今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

ほぼマッドマックス「ベイブ/都会へ行く」(1999)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、牧場に貰われてきた子ブタのベイブが牧羊犬のチャンピオンになる「ベイブ」の続編『ベイブ都会へ行く』ですよー!

誰だったか忘れちゃいましたけど、評論家の人が本作を「ほぼマッドマックス」と評していたのを聞いて気になっていたので、今回レンタルしてきました。

で、先に感想を一言で言うと…「ほぼマッドマックス」でしたねーw

https://eiga.k-img.com/images/movie/49109/photo/b166d4d8c974b7bb.jpg?1469166988

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

子ブタのけなげな活躍で、世界中を笑いと涙の渦に巻き込んだ「ベイブ」の続編。牧羊犬コンテストで優勝したベイブは一躍、時の人ならぬ時のブタとなり、牧場には番組の出演依頼が絶えなかったが、ホゲット叔父さんは全然取り合おうとはしなかった。そんなある日、叔父さんはベイブのせいで大怪我をしてしまう。働けなくなった叔父さんの借金を返済するためベイブはエズメ叔母さんと共に都会へと旅立つが……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

ただの「ほんわかファンタジー」ではなかった前作

前作「ベイブ」では製作と脚本を担当したジョージ・ミラーが、脚本だけでなく自ら監督も務めたのが本作「ベイブ/都会へ行く」です。

前作では「子豚の体重当てコンテスト」の景品として、無口で実直な老農場主アーサー・ホゲットに貰われた子ブタのベイブ。
アーサーの牧場に連れてこられた彼が動物たちやアーサーと交流を重ね、紆余曲折あって牧羊犬コンテストで優勝するまでを描いた成長譚なんですね。

僕はこの映画をずっと子供向きだと思ってたので、つい最近まで観てなかったんですよ。

しかし、いざ観てみたら確かに子供向けの作品ではあるものの、僕がイメージしていた可愛い子ブタが主役の“ほんわかファンタジーとは全然違っていてビックリ。

牧場の家畜たちはあくまで「家畜」なので、いつ人間に食べられるか分からない(実際ベイブも最初は太らせて食べられる予定だった)という結構リアルな設定になっていて、確かに楽しい物語ではあるけど、その裏には常に「死の影」がついてまわる物語だったんですよね。

映画冒頭で大人のブタたちが、良いところに連れて行って貰えると信じて屠殺場行きのトラックに乗り込む様子なんかはちょっとしたトラウマになりましたよ。

おとぎ話のようなストーリーの中に、逃げずに生と死を盛り込むあたり、ある意味でジョージ・ミラーらしい脚本と言えるかもですが。

前作より現実味が増した本作

で、そんなジョージ・ミラー御大が監督も務めた本作。

前作のラスト直後、牧羊犬コンテストで優勝したベイブの凱旋パレードのシーンから物語はスタートします。

アーサーの元には、初の“牧羊ブタ”ベイブに、テレビやイベントから大量の出演依頼が来るんですが、静かな暮らしを望むアーサーは全てを断っていつも通り仕事に励みます。

そんなある日、井戸に水汲みポンプを取り付けていたアーサーを手伝おうとしたベイブは、誤ってアーサーに大怪我を負わせてしまうんですね。

大黒柱が動けなくなった牧場は資金繰りに困り、銀行に差し押さえられてしまう。
そこでアーサーの妻エズメ婦人は、ベイブと共に高額な出演料の出るイベントに出席するため都会に向かうのだが――というストーリー。

当然のように都会の空港についたエズメ婦人とベイブは次々とトラブルに見舞われていきます。

麻薬密輸の容疑をかけられイベントには出演出来なくなり、次の飛行機までの間泊まったホテルでは、猿に盗まれたバッグを取り返そうとしたベイブが道化師ファグリーのショーに出るもエライ事になり、ベイブを探しに外に出たエズメ婦人は騒ぎを起こして逮捕されてしまい、ベイブは獰猛な番犬に追い掛け回され、(ホテルに集まった)捨てられた動物たちは(向かいの動物嫌いな奥さんの密告で)保健所に捕まって、辛うじて難を逃れたベイブたちは囚われた仲間たちを助けるため保健所に忍び込み――と、大都会の殺伐とした様子は前作以上にダークさ増し増しな展開になっていくんですね。

かなりドタバタ要素が強くなったことや、前作とはかなりニュアンスが変わったことで、前作ファンの中には拒否反応を起こす人も多いみたいで、まぁ、その気持ちもよく分かるんですが、でもマッドマックス好きな僕的にはむしろ前作以上に楽しめました。

ほぼマッドマックス

本作ではいくつか驚くシーンがありまして、例えばベイブが鎖を引きちぎった獰猛な番犬に街中を追い掛け回されるシークエンス。

鋲のついた首輪をしている番犬は、まさにマッドマックスの悪役そのものなんですが、そんな番犬とベイブのチェイスもまたマッドマックスのカーチェイスのような手に汗握る展開になっていて、しかも動物映画特有の“無理矢理感”は一切感じないんですよね。

CGやアニマトロニクスを駆使して、さらにカット割りや編集を工夫して、犬とブタのチェイスをビックリするくらい自然に見せる技術はそれだけでも見る価値ありだと思いますねー。

また、クライマックスで、道化師の衣装を着てパーティー会場で大暴れするエズメ婦人が、会場に垂れ下がる垂れ幕?のようなものに体を結びつけて、バンジーみたいにビヨンビヨン飛び跳ねるシーンは、マッドマックス3作目「サンダードーム」のよう。

ここは恐らくジョージ・ミラー自身意識的にセルフオマージュしたと思うんですが、そこに動物のドタバタも加わるスラップスティックコメディー的な展開は、ミラー監督の大好きなサイレント映画をオマージュしているようにも見えました。

あと、後ろ足が動かず台車を体に装着している犬や、救急車で運び出されていく年老いた道化師ファグリーなんかは、元々ERの医師だったミラー監督的なキャラクターでもあり、前作でもチラリと見えた現実の残酷さみたいなものがよりしっかりと描かれている感じでした。

もしかしたら、ミラー監督は本作の中でマッドマックス続編に向けての実験をしようとしていたのかな? なんて思ったりもしましたねー。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

スラッシャーxループxミステリー「ハッピー・デス・デイ」(2019)

ぷらすです。

続編「~2U」公開に合わせて6月に劇場公開された時、僕の地元では公開されなくて悔しい思いをしたんですが、あれから数ヶ月遅れながら地元映画館で2週間の期間限定公開(その後「2U」も同様に公開される)されてたので、今日『ハッピー・デス・デイ』を観に行ってきましたー!!ヤッタァ━━━v(*´>ω<`*)v━━━ッ!!

結論から先に書くと、超面白かったですよー!

https://eiga.k-img.com/images/movie/88006/photo/20e0957224a781a5.jpg?1555559375

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

マスクを被った謎の人物に殺される誕生日を何度もループする女子大生を描いたタイムリープホラー。ヒロインを『ラ・ラ・ランド』などのジェシカ・ロース、彼女に協力する男子学生を『ブリングリング』などのイズラエル・ブルサードが演じる。ヒットメーカーのジェイソン・ブラムが製作を務め、『パラノーマル・アクティビティ/呪いの印』などのクリストファー・ランドンがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

スラッシャーホラーxループxミステリー

この映画、どんなストーリーなのかをザックリ一言で説明すると、謎のマスクマンによって誕生日に殺されたビッチ少女ツリージェシカ・ローテ)が、気が付くと誕生日の朝に戻るというループものです。

で、ツリーが何度も殺されては時間が戻るを繰り返しながら成長し、少しづつ犯人の正体に迫っていくという物語なんですねー!

https://eiga.k-img.com/images/movie/88006/photo/3877f88b8b93291f/640.jpg?1552978997

画像出典元URL:http://eiga.com

ビッチな女の子が殺人鬼に殺されるというのは、スラッシャーホラーのテンプレとも言える展開ですが、本作はそんな展開を逆手に取って、何度も殺されながら犯人の正体と事件の全容を解明するミステリーでもあるんですね。

同時に、最初は「このビッチめ(・д・)チッ」と思っていた主人公ツリーの背景が、ループを繰り返す中で明かされていき、(その言動を含めて)彼女がどんどん可愛く見えてくるのです。

ちなみに、監督は「パラノーマルアクティビティ2」以降のシリーズ作品を手がけたクリストファー・B・ランドンですよ。

作劇が見事

“ループもの”と言えば、日本では「うる星やつらビューティフルドリーマー」「涼宮ハルヒの憂鬱」「シュタインズゲート」などですっかりお馴染みですよね。

ハリウッド映画でもトム・クルーズ主演の「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(原作は桜坂洋ライトノベルAll You Need Is Kill」)や、イーサン・ホーク主演の「プリデスティネーション」など、主にSF映画が有名ですが、本作はそれをスラッシャー・ホラーのフォーマットに乗せて描いています

誕生日の9月18日月曜日、同じ大学の男子寮に住むカーターイズラエル・ブルサード)の部屋で目覚めたツリー。

前日のドンチャン騒ぎで泥酔し、ひどい二日酔いだった彼女は頭痛薬を貰って自分の寮に戻るんですが、同じ寮の女の子を無視し、父親との約束をすっぽかし、ルームメイトのロリ(ルビー・モディーン )が作ってくれたケーキをゴミ箱に捨て、既婚者の教授との不倫を楽しむなど、まぁ、絵に書いたようなビッチっぷりでして。

なのでその夜、大学のマスコットベビーのお面をつけた何者かに殺される時も「まぁ、あれだけ恨まれればねー」なんて思っちゃう。

男にもだらしがないし、女友達にもひどい態度を取ってますからね。

で、殺されたハズのツリーがハッと目覚めると、9月18日月曜日のカーターの部屋。

「なんだ夢か…」と安心するも、その後彼女は「夢で見た」通りの朝を繰り返すんですね。
そこで、前日(というか最初の月曜)とは違う行動を取ってみるも、やはりお面をつけた何者かに殺され再びカーターの部屋で目覚め――と、自分が誕生日の1日をループしていると確信したツリー。

4回目に目覚めた時、信じてもらえないのを承知でカーターに相談すると、カーターはよくできた冗談だと思いながら「ループしているなら、何度か繰り返すうちに犯人が絞り込めるハズ」とアドバイスし、ツリーは疑わしい人物を1ループ毎に1人づつ監視するも、その度に殺されてはカーターの部屋で目覚めるんですねー。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88006/photo/58c1a7e6a929ef3f/640.jpg?1552978998

画像出典元URL:http://eiga.com

ただ、この作劇だと「どうせ生き返るんだから」と観客側も緊張感がなくなってしまう。実際ツリーは「どうせ元に戻るし、みんな忘れるから」と、全裸で校内を歩いたりするんですよねw

ところが、何度目かのループで彼女は意識を失って病院に担ぎ込まれてしまうんですよ。検査の結果、体に深刻なダメージを受けていることを知るわけです。

“無限ループ”かと思いきや、回数に制限をつけることで一度緩んだ物語に再び緊張感を持たせるこの展開は上手いなーと思いました。

同時に、ループの中で彼女がヤサグレてしまった原因が判明、彼女自身の心境も変化し、ヤサグレてしまう前の本来の姿を取り戻していく描写が入ることで、観客はどんどんツリーに感情移入していくわけです。

個人的に、それまでずっと避けていたお父さんに会って本心を話すシーンは、(お父さん目線で)思わずグッときてしまいましたねー。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88006/photo/f3ea17be27368b06/640.jpg?1552978999

画像出典元URL:http://eiga.com

最初はスリラー要素で、次はミステリー要素で、最後はツリーの魅力で、観客の興味を切らさない作劇は見事だと思いました。

そしてラスト、ツリーがついに真犯人に辿り着いた時、観客は冒頭の何てことないシーンの数々が周到に練られた伏線だった事に気づくという仕掛けになってるわけです。

丁寧な積み重ね

とはいえ、実は目新しい展開や仕掛けみたいなものは、この作品にはありません。

やっていること自体は、これまで色んな映画で観たような展開ばかりなのです。
ただ奇をてらうのではなく、そうした一つ一つの展開や演出を丁寧に積み重ねることで、本作は上質なエンタメ作品になっているんですよね。

もちろん不朽の名作とか、他に類を見ない大傑作なんて言うつもりはないですが、(恐らく)比較的低予算の小作品ながら、冒頭からラストまで観客を飽きさせない良作であるのは間違いないと思いましたよ。

この後、続編となる「ハッピー・デス・デイ2U」が公開されるんですが、本作であれだけキレイに終わった本作の後、一体どんな続編を作るのか、公開されたら絶対観に行こうと思いますよー!!

興味のある方は是非!!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

 

巨大人食いヘビxヒップホップ「スネーク・アウタ・コンプトン」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのはコンプトンのラッパーが巨大ヘビと戦うバカ映画『スネーク・アウタ・コンプトン』ですよー!

感想を書いた前2作が結構重めの映画で頭が疲れたので、ここらで一気に知能指数を下げてやろうと思ってレンタルしてきましたよw

アサイラム」系の映画って言えば、分かる人には大体どんな映画か分かってもらえるんじゃないでしょうか。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90408/photo/e4b10e4524d34fd0.jpg?1545814808

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

カリフォルニア州コンプトンに突如現れた巨大なヘビを相手に、ラップで戦う人々を活写したパニックムービー。監督は『アンナチュラル』などのハンク・ブラクスタンが務める。リッキー・フラワーズ・Jr、モータウン・モーリス、ドンテ・エシエンらが出演した。(シネマトゥディより引用)

感想

色々混ぜてみただけの“出オチ”映画

タイトルから分かるように、この作品は伝説的ヒップホップ・グループ、N.W.Aの結成から脱退、再結成までを描いた伝記的音楽映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」のパロディー映画なんですが、映画冒頭は航空パニック映画+ヘビを組み合わせた「スネーク・フライト」のパロディからスターとし(ヘビ繋がり)、そこにデンゼル・ワシントンがアカデミー主演男優賞を受賞した「レーニングデイ」のパロディも入れて(荒れた地区繋がり)、巨大人食いヘビを登場させてみましたっていう、完全に思いつきだけで作った出オチ映画です。

多分、アサイラムの「サメ映画」と同じで、劇場公開はせずに有料ケーブルテレビで放送する用に作られた「テレビ映画」だと思うんですよね。

なので、内容や映像のクオリティーの方は推して知るべしって感じで、ただただバカバカしくて下品なコメディー。
アメリカのヒップホップ事情を知ってればまだ楽しめたかもですが、僕は正直音楽は全然なので、(´ε`;)ウ,ウーン…って感じでしたねー。

まぁ、“そういう映画”って分かってレンタルしてきこっちが悪いんですけども。

ざっくりストーリー紹介

アメリカで最も犯罪率の高い都市とされるカリフォルニア州コンプトン。

その上を通るジェット機から「マザー〇ァッカー!」という叫びとともに、一匹のヘビが落っこちるところから物語はスタート。(スネーク・フライト

そのヘビは悪徳刑事と新米刑事のバディの車(トレーニングデイ)に落っこちて、メジャーデビューを夢見るラップグループの若者たち(ストレイト・アウタ・コンプトン)の家の前で死んでいるわけです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90408/photo/2ca41ec0f40dd57c/640.jpg?1544691480

画像出典元URL:http://eiga.com / どこかで見たような刑事が二人

それを発見したのはラップグループのメンバーとルームシェアしている科学オタクの童貞。蛇のお腹には卵が入っていてすぐに赤ちゃんヘビが生まれます。

オタク童貞は赤ちゃんヘビに、自分のナニを大きくするため開発した“成長ビーム”を浴びせて巨大化させようとするんですが、下の階でパーティーを始めたラップグループのせいで実験は失敗に終わり、ヘビには逃げられてしまうのです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90408/photo/7f4813b081da313e/640.jpg?1544691478

画像出典元URL:http://eiga.com / 自分のナニを大きくするため作った謎のビームをヘビに照射!

そして、そのヘビは食欲のままに人間を食べまくって巨大化。

そんな巨大ヘビから故郷を守るため、ラップグループは熱いビートとラップを武器に巨大ヘビと戦う。というストーリー。

何を言ってるのか分からないと思いますが、僕も分からないので大丈夫です。

っていうか、この手の映画でストーリーなんてあってないようなもので、とにかくアイデア一発、ケーブルテレビを観てるボンクラの興味を惹くタイトルさえつければOKっていう、そういうタイプ(出オチ)の映画ですからね。

B級C級当たり前、巨大生物パニック映画

主にドライブインシアターで上映されるような低予算映画を量産していたB級映画の帝王ロジャー・コーマンや、トロマ映画。

時代がテレビに移ると、その流れを組んでケーブルテレビを主戦場に低予算のサメ映画や巨大生物パニック映画が作られるようになります。アサイラムなどが代表格ですね。

そうした映画では大抵、マッドサイエンティストが魚類や爬虫類を巨大化させていて、その中でもヘビはこれまで数々の映画で登場してきた、“その筋”では人気生物なのです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90408/photo/d853adfd28db85b7/640.jpg?1544691477

画像出典元URL:http://eiga.com / こんなに大きくなりました。

巨大生物パニック映画とパロディ映画のハイブリット

“その筋”ってどの筋だよって話ですが、まぁいるんですよ。
(僕も含めて)そういうバカバカしいダメ映画を好んで観るボンクラファンが一定数。

だから「サメ映画」にしろ「巨大生物パニック映画」にしろ、毎年多くの低予算作品が作られるわけです。

また、海外ではパロディ文化が成熟していて、有名作品はすぐにパロディ映画が作られるんですよね。

最近の日本だと、“パクリ”も“パロディ”も一括りにされてすぐ怒られるので、パロディ文化は絶滅寸前ですけども、海外はパクリにはうるさいけどパロディには寛容な文化が根付いていて、パロディ作品に本人が登場することも少なくないようです。

本作でも、有名ラッパーがカメオ出演しているんだとか。(僕は気づかなかったですけども)

なので、アメリカのヒップホップが好きな人なら、本作は案外楽しめるのかもしれませんね。

興味のある方は是非!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

前作の続編であり前日譚「斬、」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、孤高のインディペンデント作家であり、ハリウッド俳優でもある塚本晋也監督の初時代劇『斬、』ですよー!

この映画、超観たかったんですけど僕の地元では公開されなくて、レンタルが開始されるのを心待ちにしていたんですよねー。(;//́Д/̀/)'`ァ'`ァ

https://eiga.k-img.com/images/movie/89402/photo/5fd371d3243c6e0c.jpg?1539582962

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『野火』などの塚本晋也監督が時代劇に初挑戦し、『セトウツミ』などの池松壮亮と『彼女がその名を知らない鳥たち』などの蒼井優と組んだドラマ。鎖国が長く続いた江戸時代末期を舞台に、開国か否かの選択を迫られ翻弄(ほんろう)される人々を映す。塚本は監督、脚本、撮影、編集、製作に加え出演もこなし、『野火』にも出演した中村達也らが共演している。(シネマトゥディより引用)

感想

「野火」の続編であり前日譚

太平洋戦争末期、敗走を続けながら飢餓に苦しめられ、遂には人肉を食らってしまう男の姿を描いた、塚本晋也監督の前作「野火」

この映画で、塚本監督は戦争という巨大な理不尽に翻弄され“怪物にされた男”を描きました。
そして昨年公開された本作で塚本監督が描いたのは、“怪物に憧れる男が怪物になるまで”の物語。

つまり本作は、前作「野火」の(精神的)続編であり、明治維新から第1次世界大戦、そして太平洋戦争へと続く時代の流れを考えれば前日譚でもあり、つまりスターウォーズで言えば“プリクエル三部作”的な作品なのです。

悲惨な戦場に放り込まれた“普通の男”の目を通して、戦争という巨大な暴力を描いた前作に対し、塚本監督は本作で「人はなぜ暴力を望み惹かれるのか」という、より根源的なテーマを掘り下げる一方、侍や剣豪をヒーローではなく“人殺し”として、日本刀(=武器)を“暴力装置”として意図的に描いています。

その視点はとても現代的で、ある意味で本作は時代劇の型を使った現代劇とも言えますが、(日本映画史・時代劇研究科の春日太一さんの言葉を借りるなら)そもそも時代劇自体が江戸時代以前の日本を舞台に、現代が抱える様々な問題やテーマ性を反映させるファンタジーなので、そういう意味で本作の作劇は「正しく時代劇」と言えるんじゃないでしょうか。

七人の侍」になり損ねた男たち

そんな本作の物語をざっくり紹介すると、舞台は幕末、江戸近郊の農村。

そこに身を寄せる若き浪人の都筑杢之進(池松壮亮)は、農家の仕事を手伝いながら農家の息子・市助(前田隆成)に剣の稽古をつける一方、開国を巡って荒れ狂う京都へ自分も向かわねばならないと考えているわけです。

市助の姉・ゆう(蒼井優)はそんな杢之進を想い(杢之進もゆうに惚れている)、また杢之進と共に行きたがっている市助を心配しているんですが、そんなある日、三人は剣豪・澤村(塚本晋也)と出くわします。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89402/photo/ddcdf506f52fb75b/640.jpg?1534310419

画像出典元URL:http://eiga.com

彼は泰平の世を守るため、共に京都の動乱に参戦するメンバーを探していて、杢之進と市助の稽古を見て杢之進の腕に惚れ込み、二人をスカウトするわけです。

しかし、杢之進は腕は立つんですが実際に人を斬ったことはなく、真剣を人に向けると腕が震えてしまうヘタレ浪人。

そんな彼らが出立を控えた前日、どこからか流れ着いてきた無頼者(中村達也)たちが村にやって来て、村人たちは怯えます。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89402/photo/5d64129aa23a2b0e/640.jpg?1534310419

画像出典元URL:http://eiga.com

そして、ある小さな事件をキッカケに、平和だった村で陰惨な暴力の連鎖が起こり――というストーリー。

本作で剣豪役も務める塚本監督は北辰一刀流に弟子入り、主演の池松壮亮は一ヶ月に及ぶ殺陣の稽古を積んで撮影に臨んだそう。

それもあって本作の殺陣は、いわゆる主人公が敵をバッタバッタと斬り倒すアクションとしての殺陣とは違い、「殺し合い」としての剣撃の鬼気迫る緊張感が画面から伝わってくる、観ていて恐怖すら感じる殺陣でしたねー!((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

特に塚本監督の鬼気迫る熱演は凄まじく、塚本監督が役者・塚本晋也としても円熟期に入っていることがよく分かります。

そんな塚本監督、本作では髷のカツラなどは被らず素の頭で演じてるんですけど、そのビジュアルや行動は、黒沢明七人の侍」で島田勘兵衛を演じた志村喬を思い出すんですよね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89402/photo/3058317107ddf7c2/640.jpg?1534310419

画像出典元URL:http://eiga.com

考えてみれば、農村に無頼の野武士たちがやってくるという設定や、侍に憧れる農家の息子は、三船敏郎が演じた菊千代に通じるものがあるなーと。

そう考えると、本作は(塚本監督が意識的かは分かりませんが)「裏・七人の侍」にも見えるし、澤村、杢之進、市助の三人は「七人の侍に“なり損ねた男たち”と言えるかもしれません。

その上で、武士道や死の美学といったマチズムやヒロイズムを徹底的に排し、ゴア描写たっぷりに“殺し合い”の残酷さを際立たせた本作は、もしかしたら塚本監督から黒澤監督への時代を超えたアンサー的側面もあるのかも。なんて思ったりしましたねー。(ラストの“あのシーン”は「用心棒」のラストを彷彿とさせるし)

また、“時代劇の嘘”を暴くという意味では、イーストウッドの「許されざるもの」的でもあるし、謎の男との出会いが主人公を狂気の世界に引き込まれていくという流れは「鉄男」などこれまでの塚本作品に通じるものがあると言えるでしょう。

塚本晋也の感じる危機感

塚本晋也監督は「野火」を作る動機として、近年の日本に蔓延している不穏な空気に危機感を感じたというような事をインタビューで語っていましたが、確かにこれまでの作品と比べ(と言っても全部を観ているわけじゃないけど)「野火」と本作に関して塚本監督は意図的にテーマ性を前面に打ち出しているように感じます。

「野火」では個人が抗えない巨大な暴力を、本作では暴力や破壊に憧れる若者が直面する現実の恐ろしさをそれぞれ描いている。

その根底には、何かときな臭い(日本を含む)今の世界情勢に対する塚本監督の危機感があり、だから「一度動き出した暴力は誰にも止めることはできない」という観客への警告も込めて「野火」と本作「斬、」を作り上げたのではないかなと。

劇中、澤村が構える刀の切っ先を正面から撮った印象的なアップは、暴力に対する監督のそうした思いを、覚悟を持って僕たち観客の喉元に突きつけているのです。多分。

そういう意味で、本作は非常に作家性の強い作品ではあるんですが、正直に言えば「野火」に比べると観念的というか演劇的?な演出もあり、若干の飲み込みづらさを感じたりしました。

キャラクターの感情の動きがイマイチ分かりづらくて、誰に感情移入して観ればいいか分からないんですよね。(あと、これは予算的に仕方ないかもだけど森のシーンが多いので位置関係の全体像が分かりづらい)

とはいえ近年の作品で、ここまで緊張感や凄みを感じる時代劇は久しぶりに観たし、エンタメ的とは言えないしグロ描写もあるけど、個人的には、塚本作品のファン以外の人にも(野火と合わせて)観て欲しい、ガツンとくる作品でした。

興味のある方は是非!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

村上春樹の短編小説をイ・チャンドンが映画化!「バーニング劇場版」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を原作に「シークレット・サンシャイン」や「ポエトリー/アグネスの詩」などで世界から高い評価を集めるイ・チャンドン監督約8年ぶりに撮った新作『バーニング』ですよー!

観終わった直後の率直な感想としては、「うわー、えらいもんに手を出してしまった」でしたねー。「これ、感想書くのメッチャめんどくさいヤツじゃん」とw

でも、観てしまったからには仕方がないので、何とか頑張って感想を書いていこうと思います。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/891287173c896824.jpg?1541984651

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『ポエトリー アグネスの詩(うた)』などのイ・チャンドン監督が、村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を大胆に翻案したミステリー。小説家志望の主人公の周囲で起こる不可解な出来事を、現代社会に生きる若者の無力さや怒りを織り交ぜながら描く。主演は『ベテラン』などのユ・アイン。ドラマシリーズ「ウォーキング・デッド」などのスティーヴン・ユァン、オーディションで選ばれたチョン・ジョンソらが共演する。(シネマトゥディより印象)

感想

僕と村上春樹イ・チャンドン

まず書いておかなくてはいけないのが、僕は村上春樹の原作も、これまでのイ・チャンドン作品も未読(未見)だということ。

っていうか、僕は村上春樹の小説って(多分)初期の作品を1冊読んだきりなんですよね。なので「ノルウェーの森」や「海辺のカフカ」などの代表作も読んだことがないのです。

何ていうか、(初期作品に顕著だと思うんですが)彼の“一人称なのに他人事”みたいな作風がね、どうにも合わなかったんですよ。

対してイ・チャンドンは、有名な監督なので「確か1作くらいは観てたよなー」と思ってWikipediaでチャックしてみたら1作も観たことがなかったです。あれー?

というわけで、今回は完全に手ぶら状態での感想なので、もし調子っぱずれな事を書いてしまったらスイマセン。

NHKのプロジェクトとしてスタート

本作は元々NHKの、村上春樹の短編小説をアジアの映画監督が競作で映像化するプロジェクトの1つとして企画が進められたそうで、2018年12月2日にNHK BS4K、12月29日にNHK総合で日本語吹替による95分の短縮版がそれぞれ放送されたそうです。

その時のタイトルが「特集ドラマ バーニング」で、今年2月に「バーニング劇場版」として約2時間30分の全長版が公開されたんですね。

原作の「納屋を焼く」は1983年初出の短編。ざっくり内容を説明すると、

広告モデルでパントマイムが趣味の「彼女」と、知り合いの結婚パーティで知り合った小説家の「僕」は、ほどなくして付き合うようになります。
ある時、父親が亡くなった「彼女」はその遺産で北アフリカに行くんですね。

暫くして「彼女」は新しい恋人「彼」を連れて帰ってきます。
ある時「僕」との食事の席で、「時々納屋を焼くんです」と告白する「彼」は近々また納屋を焼く予定だと話します。

今まで他者に無関心に装っていた「僕」は、取り憑かれるように「彼」が次に焼く納屋を探すも、結局、納屋が焼かれる瞬間を捉えることはできない。
再開したときに納屋のことを尋ねると、「彼」は「納屋ですか?もちろん焼きましたよ。きれいに焼きました。約束したとおりね」と言い、時を同じくして何故か「彼女」も消えてしまう。という物語。

イ・チャンドンは、物語の舞台を現代の韓国を舞台に移し、原作小説では30代既婚の小説家である「僕」を、20代の貧しい「小説家志望」の青年イ・ジョンス(ユ・アイン)に変更。

内容の方も、大筋は原作小説をなぞりつつ、原作にも登場しタイトルの元ネタでもあるウィリアム・フォークナーの「Barn Burning(納屋を焼く)」的要素を加え、ラストに映画オリジナル展開を入れるなど、大胆な改変をしているんですね。

そういう意味では、原作の「納屋を焼く」を解体・再構築した作品と言えるのかもしれません。

幾重にも張り巡らされた伏線と、どのようにも解釈可能なラスト

本作の主人公イ・ジョンスは、子供の頃母親に捨てられ、暴力衝動の抑えられない父親は公務員への暴行で裁判中のため、家業である牛の世話のために北朝鮮との軍事境界線にほど近いパジュ市の実家に戻るハメになります。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/6a6d7c7b5b30d679/640.jpg?1543193050

画像出典元URL:http://eiga.com / ボンクラ青年ジョンスを好演したユ・アイン

その直前、彼は偶然“幼馴染”の美女ヘミ(チョン・ジョンソ)と出会うんですね。

彼女はモデル(というかキャンペーンガール?)の傍ら、パントマイムを習ったりしていて、ジョンスと飲みに行った店でミカンを食べるパントマイムを披露。
彼女は「そこにみかんがあると思い込むんじゃなくて、そこにみかんがないことを忘れればいいのよ」とパントマイムのコツを教えるんですが、このセリフが後の展開の重要なキーワードになっています。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/0b1edf6a033a2908/640.jpg?1543193052

画像出典元URL:http://eiga.com / ヒロインでありファムファタルでもあるヘミ(チョン・ジョンソ)

その後、彼女はアフリカに旅行に行くと言い出し、その間飼っている猫ボイルにエサをやってほしいとジョンスに頼むんですね。
しかし、ワンルームの狭い部屋なのに、猫の姿はどこにも見えない。

もしや“エア猫”ではと怪しむジョンスでしたが、エサや水はちゃんと減っているので部屋のどこかにいるのは間違いないらしい。

ジョンスは、“見えない猫”にエサをやりに行っては、そこに“いないヘミ”をオカズに自慰に励むのです。

やがて、彼女から帰ってくるので空港に迎えに来て欲しいという電話を受けたジョンスは、喜び勇んで迎えに行くんですが、何故か彼女の隣には見慣れない男が。

ヘミによれば、彼=ベン(スティーブン・ユァン)はアフリカのテロで立ち往生していた時に知り合った“親友”だそうで、人当たりはいいけど、どこか胡散臭い男。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/df41ee5b4300feda/640.jpg?1543193051

画像出典元URL:http://eiga.com / 胡散臭いベンを演じるのは「Z Inc. ゼット・インク」のスティーブン・ユァン

何の仕事をしているかは分からないけど、金持ちでポルシェを乗り回し、高級マンションに住んで、ハイソなお仲間とパーティーを開くようなベンに、ジョンスは持ち前の劣等をフル稼働

三人で食事のあと、部下だか友達だかが持ってきたポルシェを見てすっかり気後れしてしまい、ヘミに「乗せていってもらいなよ」なんて、自分のオンボロトラックから荷物を下ろしたりしちゃうんですよね。

ベンの方も何が気に入ったのか分からないけど、事あるごとにジョンスを誘っては格の違いを見せつけるので、ジョンスはますます卑屈になっちゃう。

ベンはぱっと見好青年で、ジョンスに対しても結構好意的に接してるんだけど、どこか見下してるようにも見えるように演出されていて、どうにも真意がわからない。
見下してるように見えるのは、ジョンスの劣等感からくる被害妄想かもしれないし、逆にそんなジョンスを本当に見下して楽しんでるのかもしれないわけですよ。

そんなある日、牛の世話をするジョンスにヘミから電話で「ベンと近くに来たから寄るわ」なんて電話が。

で、3人で大麻を吸って、ヘミが半裸で踊りだして眠っちゃったあと、ジョンスとベンが二人で話すんですが、そこでジョンスが「ヘミを愛してる」と告白すれば、ベンは「ビニールハウスを燃やすのが趣味」というヤバすぎる性癖を告白

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/0dd4fa7e748e0557/640.jpg?1541984678

画像出典元URL:http://eiga.com

「近々、この近くのビニールハウスを燃やす予定です」なんて言われたジョンスは、燃え盛るビニールハウスの前でニコニコしてる子供の自分を夢に見てしまい、気になって近所のビニールハウスをパトロールするも燃えたビニールハウスはどこにもないんですね。

時を同じくして、ヘミからかかってきた電話に出るも、声はなく、明らかに犯罪臭漂う物騒な物音を残して、彼女は“煙のように”消えてしまい―――というストーリー。

ここから物語はミステリー的な展開になっていくんですが、ここまでで1時間を軽く越えてるんですよねー。

って長いよ!

いやね、映像が綺麗だからまだギリ観てられますけど、ここまでストーリー上の大きな動きがあるわけでも続きが気になるフックがあるわけでもなく、何かこう……いかにも村上春樹っぽい、分かるような分からないようなスカシたセリフ回しが続くので、僕みたいなボンクラは観ていて普通に辛いw

ただ、この何てことない、ある意味で退屈な展開の中に、その後に繋がる伏線が張り巡らされてたり、終盤への重要なキーワードが描かれたりするので、とばすわけにもいかないっていうね。

で、そこから続くミステリー(サスペンス?)的な後半を経ての衝撃のラストは、どのようにも解釈出来るように設計されてるのです。

寓話的な原作を現実(リアル)の物語に

まぁ、前述したように、僕は原作未読なのでハッキリしたことは言えないんですが、それでも色んなレビューや解説を元に本作を読み解くなら、観念的で質量を感じさせない、ある意味おとぎ話的な原作に、イ・チャンドン監督は毒親の呪いとか格差社会とか若者の絶望や焦燥感、諦観や寄る辺なさといった、今の韓国(というか世界中の若者)が抱える問題をつけ加えることで、虚実の境目が曖昧になるという原作の核の部分は残しつつ、捉えどころのない物語に質量を与えて現実(リアル)に引き寄せたのではないかと思いました。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/d86b035bfa305c75/640.jpg?1543193052

画像出典元URL:http://eiga.com

その上で、最後にどうとでも解釈出来る余白を残すことで、この作品が“観客の物語”になるようなラストを用意したのかなと。

そう考えると、この長さはどうしても必要だったのかもしれません。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

現代に蘇った“潜水艦モノ”「ハンターキラー潜行せよ」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは今年4月に公開された『ハンターキラー』ですよー!

ハリウッド映画としては久しぶりの本格潜水艦モノ。

正直、劇場公開された時は「今さら潜水艦モノかー」とスルーしてしまったんですが、今回レンタルで観たら、思った以上に面白かったですねー!

https://eiga.k-img.com/images/movie/89001/photo/12a12fcc6c421557.jpg?1548396234

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ジョージ・ウォーレス、ドン・キースの小説を原作にしたアクション。消息を絶ったアメリカ海軍原子力潜水艦の捜索に向かった潜水艦の運命を描く。監督は『裏切りの獣たち』などのドノヴァン・マーシュ。キャストには、『エンド・オブ・キングダム』などのジェラルド・バトラー、『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』などのゲイリー・オールドマンらがそろう。(シネマトゥディより引用)

感想

一定の面白さが担保されている“潜水艦モノ”

いわゆる“軍事映画”は、時代を超えて今も世界中で作られている一大ジャンル。
その中でも、“潜水艦モノ”は大体面白くてハズレってそんなにないんですよね。

何故かといえば、海上や地上など、(基本的に)前後左右の平面上で行われる2Dの戦闘に対して、潜水艦は「深度」という縦の要素が加わる3Dの戦闘シーンであることが一つ。

もう一つは、潜水艦同士は視覚ではなく聴覚やセンサーで敵の位置を予測して戦う。また海底の地形などを利用して敵を欺くという、スパイ(忍者)モノ的な面白さがあること。

そして、潜水艦の戦場は海中なので深く潜ると水圧に艦が押しつぶされる危険もあるし、艦が破壊されたら乗組員はまず助からない=戦闘と死が直結している=あらかじめスリル・サスペンス要素を内包していること。

という3つの大きな要素があるからだと思います。

それに加えて、潜水艦モノはある意味で密室劇であり、限定された空間の中で運命共同体の乗組員同士の濃密なドラマが作りやすいという利点も。

それらの潜水艦モノのテンプレートは1957年公開「眼下の敵から」から2000年「U-571」に至るまで数々の映画の中で作り上げられてきたんですね。

ではなぜ近年の映画で潜水艦モノが殆どないのかと言えば、ぶっちゃけストーリーを広げづらい、つまりどれも似たような映画になっちゃうからなんじゃないかと。

そんな中、久しぶりの本格潜水艦モノとして今年公開された本作は、潜水艦モノに要人救出作戦という地上でのアクションを連携させることで、ある意味で硬直していた潜水艦モノというジャンルをアップデートしてみせたんですね。

ざっくりストーリー紹介

2020年に発刊されたジョージ・ウォレスとドン・キースの原作小説「Firing Point」を映画化した本作。

ロシアで起こった軍事クーデターから米軍の潜水艦とネイビーシールズが露大統領を救出するというストーリーに、時間内にミッションを成功させないと米露戦争が起こるっていうタイムリミットを設定することで、観客に飽きさせないスリリングなストーリーテリングをしているんですね。

映画冒頭、ロシア近郊のバレンツ海で、アメリカ海軍原潜タンパ・ベイが、ロシアの原潜と同時に消息不明となる事態が発生。
タンパ・ベイの捜査に当たるべく、アメリカ海軍少将のフィスク(コモン)は、別名“ハンターキラー”と呼ばれる攻撃型原潜アーカンソーの潜航を決定。艦長に海軍兵学校出身ではないものの、現場経験が豊富なジョー・グラスジェラルド・バトラー)を抜擢します。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89001/photo/bcb9c776b31cfa5f/640.jpg?1549964244

画像出典元URL:http://eiga.com / アーカンソーの船長ジョー・グラスを演じるジェラルド・バトラー

捜索に向かったアーカンソー号が発見したのは、無残に破壊されたタンパ・ベイとロシア原潜の残骸。その直後、アーカンソー号は、氷山の下に潜んでいたロシア側とおぼしき原潜の魚雷攻撃を受けるもジョーの機転でこれを撃破し、タンパ・ベイと共に沈んでいたロシア原潜の生き残り3名を救出します。

一方、地上では国家安全保障局NSA)のジョイン(リンダ・カーデリーニ)から、ロシア国内でクーデターが企てられているとの情報を受け、調査のためビーマン隊長(トビー・スティーブンス)率いるネイビーシールズ精鋭部隊4名を秘密裏にロシアに送り込むんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89001/photo/5119460d2b62d146/640.jpg?1552359862

画像出典元URL:http://eiga.com / ペンタゴンで状況を見守るみなさん。中央のメガネのおじさんは何とゲイリー・オールドマン

ロシアに潜入した彼らが見たのは、現ロシア大統領ザカリンを拘束したロシア国防大臣のドゥーロフ(ミハイル・ゴア)が、海軍基地を占拠する様子。
彼は、他国に依存しないロシア国家の樹立を目指しクーデターを起こしたわけです。
米露原潜を沈めたのもアメリカに罪をなすりつけて大義名分を作り、米国との開戦が目的だったんですね。

米国政府&軍部は直ちに応戦の準備を始めるも、第3次世界大戦を危惧したフィスクは戦争回避のため、潜入したネイビーシールズアーカンソーによる露大統領救出作戦を提言。世界の命運は、彼らに託される事になる。というストーリー。

まぁ、いくら非常時とはいえ勝手にロシア領内に乗り込んで大統領救出っていうのは流石に荒唐無稽ではあるけど、そこに至るまでの前フリやキャラ紹介などのセッティングを非常にテンポよく観せてくれるので、少々強引な展開もそこまで気にならず、ストーリーに集中出来るんですよね。

潜水艦モノ定番のお約束と新鮮な描写

そんな中、敵潜水艦との対決、機雷だらけの海中を敵に気づかれないように敵領地への潜入、敵の攻撃を受けての浸水や水圧で軋む音が響く船内などなど。
潜水艦モノのお約束はしっかりと押さえる一方で、潜水の時に傾いた船内で踏ん張って立っているのでマイケル・ジャクソンのアレみたいになってる描写とか、敵の状況を偵察するための小型水中ドローンなど、新鮮な描写があったのは良かったですねー。

あと、今や潜水艦も諸々の性能も上がっていて、その辺のディテールもしっかり描写されているので、潜水艦好きにはグッとくるんじゃないでしょうか。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89001/photo/7141ea5540e022c4/640.jpg?1549964244

画像出典元URL:http://eiga.com

まぁ、個人的にはもう少し潜水艦同士のドッグファイトも観たかった気もしますが、以前ご紹介したインドの潜水艦映画「インパクト・クラッシュ」に続き、やっぱり潜水艦モノは面白いなーって思いましたねー!(*゚∀゚)=3

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

“マブリー”の魅力詰め合わせ映画「犯罪都市」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、みんな大好きマ・ドンソク主演の実録犯罪映画『犯罪都市』ですよー!
今やマブリーの愛称で国民的人気俳優となった韓国の俳優マ・ドンソクが悪いヤクザをボコりまくるスカっとする映画です!

https://eiga.k-img.com/images/movie/88290/photo/0e818f76e8bb17cc.jpg?1519088205

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『殺されたミンジュ』『アンダードッグ 二人の男』などのマ・ドンソクが主演を務めたクライムドラマ。韓国に進出してきた中国人の犯罪者集団と戦う刑事の活躍を描く。『国選弁護人 ユン・ジンウォン』などのユン・ゲサン、『時間回廊の殺人』などのチョ・ジェユン、チェ・グィファらがそろう。監督はカン・ユンソン。マ・ドンソクが屈強な肉体を生かしたアクションを見せる。(シネマトゥディより引用)

感想

マブリーがヤクザより怖い刑事を好演

マ・ドンソクのプロフィールについては「ファイティン!」の感想でも書いたので、ここでは割愛しますが、ざっくりどんな人かと言えば、役者としては遅咲きながら、持って生まれた愛嬌と厳ついにも程がある肉体を武器に、(韓国映画界でも1・2を争う強面にも関わらず)今や国民的人気俳優となった韓国版シンデレラ・おじさん

そんなマブリーが本作で演じるのは、ソウル南部・衿川(クムチョン)警察に勤務する<強力班>のマ・ソクト刑事。強力班というのは日本で言えばマル暴って感じですかね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88290/photo/ab59666542abca9e/640.jpg?1525142262

画像出典元URL:http://eiga.com / どんなマフィアより怖い顔のマブリー

衿川にはチャイナタウンがあって、そこには中国からやってきた“朝鮮族”と呼ばれる人たちが住んでいるんですが、その中には当然マフィアもいましてね。

彼らと韓国のマフィアはちょいちょい小競り合いをや揉め事を起こしたりしてるんですが、ソクト刑事はそんな両者の間に入って(主に腕力で)両者の揉め事の調停をして街の均衡を保っていたわけです。

ところがある日、中国から朝鮮族犯罪集団「黒竜組」の3人が乗り込み、サクっとボスを殺害して朝鮮族マフィア「毒蛇組」を乗っ取ったことで、街のパワーバランスが崩れてしまう。

そこで、マ・ソクト率いる警察の強力班は街の平和を守るため「黒竜組」の一掃を試みるが――という内容。

さらには、「黒竜組」に縄張りを荒らされた韓国マフィアも復讐のため動き出して、事態は黒龍組、韓国マフィア、ソクト率いる強力班の三つ巴の様相を呈していくのです。

で、ユン・ゲサン演じる「黒竜組」のボス、チャン・チェンってのが、見た目はロン毛でチャラいんですが、これが絵に書いたような冷酷かつ非情な男でしてね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88290/photo/cd769c4a6c8f6c73/640.jpg?1525142264

画像出典元URL:http://eiga.com / 極悪非道の黒龍組ボス、チャン・チェン(右)

毒蛇組のボスをバラバラ死体にしてゴミ袋に詰めて捨てちゃったり、敵対する韓国マフィア「イス組」ボスの祝いの席に乱入→イス組ボスを殺害するわ、女子供にも平気で暴力を振るうわ、いざとなれば平気で子分も見捨てる最低のクズ野郎なのです。

そんな彼に従う二人の子分も凶暴で強面だし、他のマフィア組員も全員強面ばかりなんですが――その中でも一番の強面が、我らがマブリー演じるソクト刑事っていうねw

このソクト刑事、マフィアには全く容赦なく暴力を振るうんですけど、市井の人には優しく、後輩にとっては頼れる兄貴的存在。

いわば暴力刑事人情派なのです。

特に女性と子供には優しくて、食堂で働く15歳の朝鮮族少年には、どうやら昔から目をかけてやってるっぽいんですよね。

なので、マフィア同士で揉めようが殺し合いをしようが、基本的には冷静なんですけど、彼らが市井の弱き人々に暴力を振るった途端、ソクト刑事は怒りスイッチがONになって犯人を全力で追い詰めて叩きのめすのです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88290/photo/2843a56f45a94948/640.jpg?1523246060

画像出典元URL:http://eiga.com / 怒りスイッチON!

実録もの

実はこの映画、2004年に衿川で実際に起こった警察による朝鮮族マフィア一斉検挙をベースに脚色しているのだそう。主演のマ・ドンソクは、映画やドラマで役立たずだったり腐敗した組織として描かれる警察像を常々不満に思っていたんだそうです。
自分の知ってる(警察の)友人は全員頑張っていると。

で、本作ではそんな“リアルな警察像”を目指したらしいんですけど……これがホントにリアルなのだとしたら、それはそれで問題があるのでは?と思いましたねーw

本作のソクト刑事の立ち位置って、近年の日本映画で言えば「孤老の血」の役所広司的な感じなんですが、役所広司と違って「ヤクザごときでは絶対彼を殺せない」っていう絶対的な安心感があるんですよね。何故なら演じてるのがマ・ドンソクだからw

マブリーの魅力が詰まったマブリー映画

いわゆる「韓国ノワール」って陰惨でドロドロで痛い描写が多いのが特徴。
もちろん本作でも“痛い”シーンは多々あるんですが、それでも本作は他の「韓国ノワール」とは一線を画しています。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88290/photo/2f239b639372e0cd/640.jpg?1523246061

画像出典元URL:http://eiga.com / マフィアのみなさんも強面揃い!

それはやっぱ、マブリーの持つ愛嬌を引き出した演出が大きいと思うんですよね。例えば、

・ドタバタ走って、逃げる犯人を捕まえた後「膝が痛いだろうが」とこぼすマブリー。

・(悪い人ではないけど)後輩をいびる班長の財布を抜き取って、みんなで銭湯にいくマブリー。

・腕が太すぎて自分の傷が見えないマブリー。

・自白を拒む犯人にヘルメットを被せてボコるマブリー。

・目をかけている少年が売るパンを(マフィアの金で)大量に購入してあげるマブリー。

・自分より大きなマフィアの用心棒をパンチ一発でKOしてみせるマブリー。

・マフィアの店に立ち寄ったら進められるまま酒を飲んで寝てしまい、「黒竜組」の襲撃に気づかないマブリー。

・クライマックスで追い込んだチャン・チェン「一人か?」と聞かれて「まだ独身だ」と返すマブリー。

こんな彼の一挙手一投足を観ているだけで何故か多幸感に包まれるんですよねー。

キャラクターの背景は多くを語らない演出

本作の悪役チャン・チェンと二人の子分は、劇中でその背景がまったく語られません。
ただ、彼らは異常なほど金に執着している様子が描かれるだけなんですが、その描写で金への執着が彼らの出自と関係していることが、それとなく分かる演出をしていたり、彼ら朝鮮族に対する韓国内での立ち位置などもそれとなく描かれていたます。

また、(恐らく)チャン・チェンとは鏡像関係にある15歳の少年に対し、ソクト刑事が「お母さんを恨んでないのか」と問いかけ、少年は「お母さんにも人生があるから」と返す。特にこれ以外で少年の背景は一切語られていないんですが、15歳の少年が学校に行かず働いている理由を、このやりとりだけでそれとなく分かるように提示する演出も実に上手いなーと思いましたねー。

決して語りすぎず、描きすぎず、最低限の描写とセリフでそれとなくキャラクターの背景を匂わせるに留めるという演出は実に気が効いてるし、ソクト刑事がそんな彼をもっと幼いころから気にかけている事も、この短いセリフから伝わってくる。

そういうムダのない映画的描写が、やっぱ韓国映画は上手いと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com