるこの町の有力者グラントマイケル・ルーカー)は、ある晩妻のスターラエリザベス・バンクス)にHを拒否られ、ふてくされて飲みに出かけます。
酒場で出会った女友達の人妻ブレンダ(ブレンダ・ジェームズ)と盛り上がった二人で森に行くと、卵のような不思議な物体を発見。
近づくとそれが発射した針のような物がグラントの胸に突き刺さり、彼は地球外生命体に脳を乗っ取られてしまうんですね。

その日からグラントは生肉を買い漁って家の地下に密かに貯蔵し、妻にわからぬよう鍵をかけます。
更にはブレンダの体内に地球外生命の種を植え付け、人知れず侵略を始める――というストーリー。

その後、膨れ上がったブレンダの体を突き破って出てきた大量のナメクジのような生物が、次々に町民を乗っ取っていき、地球を征服しようとするのを町の警察署長ビル(ネイサン・フィリオン)、スターラ、牧場の娘カイリー(タニア・ソルニア)が阻止しようとするわけです。

80年代ホラーをオマージュ

そんな本作、2006年の作品なので、おそらく随所でCGを使用していると思うんですが、映画のルックは特殊メイクや特撮技術を駆使した80年代ホラーのようですし、そのまま「遊星からの~」や「エルム街の悪夢」など80年代ホラーをオマージュしたシーンもあったりします。

ガン監督は1966年生まれですからね。
特殊メイクや特撮技術の進歩によって、隆盛を極めた80年代ホラーの手触りを意図的に再現しようとしたのかもしれませんね。

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個人的にお気に入りのシーンは、ブレンダの旦那が寄生されたグラントの触手攻撃で「開き」にされちゃうシーンです。

他にも、ヒッチコックを思わせるシーンや、ジョージ・A・ロメロオマージュと思われるシーンなどもあって、映画好きの人ならニヤリとするんじゃないでしょうか。

ゾンビもの?

個人的に本作で面白いと思ったのは、このナメクジ状の生物はそれぞれが別個体ではなくて、これに寄生されるとグラントに寄生した本体に操られる。
電話で言えば親機ではなく子機が増える感じなんですよね。

なので、もし仮に地球上の生物全てが寄生された場合、地球上の生物は「全部俺」状態になるわけです。

寄生された人間は、まるでゾンビのようにスターラたちに襲い掛かるんですが、そういう意味で彼ら・彼女らはゾンビというより吸血鬼に血を吸われたグールに近いかもしれません。

そしてこのモンスターの「全部俺」設定を、グラントのキャラやストーリーに深く絡めていく構成は、さすが脚本家出身のガン監督だなーと思いましたねー。

侵略した生物全てが「俺」になるということは、ぼっちと同義ですからね。
本作では寄生された翌朝、前日Hの誘いを拒否ったことを反省したスターラが朝Hに誘うことでグラント(モンスター)は初めて愛を知り、それが弱点になるという設定になってるわけです。

序盤、町の連中の「貧乏だったスターラは生活のため裕福なグラントと結婚した」というセリフがあるんですが、それが本当、もしくはグラント自身がそう思っていたとしたら、グラント自身も孤独を感じていた?ということで、そんなグラントが最初の犠牲者になるのは(物語的)必然でもあるんですよね。

そう考えると、本作の骨格は「美女と野獣」をモチーフにしているのかも?なんて思ったりしました。

まぁ、だとしたら相当悪趣味ですけどもw

なんせこっちの怪物はヌルヌルグチョグチョの触手野郎ですからねー。

キャスト

で、そんな本作のキャストは、ジェームズ・ガン作品ではおなじみのメンバーが揃っています。
グラント役には、ガンの盟友で「ガーディアンズ~」ヨンドゥ―役でおなじみの怪優マイケル・ルーカー

警察署長ビル役に「スーパー!」のホーリー・アベンジャーや「ガーディアンズ~」の囚人役で出演したネイサン・フィリオン。

スターラ役に「ムービー43」の中でガンが監督したエピソード「Ned ネッド(Beezel)」「ブライトバーン/恐怖の拡散者」でお母さんのトリを演じたエリザベス・バンクス

などなど。

このキャスティングにも、ガン監督の仕事仲間を大切にする姿勢が見て取れますね。

まぁ、グロシーンや生理的にアレなシーンも多いので苦手な人にはお勧め出来ませんが、ストーリーや構成、テンポのいい編集や音楽など、今のジェームズ・ガンにも通じるセンスが光る面白い作品でしたよ。

興味のある方は是非!!

 

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何度でも観たいサイコーに楽しい映画「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」(2020)

ぷらすです。

観てきましたよー!

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』をね!

感想としては、ポップでキュートでスカッと爽やかなポップコーンムービーになっていて、ホント何度でも観たいサイコーに楽しい作品でしたねー!

というわけで、今回は公開したばかりの作品なのでネタバレしないよう気を付けて書きますが、これから本作を観に行く予定の人や、ネタバレは絶対に嫌!という人は、先に映画を観てからこの感想を読んでください。

いいですね?注意しましたよ?

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

スーサイド・スクワッド』で、ジョーカーの恋人として登場したハーレイ・クインが主人公のアクション。ハーレイ・クインが、裏世界を支配するブラックマスクと戦う。ハーレイ・クインを『スーサイド・スクワッド』に続いてマーゴット・ロビーが演じ、ブラックマスクに『スター・ウォーズ』シリーズなどのユアン・マクレガーがふんする。監督はキャシー・ヤンが務める。(シネマトゥディより引用)

感想

男に虐げられる女性たちが逆襲するイマドキ映画だが

本作は2016年にDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)第3弾として公開されるも、予告編詐欺、どうしてこうなったと酷評されまくった「スーサイド・スクワッド」の中で唯一高い評価を受けた、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインを主人公にしたスピンオフ作品です。

本作では主演のマーゴット・ロビー自らプロデューサーも兼任、監督にアジア系女性監督として初のスーパーヒーロー映画の監督となるキャシー・ヤン、脚本に「バンブルビー」のクリスティーナ・ホドソンを迎え、ハーレイ・クインを始めとしたメインキャストも全員女性キャラクターという布陣で制作されているんですね。

そして内容は、男どもに虐げられる女たちが協力して逆襲するという、いわゆるイマドキな映画ということで、正直観る前は内容より主張が前に出た作品になってしまうのでは…なんて若干の不安があったんですが、それはまったくの杞憂で、非常に抜けのいい、スカッと爽やかな超楽しいポップコーンムービーになってましたねー。(´∀`)

その上で、昨今のフェミニズム的視点というか、いわゆるミー・トゥー以降の女性差別問題もしっかり組み込まれているのが、非常に上手いバランスだと思いました。

ざっくりストーリー紹介

冒頭、サクッとカートゥーンアニメでハーレイの生い立ちから、彼氏ジョーカーとの破局までを描くアバンから物語はスタート。

傷心のハーレイ・クインマーゴット・ロビーはやけ酒を浴びるように飲んで、髪を短くしたりハイエナを飼いはじめたり、ローラーゲームに出場するなど荒くれた日々を送っています。

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画像出展元URL:http://eiga.com / ジョーカーと破局し傷心のハーレイ

そんなある日、酒場で女たちの「ハーレイはジョーカーがいないと何もできない」という陰口を聞いた彼女は、ジョーカーへの想いを断ち切る事を決心。
「J」の文字が入ったチョーカーを首から引きちぎると、2人が出会った思い出の「エース・ケミカル工場」を派手に爆破してゴッサム中に独立を宣言します。

しかし、それは同時にジョーカーの庇護がなくなった事の宣言であり、案の定、ハーレイはこれまで好き勝手してきたツケで、これまでジョーカーの報復を恐れて手を出してこなかったゴッサム中の悪党から標的にされてしまうんですね。

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画像出展元URL:http://eiga.com / 残忍なギャング・シオニスに捕まってしまったハーレイの運命やいかに

 一方、町を牛耳るギャングの一人ローマン・シオニスユアン・マクレイガ―)は過去に自分が虐殺したゴッサムシティのマフィア、パーティネリファミリーの秘密口座の鍵となる30カラットのダイヤを探していました。

彼はダイヤを部下のビクター・ザーズ(クリス・メッシーナ)と、自身が経営するクラブの歌姫兼運転手のブラックキャナリー(ジャーニー・スモレット=ベル)に受け取りに行かせましたが、スラムでスリをしながら生きる少女カサンドラ・ケイン(エラ・ジェイ・バスコ)にビクターがダイヤを掏られてしまい、その後警察に捕まった彼女がそのダイヤを飲み込んでしまったからさぁ大変――というストーリー。

さらにシオニスを検挙しようと執念を燃やす中年の女刑事レニー・モントーヤ(ロージー・ペレス)、パーティネリファミリー唯一の生き残りでクロスボウを操る暗殺者ハントレスメアリー・エリザベス・ウィンステッド)も絡みながら物語が進んでいくのです。

”虐げられし者たち“がチームを組む

で、最初は立場も思惑も違う彼女たちが、最終的にチームを組む流れになるんですが、そんな彼女たちに共通するのが、男や親・社会に虐げられているという事なんですね。

女刑事のレニーは、ゴッサムシティでいくつもの難事件を解決した敏腕刑事なんですが、そのたび手柄を同僚の男たちに横取りされるので未だにヒラ刑事です。

歌姫のブラックキャナリーは、天涯孤独の身で路頭に迷っているところをシオニスに拾われ仕事を得た恩もあり、生活の為にもシオニスの非道な行いを知りながら従わざるを得ない。

家族をシオニスたちに殺され一人生き残ったハントレスは、色々あって暗殺者として育てられている。

孤児のカサンドラは酷い里親に育てられ、スリを生業に暮らしている。

そしてハーレイ・クインは、周囲の人間からジョーカーの“彼女”としてしか見られていない。

いわば彼女たちは社会から見れば、弱者でありマイノリティー的な存在で、本作の悪役でギャングのボス・シオニスは彼女らを虐げる男社会・マジョリティー・権力の象徴なんですね。

しかし、彼女らはマイノリティーではあるけど決して弱者ではない。
それぞれに無能な男どもよりも秀でた能力を持っているけれど、それを証明し認めさせるチャンスがないだけなんですね。

そんな彼女らが、(結果的に)チームを組んで無能な男(マジョリティー)どもをやっつけて自由を得るというのがこの物語の核心なのです。

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画像出展元URL:http://eiga.com / ペットのハイエナ「ブルース」と

これが凡百の映画なら、彼女らそれぞれが理不尽な仕打ちを受けて悩む。みたいな演出を入れて、結果物語が間延びしちゃうと思うんですが、本作ではそれを”中盤のあるワンシーン“に集約することでキャラクターたちがダラダラ悩んだりしない、アッパーで抜けのいい物語にしているし、件の演出がポップでカラフルな色彩の真ん中に真っ黒なインクをこぼしたように、逆に強烈なインパクトとメッセージ性を観客に印象付けているんですね。

ハーレイクインらしいアクション

そんな本作でアクションの振り付けを担当しているのが、「ジョン・ウィック」も手掛けたチーム「87eleven Action Design」
一見、無造作で乱暴に見えるアクションですが、これはもちろんハーレイのキャラクターに合わせてアクションが設計されているから。

ジョン・ウィック」にしろシャーリーズ姐さんの「アトミック・ブロンド」にしろ、無駄のない実践的な動きが昨今のアクション映画界での潮流ですが、ハーレイというキャラはプロ的な訓練は一切受けていなくて、自らの身体能力と野性的な勘だけで敵をやっつけていく完全自己流。

なので、ぱっと見はバタバタしていて素人臭いし無駄な動きも多いんですが、決めるべきところはバシッと決める、これぞハーレイ・クインというアクションになっているんですよね。

個人的には、ハーレイ・クインの代名詞となったバットを使ったアクションと、バイクに引っ張られてのローラースケートチェイスが特にお気に入りでした。

「BIRDS OF PREY」とは

ところで、本作のタイトルにある「BIRDS OF PREY」ってどんな意味があるのかって思う人も多いと思います。

直訳すると「猛禽類」となるんですが、じつはこれDCコミックに所属する女性ヒーローたちが結成したチーム名でして。

原作ではそのチームに、ブラックキャナリー、ハントレス、カサンドラ・ケイン(原作では三代目バットガール)が所属しているわけです。

元々は、バットマンに登場するゴードン警部の娘バーバラ・ゴードンとブラックキャナリーの2人で始めたチームですが、その後メンバーが増えていったらしいですね。

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画像出展元URL:http://eiga.com / 分け合って行動を共にするハーレイとカサンドラ

本作は、コミック版「BIRDS OF PREY」を原作にしてますが、ヴィランであるハーレイはそもそも「BIRDS OF PREY」のメンバーではないんですよね。(むしろ敵役w)

とまぁ、個人的には過去のDC映画の中でも一番好きな作品になった本作ですが、あえて1つだけ文句をつけるとしたら、あの取って付けたようなシオニス=「ブラックマスク」設定はいらなかったかなーとw

もしかしたらDCサイドからの要望だったかもですが、無理にバットマンヴィランにしなくても、むしろ素顔の時の方が怖さもクズさも伝わってきましたしねw

まぁ、気になったのはその一点だけであとはもう、ただサイコーにぶち上る超ハッピーな映画だったし、観終わったあとはサルのホットサンドが猛烈に食べたくなりましたよw

本作はこれまでのDC映画を一切観てなくても十分に楽しめるし、この作品がヒットすれば続編を作る計画もあるらしいので、ぜひぜひ多くの人に劇場で観ていただきたいです!

興味のある方は是非!!!

 

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長い!けど面白い!「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは2017年公開の「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」の続編『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』ですよー!

前作も面白かったので映画館で観たいって思ってたんですが、ホラー、しかも3時間近い大長編ということで(膀胱的に)映画館で観る勇気が出なくて、レンタルが始まったこの機にやっと観ることが出来ましたー!

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概要

作家スティーヴン・キングの原作を実写化したホラー『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の続編。前作から27年後を舞台に、子供の命ばかりを狙うペニーワイズから逃げ延びた面々が新たな戦いを余儀なくされる。『MAMA』などのアンディ・ムスキエティ監督が続投するほか、ドラマシリーズ「ヘムロック・グローヴ」などのビル・スカルスガルドが再びペニーワイズを演じる。27年後のビルとベバリーに、『スプリット』などのジェームズ・マカヴォイ、『ゼロ・ダーク・サーティ』などのジェシカ・チャステインがふんした。(シネマトゥディより引用)

感想

“それ”が27年ぶりに帰ってきた!

1990年、スティーブン・キングの原作小説をテレビのミニシリーズとして2回に分けて放送した「IT」のリメイク版として2017年に公開された前作。

R-15指定のホラー映画ながら、少年少女が主人公のボーイミーツガール要素や、テレビ版よりも愛嬌が増したペニーワイズの魅力などもあり、日本でも異例のヒットを記録しました。

その続編となる本作は、上映時間169分とホラー映画としては異例の長尺ゆえに、映画館に観に行く前に心を折られたわけですが、実際レンタルで観たら「あー、これは長くなるわなー」と納得。

前作から27年後、大人になった「ルーザーズクラブ」の面々が再びデリーの街に現れた “IT”ことペニーワイズと対決する事になるわけですが、劇中で彼らの子供時代の思い出が回想として一人ひとり挟みこまれていくんですよね。

だからといって、本作だけ観れば前作を観なくても内容が分かるとかではなく、前作では描かれなかった彼らの“思い出”がメインなので、結果、前作を観ていないと内容は分からないっていうw

しかも結果的に、大人になった彼らが前作をなぞるような行動をするため、同じ内容を2度観せられてる感もあって、その辺も評価が分かれる要因になってる気がしました。

原作との違い

自作の舞台や世界観に繋がりを持たせ「スティーブン・キング・ユニバース」を形成していることで知られるスティーブン・キング

実は原作版「IT」も、そんなキング・ユニバースに属する1作だったりします。
なので原作版ではルーザーズクラブがITを倒すための方法や、ITの正体などはこのキング・ユニバースに共通する設定が大きく関わってるらしいんですが、映画版でその辺は”ある程度“キング・ファンではない観客にも飲み込みやすく改変されているし、本作で明らかになるリッチーの秘密などは原作にはない映画オリジナル設定のようですね。

ざっくりストーリー紹介

前作から27年後のデリーでは運河フェスティバルが行われています。
そこに遊びに来ていたゲイのカップルが町のチンピラに襲われ、その一人がバラバラ死体で発見されたという警察無線を傍受したマイクが現場に駆けつけると、橋の橋脚にペニーワイズが残したメッセージを発見。

前作でペニーワイズを倒したあと「再びITが現れたらこの街に戻ってくる」という”血の誓い“を立てたルーザーズクラブのメンバーに召集をかけるわけです。

しかし、デリーを離れて大人になった他のメンバーたちはペニー・ワイズや子供時代のアレコレをすっかり忘れている。どうやらデリーから離れるほど、記憶が薄らいでしまうらしいんですね。

まぁ、それでも旧友からの連絡にデリーに戻ったメンバー5人は、中華レストランでマイクや旧友たちと再会を果たし昔話に花を咲かせるんですが、ビバリーが「ペニーワイズ」のことを思い出したのをキッカケに、5人は27年前の事を思い出します。

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そして、マイクが話の核心に触れた途端、レストランに恐ろしいことが起こり――というストーリー。

そこから、なんやかんやあってメンバーはITを倒すキーワードになる、デリーでの思い出の品をそれぞれ探すという展開になっていくんですね。

子供時代のトラウマが人生に与える影響

大人になったルーザーズクラブのメンバーたちは、それぞれに仕事を持ち活躍しているんですが、子供時代のトラウマが大人になった今も、強い影響を及ぼしている事が前半で分かります。

例えばベバリージェシカ・チャステイン)は結婚しているけど、その夫は過去自分を虐待した父親と同じタイプのDV夫だし、ホラー小説家として成功し女優を妻に持つビルジェームズ・マカヴォイ)ですが、映画製作中の代表作?「ATTIC ROOM(屋根裏部屋)」のラストは読者全員が嫌っているらしい。(奥さんやベバリーも)
これも恐らく、前作で弟ジョージーを死なせてしまった自責の念から逃れることが出来ず、それがハッピーエンドが書けないという形で表れているのでしょう。

劇中スティーブン・キングが古道具屋のオヤジとしてカメオ出演してるんですが、そこでビルの作品のラストが嫌いだからと、ビルからのサインの申し出を断るっていうシーンもあって、執拗にラストシーン嫌い天丼を繰り返すんですね。

ちなみに、本作「IT」も原作の結末、テレビ版の後編がファンの間ではすこぶる評判が悪いようで、この古道具屋のシーンは原作者キング自らが出演しての自虐ギャグのようですw

もちろん他のメンバーもそれぞれに過去のトラウマが、大人になった現在の人生にも影響を与えていて、27年越しにトラウマと対峙して乗り越える=過去の呪いを解くというのが、本作のメインプロットになっていくわけですね。

ITを倒す方法

で、劇中でマイクが見つけたITを倒す方法が提示されるんですが、 おそらくこれが本作の評価が分かれる理由でもあると思うんですよね。

一人デリーに残ったマイクは、記憶がなくなる事なく27年の間図書館に住んでITの動向を見張りつつ、ITを倒す方法を探し続けています。
そして、この土地の先住民族シャカピワー族からITの正体&倒すために行う「チュードの儀式」を教わり、ITを封じ込めるピラミッド型の壺を手に入れているのです。(盗んだらしい)

その儀式ではITを壺に封じるための”犠牲“として、この町に埋もれた”思い出の品“を各人それぞれが見つけて持ち寄らなければならないということで、メンバーは各々町に散って過去の思い出を巡っていくという展開になっていくんですが……。

正直シャカピワー族の件を観ていても、ITの正体も倒し方のルールも何だかふわっとしてるというか、イマイチ分からないんですよねー。

何かもっともらしく「生き物はその姿形の理に準じる」なんて言ってるんですが、え、そもそもITは生き物なの?っていうw

で、このふわっとした感じが結局最後まで続くので、観ていて何かスッキリしないというか、ラストの決着にも爽快感がないというか。

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原作版では、ITの正体やこの世界の真理的なことが説明されてるらしいんですが、映画の中でそれを描くと、観客が混乱するという制作側の判断なのか、原作でのITの正体やチュードの儀式についての詳しい説明部分はフラッシュバック的にパパっと映像で見せるだけにとどめているのです。

まぁ、僕もネットの解説で読んだ限り、それが正解かなって思いましたけどね。

テーマは”思い出“

本作のテーマをざっくり一言で言うと呪い(トラウマ)からの解放で、ペニー・ワイズは彼らが子供時代に抱えたトラウマの象徴です。
ルーザーズクラブの面々は大人になってからも、デリーで受けたトラウマに悩まされているわけですが、これは多かれ少なかれ誰にでも共通することではないでしょうか。

そして、そんな呪いのような”思いで“を乗り越えるエネルギーとなるのが、同じく子供時代の美しかったり楽しかったりする思い出で、それらの良い思い出は往々にして辛く苦しい思い出の影に埋もれて忘れてしまう。

ルーザーズクラブのメンバーはトラウマ(IT)に立ち向かうため、デリーの街で忘れてしまった思い出探しをするわけですね。

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本作が、前作の繰り返しのように見えるのは、大人の自分を苦しみから救えるのは自分の中の純粋で幼稚な部分だからというメッセージで、これは同じくキング原作の「ドリームキャッチャー」でも描かれたキング作品に通底するテーマの一つなのかもしれません。

3時間近い長尺な作品ということもあって、観るまでに多少の覚悟が必要な作品ではありますが、ぶっちゃけ前作よりも怖さは控えめで、その分、劇中には色んなキング作品や80年代ホラーのオマージュも盛り込まれていて、アトラクション的な楽しさに満ち溢れているので、ホラーが苦手という人でも比較的楽しめる作品なのではないかと思いましたよ。

興味のある方は是非!!

 

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マッドマックスxゾンビ!「ゾンビマックス!/怒りのデス・ゾンビ」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、オーストラリア製ゾンビアクション映画『ゾンビマックス!/怒りのデス・ゾンビ』ですよー!

実はこの作品、前々からTSUTAYAでパッケージを見かける度に気になってはいたんですが、どうにも”地雷臭“がするので手を出すのを躊躇ってたんですよね。

でも、今回思い切ってレンタルしてみることにしましたよー!

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概要

ゾンビが蔓延した近未来の世界を舞台に、生き残った人々の壮絶な戦いを描いたオーストラリア製アクションホラー。「マッドマックス」を彷彿させる世界観やスピード感あふれるストーリー展開、これまでのゾンビ映画にはなかった独創的な設定で、世界各地の映画祭で話題を集めた。近未来、突如として謎の流星群が地球に降り注ぎ、人類のほとんどがゾンビと化した。妻子を亡くした整備工バリーは同じような境遇の人々に助けられ、彼らが所有するガレージに避難する。隕石の影響で燃料資源が使えなくなり困り果てていた人々は、やがてゾンビの血液がガソリンの代替になることを発見する。一方、バリーの妹ブルックはマッドサイエンティストに捕らえられ、ゾンビエキスを注入して強化人間をつくる実験の被験者にされてしまう。これが長編デビュー作となるキア&トリスタン・ローチ=ターナー兄弟が手がけた。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち 2016」上映作品。(映画.comより引用)

感想

邦題問題

まぁ、僕が本作に中々手を出せなかった理由の一つに、本作の邦題がありましてね。

ゾンビマックス!/怒りのデス・ゾンビ」ってあんたw
1つのタイトルに「ゾンビ」が重複しとるがな。

っていうか、元ネタの「マッドマックス/怒りのデスロード」を何の臆面もなくパクってますからねw

もうこれ、絶対タイトル詐欺だろうと。(原題は「Wyrmwood: Road of The Dead」)

でも、それならそれでネタになるし、まぁいいかと思って観てみたら、思った以上にマッドマックスしてましたww

邦題つけた人、疑ってゴメン!w

ざっくりストーリー紹介

本作は、前半~中盤にかけて2本のストーリーが平行して描かれます。

1本は整備工のバリー(ジェイ・ギャラガー)の物語。
愛する妻子と幸せに暮らしていたバリーでしたが、ある日突然ゾンビウィルスが蔓延。
ゾンビになってしまった愛する妻と娘を殺し、自分も後を追おうとするんですね。
しかし、死にきれなかった彼は通りすがりのハゲに助けられ、ゾンビ騒動の直前に電話のあった妹ブルックビアンカ・ブラッドリー)がいるブラブラへ向かいます。

その途中、森の中でハゲは間違って撃ち殺され、バリーはハゲを誤射したベニー(レオン・バーチル)を相棒にブラブラに向かって車を走らせるんですが、途中でいきなり車が故障。

そこで車庫に立てこもっていたケルとフランクたちと合流するのです。
しかし、ケルたちの車も動かない。
何故か、突如ガソリンや軽油などの化石燃料天然ガスが全て燃えなくなってしまったというんですね。

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車庫に閉じ込められ、周囲には大量のゾンビ。
困り果てたその時、バリーたちは偶然ゾンビの血が燃えることに気づき、ゾンビを燃料に動く「対ゾンビ使用改造トラック」と、自分たちも対ゾンビ用の装備に着替え、再びブラブラに向けて出発するのです。

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画像出展元URL:http://eiga.com / マッドマックス感溢れる衣装は、監督兄弟の手作り

一方、妹でアーティスト?のブルックは、女友達をモデルにガレージで写真撮影をしているんですが、その女友達が突然ゾンビになって彼女に襲い掛かります。
何とかゾンビに襲われないよう、ゾンビの動きを封じるとガレージの梁に上り身を守る彼女でしたが、そこに軍人らしき男たちが現れゾンビを退治。
助かったかと思いきや、男たちに血液検査をされたブルックは捕まり、ゾンビで何かをしようとしている謎の施設に連れていかれ、人体実験の被験者にされてしまうわけです。(この辺は何だかバイオハザードっぽい)

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画像出展元URL:http://eiga.com / ブルック役のビアンカ・ブラッドリー。若干ミシェル・ロドリゲスに似てる。

ゾンビの血液を注入され、このままでは殺されると思った彼女でしたが、自分が同じ部屋のゾンビたちを操れる事に気づき――というストーリー。

ね?いかにもダメそうでしょ?
ところが、これが中々面白いんですよねー!

斬新な新設定

本作では、これまでにない幾つかの斬新なゾンビ設定が付け加えられています。

・ゾンビウィルスは空気感染するが、ある条件を満たした人間(血液型がRH-のA型)は、ゾンビに噛まれない限り感染しない。(らしい)

・地球上のガスや化石燃料は一切使えなくなるが、ゾンビの血液や彼らが口から吐くガスが燃料替わりになる。(ゾンビの活動エネルギーは地球から供給?)

・ゾンビは昼間ガスを吐いてるので動きが鈍いが、夜はガスを吐かないので素早く動く。(一粒で2度美味しい、ロメロ版ゾンビと「28日後」以降の走るゾンビのハイブリッド設定)

・人体実験で半ゾンビ化したブルックは周囲のゾンビを(複数)操れるようになる。

っていう。

要は、マッドマックスとゾンビも大好きなキア&トリスタン・ローチ=ターナー兄弟が、「美味しいもの+美味しいもの=超美味しいもの」理論で両者を合体させるために創り出したご都合設定なんですけど、これが思わぬ方向にプラス効果をもたらしてるんですよね。

また、本作を制作したターナー兄弟はお金を貯めて会社を辞め、トラックやバリーたちの衣装をDIYで作り、少ない人数で、ロケ地もガレージと郊外の道路、森で撮影した超低予算映画なんですが、撮影や編集が上手いからなのか、映画のルックはいわゆる自主制作映画にありがちな貧乏臭さがなくて、結構リッチ(というか普通のB級映画程度には)に見えるんですよね。ゾンビもバリエーションが豊かだったし、ゴアシーンもしっかり作りこまれてましたしね。

ストーリーの方も、主人公のバリーが苦悩する、いわゆる”ダレ場“は前半でサクッと終わらせて、中盤以降は妹のブルックを救うという目的に向かってまっしぐらなので、物語のテンポがよく、観ていてストレスがないのです。

とは言うものの

なんて書くと、超面白い映画っぽいですが、それはまぁ、色々な部分に目を瞑って良いトコだけ書き出しているからで、ぶっちゃけ本作は、ツッコミどころもかなり多い作品です。

テンポを優先しているためか言葉足らずなシーンも多く、映画を観ているだけだとよく分からない部分もけっこうあるんですよね。

例えば、軍がブルック(というかRH-の人間)を捕まえて何をしようとしているのかは、まったく分かりませんしねw

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画像出展元URL:http://eiga.com / 謎の研究をしてるマッド・サイエンティスト

あらすじを読んで初めて、「強化人間を作ろうとしてる」事を知りましたよ。

それに、あの軍らしき組織も、オーストラリア軍ではないっぽくて、多分、何某かの企業の私設軍&研究所だと思うんですが、結局、彼らの目的も最後まで明かされません。

 

でも、そういう粗をお互なって余りある圧倒的な熱量や、自由(過ぎる?)な発想で、本作を凡百のゾンビ映画とは違う、新鮮で斬新な作品に仕上げているのです。

ちなみに、オーストラリアでは本作の続編がテレビシリーズとして作られてるっぽいんですが、残念ながら日本では観れないっぽいです。(´・ω・`)

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うわー、超気になるー!

興味のある方は是非!!

 

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反抗期のスーパーマン「ブライト・バーン/恐怖の拡散者」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のジェームズ・ガンが制作を務めたホラー?映画、『ブライト・バーン/恐怖の拡散者』ですよー!

みんな大好きジェームズ・ガン他、弟や従弟、旧知の仲間など彼の”ファミリー”が集結して制作されたアンチヒーロー映画なのです。

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概要

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズなどの監督であるジェームズ・ガンが製作を務めたホラー。異様な力を持つ12歳の少年が、周囲を恐怖に陥れる。『ハンガー・ゲーム』シリーズなどのエリザベス・バンクス、『シャッター』などのデヴィッド・デンマンらが出演。『インバージョン 転移』などのデヴィッド・ヤロヴェスキーがメガホンを取り、2019年に17歳でデビューアルバムをリリースしたビリー・アイリッシュが主題歌を担当した。(シネマトゥディより引用)

感想

反抗期のスーパーマンは手に負えない

本作は、子供の出来ない夫婦の前に宇宙から赤ん坊が落ちてくるところからスタート。
これ「スーパーマン」とまったく同じ設定です。

「スーパーマン」では、この赤ん坊を子供のいないケント夫妻がクラークと名付けて育てるんですが、本作では不妊に悩むカイル(デヴィッド・デンマン)とトーリエリザベス・バンクス)のブライア夫妻が、農場の裏山に落ちた隕石(脱出ポット?)の中にいた赤ん坊をブランドンと名付けて育てるわけです。

こうしてブランドン(ジャクソン・A・ダン)を迎えブライア一家は幸せいっぱいなわけですが、12歳になったブランドンは突如能力に目覚め、同時に反抗期もやってきたからさぁ大変――というストーリー。

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まだ少年とはいえブランドンの能力はスーパーマンとほぼ一緒ですからね。
そりゃもう大騒ぎですよw

しかもブランドン、中二病も併発してしまいまして、自分のイニシャル(BB)を基にオリジナルのマークをデザインしたり、若干クトゥルフっぽいマスクを自作して被ったり、エロスクラップの中にグロ系のが混じってたり。

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それでも、これが普通の男の子なら「まぁ、そういう時期もあるよね」って感じですが、彼はスーパーパワーとアホみたいに強靭な肉体を持っていてそれを自覚しちゃってますからね。

ボクは特別なんだー」とか言いだして、自分の気に入らない人間を感情に任せてサクサク殺し始めちゃうわけです。

リミテッドシリーズ

いわゆるアメコミには、ヒーローごとに描かれ続けている正史シリーズの他に、「もしも〇〇がXXだったら」みたいなifの世界を描くアンソロジー的な「リミテッドシリーズ」ってのがありまして。
例えば「もしもスーパーマンソ連に落ちていたら」という世界を描いた「スーパーマン: レッド・サン」とかね。

そういう意味で本作は、「もしもスーパーマンが邪悪だったら」というリミテッドストーリーとも言えるわけです。

まぁ、オフィシャルではないので二次創作とかパロディ・オマージュって言った方が正確で、ある意味DCヒーローをモデルにしたヒーローたちを描いた「ウォッチメン」に近いかもしれません。

つまり本作は、近年のマーベルやDC映画のヒットで、マニアではない一般の人たちにもヒーロー映画リテラシーがある程度広まったから成立する作品でもあるわけですね。

家族の物語

一方で、本作は家族(親子)を描いた作品とも言えます。

可愛い我が子が反抗期に入って、急に乱暴な口を利いたり暴力を振るったり、まるで別人のようになってしまい戸惑う――なんてことは、お子さんを持つ人なら多かれ少なかれ経験すると思うんですね。

本作は「我が子がたまたまスーパーマンだった」という設定にして、そんな思春期の子供を持つ親の不安や悩みをカリカチュアすることで、どこの家でも起こる子育て問題をアンチヒーロー的ホラーというジャンルに落とし込んでいるわけです。

一見、生まれながら邪悪な本性を持った子供に見えるブランドンですが、愛する母親と好きな女の子の一言が全ての発端だったり、その女の子の裏切り?がブランドンのその後の行動を決定してしまったり、ブランドンの異物としての予兆が見え始めた時に、彼と正面から向かい合い正しい道へと導く大人がいなかったことで、彼の行動はどんどんエスカレートしてしまう。

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まぁ、ブランドン自身にもサイコパス的なところもあるわけですが、もし、誰かひとりでも彼と真正面から向き合っていたら結果は違っていたかもしれないと思ったりしました。

つまり、本作は正義のヒーロー・スーパーマンになり損ねた主人公と、(クラーク・ケント育ての親)ジョナサン&マーサ・ケントになり損ねた両親の物語なんですね。

ジェームズ・ガン本来の資質

大傑作「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の大ヒットで、メジャー監督の仲間入りをしたジェームズ・ガンですが、映画人としての彼のキャリアは「悪魔の毒々モンスター」などで知られるB級映画専門制作会社トロマ・エンターテインメントからスタート。
メジャー映画では「スクービー・ドゥー」 (2002)や「ドーン・オブ・ザ・デッド」 (2004) で脚本を担当はしているものの、監督としては「ガーディアン~」までは低予算のインディー映画しか経験がありません。

そんな彼が2011年に監督した作品が「スーパー!」で、気弱でうだつの上がらない男が、子供番組に感化されて自前のコスチュームを着て“クリムゾンボルト”というヒーロー(というか自警団?)になるという内容。

でもこの男、自称ヒーローなので、別に能力も何もなくて悪党(町のチンピラ)をレンチでぶん殴るっていう、はたから見ればただのアレな犯罪者。
奥さんをケヴィン・ベーコン演じる町のギャングに奪われたと思い込んでいるけど、奥さんは男に嫌気がさして自らギャングと付き合い始めただけなのです。

そんな感じで「スーパー!」は「リアルに(自称)ヒーローがいたらこんなんですよ」っていう「キック・アス」をもっと救いがなくて痛々しくしたようなアンチヒーロー的なブラックコメディーなんですね。

つまり、ジェームズ・ガンの資質って、本来そっち側なんですよ。

本作の内容にも、そんなジェームズ・ガン本来のテイストが反映してる感じがしましたねー。(まぁ、彼がどれくらい本作の中身に関わってるかは分かりませんけども)

で、エンドクレジット後のポストクレジットシーンでは、マイケル・ルーカー(ヨンドゥの人)演じるYouTuberがブランドンのような「謎の存在たち」を紹介していく中に、ワンダー・ウーマンやアクアマンっぽいのとか、前述のクリムゾンボルトっぽいのがいるっていうちょっとしたお遊びもあったりするんですが、どうやらこれ、続編というかジェームズ・ガン・ユニバース“への布石っていう噂もあって、個人的にワクワクが止まらないですよ!

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面白いけど語りすぎ「アス」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、黒人差別を題材にしたホラー映画ゲット・アウト」でアカデミー脚本賞を受賞したジョーダン・ピール監督の新作ホラー『アス』ですよー!

ホラーと言ってもワッ!と驚かされる系の「お化け屋敷映画」ではないので、ホラーが苦手という人でも安心して観られるんじゃないかと思いましたねー。

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概要

第90回アカデミー賞脚本賞を受賞した『ゲット・アウト』のジョーダン・ピール監督と、製作を務めたジェイソン・ブラムが再び組んだスリラー。休暇で海辺にやって来た一家が、自分たちにそっくりな人物に遭遇する。『それでも夜は明ける』で第86回アカデミー賞助演女優賞に輝いたルピタ・ニョンゴが主演を務め、『ブラックパンサー』などのウィンストン・デューク、ドラマシリーズ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」などのエリザベス・モスらが共演。(シネマトゥディより引用)

感想

ドッペルゲンガーもの

この作品を一言で言うと「“自分の分身”に襲われる家族」を描いた、いわゆるドッペルゲンガーものです。

ドッペルゲンガーとは自分とそっくりの姿をした分身で、自分のドッペルゲンガーを見た人間は死ぬとか、分身に取って代わられると言われていて、怪談や都市伝説のネタとして有名ですよね。

本作では、前作「ゲット・アウト」で(表面化しない)黒人差別を描いたホラーで評価されたジョーダン・ピールが、ドッペル・ゲンガー(=自分の分身)に襲われる家族の恐怖を描いた異色のホラー映画なのです。

ざっくりストーリー紹介

1986年の夏、両親とともにサンタクルーズにある行楽地を訪れたアデレード・ウィルソンルピタ・ニョンゴ )は、ビーチに建てられたミラーハウスに迷い込んで自分にそっくりな少女と出会うんですね。
ミラーハウスから戻った彼女はそのトラウマから失語症になってしまいます。

そして2019年、失語症を克服し2児の母になったアデレードは、夫ゲイブ(ウィンストン・デューク)、長女ゾーラ(シャハディ・ライト=ジョセフ )、長男ジェイソンエヴァン・アレックス)と夏休みの家族旅行でサンタクルーズにあるビーチハウスを訪れるんですね。

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画像出展元URL:http://eiga.com / バカンスに来たせいでひどい目に遭ってしまうウィルソン家のみなさん

ゲイブは嫌がるアデレードを説得し、4人でビーチに出かけ友人のタイラー一家と落ち合います。

その夜、ビーチハウスに戻ったアデレードはゲイブに、昔この場所で起こった出来事によってトラウマを負ったことを打ち明け、ゲイブはそんな彼女をなだめるんですが、突然停電が起こり、ジェイソンが玄関先に4人の不審者が立っていると言いに来て――というストーリー。

もちろん、玄関先に立っているのはウィルソン家のドッペルゲンガーで、4人はそれぞれ自分を殺そうと襲ってくるドッペルと戦うハメになるんですねー。

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画像出展元URL:http://eiga.com / ウィルソン家を襲うドッペルゲンガーたち。本作ではメインキャラを演じるキャスト全員、一人二役を熱演してます。

重要なキーワード

そんな本作ではいくつか、物語を象徴する重要なキーワードが登場します。

・11:11

映画冒頭、幼少期のアデレードがミラーハウスに向かう横に浮浪者が立っているんですが、彼が持っている段ボールの切れっぱしに書かれているのが「11:11」です。

これは「エレミヤ書」という旧約聖書の一書で、エレミヤさんという人の書いた預言書らしいんですね。
で、その11章11節に書かれているのが、

それゆえ主はこう言われる、見よ、わたしは災を彼らの上に下す。彼らはそれを免れることはできない。彼らがわたしを呼んでも、わたしは聞かない。」です。

平たく言うと「私を裏切った彼ら(民族)に災いを与えるし、助けを求めたってガン無視する」って神様が言ってるよ。ってこと。

本作の中で”神を裏切った彼ら“が誰なのか、彼らに与えられた“災い”とは何かってところが、本作のメインストーリーでありテーマでもあるんですね。

また「11:11」という数字は作中、ジェイソンが夜に指さした時計が表示していた時刻や、救急車のナンバーなどにも記されているんですが、これはまぁ、ドッペルゲンガー=自分と対になる分身であることの象徴で、”彼ら“の武器がハサミなのも、左右対称の2枚の刃が繋がっているからだと思います。

・うさぎ

本作では、冒頭のシーンで檻に入れられた大量のうさぎが登場します。
うさぎはキリストの復活とも関連付けられているイースターの象徴。
で、これまた旧約聖書の一書「レビ記」では、
野うさぎ、これは、反芻するけれども、ひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れたものである。(11章6節)
これらはあなたがたに忌むべきものであるから、あなたがたはその肉を食べてはならない。またその死体は忌むべきものとしなければならない。(11章11節)」という記述があるんですね。
ここでも間接的に「11:11」がキーワードとして出てくるわけですが、汚れたウサギの肉を食べている(食べさせている)ということが、前述のエレミヤ書とリンクしてくるわけです。

・ハンズ・クロス・アメリ

これも冒頭、部屋で映っているテレビのCMで流れているんですけど、アメリカで行われたチャリティーイベントなのだそうです。

ニューヨークからカリフォルニアまで、参加費10ドルを払った何百万人もの人々が手を取り合って一列になり、飢餓への支援基金を募るというイベントらしいんですが、本作ではかなり意地悪な使い方をしています。

映像特典のインタビューでもピール監督はこのイベントに対して「やらなければいけない事から目をそらして、良いことをした気になってる」(意訳)とバッサリw

多分ですが、子供のころにこのイベントを観た監督は、単純に(カルト的な)「気味の悪さ」を感じていて、だから本作ではある種の恐怖演出と皮肉を込めてこのイベントを引用しているのだと思います。

そんな感じで本作では、聖書やアメリカで実際に行われたイベントなどを劇中で引用してて、キリスト教国のアメリカ人ならピンとくるんでしょうが、日本人的にはちょっと分かりにくいかもしれません。

テーマ

そんな本作のテーマを一言で言うと、格差と差別です。
本作に登場するドッペルゲンガーたちはアメリカ国内の貧困層、被差別人種であり、大国アメリカに搾取されている(されてきた)国々の人たちなど、いわば”持たざる者“のメタファーであり、本作はいつかそんな彼らと自分の立場が逆転するかもしれないという、他民族国家アメリカ(特に富裕層・中流層)の潜在的な恐怖や格差・差別による分断の危うさを描いているんですね。

前作「ゲット・アウト」でも同様のテーマを描いているピール監督ですが、本作ではよりハッキリとテーマ性を打ち出していると感じましたねー。

ただ、個人的にはテーマを上手くエンタメに落とし込んだ前作と違って、本作はストーリーやエンタメ性よりテーマや主張がやや前に出すぎているなー(´ε`;)ウーン…とも思いましたけど。

まぁ、元々社会的主張の強い監督ではあるし、スパイク・リーとも仲良しだから、つい言いたいこと・伝えたいことが溢れちゃったのかな?

蛇足感

序盤~中盤までは不気味さや笑いを入れ込みながら、いい感じに進んでいたんですけど、中盤~後半にかけてドッペルゲンガーの正体についての説明などは正直クドいと思ったし、ハッキリ蛇足だなって思いました。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90369/photo/14edc61f1d4015a0/640.jpg?1561622176

画像出展元URL:http://eiga.com

いや、最後のどんでん返しのために必要な描写なのも分かるし、「ネタ晴らし」することでテーマ性は強まるんだけど、ホラー映画としては全てに理屈が通っちゃうと興醒めしちゃうじゃないですか。

説明パートをまるっと削ってドッペルの正体はぼかしても本作のテーマはちゃんと伝わると思うし、むしろ作品としての切れ味は増すような気がしました。

とはいえ、だからつまらないという事ではなくて、むしろ映画として十分面白さの基準を満たした作品だけに「何かもったいない」と思ったって話で。

特に前半の超ウザいパパが子供や奥さんに冷遇されてるって件は、元コメディアンであるピール監督のセンスが光るお気に入りのシーンでしたw

興味のある方は是非!!

 

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