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ザ・昭和の人情噺「漁港の肉子ちゃん」(2021)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、あの、西加奈子の同名小説を明石家さんまがプロデュースしたことで話題になったアニメ映画『漁港の肉子ちゃん』ですよー!

お正月にテレビ放映していたので観てみましたが、「あーはいはい、さんまさんっぽいよねー!」って思いましたねー。

というわけで、今回は前半ネタバレなし、後半はネタバレありで感想を書くので、ネタバレイヤンな人は気を付けてください。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

明石家さんまの企画・プロデュースにより、直木賞作家・西加奈子の小説をアニメ映画化。とある漁港に流れ着いた母娘の日常や、そこで出会う人々との交流を描く。アニメーション制作を『鉄コン筋クリート』などのSTUDIO4°C、監督を『海獣の子供』などの渡辺歩、キャラクターデザイン・総作画監督を『かぐや姫の物語』などの小西賢一が担当。ボイスキャストは、主人公・肉子ちゃんを大竹しのぶ、その娘をモデルやフルート奏者として活動するCocomiが務めるほか、花江夏樹中村育二マツコ・デラックス吉岡里帆らが名を連ねる。(シネマトゥディより引用)

感想

どこまでが原作準拠なのか

まず、先に白状しておきたいのは、僕が西加奈子さんの原作を未読だということ。

なので、あくまで映画だけの印象になってしまうんですが、一言で言うと、ザ・昭和の人情噺という感じで、作品に流れるイムズだったり、価値観だったりを含め、いかにもさんまさんが好きそうだし、物語もさんまさんっぽいなと思いました。

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僕の勝手な憶測ですが、西加奈子さんの原作では昭和回顧テイストは入れつつも、もっと現代的で広い年代層にアプローチ出来る作品になってるのではないかと思うんですよね。

例えば肉子こと見須子菊子大竹しのぶ)と、娘のキクコこと喜久子(Cocomi)の関係や、キクコと友達マリア(石井いづみ)の関係とか、キクコの同級生・二宮花江夏樹)の描写とか。

それが本作では、昭和回顧テイストの方をフューチャーしてしまったというか。「三丁目の夕日」とか「とんび」とかの、あの感じになってしまっているんですね。

でも、まぁ、僕も昭和生まれですからね。

この作品で表現したい事や、表現しようとしている事は大体わかるし、部分的には乗れるシーンもある。

でも、もっと若い層、例えばいわゆるZ世代の人が本作に乗れるかと言えば、かなり難しいんじゃないかって思いましたねー。

肉子ちゃんの造形

そんな本作、タイトルは「肉子ちゃん」ですが、実質的な主人公は娘のキクコの方。
基本、冒頭から最後までずっっっっっと、キクコの独白形式で物語は進んでいきます。

太っていて不細工だけど、とても明るくバイタリティーあふれる肉子ちゃんは、男にだまされ、フラれるたびに住む場所を転々と変えながらもひたむきに生き抜いてきた苦労人。

小説家志望の彼氏を追いかけ、瘦せっぽっちの幼い娘キクコと北の小さな漁港にたどり着いた肉子ちゃん。彼氏を見つける事は出来なかったけれど、焼き肉屋「うをがし」の店主サッサン(中村育二)と出会い、住居と仕事を世話してもらう。

最初こそ大変なこともあったものの、3年経った今では毎日賑やかに楽しく暮らしていた二人だが、11歳となって思春期を迎えたキクコは、友人たちとの関係や肉子ちゃんとの不安定な暮らしに頭を悩ませるようになっていく。というストーリー。

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で、そんな本作では他のキャラクターと比べ、肉子の造形や描写が『マンガ的』にキャラ化されているんですね。それは恐らく、作中での肉子の扱いについて嫌悪感を抱く人への対策なのかな。

とはいえ、肉子というキャラクターの持つファンタジー感が、ともすれば暗くキツい物語になりそうな本作の、ある種のクッション役になっているんですね。それでいて、演じる大竹しのぶの演技力によって、肉子は実在感のあるキャラクターにもなっているのです。

というわけでここからはネタバレありの感想になるので、お気を付けください。

なんで!?

もちろんそれだけではなく、監督は「怪獣の子供」の渡辺歩、作画監督スタジオジブリ一期生の小西賢一、脚本は「凪のお暇」の大島里美など、スタッフは超一流。

それだけに、クライマックス以降の展開は、なぜこんなことになってしまったのか、とても不思議なんですよね。

終盤、キクコが急な腹痛に見舞われ緊急入院するクライマックスから、物語は急展開。

それまでずっと、キクコ視点で進んでいたストーリーが、イキナリ肉子視点の回想になり、キクコの本当の母親と肉子、そして幼いキクコのこれまでが語られます。

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そして目を覚ましたキクコは、突然それまで抱えていた不安や「自分は誰にも望まずに生まれた」とオッサンに涙ながらに吐露。

オッサンはそんなキクコに「お前は望まれて生まれてきた!」と無根拠?に励まし、肉子と二人きりになったキクコは、肉子が本当の母でないことを4歳くらいから気づいていた(何故なら似てないから)と言い、その流れで、キクコの実の母は生きていて、しかもキクコを置いて失踪した後、金持ちの男と結婚、子宝に恵まれ幸せに暮らしているということを肉子に知らされ、でも、母親は余裕がなかっただけで、キクコのことをちゃんと愛している。先日の運動会もこっそりキクコの姿を見に来た。と知らされる。

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肉子に、もし本当のお母さんと暮らしたかったら、あたしに気を使わなくてもいいと言われたキクコは、私は肉子ちゃんが大好き!と言って、めでたしめでたし―――

って、そんな訳あるかー!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

っていうか、キクコが自分の出自に悩んでるとか、キクコが肉子は実母じゃないと気づいてたとか、実の母親がキクコを置いて失踪とか、そんな描写それまで1㎜も出てきてませんけど!?

なんか大急ぎで風呂敷を畳んだ感じだけど、そもそもその風呂敷まだ広げてもいませんからー!っていう。

おそらく、原作の小説版の方では、読者がちゃんと納得がいくように描かれていたと思うんですよ。

ところが本作では、何の前振りもなくいきなりキクコの心情吐露が始まり、彼女の出自や母親の新事実が明かされ、それらが何も解決することなく、ふわっと物語が終わっていくんですよね。

多分、キクコの独白からのオッサンのセリフとか、キクコが肉子に「肉子ちゃん大好き!」っていう所とか、普通ならメッチャ感動するシーンのハズなんだけど、あまりの唐突な展開にビックリし過ぎて、感情が追い付かないっていう。

そこまでは、思春期の入り口に立って不安定なキクコの心情を丁寧に描くジュブナイル物語として良い感じに進んでいただけに、このクライマックスからの怒涛の展開はかなり残念でしたねー。

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あと、ラストシーンのあの展開に不快感を示す人もいたかもだけど、ぐだぐだ引きづらずに、最後に『肉子お母さん』の顔のアップでスパっと終わったのは、個人的には良かったと思いました。

興味のある方は是非!!