今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

前作をアップデート「孤狼の血 LEVEL2」(2021)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2018年に公開され大ヒットとなったシリーズ第2弾、『孤狼の血 LEVEL2』ですよー!

劇場公開時、観よう観ようと思いながら中々タイミングが合わなくて結局見逃してしまったんですが、先日ゲオに行ったらブルーレイのレンタルを見つけて借りてきました。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94173/photo/8bbd3f8652eb38b4.jpg?1623311979

画像出展元URL:http://eiga.com

概要

柚月裕子による小説を『日本で一番悪い奴ら』などの白石和彌監督が映画化した続編で、前作から3年後の物語をオリジナルストーリーで描く犯罪ドラマ。亡き先輩刑事の跡を継ぎ広島の裏社会を取り仕切るようになった若き刑事が、刑務所を出所してきた暴力団員と火花を散らす。前作で新人刑事を演じた松坂桃李や彼と対峙(たいじ)する暴力団組長役の鈴木亮平のほか、村上虹郎西野七瀬中村梅雀吉田鋼太郎などが出演する。(シネマトゥデイより印象)

感想

ザックリ前作を振り返り

本作は柚月裕子の同名小説を原作に、白石和彌がメガホンを取り役所広司主演で製作。
広島県を舞台に暴力団の抗争、警察の癒着・腐敗などを描き、「仁義なき戦い」や「県警対組織暴力」といった、いわゆる東映実録シリーズを復活させるという趣向で、時代設定を暴力団対策法」施行前夜に据え、昭和から平成へと、変革する時代の最後の数年を描いたシリーズなんですね。

昭和63年(1988年)広島。呉原市の暴力団尾谷組と広島市に拠点を置く五十子(いらこ)会による第三次広島戦争が痛み分けに終わってから14年。

尾谷組の残党と五十子会の下部組織の加古村組の間で新たな抗争の火種がくすぶり続けている。
そんなある日、呉原東署マル暴刑事大上役所広司)のもとに新米刑事の日岡松坂桃李)が部下として配属されます。

二人は行方不明になっている上早稲という男の捜索を開始するが、窃盗、侵入、放火など何でもありの違法捜査やヤクザからの賄賂を平気で受け取る大上に反発。

実は上司である監察官・嵯峨滝藤賢一)から大上の違法捜査を調査するスパイとして送り込まれた日岡は、嵯峨に大上の早期逮捕を訴えるも、嵯峨は内偵を続行しヤクザとの関係を綴った「大上の日記」を入手するよう命令します。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94173/photo/239d24ad30276b89/640.jpg?1617785998

画像出展元URL:http://eiga.com

激化する尾谷組と加古村組の抗争だったが、大上の活躍で加古村組幹部が一斉逮捕。何とか全面抗争は避けられたものの、その日を境に大上は行方不明になり、数日後水死体で発見される。深入りし過ぎた大上は加古村組組員によって殺されてしまったのです。

大上の死後、彼の行きつけのクラブのママから「大上の日記」を渡された日岡は、大上は暴力団から市民を守るため違法捜査も辞さなかったこと。スパイと知りながら大上が自分をマル暴の刑事として育て、自身の死を悟ると嵯峨ら上層部の数々の不正をメモした証拠の日記を日岡に託したことを知り、大上の意思を受け継ぐ。

というストーリーでした。

続く本作は、今や一人前のマル暴刑事として大上流をアップデートし、広島の治安を守っていた日岡が主人公。

暴力団同士の抗争もなく、落ち着いた日常の中、五十子会下部組織、上林組組長の上林成浩(鈴木亮平)が出所したことで、事態は一変する――というストーリー。

暴力団というよりはほぼシリアルキラーみたいな上林と日岡の対決をメインに、嵯峨ら上層部の陰謀や日岡のスパイである在日2世のチンピラ、チンタ村上虹郎)とその姉まお西野七瀬)の悲哀など、いくつものエピソードが重なり合っていくんですね。

松坂桃李の狂気がアップグレード

前作を観た時僕が感じたのは、作品として整い過ぎてるということ。

今や日本有数の名優でもある役所広司が主演。作品の柱になることで、良くも悪くも物語がまとまってしまうというか、もちろん本人が意図的にしてるわけではなく、観ている僕の先入観がそう見せてるんだろうけど、どうしても「劇映画」になってる感じがしたんですね。

それは全然悪い事ではないし、役所広司が名優であることに何の疑問もないんですけど、僕が暴力団映画に求めるのって、物語が歪むくらいの狂気なんですよね。

まぁ、言ったら僕も仁義なき戦い」世代ですからね。
菅原文太松方弘樹千葉真一ら、(当時)若手の役者たちのフィルムから溢れ出んばかりの芝居を超えた狂気やリアリティに痺れた身としては、どうしても前作にはある種の「お行儀の良さ」みたいなものを感じてしまうのです。

あとはまぁ、役所広司と一緒だったからかもですが、この時点での松坂桃李は、まだ若干芝居に頼りなさを感じたりもしたんですよね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94173/photo/420ab7fe92853990/640.jpg?1617785998

画像出展元URL:http://eiga.com

ところが、本作の松坂桃李は凄く良くて、ほぼ同世代の鈴木亮平との共演ということもあるのかもですが、まずマル暴刑事の役が堂に入ってるし、鈴木亮平演じる上林によって追い詰められたあたりから、鈴木亮平の狂気に引っ張られるように彼自身の演技にもドライブがかかっていくのが感じられたし、そんな二人のクライマックスでの対決はかなり痺れてしまいました。

で、そんな二人の脇を支える管理官役の滝藤賢一と相棒刑事役で元公安の中村梅雀も、タイプの違う怖さを見事に演じてたって思うんですよね。
っていうか、一番怖いのは中村梅雀の奥さん役を演じた宮崎美子さんかもですがw
あんなニコニコ顔で料理やお酒出せるかねw

因果関係はいらなかった

そんな松坂桃李のいわば宿敵として登場した鈴木亮平ですが、個人的には「変態仮面」からのファンでしてね。

多分、彼はどちらかと言えば憑依型の俳優だと思うんですが、本作でも完全にルールの外側にいる男・上林の狂気を体現してみせてましたねー。あまりデフォルメせずに、割と普段の彼のテンションで演じてるのも怖さに拍車をかけてました。

ただ、演技は文句ないんですけど、上林というキャラ造形にはちょっと不満が。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94173/photo/fc08bbb57df074a8/640.jpg?1618129913

画像出展元URL:http://eiga.com

本作の上林という男は、いわばバットマンに対してのジョーカー的な、「純粋悪」として描かれてると思うんですが、だとしたら親父に虐待され母親は見て見ぬふりで~みたいな、彼がああなってしまった“原因“はいらなかったんじゃないかなと。
まぁ、上林の相手の目ん玉をくりぬくっていう殺害方法のフリとしての設定だと思うけど。

そういえばあの殺害方法も、最初の一回目はインパクトがあっていいけど、何度も何度も見せられちゃうとなーって思ったりしましたねー。

個人的には、今回のほぼジョーカー的キャラで行くなら、下手な因果関係はつけずに完全な純粋悪にした方が良かったと思うし、逆に因果関係をつけるなら、もっとこう「仁義なき戦い 広島死闘篇」の千葉真一演じる大友みたいに、下世話で身もふたもないキャラクターにした方が良かった気がしました。

そもそも本作自体「~広島死闘篇」をモチーフにしてるっぽいですしね。

昭和への鎮魂歌

そんな感じで二人の芝居はかなり良かったし、作品自体も個人的には前作より好きだったりするんですが、それでも(思い出おじさんみたいで嫌だけど)「仁義なき~」に比べると、どこか“漂白“された印象を受けてしまう。
でもそれは別に、役者陣の演技とか監督以下製作者に問題があるのではなく、日本という国が小綺麗に整地されてしまったんですよね。

「仁義なき~」の頃の、まだ色んなルールが整備され切っていない、あの薄暗くて乱暴な時代の空気感を今の日本に臨むのはない物ねだりだし、そういう意味では「弧狼の血」という作品自体が、今やなき「昭和」への鎮魂歌と言えるのかもしれません。

興味のある方は是非!!

 

▼良かったらポチッとお願いします▼


映画レビューランキング

まるで異世界に放り込まれた感覚「ジャッリカットゥ 牛の怒り」(2021)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、あのアートディレクターで映画評論家の高橋ヨシキさんが自身のYouTubeチャンネルの中でおススメしていた『ジャッリカットゥ 牛の怒り』ですよー!

牛版ランボー」というか「牛版アポカリプト」というか「牛vs人間 怒りのデスロード」というか、とにかくスーパーハイテンションな映像に圧倒されっぱなしの91分でしたねー!

https://eiga.k-img.com/images/movie/95025/photo/08d82edcec37e216.jpg?1620805039

画像出展元URL:http://eiga.com

概要

ある村の精肉店から逃げ出した水牛をめぐるパニックスリラー。南インド・ケーララ州の最も奥に位置する村を舞台に、水牛に飜弄(ほんろう)されるうちに、人間の本能があらわになっていく人々を映し出す。リジョー・ジョース・ペッリシェーリが監督を手掛け、アントニー・ヴァーギス、チェンバン・ヴィノード・ジョース、サブモン・アブドゥサマード、サンティ・バラチャンドランらが出演。第93回アカデミー賞国際長編映画賞のインド代表にも選出された。(シネマトゥデイより引用)

感想

「ジャッリカットゥ」とは

ジャッリカットゥは、牛を群衆の中に放ち逃げようとする牛の背中の大きなコブに参加者が両手で捕まり続けることを競う牛追い競技のこと。

本作の内容はまさにそんなタイトルに相応しい物語で、南インド・ケーララ州の最も奥にある小さな村の肉屋で屠られようとしていた水牛が突如暴れて逃走。

村人たちは逃げ出した牛を捕まえようとするのだが、神出鬼没の牛に翻弄されるうち、やがて社会性や倫理といった人間の皮は剝がれ、欲望丸出しの獣になっていく――という物語。

https://eiga.k-img.com/images/movie/95025/photo/d40bc961e47ea806/640.jpg?1623294273

 

まぁ、言ってしまえば牛を追いかけるだけというシンプルなストーリーなんですが、これがメッチャヘンテコなのに凄い、今まで観たことのない映画なんですよねー。

まるで異世界、知らないカルチャーに放り込まれる感覚

そんな本作は、黙示録の引用からスタート。
自身もキリスト教徒であるリジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ監督によれば、これはアカデミー賞国際長編映画賞インド代表作品に選ばれた際に後付けしたらしいんですが、舞台になっている村が、インドには珍しいキリスト教圏だからって事もあるのかもですね。

で、時計の秒針のような音に合わせて、横になってる人々が目を開けたり閉じたままだったり。ようは村の朝、目覚めた人、まだ眠っている人の顔のアップを秒針の音に合わせて映してるわけですが、このクセの強い映像にいきなり面食らってしまうんですよね。って言うか普通の映画なら、村の日常の描写でこんなショットの撮り方や編集のやり方しないじゃないですか。

その後起床した村人たちの日常が描かれるんですが、それが何と言うか凄く不穏なわけですよ。主役は肉屋の使用人なんですが、村には屠殺場などなくて、毎朝生きてる牛を自分たちで屠殺、解体、販売してる。その様子や、メニューが毎朝同じという理由で朝から奥さんに平手打ちするDV親父や、購入した肉の袋を教会の前の木の枝にぶら下げてミサに参加するとか、そういう、「日常」っていうワードでは決して描かいだろうシーンが繋がれているんですね。

そのバックに流れる音楽も何かヘンテコで不穏。
監督インタビューによれば、本作の音楽はほぼ楽器は使わず、人間の体を打ち付けたり、叫んだり、ため息で構成され、劇中の道端でカレーを作っている人たちをスタジオに呼んで音を出してもらい、それを合成して音楽にしているのだとか。

で、そんな日常描写が繰り返された後、突如、命の危機を感じた牛が暴れだし逃亡したところで、タイトルが映し出されるんですねー。

もう、万事がこんな感じで、いわゆる映画製作の通常のセオリー無視の撮影と音楽、そして編集に、観ているコッチが何が何やらと混乱しているうちに、あれよあれよという間に物語は進み、どんどん収集がつかなくなっていくんですねー。

https://eiga.k-img.com/images/movie/95025/photo/485d9d5ead09c2c2/640.jpg?1623294273

 

それでも、登場人物の名前と顔が一致すれば、まだ、いくらか理解出来ると思うけど、なんせ濃い顔系のインド人な上にヒゲ率&太っちょ率も高い&主役も特別カッコ良くない(むしろモブっぽい)ので、正直、最初から最後まで誰が誰だか見分けがつかないんですよね。あと、全員気が短くてすぐ怒るし。

それと独特な映像&編集が相まって、日本とはルールも文化も違う、まるで異世界に放り込まれたような感覚になるんですよねー。

一頭の牛が人間の皮を剥ぐ

とはいえ、小さな村の肉屋から逃げた牛を村人が追いまわすという、非常にミニマムなコミュニティーのシンプルかつ小さな物語だし、逃げ出した牛だって特別大きいとか、狂暴とかってわけでもなく、どちらかと言えば痩せっぽちで牛としては小さめだと思うんですよ。

この牛、撮影のために購入した本物の水牛一匹と、アニマトリニクスで作られた頭などの部位、それとほんの少しのCGの組み合わせで作れれていて、なので見た目が迫力不足なところも含めてリアルだし、ドキュメンタリー的な迫力があるんですよね。

ただ、この牛が何とも神出鬼没で、村人総出で探してるのに一向に見つからず、突如現れては店舗を壊したり、村人を病院おくりにしていくっていう、まるでランボーみたいなんですよねw

https://eiga.k-img.com/images/movie/95025/photo/254534390e4c5e0b/640.jpg?1623294273

 

で、そんな暴れ牛の情報を聞きつけて近隣の村からも愚連隊みたいな奴らが集まったり、村人も次々増えていき、なんかあれよあれよという間に人数が千人に膨れ上がるんですね。

監督によれば、茶畑で働いている労働者の日当に賃金を上乗せ、食事も提供して総勢二千人のエキストラを雇ったのだとか。
その辺はさすがインド映画ならではというか、世界中の映画見渡しても、今どき千人規模の人間が一つ画面に収まってる映像なんて中々観られませんよ

で、話をストーリーに戻すと、この神出鬼没な牛に翻弄されるうち、村人たちはだんだん倫理観や社会性、冷静さみたいな人間が人間足りうる表皮を剥がされて行って、その中から欲望丸出しの獣としての本性を覗かせていくんですね。

それが極に達するのがクライマックスの千人が牛に群がって出来る”人間山脈”で、観てるこっちはただただ圧倒されながらも、普遍的な人間の本質を垣間見るというか。

いや、そういうのを抜きにしても、単純に千人近い人間が松明やライトを持って暗い林や村の中を全力疾走する様子を空撮する映像は、それだけでも見る価値ありだと思いますよ!

興味のある方は是非!!

 

▼良かったらポチッとお願いします▼


映画レビューランキング

”普通”につまらん「大怪獣のあとしまつ」(2022)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2月4日に公開されるや「パシフィックリムとシンゴジラがあえてやらなかったことの煮凝り」「令和のデビルマン」「クソ映画ではなくただのクソ」などなど、Twitterで何故か盛大に叩かれた『大怪獣のあとしまつ』ですよー!

あまりにも評判が悪いので、僕も思わず怖いもの見たさで観に行ってしまいましたよ。

https://eiga.k-img.com/images/movie/92765/photo/d8e833f13e8cd32a.jpg?1638320313

画像出展元URL:http://eiga.com

概要

『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』などの三木聡が監督と脚本を務めた特撮ドラマ。腐敗と膨張が進んで爆発する危険のある巨大怪獣の死体処理に、1人の男が挑む。『記憶屋 あなたを忘れない』などの山田涼介、『哀愁しんでれら』などの土屋太鳳、『喜劇 愛妻物語』などの濱田岳のほか、オダギリジョー西田敏行らが出演する。(シネマトゥデイより引用)

感想

公開→炎上→大喜利→マウント合戦。Twitterが祭り状態に

本作は、タイトル通り「死んだあとの怪獣の後始末をどうするか」というストーリーで、突如死んだ大怪獣の死体を巡り、政府や各官庁が右往左往する様子を描くコメディ映画です。

もう、そのコンセプトだけで絶対面白そうだし、ポスタービジュアルと合わせ、僕も公開前はかなり期待していたんですけどね。

ところが、公開日当日ですよ。

本作の感想をTwitterで調べて見ると大酷評……というか、もはや罵詈雑言の嵐

おやおや?と思い、その後もチラチラTwitterをチェックしていると、やがて「パシフィックリムとシンゴジラがあえてやらなかったことの煮凝り」「令和のデビルマン」「いやデビルマンは言い過ぎ。せいぜい令和の〇〇程度」と、次々にアレな邦画タイトルを晒す大喜利状態になり、さらに「お前ら実写版デビルマン(のひどさ)なめんな!」「本当にデビルマンを観てたら本作と比べるなんて出来ないハズ」など、謎のマウント合戦が始まり、挙句「叩いていい認定したらどこまでも叩く。これだからTwitter民は……」と嘆く真面目勢が現れたと思ったら、「確かにデビルマンはひどいが、今のCG技術の礎になっている」と、何故かデビルマンを擁護する勢も現れる始末で、もう何が何やら本編そっちのけで場外乱闘…というか、ある種のお祭り状態に。

で僕は、個人的に「令和のデビルマン」というパワーワードに、「え、そこまで言われる作品なら逆に観たい!」と思い、劇場まで足を運んだ次第なのです。

近年の邦画が抱える病

で、そんな本作を観てきた感想を一言で言うと、

普通につまらん。

でしたねー。

少なくとも実写版デビルマンほど突き抜けたヒドさはなくて……作品名を出すと角が立つのでぼやかして言うと、ポジティブ先生が不良に野球させる映画とか、モッズコートの刑事が偉いさん言い合いする映画とか、海難救助のプロが毎回ピンチになる映画とか、日本製作の三国志映画とか、埼玉と千葉がケンカする映画とか。

何と言うかこう、わりとビックバジェットの邦画にありがちなつまらなさって言ったら伝わりますかね?

劇中のリアリティーラインやディテールの設定、作劇が雑過ぎて物語に集中出来ない。みたいな?

「リアリティー」って言うと「いや怪獣映画にリアリティーもクソもないだろ」と思う人もいるかもだけど、ここで言うリアリティーは「物語世界」の中のリアリティーの設定のこと。

つまりは物語世界のルールとそれを表現するディテールの描写で、僕の経験上、これが出来てる映画はたとえ低予算でも内容が荒唐無稽でも面白いし、ちゃんとしてない映画はどんなにお金かけたって、つまらないんですよね。

やりたい事や狙いは分かるが

という事を踏まえ、本作の感想なんですが。

まず先に言っておくと、本作は「怪獣映画」ではないです。

本作に登場する「怪獣」はあからさまに、3.11、原発事故、コロナやその渦中に開催された東京五輪などの「メタファー」で、本作に登場する大臣や官僚自衛隊(劇中では防衛隊)や主人公・帯刀アラタ(山田涼介)らが所属する政府直轄の特殊部隊「特務隊」デモに明け暮れる群衆などは、それらに振り回され右往左往する日本政府や我々国民の姿をカリカチュアした姿で、つまり本作は怪獣=災難を通して、現代日本の姿を炙り出す社会風刺コメディなのです。

ただ、その一方で、本作は三木 聡監督から「シン・ゴジラ」へのアンサーでもあるというか。

劇中で腐りかけの怪獣を氷漬けにするという作戦に主人公が「最悪ですよ」と言い放つあからさまな揶揄が入ってるのでこれは間違いないと思うんですよね。

シンゴジは使えない政治家(老害)はゴジラ放射能ビームで全滅し、残ったエリート官僚がゴジラを冷却して封じ込め、新たな日本に向かうところで物語が終わります。

一方、本作の場合、使えないのは政治家だけでなく、官僚や自衛隊なども全員が自分たちのメンツや利権のためだけに動ていいて、誰一人国家の未来なんか考えていないんですよね。

そこには、シンゴジに対して「これが”現実“だろ?」という三木監督の強烈な皮肉が込められているのでしょう。

つまり、三木監督が本作で「ドント・ルック・アップ」をやろうとしてるのは明らかで、怪獣映画という体で日本を風刺するという狙い自体は凄く面白いと思うんですよ。

もしキチンとやり切れれば、本作は日本映画史に残る名作になったかもしれませんしね。

ところが、この題材、三木監督には少々荷が重かったようで

前述したように、リアリティーラインはガタガタでディテールの描き込みも雑、肝心のコメディシーンも小学生レベルというか時代遅れというか(しかもスベり散らかしてる)なギャグ連発、しかも別にストーリーとも絡んでいないので、これではコメディとして成立していないんですよね。

例えば本作では、大臣が「感動して泣いた涙と鼻毛を抜いた時の涙は見分けがつかない」みたいな、大臣がよく分からない例えをして周りが困惑するギャグが頻発するんですが、普通、これをやるのって一人じゃないですか。
よく分からん例えで回りを困惑させる大臣」というキャラクターを表現するためのギャグですよね。

ところが本作では、大臣全員がこの「よく分からん例え」を使うわけですよ。

え、どういうこと?っていう。

それは一人が言って周りが困惑するから成立するんで、みんなで言い出したら成立しませんよ?っていう。

https://eiga.k-img.com/images/movie/92765/photo/c0e120d545aba251/640.jpg?1643792493

 

他にも、ある大臣に対して「あんたの顔トンボ顔だよね」みたいなイジりを環境大臣がして、他の大臣もそれに乗っかってみんなで囃し立てるっていうシーンも「そんなわけねーだろ!」ってなるし、本作冒頭の同窓会での「スマホの緊急速報みたいな音を鳴らす笑い袋」も、いや、そんな笑い袋売らないしそもそも作れないでしょ。っていうかイマドキ笑い袋っていうセンスもどうなん?とか。

それで言うと、この同窓会に参加している男子は、どうも大怪獣との戦いのため徴兵されていたらしい事が分かるんだけど、そうすると主人公が突如行方不明になってから戻るまでの間と怪獣が突然死亡するまでの時系列がどうなってるのかよく分からない事になるんですよね。

っていうかいらんギャグはアホみたいに盛り込むくせに、肝心の情報が開示されない(そのくせ思わせぶりにチラ見せはする)から、終始何がどうなってるのかよく分からんわけですよ。

あと、この国民に対して怪獣の死体の安全性を示すため、件の蓮佛議員がスーツ姿&命綱も装着しないで大怪獣の身体に上って演説→足をしべらせて怪獣の傷に頭から突っ込んでパンツ丸見えとか。

https://eiga.k-img.com/images/movie/92765/photo/d9f7c2d914ea89e3/640.jpg?1640657291

 

そもそもいくら怪獣の死体に毒性がない設定とはいえ、主人公を始めとした登場人物が防護服も着ない、マスクすらつけないで怪獣に近づき、体内の腐敗ガスが爆発した怪獣の腐った体液を浴びるハメになるという描写が何度も繰り返されるとか、お前らの危機管理はどうなってるんだっていうね。

本作は終始そんな調子なので、だんだん真面目に観てるのが馬鹿らしくなり、割と早い段階でどーでもよくなってしまう。

あとは前述したように、劇中の時系列が分かりにくいし、キャラクターの行動原理が分からない、特にクライマックスで山田涼介、土屋太鳳、濱田岳の主要3人がそれぞれ何をしたいのかまったく分からないなど、作劇的にもあまり上手くない――っていうか、ハッキリ下手クソだと思いましたねー。

良かったところ

そんな本作ですが、キャスト陣は山田涼介や土屋太鳳、濱田岳西田敏行などなど、主役から脇役まで全員実力派揃い。

https://eiga.k-img.com/images/movie/92765/photo/e2a9bbec2923b563/640.jpg?1640657291

 

正直、役者陣が上手い人ばかりだから観てられるってトコもあるんですよ。
その一方で、三木監督が俳優陣の演技をコントロールしきれてない疑惑も見え隠れしますけども。

あと、デザインのおざなり感は気になるけど大怪獣の死体や破壊された高層ビルなどのCG表現には安っぽさはなくて、怪獣が暴れているところを見せない選択は英断だと思いました。

https://eiga.k-img.com/images/movie/92765/photo/ffd2daef1bf81249/640.jpg?1638856319

 

コロナ禍ブースト

そんな感じで、僕が実際観た感想としてはいいところもあるけど悪いところもあって、トータルでみると普通につまらなかったって感じで、そんなに大騒ぎするほどヒドい映画でもないと思うんですよ。

なのに何故Twitter上であの祭り状態になったかといえば、このコロナ禍で掛かっている圧が原因だと僕は思うんですよね。

例えば興行収入であの「千と千尋」を抜いて社会現象にもなった「鬼滅の刃」も、単純に映画単体としてそこまで凄いのか問題があって、もちろん面白いし時代の空気にフィットしてるとは思うけど、正直、コロナ禍じゃなかったらあそこまでのヒットにはなってないと思うんですよ。

それは鬼滅に限らず他の映画もそうで、コロナ禍という圧によって作品の評価にブーストが掛かってるってのは絶対にあると思うんですよね。

で、本作の場合、そのブーストが悪い方に掛かってしまったんじゃないかなと。そこにはもちろん、事前の期待があったからなんですけども。

ただ、それによって僕みたいに逆に観たくなった人、実際観に行った人も少なからずいるわけで、そう考えるとあの祭りも、本作にとっては決してマイナスではなかったのかな?と思ったし、もし本作に関わった人が、このコロナブーストによる炎上も計算に入れていたなら大したもんですが、まぁ、それはさすがに考え過ぎなんでしょうね。多分。

興味のある方は是非!

 

▼良かったらポチッとお願いします▼


映画レビューランキング

こんな映画観たことない!「マリグナント 狂暴な悪夢」(2021)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、みんな大好きジェームズ・ワン監督2021年公開作『マリグナント 狂暴な悪夢』ですよー!

僕はめっちゃビビりなので映画館では観られなかったんですが、先日Amazonレンタルに本作が入ってたので、即レンタルして観ました!

いや、もうね…めっっっっっちゃ面白かったですよ!!

https://eiga.k-img.com/images/movie/95427/photo/21ee789892be0d75.jpg?1629786648

画像出展元URL:http://eiga.com

概要

『アクアマン』などのジェームズ・ワンが製作と監督などを手掛けるホラー。殺人鬼による犯行現場を目撃するという悪夢に悩まされる主人公に、魔の手がのびる。『スカイスクレイパー』などのエリック・マクレオド、『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』などのジャドソン・スコットらが製作総指揮を担当。『アナベル 死霊館の人形』などのアナベル・ウォーリス、『アイ・ソー・ザ・ライト』などのマディー・ハッソン、ジョージ・ヤング、ミコール・ブリアナ・ホワイトらが出演する。(シネマトゥディより引用)

 

感想

ジェームズ・ワンの原点回帰的作品

本作は「ソウ」「インシディアス」「死霊館」シリーズを生み出したあのジェームズ・ワン監督作ということもあり、また、公開時に本作を観た人たちが軒並み大絶賛していたこともあって、僕もめっちゃ期待してはいたんですが。

ここで何度か書いていますが、僕は超ビビりなのでホラー映画を映画館で観るのはちょっと無理なんですよ。
なので配信が始まるのを待っていたんですが、つい先日、アマプラを観てたら早くも本作が配信レンタルになっていたので、早速レンタルしたんですね。

そしたら、いや、もうね、なるほどみんなが大絶賛する気持ちが分かるというか。
全部知ってるヤツで出来てるのに、今まで観たことのない超ぶっ飛んだ作品になっていて、クライマックスでは、爆笑しながらも大興奮してしまいましたよ!L(゚∀゚)」ウォー!!

https://eiga.k-img.com/images/movie/95427/photo/a1ac222e30b6b529/640.jpg?1634285446

画像出展元URL:http://eiga.com

ジェームズ・ワンと言えばいくつもの人気ホラーシリーズを手掛ける一方、「ホラー監督」というレッテルを貼られるのを嫌って、ケヴィン・ベーコン主演の傑作バイオレンスアクション「狼の死刑宣告」を監督。

その手腕を買われて「ワイルド・スピード SKY MISSION」やDCEUの「アクアマン」といった大作も監督し世界的大ヒットに導いた、今やハリウッドでも指折りのスター監督。

本作はそんな彼が、久しぶりに監督したホラー映画であり、いわば原点回帰的作品なんですね。

ジャンル横断、温故知新ホラー

そんなジェームズ・ワン監督作品は、いわゆる”イマドキ”のテイストはあるものの、その題材やテーマは極めて古典的ホラー。
彼はそれらクラシックなホラーを現代的に味付けし、アップデートして見せることで、唯一無二のスタイルを築いているんですね。

 

そしてインタビューで監督自身が話していますが、本作は自身がビデオで見ていた80年代ホラーへのラブレターであるんだそうですね。

例えば、「遊星からの物体X」や「エイリアン」、「エクソシスト」などなど、かなり有名なホラーのオマージュもあるし、メインストーリーは本作のポスタービジュアルにもある通りサスペリア2」などに代表されるジャッロ映画がベースになっているわけです。

ジャッロ映画とは何か

ジャッロ映画というのは、(あくまで僕の定義ですが)ざっくり言えば連続殺人を扱ったミステリー、サスペンス、スリラー映画のことで、主に60~70年代にイタリアで作られた作品群を指します。

https://eiga.k-img.com/images/movie/95427/photo/62500a6987221573/640.jpg?1629786648

画像出展元URL:http://eiga.com

赤、黄など原色を使ったライティングが特徴で、ミステリーではあるものの謎解きがクライマックスではなく、(主に美女が被害者の)残忍な殺人シーンを見せ場に据えた、ある種の見世物的な作品なんですね。

ワン監督は、そのジャッロ映画をベースに、SFホラーや館ものなどの要素を加え、また主人公マディソンアナベル・ウォーリス)を信用できない語り部に据えることでミステリー的牽引力を持たせ、それを最後の最後に―――っていう。

また映像面でも、これぞジェームズ・ワンという得意のカメラワークを駆使しつつ、例えばマディソンが家の中を移動するのを真上から撮る(多分、屋根のないセットを作って真上から撮影してる?)など、観客を「あっ!」っと驚かせるような斬新な映像もしっかり入れ込んでいるんですねー。

というわけで、ここから先はネタバレしますので、まだ本作を観ていない人は、必ず先に映画を観てから、この先を読んで下さいね。

あと、本作はホラーリテラシーの高い人ほど深く楽しめると思うけど、そうでない人もきっと楽しめると思うので、興味のある方は是非!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前から薄々分かってはいたけど、ジェームズ・ワン、お前さてはアホだろ!ww(誉め言葉)

 

はい、ここからはネタバレありの感想ですよ。

まぁ、そんな感じで話が進むうちに、事の真相が明らかになっていくわけですが、個人的には「え、これ、もしかして? いやいや、そんなまさかね。 え、嘘でしょ? まさかやらないよね? ………って、ホントにやるんかー--い!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ」っていうw

僕の子供の頃「人面瘡」ブームみたいのがあって、その手の恐怖漫画を結構読んでいたし、80年代には「バスケットケース」などのB級ホラー映画でも、こういう寄生双生児系ホラーって割と多かった記憶があり。
なので、割と序盤から「あれ、これはもしかして……?」って思ってたんですが、まさか2020年代に本当にやるとは思いませんでしたよw

最初SFホラーかと思わせて、序盤は館ものかなと思ったら、ジャッロ映画になり、最後はまさかのボディホラーかよ!っていう。

まぁ「ボディホラー」と一口に言っても定義は広いんですが、ざっくり言えば肉体が変容・変化・破損したり、体の自由を奪われるor乗っ取られる恐怖を描いた作品の総称で、有名なのはデヴィッド・クローネンバーグ督でしょうかね。

本作の殺人鬼「ガブリエル」の正体は、マディソンの別人格でも何でもなくて、「寄生性双生児」として体を共有していた実の兄弟だったわけです。

そう考えると、実はオープニングの時点ですべての謎は明かされているんですが、その辺は何気に「サスペリア2」オマージュでもあるのかなと思ったり。

https://eiga.k-img.com/images/movie/95427/photo/11c6003bf9197632/640.jpg?1629786648

画像出展元URL:http://eiga.com

で、ガブリエルは母体の中でマディソンに吸収され、彼女の背中と後頭部に引っ付いた形で生まれ・成長するわけですが、その過程で電気や電波を操ることで外部と意思疎通が出来るようになるんですよね。

「ガブリエルがなぜ、電気と電波を操れるようになったか分からない」という感想を見かけたので僕なりに考察すると、恐らく幼少期からマディソンを操って暴れるのを止めるため、ガブリエルはフローレンス・ウィーバー医師(ジャクリーン・マッケンジー)に日常的に電気ショックを喰らっていたと思うんですね。(劇中でもそういうシーンがあります)
まぁ、アバンの状況を見れば致し方なしと思わなくもないですが、それでも幼いガブリエルにとってそれは虐待でしかないですし、恐らくはそれ以外にも何かしら非人道的実験をされたりしていたのではないかと。
で、例えば盲目の人が聴覚など他の器官が発達するように、ガブリエルは元々ある種の超常的な能力を持っていて、それが研究所で電気ショックを日常的に食らわされたことで、徐々に電気や電波を操る能力として目覚めていったという事だと思うんですよね。

劇中、ウィーバー医師はガブリエルも救おうとしたと言ってたけど、実のところは彼をマディソンに寄生する悪性腫瘍としか見ていなくて、その事を敏感に感じ取っていたガブリエルの心を蝕んでいったのかもしれないと思ったりしました。

中盤で妹のシドニー(マディー・ハッソン)が研究所から持ってきたガブリエルとマディソンのビデオを見るというネタ晴らしのシーンは、CGではなく特殊メイクを駆使し、それをビデオ画質で見せることでワン監督が「『ビデオ』で見たホラー映画」を観客が追体験する形になってるのがニクい演出だと思うし、警察署での後頭部パッカーンには思わず爆笑したけど映画序盤の後頭部から出血という違和感の伏線回収になってて、その後の警察署での超絶長回しアクションはCGではなく、軟体パフォーマーの人が本当に後ろ向きで戦っているので、「作り物だけど本物のアクション」っていう感動とワクワクがあるんですよね。

っていうか、ワン監督は絶対に、このアクションシーンがやりたくて本作作ったでしょって言うねw

で、こんなんどうやって物語を閉じるのかと思ったら、まさかの家族愛に着地させるっていうところも「ジェームズ・ワンまじ凄え!」って思いましたよ。

いや、こんなアホみたいな映画を大真面目に、しかもちゃんと怖く作ってる時点で凄いんですけどね。
だってこんなん、普通の監督が撮ったらコントになっちゃいますよ。

ジェームズ・ワンは何がそんなに凄いのか

じゃぁ、ジェームズ・ワンの何が凄いのかっていう話を最後に少しだけさせて貰うと、良くも悪くも観客の期待を裏切る演出や撮影をする監督って結構多いと思うし、そういう監督は割と評価が高い傾向があったりすると思うんですが、ジェームズ・ワンの場合、作品の中に観客の要望に全部応えた上で、観客の想像を超えるんですよね。

また、普通だったら「これ、イマドキちょっとダサいよな」っていうベタな演出を、衒いなく全力でやって見せるところもワン監督の凄さなんじゃないかと思いますねー。

それが出来てかつ面白く撮れる監督って、ハリウッドのみならず、世界中見渡しても、そうはいないんじゃないかと思います。

というわけで、「マリグナント 狂暴な悪夢」感想でした。
ではではー(´∀`)ノシ

 

▼良かったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

ピクサー作品の極北「ソウルフル・ワールド」(2020)

ぷらすです。

コロナで劇場公開が中止になってしまい、結局Disney+で配信公開することになってしまった不遇の作品、ディズニーピクサーの『ソウルフル・ワールド』を、やっと観ることが出来ました!

いや、もうね、ピクサーはとんでもないところに辿り着いてしまいましたよ!

https://eiga.k-img.com/images/movie/91943/photo/1470101e01db6e46.jpg?1603846200

画像出展元URL:http://eiga.com

概要

[配信作品]生まれる前にどんな人間になるかを決める「魂(ソウル)の世界」をテーマにした、ディズニー&ピクサーによるアニメ。青くかわいらしい姿をした「ソウル」たちが存在する世界に迷い込んだ音楽教師が、自分のやりたいことを見つけられずにいるソウルに出会う。監督は『モンスターズ・インク』や『インサイド・ヘッド』などのピート・ドクター。共同監督をドラマシリーズ「スター・トレック:ディスカバリー」の脚本に携わったケンプ・パワーズが務める。(シネマトゥデイより引用)

感想

コロナに振り回された不運な作品

インサイド・ヘッド」「カールおじさんの空飛ぶ家」を手がけ、ピクサー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーも務めるピート・ドクターが満を持して送り出した本作。

ところがコロナ禍によって当初の公開日2020年6月19日から同年11月20日に延期。
日本でも2020年夏公開と発表されるも同年12月11日に後ろ倒しに。
しかし、世界的に猛威を振るうコロナの影響から、2020年10月8日、ディズニーは本作の劇場公開を断念。12月25日クリスマスにDisney+での独占配信という形での公開になってしまったんですね。

Disney+と契約している人は無料で観られるとはいえ、劇場で公開されないためDisney+と契約するしか観る方法がない(現在はAmazonで購入は出来る模様)のは、このコロナ禍という状況では致し方ないとはいえ、ピート・ドクター監督やピクサースタッフにとっては不運としか言いようがないし、Disney+未契約のピクサーファンは、この名作を観られないというのは、残念としか言いようがない。

https://eiga.k-img.com/images/movie/91943/photo/59046bf782f01bca/640.jpg?1607396586

 

この作品は興味を持った多くのファンに届くべき作品だと思いますしね。

逆に、自社独占配信という形で囲いこみ、多くのファンが本作を(劇場で)観る機会を奪ったディズニーの罪は重いと思いしましたよ。
っていうかその次の「あの夏のルカ」も「私ときどきレッサーパンダ」も劇場公開はなしのDisney+独占配信ですからね。

個人的体験から世界にコミットする

「アナ雪」以降、作品を通して世界的かつ政治的な問題に対してコミットしているディズニー作品に対して、ピクサー作品は一貫して、クリエイター個人の経験や思いをテーマに作品を作り続けてきているんですよね。

例えば「トイ・ストーリー」は親になったスタッフの、子供への思いや子育ての戸惑いが発想の原点になっていて、それはシリーズを重ねるうちに親子の関係性を描くメタファーとなり。また、オモチャはそのまま子供向けのアニメーションを作るピクサーそのものでもあり。

カーズ/クロスロード」は、ピクサーの制作現場で若い才能へのバトンタッチと自身の引き際を考えるベテランスタッフの思いを主人公マックウィーンに重ね。

リメンバー・ミー」は、生と死、家族のつながりをメキシコ独自の文化「死者の日」を通して描き。

それらのテーマが結果的に世界や社会問題にコミットする事はあるけど、あくまで出発点は監督・スタッフの個人的な経験や思いであり、なのでピクサー作品は突き詰めればどれも監督・スタッフの私小説なのです。

もちろんディズニー作品のように、世界の様々な問題に対して自社のスタンスを声高らかに宣言する作品作りは分かりやすく、広く世間に届きやすいというのはあると思うけど、ピクサー作品は個人の思いからスタートしている分、ディズニー作品より届く幅は狭いかもだけど、その分、届く人にはより深い共感を得ることが出来ると思うんですね。

で、本作はまさにそんなピクサー作品の極北というか、ある種の到達点と言える作品なんですよね。

ミドルエイジクライシスを子供向けアニメに

本作の発想の元は、おそらくピート・ドクター監督のミドルエイジクライシスなんですよね。

ミドルエイジクライシスとは日本では「中年の危機(鬱)」と呼ばれ、人生の終わりが見えてくると「俺(私)の人生これで良かったのか、他に成れたハズの自分があったのでは」と思い悩む症状のこと。中年期を迎えた人なら多かれ少なかれ誰でも経験があるのではないでしょうか。

そんなどう考えても子供向けのアニメからかけ離れたネタを、監督のピート・ドクターと脚本担当のケンプ・パワーズは一旦解体。
「人生賛歌」として再構築してみせたんですね。

ざっくりストーリー紹介

中年になってもジャズ・ピアニストを夢見るジョー・ガードナージェイミー・フォックス)は中学校の音楽教師で糊口をしのぐ日々。
そんなある日、元教え子の紹介でニューヨークで1番有名なジャズ・ミュージシャンドロシア・ウィリアムズのジャズ・クラブで演奏するチャンスを得た彼は、浮かれ気分で街を歩いている最中にマンホールに落ちてしまうんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/91943/photo/2e91d019205d8368/640.jpg?1607319803

 

そして、人間が生まれる前に「どんな自分になるか」を決めるソウルの世界で目を覚ましたジョーは、地上に戻るために必要な通行証を手に入れるべく、人間嫌いで何百年もの間地上に行くことを嫌がっているソウル22番ティナ・フェイ)のメンターになるのだが—―。という物語。

中年期に差し掛かっても尚ピアニストの夢を諦めきれず、中学校の音楽教師も全然気が入っていないというかバイト感覚のジョーは、やっと夢が叶うという矢先、死にかけてこの世とあの世の間に行ってしまいます。

で、何とか生き返ろうとすったもんだの結果、生まれる事を恐れている22番のメンターになるわけですが、そこでそれまでの人生(走馬灯?)みたいなのが見えるんですね。

思い描く自分に成れていない。何も成し遂げてない自分の人生をみじめだと嘆くジョーの姿は、まさにミドルエイジクライシスそのもので、逆にこの世に生まれることを恐れる22番は引篭り――というより、SNSなどの情報を通して世界に絶望・諦観している子供たちのメタファーでもあるんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/91943/photo/9a30c7d5de8f00db/640.jpg?1607396586

 

そんな二人が、地上に降りてすったもんだしながら“人生”と”世界”を再発見するというのが本作のストーリーなのです。

人生の意味と煌めき

そんな本作で描かれるのは、人生の意味。
ジョーは、子供の頃父に連れられて観に行って以来、ジャズピアニストに憧れミュージシャンになれない人生には意味がないと思っているし、そうなれない自分を負け犬だと思ってるんですね。

でも彼は、音楽教師として何人ものミュージシャンを育てているし、劇中でミュージシャンになれるチャンスを持ってきてくれるのは、彼の元教え子なんですよ。

対する22番は、様々な偉人がメンターになるけど、誰一人22番に生まれるために必要な最後のピース「人生の煌めき」を見つけることが出来ないんですね。

それもそのはず、22番は「人生に(生まれることに)意味なんかない」と思い込んでいるわけですね。

それって例えば僕らがSNSを通して世界のアレコレを知った気になってるのにちょっと似てるかもしれません。が、実のところ22番は何度も失敗したことで完全に自信を喪失「人生に意味はない」は「自分には生まれる価値がない」の裏返しになっているわけです。

で、ふとしたことから地上に降りる事に成功した二人でしたが、ジョーが戻ったのは自身の身体ではなく、なんと病院の老人を癒す介護猫ミスター・ミトンズの中。
そして、ジョーの身体には22番が入ってしまう訳です。

https://eiga.k-img.com/images/movie/91943/photo/0eba75d9a94e534f/640.jpg?1608250864

 

そこから、約束の6時半までにジャズクラブに行かなければいけないジョーと嫌がる22番のすったもんだのドタバタ劇が繰り広げられるわけです。

で、あともう少しで――というところで、二人はソウル世界に連れ戻されてしまうのです。

「life」と「living」

じゃぁ、この世に生まれるために必要な最後のピース「人生の煌めき」とは結局何なのか。

目的をやり遂げた達成感なのか、夢をかなえた充実感なのか。自分が必要とされていると感じる自己肯定感なのか。

その答えが知りたい人は本作を観てください。

ただ1個ヒントを出すと「life(人生)」と「living(生活)」で、この2つは一見同じようで実はちょっと違うよね。というのが本作で描かれていることで、それはピート・ドクター監督が全世界に送る文字通りの「人生賛歌」なんですよね。

観た人の中には「何だそんな事!?」とガッカリするかもしれないし「結局おためごかしじゃないか!」と怒る人もいるかも。

でも本作は、ピート・ドクターの個人的経験から発想を得たまさに私小説的作品なので、前述したように“届く人にはより深い共感を得ることが出来る“作品なのではないかと思うし、本作を観た後、もしかしたらみなさんも「人生の煌めき」を見つける事ができるかもしれません。

興味のある方は是非!!

と〆たいところですが、このままだとちょっとほめ過ぎなので一応書いておきます。
もちろん僕も全部が素晴らしいと思ったわけではなく、何点か納得いかない部分や乗れなかったところもあるんですけど、そこはネタバレに関わる部分なのでここでは書かない事にします。それも含めて、観た人それぞれが考えてくれたらいいなって思いましたよ。

ではではー

 

▼良かったらポチッとお願いします▼


映画レビューランキング

100点満点中5億点の大傑作!ただ、一点を除いては。「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」(2022)【ネタバレ注意】

ぷらすです。

昨日、遅ればせながら劇場で『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を観てきました!!

日本だけ1か月遅れの公開ということもあって、このひと月は間違ってもネタバレを踏まないよう、SNSでも「スパイダーマン」の「スパ…」まで見たら読まないように飛ばしながら、何とか昨日、無事に映画館に辿り着きましたよ!

そんな感じで、待ちに待って待ち続けて、やっと観ることが出来た本作。

控えめに言って、100点満点で5億点の大傑作でしたよ!ただ、一点を除いては…ですが。(←もうこれだけで、同志には伝わるハズ!)

という訳で今回は、前半はネタバレの無いように周辺の話を中心に、後半はネタバレありで存分に語っていきたいと思うので、観る予定はあるけどまだ観ていない人や、ネタバレ絶対いやマンの人は、先に映画を観てから、ネタバレ部分の感想を読んで下さいね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94629/photo/c7dfe43f60331d8c.jpg?1639039757

画像出展元URL:http://eiga.com

概要

トム・ホランドが主人公ピーター・パーカーにふんする『スバイダーマン』シリーズの第3弾となるヒーローアクション。スパイダーマンであることが世界中に知れわたってしまい、平穏な生活を送ることができなくなったピーターが、自らの宿命と向き合う。共演はゼンデイヤベネディクト・カンバーバッチなどのほか、Dr.オクタビアス役のアルフレッド・モリナをはじめとする過去のシリーズに登場したヴィラン役の俳優たちが再び出演。監督を前2作に引き続きジョン・ワッツが務める。(シネマトゥデイより引用)

感想

過去作を観ないと楽しめない?

と、その前に、この問題をやっつけちゃわないと、落ち着かないので先に言いたいんですけど、本作のストーリーは2002年公開のサム・ライミ版「スパイダーマン」三部作、マーク・ウェブ版「アメージング・スパイダーマン」2部作と深く関わっています。

なので多くの人が、「過去作(サムライミ版&アメスパ)を観ないと楽しめない」と言ってるんですね。

それ、本当にそうなのか。
僕はそんな事ないって思ってて。

個人的には、少しでも気になる人は、まず本作から観に行っても十分に楽しめると思います。

いや、もちろん過去作を観てるからこそ深く楽しめるし感動も出来る部分は少なくないと思いますが、だからと言って観てないとまったく楽しめないってことは多分なくて。
仮に過去作を全く見てなくて、本作から観た人でもストーリーは分かるし楽しめるようにはなっているので、過去作観てないしどうしようかと悩んでる人は、まず劇場に本作を見に行ってほしいです。

ただ、「これ多分、昔の作品見てる人しか分からないヤツ」ってシーンがいくつか出てくると思いますが、本作を面白いと思って、分からないシーンも楽しみたいという人は、サブスクでもレンタルでもいいので、遡って過去作を観るという観方もアリだと思うんですよね。

もちろん、僕らファンはサムライミ版から見てもらって、本作で自分と同じ感動を分かち合いたいと思ってますけど、でも、過去作を観てないから本作も見ないってなるくらいなら、まずは最新作だけでも見てよ!と。

まぁ、これはスパイダーマンに限らず、「スターウォーズ」でも「007」でも、長く続いてる全てのシリーズもので言えることなんですけどね。

スパイディーと僕

というわけで、いきなりオッサンの思い出話で大変申し訳ないし、興味がない人は飛ばしてくれて構わないんですが、僕とスパイディーの歴史についてちょっと触れたいと思います。

僕らの年代で言うと、最初に出会ったスパイダーマンと言えば東映版の通称「スパイダーマッ!」で、マーベルと東映が提携。アメコミ…というかマーベルコミックを日本で普及させるべくスーパー戦隊もののフォーマットで作り出した純国産のスパイダーマンでしょう。

ただ、多分ですが個人的にはその前からスパイダーマンの事は知っていて、それが1967年放送の洋アニ版の再放送を観たのか、それともオモチャやコミックで知ったのか。
とにかく小さすぎて記憶がないんですけど、数多いるアメコミヒーローの中でも、特に思い入れがあるヒーローは?と聞かれれば、迷いなくスパイダーマンと答えるくらい、スパイダーマンは僕にとっては特別なヒーローなんですね。

サム・ライミ版からアメスパ、アニメ、MCU三部作まで

で、2002年

あの、「死霊のはらわた」のサム・ライミ監督で、スパイダーマンが映画になるというので観に行ったらば、これがとんでもないど傑作でしてね。
正直僕は、「X-MEN」シリーズや「ブレイド」など、他のアメコミやアメコミ映画はDVDレンタルなどでほぼ後追い状態だったんですが、スパイダーマンだけはリアルタイム場に観に行ったんですよね。
この時期、CG技術が一気に進んだ事もあって、それまでは映像化不可能と思われていた(だからマーベルきっての人気キャラなのに実写化はされなかった)トビー・マグワイア版のスパイダーマンがウェブスイングでビルの谷間を飛び回り、ノーマン・オズボーンウィレム・デフォー)ことグリーン・ゴブリンと空中戦を繰り広げる様子はほんと夢の様で、一発で夢中になってしまったのです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94629/photo/45d4ac97526c827e/640.jpg?1636032654

画像出展元URL:http://eiga.com

で、個人的にサム・ライミ版の最高傑作と言えば続く「スパイダーマン
この時のヴィランドクター・オクトパス(アルフレッド・モリーナ)で、彼は父親のいないピーターにとってドクターは尊敬する師であり父親的存在でもあるのです。

こうした尊敬すべき師、父親的な存在が道を踏み外してヴィランとなりピーター(スパイディ)の前に立ちふさがるというフォーマットは、スパイダーマンという作品ではある種定型になっていて、トムホ版ピーター第1作「ホームカミング」でも、好きになったリズの父親エイドリアン・トゥームスマイケル・キートン)がバルチャーの正体だったし、前作「ファー・フロム・ホーム」のミステリオジェイク・ギレンホール)も、かなり要素は薄まっているけど、この系譜にいるヴィランなんですね。

つまり「父殺し」はスパイダーマンというヒーローに課せられたある種の呪いでもあるのです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94629/photo/f2cecc53e4526c01/640.jpg?1638925310

画像出展元URL:http://eiga.com

そんな感じで、人気もうなぎ上りだったサム・ライミ監督版「スパイダーマン」でしたが、続く「スパイダーマン」では原作コミックの人気キャラ・ヴェノムをメイン・ヴィランに推したいソニー側とヴァルチャーをヴィランに据えたい監督の間で確執があり、当初予定されていた「スパイダーマン4」の企画は立ち消えになってしまったんですね。

そして、新進気鋭のマーク・ウェブを監督に迎え、トビー・マグワイアからアンドリュー・ガーフィールドにピーターを交代してリブートされたのが「アメージング・スパイダーマン」通称”アメスパ“です。

比較的明るくて戦闘中も軽口をたたく、そして手首からではなくウェブシューターという自作の機械からクモの糸を発射するなど、80~90年代の原作コミックに近いピーター・パーカー像に変更することでサム・ライミ版との差別化を図ったんですが、まだトビー版ピーターの印象が強く残った状況でのリブートや、メインヴィランリザードンリス・エヴァンス)であること、設定の変更、「また、ベンおじさんの死ぬとこからスタートかよ!」というモヤモヤなどが相まって、このアメスパはまぁ、正直かなり評判が悪かったんですね。
しかしこれは、マーク・ウェブが悪いというわけではなく、ファンの多かったサム・ライミ版の余韻が残るあの時期に焦ってリブート版を送り出してしまったソニー側に問題があるのだと個人的には思っています。

しかし、続く第2作では、ピーターの両親の秘密が明かされ、ヴィランハリー・オズボーンデイン・デハーン)ことグリーン・ゴブリンと元はスパイダーマンの大ファンだったエレクトロジェイミー・フォックス)を相手に戦うなど、サム・ライミ版とは完全に別展開になったこの作品は個人的にはメッチャ面白くて、ラストに衝撃の展開はあったものの続く第3作に向けて大いに期待の持てる作品だったのですが……。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94629/photo/43b524eadc6edf69/640.jpg?1638925310

画像出展元URL:http://eiga.com

2015年にソニーとマーベル(ディズニー)がパートナーシップを結んだことで「アメージングス・パイダーマン3」の企画は白紙になり、何とも中途半端な状態でアメスパは幕を閉じることに。
ある意味、歴代スパイダーマンシリーズの中でも、最も不遇なシリーズになってしまったのです。

そして2016年。

MCUの「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」でトム・ホランド版ピーターパーカーがゲスト出演。ファンから熱狂的に迎えられます。

その後、「スパイダーマン:ホームカミング」でMCUに正式デビュー。
またベンおじさんの死からスタートかと思いきや、アイアンマンことトニー・スタークがまだ少年のトムホ版ピーター・パーカーのメンターとなるMCU独自の設定に。

2018年公開の「アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー」ではサノスの指パッチンで5年間消失させられ、翌年公開の「アベンジャーズ/エンドゲーム」で復活するも、師であり父替わりでもあったトニー・スタークを失ってしまうのです。

ちなみに「:インフィニティー・ウォー」の2か月前、ソニーは独自に製作したアニメ版スパイダーマンスパイダーマン:スパイダーバース」を公開。
ピーター・パーカーではなく、マイルス・モラレスという黒人少年がクモに噛まれてスパイダーマンになるという比較的最近の原作コミックを基にしたストーリーで、正直最初は「いまさらアニメ版のスパイダーマンかよ」ってナメてたんですが、いざ公開して観ればこれが大傑作
MCUよりも一足早く物語にマルチバースを組み込み、別世界のスパイダーマンたちが集結するという内容にはビックリしたけどメッチャ面白くて、それもそのはず、「くもりときどきミートボール」(2009年)、「LEGOムービー」(2014年)、実写映画では「21ジャンプストリート」(2011年)と続編の「22ジャンプストリート」(2012年)など、数々の名作を世に送り出した監督フィル・ロード&クリス・ミラーですからね! 面白いのも納得ですよ。

そして翌年にはトムホ版スパイダーマンシリーズ第2作「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」が公開されます。

ここでのヴィランジェイク・ギレンホール演じるミステリオで、原作の設定を活かしながらもMCU独自の悪役としてトムホ版ピーターを苦しめるんですね。

で、本作「:ノー・ウェイ・ホーム」は、前作「ファー・フロム・ホーム」の直後からスタートするのです。

 

というわけで、ここから先はネタバレありです。
映画を観ていない人は先に映画を観てから読んで下さいねー!!

 

あ、興味のある方は是非!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、前作では、散々ミステリオに苦しめられながらも、何とか倒したトムホ・ピーターでしたが、まるでイタチの最後っ屁のように、ミステリオはピーターに冤罪をきせた上、スパイダーマンの正体がピーターである事をバラしたからさぁ大変。

ミステリオ殺しの容疑については証拠不十分で釈放されたものの、常に衆目にさらされ、さらにはMJやネッドも巻き込み、大学側に入学も断られる始末。

いよいよ追い詰められたピーターはニューヨークに住むドクター・ストレンジを訪ね、自分がスパイダーマンだとみんなに忘れさせる魔法はないかと相談するんですね。

これに応えストレンジは忘却の魔法をかけようとするも、その横からピーターがゴチャゴチャ言うもんだから魔法を失敗。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94629/photo/c771c1eecffa1da6/640.jpg?1629771271

 

それが原因で、別ユニバースから、ドクター・オクトパス、グリーンゴブリン、エレクトロ、リザードサンドマントーマス・ヘイデン・チャーチ)が召喚されてしまうわけです。

まぁ、ここまでは予告編でも写ってましたからね。
驚きはしなかったものの、あの、グリーンゴブリンドックオックエレクトロらが、しかも、オリジナルキャストで登場ですよ!

そりゃぁもう、トビー版スパイダーマンからのファンなら大興奮するでしょ!!

で、ストーリーは別バースから来たヴィランの皆さんを捕まえて、元のバースに送り返さなくては――っていうアニメ版「:スパイダーバース」の逆バージョンに。

しかし、彼らは全員、トビー版&アンドリュー版スパイダーマンとの対決で、死の直前に召喚されているので、そのまま送り返すと戻ったとたんに死んでしまう。

ストレンジは「それが彼らの運命だ」とトムホ・ピーターを諭すんですが、トムホ・ピーターは「薬や機械など、外的要因から精神に異常をきたしてヴィランになったのだから、彼らを『治療』して戻せば死なずに済むはず」と考え、ストレンジをミラーワールドに閉じ込め、トニー・スタークの遺産を使ってヴィランたちを治療しようとするんですね。

あーもう、お前のそういうバカっぽいトコ大好きだよ!トムホ・ピーター!

で、この辺までは何と言うか、いわゆるMCU「ホーム三部作」の明るく楽しいノリで進むわけですけど、案の定この計画は上手く行かず、ドックの治療終わりでヴィラン達が大暴れ。

そして、グリーン・ゴブリンによって…メイおばさんの命が奪われてしまうんです。

 

……って、マジか…マジか…マジか…マジか―――!!!

えー、そりゃないよー!

だって、トムホ・ピーターはトニー・スタークっていう大きな代償を既に払ってるじゃん!

それなのにピーターからメイおばさんまで奪うって…………

お前らは鬼かー!!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

もう途中からね

え、嘘だろ?

嘘だよね?

嘘だって言ってよ!

ぎゃー--!!

って感じでしたよ。

正直、トニーを失ったけどトムホ版で呪いから解放されたんだねって思ったのに…………えー…って感じでしたよ…。

と、追い打ちをかけるみたいにJ・ジョナ・ジェイムソンがテレビで「スパイダーマンに関わると全員不幸になる!」とか言いやがるしもー---!(怒)トムホ・ピーター泣いちゃったじゃー---ん!!

ってどん底まで落ちたところで、ネッドが開いたポータルから現れたのが、

お待たせしました!

アンドリュー・ガーフィールド版ピーター・パーカーですよー!

ふぉ――――――!!(゚∇゚)ノ

いやね、もうこれもネタバレっていうか、コアなファンの間では「本作にアンドリュー&トビーが登場するのではないか」という噂は何年も前から流れてて、なので、正直心の準備は出来てたんですけどね。

ただ、最初にトビー・マグワイアじゃなかったので「あー、今回はアンドリューだけなのかなー」って思った次の瞬間、もう一つのポータルが開いて…………

トビー・マグワイア版ピーターも

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

会社も時代も越えて、同じ画面に、トビー・マグワイアアンドリュー・ガーフィールド、トムホ・ランド、3人のピーター・パーカーがいるんですよ!?

これぞまさに、リアル・マルチバースじゃないですか!

しかも、トビー&アンドリューは二人とも(当たり前だけど)いい感じに老けてる!!

もうね、3人が同じ画面にいるだけで泣いちゃうし、3人の会話は永遠に聞いてたい!

二人と違って体から糸が出るトビーがいじられてるトコとか最高過ぎるし、アンドリューがトビーの背中を伸ばしてあげるシーンとか超大好き!!(語彙力)

で、ですよ。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94629/photo/fc1bf7f08563e3b0/640.jpg?1637115032

 

クライマックス、MJが自由の女神から落っこちるのをトムホ・ピーターが助けようとするけど、グリーン・ゴブリンに邪魔されて間に合わない!
あわやまた!?ってところで、アンドリュー・ピーターがMJを助けるわけですよ!
でMJに泣き顔で「大丈夫?」って聞くんですよ! アンドリューが!

こんなん、「アメスパ2」観た人なら全員号泣するに決まってるでしょうがー--!!

あの瞬間、アンドリュー・ピーターも「アメスパ」も、ファンも、全員救われた!

ありがとうジョン・ワッツ!!

そこから畳みかけるように、ラスボス、グリーン・ゴブリンことノーマン・オズボーンとトムホ・ピーターの対決!

ぶん殴ってぶん殴ってぶん殴っても憎まれ口をやめないゴブリンに向かって、ヤツが乗ってたグラインダーを振りかぶるトムホ・ピーター!

それを止めるのは当然、

トビー・ピーターなんですよ!
しかも、何も言わずに、ただ止める。

20002年の無印「スパイダーマン」観た人なら分かりますよね?

 

こんなん号泣してまうやろー-------!!

 

ジョン・ワッツ、アンドリューに続き、トビーも救ってくれたよ!

残念な終わり方になったサム・ライミ版も、不遇だったマーク・ウェブ版のアメスパも、これでやっと成仏できたよ!

余りにも泣き過ぎてマスクの中は鼻水でぐしょぐしょだけど、生きてるうちにこんな傑作が観れてほんと良かった!!

あと、冒頭でしれっとマット・マードック出てるじゃーん!!
しかも演じてるの ネトフリ版のチャーリー・コックスじゃーん!
そうかー、アメリカでは「ホークアイ」最終回よりこっちの公開が先だったのかー。
まぁ、でもそれはいいや。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94629/photo/bb47c9ab2c2cd810/640.jpg?1637115032

 

 

まぁね。

 

それでもあのラストに「トムホ・ピーターあまりにも救いなさすぎじゃね?」って思う向きもありましょう。
分かる!その気持ちは痛いほど分かる!

もう、誰かの墓の前で一人佇むのピーターなんて見たくねぇんだよー!
分かる!その気持ちは嫌って程よく分かる!!

でもね今回時空を超えて二人のピーターが救われたわけですよ。
となれば、今後公開の「ドクター・ストレンジマルチバース・オブ・マッドネス」や「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」ことSSUの「モービウス」を経て、もしかしたらもう何作か挟むかもだしMCUかSSUかは分からないけど、トムホ版・スパイダーマンで、きっとピーターが救われる、スパイダーマンに掛かった呪いを解いてくれるって僕は信じてますよー-!

その日まで、本作のブルーレイを買って、何度も何度も見返して待ってるからなー!!

おわりー!!

 

▼良かったらポチッとお願いします▼


映画レビューランキング

 

今までとこれからのMCUを繋ぐハブ「ホークアイ」(2021)

ぷらすです。

昨年10月末、さんざん悩んだ末、ついに『Disney+』と契約。

そこから実質ほぼ一週間以内で「ワンダヴィジョン」「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」「ロキ」シーズン1「ホワット・イフ…?」を全話見倒して、万全の態勢で2021年11月24日配信スタートの「ホークアイ」をリアルタイム視聴しましたよ!

今までSNSなどで、MCU勢の人たちがドラマが配信されるたびにキャッキャ楽しそうに話したり考察してるのを、下唇を噛みながら遠目で眺めていた僕ですが、いざリアルタイム視聴してみると、毎週最新話が更新される水曜日が楽しみ過ぎて、「あぁ……ドラマを観る楽しさって、こういう事なんだなー(遠い目)」って、やっと分かった気がしますねー。

https://eiga.k-img.com/images/special/3256/61ae259a9e9d23c8/640.jpg?1640245683

画像出展元URL:http://eiga.com

あらすじ

MCUが贈るフェーズ4ドラマシリーズ第4弾。

サノスとの戦いの後、ようやく平穏な日々を取り戻しつつあるホークアイことクリント・バートンジェレミー・レナー)は、ようやく取り戻した家族とクリスマスを過ごすべく、ニューヨーク観光を楽しんでいたが、そんな彼の過去――闇の世界の暗殺者”ローニン”の衣装を着た何者かが現れたことで、否応なく事件の解明に乗り出す羽目になる。

感想

ファーストアベンジャ―ズにしてみんなのお父さん

ホークアイことクリントは、相棒のブラック・ウィドウスカーレット・ヨハンソン)と共にアベンジャーズの母体でもあるシールドのエージェントで、アイアンスーツも特殊能力もない生身の人間ながら、弓矢の名手としてこれまで陰に日向にアベンジャーズの超人たちをサポートしてきたんですね。

しかし、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」では、サノスの指パッチンで愛する家族が消失。
自暴自棄になった彼は、闇の世界の暗殺者”ローニン”として様々なギャングやマフィアの命を奪ったんですが、「/~エンドゲーム」では親友で相棒のナターシャは失うも愛する家族を取り戻し、本作では”空白の5年間”を埋めるべく家族サービスに努めているのです。

また「/~エイジ・オブ・ウルトロン」では、悪の組織ヒドラに利用されていたワンダ・マキシモアベンジャーズに導き、窮地に陥ったアベンジャーズのメンバーを自宅に一時匿うなど、彼はいわばアベンジャーズのお父さん的ポジションであり、チームきっての常識人でもあるんですね。

本作ではそんなクリントの、これまで映画シリーズではほとんど描かれなかった、ヒーローとしてのホークアイにスポットを当てつつ、彼が次世代への継承を行うストーリーになっているのです。

www.youtube.com

クリントからケイトへ。“ホークアイ“継承の物語

MCUフェーズ4の映画やドラマの感想の時、僕はしつこく「フェーズ4は『継承』と『拡張』がメインテーマである」という話をしてきました。
「継承」とはファーストアベンジャ―ズから次世代ヒーローへのバトンタッチの物語で、「拡張」とは今後MCUで展開されていく「マルチバース」に向かう物語。

で、現在フェーズ4で公開&配信されている作品は、こんな感じでして。

『ワンダヴィジョン』(2021年1月15日配信)
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021年3月19日配信)
『ロキ』シーズン1(2021年6月9日配信)
『ブラック・ウィドウ』(2021年7月9日公開)
『ホワット・イフ...?』シーズン1(2021年8月11日配信)
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021年9月3日公開)
『エターナルズ』(2021年11月5日公開)
ホークアイ』(2021年11月24日配信)
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2022年1月7日公開)

これらの作品を分類すると、

継承

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
『ブラック・ウィドウ』
ホークアイ

拡張

『ワンダヴィジョン』
『ロキ』
『ホワット・イフ...?』
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
『エターナルズ』
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』

となるんですが、スパイダーマンに限って言えば、彼はソニーMCUを股に掛けた特殊なキャラクターでもあるんですよね。

で、本作「ホークアイ」は、アベンジャーズを引退したい男クリントから、『アベンジャーズ』第1作のニューヨーク決戦でホークアイに命を救われた少女ケイト・ビショップヘイリー・スタインフェルド)への、ホークアイ継承」の物語であり、同時に、義姉ナターシャから義妹エレーナ(フローレンス・ピュー)へのブラックウィドウ継承の物語でもあるのです。

さらに、本作には原作コミックの人気キャラクター・エコー(アラクア・コックス)も登場。近いうちに彼女が主人公の単独ドラマが配信される予定です。

そしてそして、まさかのNetflixから”あの男”も参戦というサプライズもあり。

本作はまさに、MCUからファンに向けてのクリスマスプレゼントであり、マーベルファン的には盆と正月がいっぺんに来たような作品なのです!

っていうか、おそらく今後MCUに参戦するであろう、”あの“ヒーローに繋がるキャラの登場や、ケイトとエレーナ(二代目ホークアイと二代目ブラック・ウィドウ)の出会いなど、(今後の)いくつもの作品へのハブ的な役割をこのドラマは担っていて、それは本作がホークアイことクリントのドラマだからなんですよね。

クリントの抱える闇と悲しみをケイトが救う

本作の主人公クリントについてはもう随分書いたので、ここからは少しケイトというキャラクターについて触れていきます。

アベンジャーズ』ニューヨーク決戦の時、まだ幼女だった彼女の父親は多分かなりの金持ちの家系だったと思うんですが、残念ながら仕事の出来ないボンクラ親父だったようで家は借金を抱え困っている様子。そんな借金のことで両親がケンカをしているまさにその時、NYにチタウリの艦隊が攻め込み、ケイトが危機一髪のところをホークアイに救われる――という、超痺れるエピソードからこの物語はスタートします。

https://eiga.k-img.com/images/special/3256/6771d479d47b2f17/640.jpg?1640245683

画像出展元URL:http://eiga.com

ケイトはこの事件で父親を失うも、母親が商才に長けていたこともあり、何不自由なく暮らし、弓矢、格闘技、各種スポーツなどをでガンガン好成績を収めるんですが、ちょっとした悪戯が原因で自宅謹慎に。

そこで母親の会社主催のパーティーに出席させられたケイトは、たまたま、違法な品物を取引する闇オークションの現場に迷い込んでしまい、そこで偶然ローニンの衣装を手に入れた彼女は、正体を隠すためローニンのスーツを着て大暴れ。
その様子がTVニュースで流れたのをクリントが偶然見たことで、二人は出会うことになるわけですね。

で、クリントはローニン時代のスーツや武器、あと大切な時計を取り戻したい。
ケイトは母親に近づく怪しげな男の正体を暴き母を救いたい。
利害が一致した二人はバディを汲んで共闘することになっていくんですね。

本作はクリスマス当日までの6日間の物語であり、個人的には明るく楽しいバディアクションを期待していたわけですが、蓋を開けてみれば、楽しさや笑いの中にもクリントの悲哀や後悔が描かれていて、ケイトがそんな過去の呪縛からクリントを救い、クリントはケイトにヒーローとしての心得を伝授するという物語なのです。

https://eiga.k-img.com/images/special/3256/76d421144b80922d/640.jpg?1640245699

画像出展元URL:http://eiga.com

例えば第1話。

子供たちとNYにやってきたクリントは「アベンジャーズのミュージカル」を楽しんでいるわけですが、そこにブラック・ウィドウが登場するとクリントは思わず席を立ってしまう。

サノスから世界を取り戻す作戦中、親友で相棒のナターシャを目の前で失ったクリントはまだ、その傷が癒えていないわけです。
また、本作でクリントは補聴器をつけていますが、それはこれまでの激戦のなかで聴覚に障害を負ったからだし、ケイトの隠れ家でクリントがシャツを脱いで怪我を治療するシーンは、映画「ブラック・ウイドウ」でスーツを脱いでけがを治療するナターシャの痣だらけの背中とリンクしていて、生身の身体でアベンジャーズの一員として激戦に身を投じる過酷さがよく分かるんですね。

さらに本作では、“空白の5年間“で彼が暗殺者ローニンとして活動していた時期の事も描かれるんですが、ローニンとして彼が殺したマフィアのボスの娘が、第3話に登場するマヤ・ロペスことエコーで、彼女はずっと父親を殺したローニンに復讐すべく行方を追っている。つまり彼女はクリントの過去の過ちをそのまま具現化したキャラなのです。

第4話では、クリントを元気づけようとしたケイトに「(弓矢での)過去最高のショットは?」と聞かれたクリントが「(ナターシャに向けて)矢を打たなかった時」と答えます。
この会話でクリントとナターシャの絆の深さが分かるし、大切な相棒を失ったクリントの悲しみも伝わるシーンですね。

その後、ナターシャの義妹、エレーナも登場。

映画「ブラック・ウィドウ」の最後で謎の女“ヴァル”に唆された彼女は、クリントの命を狙うという展開に。彼女はサノスの指パッチンで消された側の人間で、戻ってきた時にはナターシャが亡くなっていたのです。

そんな感じで本作はクリスマスのホリデースペシャル的なパッケージに包まれてはいるものの、その実クリントの暗い過去が濃密に絡んでくる話でもあるんですよね。

しかし、そんなクリントを光の世界に引き上げてくれるのが、クリントに命を救われて以降、超人の中にあって生身で戦うホークアイに憧れ続けた少女ケイトで、少々ドジでおっちょこちょいだけど、真っすぐで純粋な彼女がクリントの道を照らす明かりにもなっているのです。

ホークアイにしかできないアクションシーン

そんな本作「ホークアイ」の見どころと言えば、当然「弓矢」を使ったアクションシーン。
これまでの作品ではあまり描かれてなかったですが、実はクリントの弓矢の鏃には電子妨害用接続端子、分裂弾、溶解弾、小型リモコン爆弾、グラップルワイヤー、さらに電磁パルス、照明弾などなど、様々なギミックが仕込まれていて、本作ではその鏃に「スターク社」のマークが入っていたり、また、当たると目標が巨大化&縮小するハンク・ピム特製の鏃もあって、クリントが犬猿の仲であるスターク&ピム両者と繋がっている事が分かるんですね。

本作ではそんなギミック満載の弓矢を駆使して、闘ったり敵のアジトに潜入したり、弓そのものを武器として刀や棒術のように使う、ホークアイならではのアクションも満載で、もう、見てるだけでワクワクが止まらないし、普段、他のメンバーがアレすぎて目立たないだけで、ホークアイはこんなに凄くてカッコいいんだぞ!って事がよく分かるんですよねー!

https://eiga.k-img.com/images/special/3256/75cd4e8c9db831d7/640.jpg?1640245683

画像出展元URL:http://eiga.com

それだけでなく、最終話では今は亡きナターシャから義妹エレーナへの想いをしっかり繋ぐクリント。
原作での彼の能力は、弓矢や格闘もそうですが、人や状況をしっかり見据える「目」で、だから彼は「ホークアイ(タカの目)」と呼ばれてるんですね。
間に入って人と人を繋いでいく「ハブ」的な役割を担ったり相手を導く役回りも、そんな彼の”能力“の一端と言えるかもしれません。

ラストの展開はネタバレになってしまうのでここでは書かない方がいいと思いますが、前述した「継承」の物語の中でも、本作は今までのMCUと今後のMCUを繋ぐ、重要な作だと思いますよ。

興味のある方は是非!!

 

▼良かったらポチッとお願いします▼


映画レビューランキング