今日観た映画の感想

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ずっと匂わしだけかと思ったら――「LAMB/ラム」(2022)

明けましておめでとうございます。ぷらすです。

2023年の「今日観た映画の感想」第1回目は、意識高い系ホラーで名をあげたA24 が北米公開の権利を買い取り、カンヌの「ある視点部門」のオリジナリティ賞を受賞したことで話題になった、『LAMB/ラム』ですよ。

今回は前半はネタバレなし。後半はネタバレありの感想にしようと思うので、ネタバレイヤンな方はお気を付けください。

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概要

アイスランドの人里離れた場所に住む羊飼いの夫婦をめぐるスリラー。羊から生まれた謎の存在を育てる二人の姿を描き、第74回カンヌ国際映画祭のある視点部門「Prize of Originality」を受賞した。監督・脚本は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などに携わってきたヴァルディマル・ヨハンソン。『ミレニアム』シリーズなどのノオミ・ラパスが主演と製作を務めるほか、ヒルミル・スナイル・グドゥナソン、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソンらが出演する。(シネマトゥデイより引用)

感想

北欧ヤバい系ホラー

北欧と言えば、例えば「特捜部Q」シリーズや「ミレニアム」3部作などの北欧ミステリー、「ぼくのエリ 200歳の少女」「ボーダー 二つの世界」「ミッドサマー」などの北欧ホラーと、ハリウッドとは違う独特な価値観を持っている印象。

本作「ラム」もそうで、舞台はアイスランドの人里離れた羊飼いの夫婦が主人公の物語。

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監督は、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」などで特殊効果を担当し、本作が長編映画デビュー作でもあるヴァルディマル・ヨハンソン

主演兼製作総指揮はスウェーデン版「ミレニアム」3部作で主役のリスベットを演じたノオミ・ラパスです。

そんな布陣で送られる本作、どんな映画かと言えば「北欧マジヤバい系」ホラーでしょうか。

前述したように、独自の価値観と文脈を持ち、北欧の風土に根差した作品の多い北欧ミステリーや北欧ホラーの作品群に連なる作品といいますか。

しかし、これまで僕が観てきた北欧系の作品群の中でも、本作がかなり異質な作品であることは間違いないんですね。

もっと具体的に言うなら、何か起こりそうな不穏な匂わせだけが延々続いて、あれ?このまま終わるのか?と思ったら、最後ど―――ん!「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」っていう映画。

監督自身が言うようにセリフを極限まで削った本作は、情報の少ないだけに、テーマやメッセージ、何のメタファーか、裏設定など、読み取ろうと思えばいくらでも妄想・考察出来てしまうけど、そうやって見ても正直、全然面白くない映画なんですよね。

むしろ、画面で起こっている事をそのまま受け入れた方が圧倒的に楽しく見られるっていう。

というわけで、ここから先はネタバレしていくので、ネタバレイヤンな方は先に映画を観てからこの先をお読みください。

 

 

ざっくりあらすじ解説

クリスマスの夜、動物たちが恐れる“何者か”がマリアノオミ・ラパス)と、夫のイングヴァルヒルミル・スナイル・グドゥナソン)の羊舎に侵入。一匹の雌羊に種付けをします。

それからしばらくして、その雌羊が生んだのは頭部から右半身が羊、左半身から下半身が人間の獣人。

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過去に、何らかの理由で娘を失い深く傷ついていたマリアは、この獣人の赤ちゃんに亡くなった娘と同じアダという名前を付けて可愛がりますが、娘を取られ執拗に抗議を繰り返す母羊(アダの生みの親)の事が疎ましくなったマリアは、ある日、銃で母羊を撃ち殺し埋めてしまうのです。

これでやっと平和な日々が訪れると思った矢先、仲間に捨てられた、イングヴァルの弟であるペートゥル(ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン)が、イングヴァルの家に帰って来てアダを発見。一度はアダを殺そうとしますが、やがてアダの可愛らしさにメロメロになって4人で暮らし始めます。

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今度こそ幸せな日々が訪れると思った矢先、大人三人が酒を飲んで羽目を外した際に表に出ていたアダは牧羊犬を殺し銃を盗んでいく”何か“を目撃。

一方、酒に酔ったイングヴァルが眠った隙にペートゥルがマリアを誘惑。ペートゥルは拒否するマリアに、母羊を殺したことをアダに話すと脅し関係を迫るも、マリアは屈すると見せかけてペートゥルを物置部屋に閉じ込め、翌朝、家を出ることにしたペートゥルをバス停まで送っていき、当面の生活費をペートゥルに渡すのです。

これで家族の幸せを奪うものはいなくなったと安心して帰宅したマリアでしたが、家に二人はおらず、遠くから銃声が聞こえる。

現場では、盗まれた銃で撃ち殺されたイングヴァルと、顔が羊、体は人間の全裸羊男(アダパパ)の姿が。羊男はアダを連れて山に帰り、その後イングヴァルの死体を見つけ、全てを失った事を悟ったマリアは、絶望の淵に突き落とされるのであった。という物語。

どうです?ヘンテコな話しでしょ?

ヨハンソン監督によれば、本作のストーリーは、アイスランドの神話を少し引用しているらしいんですが(冒頭の羊小屋のシーン?)、あとは監督自身の創作らしいです。

で、物語も、何か起こりそうな匂わせはあるけど、実際には何も起こらずの繰り返しで、すっかりこっちが安心した(もしくは色々考察している)その最後に、突如全裸マッチョの羊男が登場して、ちゃぶ台をひっくり返すんでねw

そしてこの映画、セリフが極端に少ない上に映像以外何の情報がほぼないので、キャラクターの感情や行動の意味が上手く読み取れない。

それは逆に、本作に考察の余地が沢山あるということでもあるんですね。

実際に会ったと思われる事

では本作の中で、実際に起こっているであろうことを書き出してみると、

1・マリアとイングヴァルは過去に娘(アダ)を亡くしている。

2・マリアとペートゥルは過去に男女の関係だった。もしくは不倫関係にあった。

3・マリアとイングヴァルが飼っているワンコとニャンコが可愛い。

4・マリアはアダママ(母羊)を撃ち殺して埋めた。

他にもあるけど、確実なのはこの4つだと思われます。

そして、この4つの事実から、彼女らの過去をあれこれ妄想してしまうんですよね。

例えば、亡くした娘アダは本当はマリアとペートゥルの子供だった。のではないか?とか。

そんな分からない物語に、統合性を持たせる一番簡単な方法は、実は犯人はマリアだった説ではないでしょうか。

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過去に娘のアダを失ったショックからおかしくなってしまったマリアは、ただの羊を半獣だと思い込み、夫のイングヴァルはそんなマリアに合わせていた。(映像はすべてマリアの脳内視点)

そんな自分の思い込みから、邪魔な母羊を殺し、アダを羊だと言うペートゥルと、ついでにワンコも殺し、最後に夫イングヴァル(とアダも?)を撃ち殺したところで、我に返ってぎゃ――!っていう。どうですか?筋は通るでしょ?

でもまぁ、仮にこのマリアサイコキラー説がこの物語の真実だったとしても、それってそんなには面白くない。っていうか逆にありふれている。

それより僕みたいなボンクラは、筋骨隆々全裸の羊男が母羊を殺された復讐を果たし、奪われていた娘を連れて山に帰っていった。の方が絶対面白いんですよねww

というわけで、僕的にこの映画は観たまんま、全裸マッチョ羊男の復讐物語に決定しました。

正直、中盤当たりは何も起こらないので結構退屈だし、セリフもBGMも殆どないので途中眠くなるかもですが、クライマックスのアダパパ登場シーンは超絶面白いので、興味のある方は是非!!