今日観た映画の感想

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映画史に残る傑作「殺人の追憶」(2003)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「パラサイト」で外国人監督として初めてアカデミー監督賞&作品賞を受賞したポン・ジュノ監督2003年の作品『殺人の追憶』ですよー!

てっきり観たと思い込んでいたんですが、よくよく考えたら未見だったと気づいて慌ててレンタルしてきましたよ。

結論から言うと、ビックリするくらい面白かったです!

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概要

実際に起きた未解決連続殺人事件をテーマにした衝撃サスペンス。韓国で560万人を越える動員数を記録。事実を基に綿密に構成された脚本と緊迫感あふれる映像で、犯人を追う刑事たちの焦燥感が身近に迫る。東京国際映画祭アジア映画賞受賞。主役は『シュリ』JSA』で知られる、韓国の名優、ソン・ガンホ。田舎町の少々、愚鈍な刑事を演じるため、体重を10kg増やし役作りした。監督・脚本は『ほえる犬はかまない』のポン・ジュノ。(シネマトゥディより引用)

感想

天才監督ポン・ジュノ、未解決事件に挑む!

本作は、1986年から1991年にかけて韓国・京畿道華城郡(ファソン)周辺の農村地帯で実際に起こった、本作公開時の2003年当時の段階で未解決だった連続強姦殺人事件を基にしたサスペンス映画。

本作が公開された2003年当時、まだ事件は未解決ということで、ポン・ジュノ監督は本作を“犯人捜し”のミステリー映画ではなく、犯人を追う二人の刑事や警察組織にスポットを当てて、当時の韓国情勢と事件が迷宮入りした背景にある社会の歪みを描いているんですね。

そして2019年、韓国警察は別件で刑務所に収監されていた男を犯人と特定したと発表。
しかし、一連の事件は2006年4月2日に公訴時効が満了しているため犯人は罪に問うことは出来ないのだそうです。(犯人は別件で無期懲役だそう)

ざっくりストーリー紹介

1986年10月、農村地帯華城市の用水路から束縛された女性の遺体が発見されます。

地元警察の刑事パク・トゥマンソン・ガンホ)とチョ・ヨング(キム・レハ)が捜査にあたるんですが捜査は進展せず、2か月後、線路脇の稲田で新たな遺体が発見されるのです。

パク刑事らは二人の女性の関係者を片っ端から取り調べるんですが、スーツ姿の男にはそれなりに丁寧に、しかしそうでない低所得者らしき男には乱暴な取り調べを行います。

そんな中、パク刑事は二人目の被害者の恋人からの情報で、知的障害を持つ焼肉屋の息子グァンホ(パク・ノシク)に目をつけ、暴力的な取り調べや誘導尋問や証拠の捏造を行う。

そこへソウル市警の若手刑事ソ・テユンキム・サンギョン)が赴任。
グァンホの自供で事件解決かと思われるも、ソ刑事は遺体の状況からグァンホの麻痺した手では犯行は不可能であると断定。同時期に警察の拷問による自白強要が問題化し課長を解任。新たに赴任したシン課長(ソン・ジェホ)はソ刑事の主張を支持し、グァンホを釈放します。

ソ刑事は、犯行が雨の日に行われている共通点を指摘、現在行方不明の女性が殺害されていると進言します。
これを受けて大掛かりな捜査の結果、行方不明女性の腐乱死体が発見され、さらに第4の女性の遺体も発見される。

警察の捜査を嘲笑うかのように犯行は続き、犯人像はまったく見えてこない事にいら立つ捜査員たち。
そんな時、女性警官がラジオで「憂鬱な手紙」という曲が流れる日に犯行が行われる事に気づき――というストーリー。

民主化前夜

次々に浮かび上がる犯行の共通点や容疑者たち。
しかし、夜とはいえまだ浅い時間(7時~9時の間)の犯行にもかかわらず目撃者がまったくいないことから警察は犯人の特定に難航します。
その理由の一つが、全斗煥政権末期の学生らによる民主化デモの鎮圧で、そのため捜査に割ける人員が圧倒的に少なかったんですね。
また劇中では、北朝鮮との緊張状態から夜間外出禁止令?によって人の目が極端に少なかった様子も描かれています。

本作は、この田舎の村で起こった連続強姦殺人事件を通して、軍事政権から民主国家に移り変わる韓国社会の歪みを炙り出しているんですね。

反発しあう二人

ソン・ガンホ演じるパク刑事は、そんな退廃した旧体制の警察を象徴する存在。
部下のチョ・ヨングと共に拷問による自白強要、証拠の捏造などやりたい放題。

一方、ソウルからやってきたソ刑事は、4年生大学を卒業したインテリで冷静かつ論理的な若者で民主化後の韓国を象徴する存在です。
書類は嘘をつかない」と、これまでの捜査書類を洗い直し、犯行の共通点から事件が同一犯による連続事件であること、行方不明とされていた女性も被害に遭っていることを見抜くんですね。

そんなソ刑事の存在がパク刑事は面白くないし、ソ刑事も旧態然としたパク刑事のやり方が気に入らないので、二人は当然反発しあいます。

本来、憎まれ役的な立ち位置なハズのパク刑事を、観ているこっちが(間抜けとは思うけど)憎めないし彼に乗れるのも、件の取り調べシーンがコントのようにコミカルに描かれている事と、パク刑事がボケ役、ソ刑事が冷静なツッコミ役になっているからなんですね。

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そして、更なる事件をキッカケにソ刑事は暴走、パク刑事が彼を止める役になるという、二人の立場が逆転するクライマックスに、観ているこっちは思わず息を呑んでしまうのです。

計算されつくした映像

そんな本作を盛り上げているのが、ポン・ジュノ監督によって入念に計算された映像の設計です。
ぱっと見、無造作に撮影しているように見えて、要所要所でハッとするような映像が差し込まれるし、本作では、フィルムの質なのかカメラワークやライティングなのかは分からないんですが、刑事たちが事件を追う1980年代を映す映像は(今から17年前の作品にしても)昔風というか1980年代的というか、後日談となる2003年のシーンの映像とはハッキリ違いを出しているように感じたんですよね。

多分ですが、そこも計算のうちで、ポンジュノ監督は画質の違いで時代の空気感みたいなものを出しているのではないかと思いました。

あと、観た人全員の記憶に残ること間違いなしの、ソン・ガンホの表情が大映しになるラストショット。
この物語が全て、あのショットに集約されるように作られているのが分かる、映画史に残る見事なショットでした。

よくある話なのに目が離せない

本作をざっくり一言で言うなら「猟奇的な連続殺人犯を追う刑事の物語」で、それ自体はこれまで数多の映画で使われているし、僕もこれまで死ぬほど観た、いわゆる手あかのついたプロットと言えるし、実際の事件を扱う以上結末も分かっている

なのに、本作がラストシーンと対になるアバンから最後まで目が離せないのは、ストーリー・テラーとしての観客を引き込んでいくポン・ジュノ監督の練りに練った構成を、前述の計算された映像設計による極めて映画的語り口で見せていく見事な手腕あればこそなのだと思いました。

これまで僕が観たポン・ジュノ作品はどれも面白かったですけど、個人的には本作が一番面白かったですよ!

興味のある方は是非!!

 

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美少年をストーキングするオッサンの物語「ベニスに死す」(1971)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、イタリア映画界の巨匠ルキノ・ヴィスコンティが、美少年への思いを募らせた老作曲家の苦悩を格調高く描いた文芸ドラマ『ベニスに死す』ですよー!

まぁ、僕もたまには「名作」と言われる作品も観てみようと思ってレンタルしてきたんですが、結論から言うと観ている間ずっと眠気との闘いでしたねーw

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概要

イタリア映画界の巨匠、ルキノ・ヴィスコンティが、美少年への思いを募らせた老作曲家の苦悩を格調高く描いた文芸ドラマ。作曲家グスタフ・マーラーをモデルに描かれたトーマス・マンの原作を基に映画化。少年へ恋焦がれるあまりに破滅へと向かう作曲家を演じるのは、『召使』『ダーリング』などのダーク・ボガード。美少年を演じたスウェーデン出身のビョルン・アンドレセンの美ぼうも話題になった。マーラーの音楽と共に描き出される芸術的で退廃的な世界観を堪能したい。(シネマトゥデイより引用)

感想

ドイツ三部作

本作はドイツの作家トーマス・マン作の同名小説を、イタリア映画界の巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督が映画化した作品です。

ヴィスコンティロベルト・ロッセリーニヴィットリオ・デ・シーカなどと共にネオレアリズモ主翼を担った監督で、本作はそんな彼が監督した「地獄に堕ちた勇者ども」「ルートヴィヒ」と並ぶ「ドイツ三部作」の第2作なんだそうですね。

ちなみに僕は、恥ずかしながらヴィスコンティ監督作品は今回が初見だったりします。

で、本作の内容をざっくり一言で言うなら「美少年をストーキングするオッサンの物語」でしたよ。

ざっくりストーリー紹介

1911年、イタリアのベニス。
心労から病に倒れてしまった事で静養に訪れた作曲家のアシェンバッハダーク・ボガード)が本作の主人公。

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色々あって疲れ果てた彼は療養のためベニスを訪れたんですが、ベニスは季節風の影響から驚くほどの暑さと、バカンスに訪れている観光客で賑わっていたためアシェンバッハはうんざりします。

しかし、ホテルの中で偶然、絶世の美少年タジオ(ビョルイン・アンドレセン)に目を奪われ、自身の中に特別な感情が芽生えたことにアッシェンバッハ本人はまだ気づいていないんですね。

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タジオは家族とともに同じホテルに滞在していたため、レストランでの食事中も、窓を開けると見える海岸でも、気持ちのよい潮風が吹くビーチでも、アッシェンバッハはタジオを目で追ってしまうのですね。

そんなある時、エレベーターでタジオは自分が見つめられていることを知ってか知らずか美しい笑みを浮かべながら振り向き、見つめ合った瞬間、アッシェンバッハは彼の圧倒的な美の魅力の虜になってしまったことに気づくのです。

動揺した彼は、慌ててホテルを引き払いミュンヘンに帰ることを決めるも、手違いで別の場所に荷物が送られてしまったため、再びベニスのホテルに舞い戻ることに。

そこで、タジオを見つけた彼は、再会をひそかに喜ぶんですねー。

そんなアッシェンバッハがホテルのロビーで海外の新聞を読んでいると、ベニスでの感染症に注意するようにと警察からの勧告を発見し――というストーリー。

僕は「ベニスに死す」がオッサンが美少年に恋する物語という程度しか知らなかったので、今回見て観光地ベニスに伝染病が蔓延という内容にビックリしてしまいしたよ。

イムリーすぎんだろ。

美と生への渇望

本作では、ベニスでのアッシェンバッハと同時進行で、彼がベニスに来ることになる経緯が語られていきます。

ドイツで作曲家として名声を手に入れ、美人の奥さんと可愛い一人娘にも恵まれ幸せの絶頂だったアッシェンバッハ。
しかし、不慮の事故か病気で娘を亡くしただけでなく、老いと共に仕事も上手くいかなくなって病に臥せってしまった彼は、静かな環境で療養するためベニスを訪れますが、そこでタジオと出会ったことで、自分がどんなに努力しても叶わない美しさと生の輝きにすっかり心を奪われてしまうんですね。

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その感情は恋とか愛とかではなく、彼がタジオに激しく惹かれるのは、身も心もすっかり年老いてしまったアッシェンバッハが求め続けた美と生への「渇望」だったのだと思います。

最初はタジオを目で追う程度だったアッシェンバッハでしたが、次第に行動はエスカレート。タジオを探してホテルやビーチ、ベニスの街をウロウロしたり、白髪交じりの髪や口ひげを黒く染め、白粉に紅をさして若作りし始める始末。

真っ白なスーツやハットで身を固める彼はまるでピエロのようで、何ともいたたまれない気持ちになってしまいましたよ。

一方、アッシェンバッハに忍び寄る死の影
本作ではベニスでタジオと出会った瞬間、アッシェンバッハの運命は決まったかのように描かれています。
つまり、タジオはある意味で、アッシェンバッハを破滅に向かわせるファム・ファタール(主人公を破滅に向かわせる魔性の女)であり、彼を黄泉の国に誘う美しい死神のような存在でもあるわけです。(あくまでアッシェンバッハから見て)

一度は死神の手から逃れたかに見えたアッシェンバッハでしたが、荷物の手違いでベニスに戻らざるを得なくなった時、文句を言いながらも彼の顔はにやけているんですよね。そんな彼の向こうでは、やせ細った一人の男が今にも死にかけている。
この時点で、アッシェンバッハは忍び寄る死の影に捕まったのです。

環境ビデオのよう

とまぁ、本作でヴィスコンティ監督がやりたい事は何となく分かるし、シネスコサイズ(2.35:1)で撮られた映像も非常に美しかったです。
しかし、その美しい映像にアッシェンバッハのモデルになった作曲家マーラーの音楽も相まって、まるで環境ビデオを観てるような134分、僕はもう眠気を堪えるのに必死でしたよw

アッシェンバッハの心情の変化やタジオとの距離感をじっくり時間をかけて描く演出も、本作が公開された71年ならともかく2020年のテンポに慣れきってしまった今となっては、かなり辛いものがあるんじゃないかと思いましたねー。

興味のある方は是非!

 

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“王と父”がタッグを組んだ伝説の奇作「クリープショー」(1986)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、モダンホラーの王スティーブン・キングとモダンゾンビの父ジョージ・A・ロメロがタッグを組んだ伝説の奇作『クリープショー』ですよー!

僕は学生時代に1度観て以来なので、ずいぶん久しぶりに本作を観たんですが、今観ると色んな発見がある作品でしたねー。

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概要

スティーヴン・キングの原案を基に、コミックマガジン形式で繰り広げられるオムニバス・ホラー。父の日に墓から甦る死者、不貞を働いた妻と愛人を干潮の砂浜に顔だけ出して埋めた男に訪れる恐怖、大学の片隅に眠る木箱に潜む謎の怪物、隕石に触れたため身体中が奇怪な植物に覆われてしまう男の悲劇、潔癖症の老人を襲うゴキブリの群れの5つのエピソードが、文字通りのコミック・タッチで描かれる。(allcinema ONLINEより引用)

感想

王と父が「グリッター・ジャンル」を蘇らせる

本国アメリカで1982年に公開された本作は、強権的な父親が息子が隠し持っていたホラー漫画を発見、本を取り上げてゴミ箱に捨てるプロローグからスタートするオムニバス形式のホラー映画です。

脚本を務めるのはデビュー作「キャリー」を始め数多くの小説作品を生み出した「モダンホラーの王」スティーブン・キング

監督は「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「ゾンビ」などを生み出した、「モダンゾンビの父」ジョージ・A・ロメロ

盟友でもあった二人がタッグを組んで、グリッター・ジャンルコミックを蘇らせたのが本作なんですね。

グリッター・ジャンルとは

「アメコミ」と聞くと、多くの人はマーベルコミックやDCコミックなど、スーパーヒーローが活躍するコミックを連想するんじゃないでしょうか。

しかし、1960年代以前には、大小取り混ぜた無数の出版社からファニーアニマル(動物の擬人化)・西部劇・恋愛・恐怖・戦記・犯罪などなど、多種多様なグリッター・ジャンル(ヒーローコミック以外の漫画)コミックが出版されていたんですね。

ところが、「コミックに描かれた暴力やホラー描写が青少年を非行に走らせる」という研究書をドイツ人心理学者のフレデリック・ワーサム博士が発表したのをキッカケに、アメリカコミック界で「コミックス・コード」という自主規制に発展。
グリッター・ジャンルを扱うコミック出版社は壊滅状態に追い込まれるんですね。

その代表格が主にホラーや犯罪漫画を扱っていた「ECコミック」で、本作で登場するコミック誌の絵はECコミックのアーティスト、 ジャック・ケーメンが担当していて、本作のアバンでは、見る人が見ればコミックコード前後の家庭の様子を描いている事が分かるんですね。

キングはホラー作家であり、ロメロはゾンビ映画やホラー映画の監督として有名。
そんな二人がホラーコミックを実写映画で復活させるアイデアには、当時の(そして恐らく彼ら自身への)偏見や規制という時代の流れに対する皮肉が込められているのだと思うんですよね。

5本の短編からなるオムニバス形式

そんな本作は父子のプロローグとエピローグの他に、5本の短編からなるオムニバス作品になっています。

第1話『父の日

毎年“父の日“に会する富豪の親戚一同。
彼らは、横暴な家長だった父親(ジョン・ローマー)を殺害した大叔母ベドリアヴィヴェカ・リンドフォース)の到着を待っています。
彼女は親戚達の元へ向かう前に父親の墓を訪れるのだが――というストーリー。

この横暴な父親は猟でベドリアの恋人を事故に見せかけて撃ち殺したという過去があり、年老いてからはベドリアに介護を強要してるわけです。
今風に言うなら老々介護ってやつですね。しかし、もとより横暴な男なので父の日のケーキを強要し、しまいには娘のベドリアをビッチ呼ばわりする始末。
ついに堪忍袋の尾が切れたベドリアは大理石の灰皿で父親を撲殺。
メイドと共謀して事故死に見せかけるのです。

キングやロメロが意識したかは分かりませんが、1982年の段階で毒親問題や老々介護を扱っている先見性に驚かされましたねー。

第2話『ジョディ・ベリルの孤独な死

農夫ジョディ・ベリルの家先に隕石が落下。
まだ熱いそれに触れたジョディは、指先に火傷を負ってしまいます。
彼は隕石が金になると期待するんですが、触れた指先から体に異常が現れ始め――というストーリー。

ちなみに本作の主人公ジョディ・ベリルをユーモアたっぷりに演じたのは、若き日のキングなんですよねw
(父親にホラー漫画を取り上げられる少年はキングの長男ジョー・ヒル

第3話『押し寄せる波

ある朝ハリー(テッド・ダンソン)を初老の男が訪れます。男はハリーの不倫相手ベッキーゲイラン・ロス)の元夫リチャードレスリー・ニールセン)。
リチャードに「ベッキーに”想像を絶する一大事”が起った」から脅されたハリーは、リチャードに従い砂浜へと向かうのだが――というストーリー。

リチャードを演じるのは「裸の銃を持つ男」などで知られるレスリー・ニールセンで、コメディ俳優のイメージが強い彼ですが、本作では間男と不倫妻への復讐に燃える恐ろしい男を演じています。

そして、最初はスリラーかと思って観ていると、後半に驚きの展開が待っているんですね。

第4話『

大学の守衛が落としたコインを暗い階段下の網付きの物入れに転がしてしまい、そこで古い木箱を発見します。

一方、パーティの席で英文学教授ヘンリーハル・ホルブルック)の妻ウィルマエイドリアン・バーボー)は酒に酔って若い数学教授夫妻に絡んだり、公衆の面前でヘンリーを怒鳴り嘲ったり。そんな彼女にヘンリーは殺意を抱くも、気が弱い彼はウィルマを殺す妄想をするだけで何も言えません。

そんなパーティーの最中、守衛から電話を受けたヘンリーの友人デクスター(フリッツ・ウィーヴァー)は大学へ向かいます。
守衛が見つけた木箱には「1834年6月19日北極」のラベリングが。

デクスターは守衛と二人、研究室に運び出した木箱を開けるのだが――というストーリー。

これも、147年前の木箱を開けるデクスターと、鬼嫁に殺意を抱きつつ逆らえないヘンリーの物語がクロスしていくんですね。

第5話『奴らは群がり寄ってくる

短気で傲慢な会社社長アプソン・プラット(E・G・マーシャル)。
潔癖症の彼は無菌のペントハウスに暮らしていますが、何故か部屋にGが出てくる。
見つけては退治する彼でしたが、Gは減るどころかどんどん増え続け――というストーリー。

要は潔癖症の男が大量のGに襲われるだけの物語なんですが、劇中の電話を通して彼の無慈悲で傲慢な性格を描き、Gと彼が見下す人々をリンクさせているんですね。
また、潔癖症でGを憎むに至る背景が分かる構成で、短い物語に厚みを持たせているのです。
ただ、それはそれとして、大量のG(本物)が動き回る絵面は生理的に来るものがあり、苦手な人は絶対ムリって感じでしょうか。(((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル

そしてエピローグでは、ホラー漫画を取り上げられた息子が父親にある復讐をして物語は終了するんですね。

意外と社会派?

ジョージ・A・ロメロ監督は、ゾンビ映画ばっかり撮ってるのでゲテモノ映画専門の監督と思われがちですが、「ゾンビ」の大ヒット後にはホラー監督という肩書からの脱却を目指し社会派ドラマやラブ・ストーリーなども監督しているし、そもそも彼のゾンビ映画には、公民権運動や大量消費社会への警告など、その時代の社会問題が必ず織り込まれていたりするんですよね。

本作でも民主主義の権化のような男だったり、毒親、鬼嫁、時代錯誤な強権的な父親などが登場していて、その辺は脚本のキングのアイデアかもですが、いわゆるB級ホラーではあるものの、今観ると意外と社会派なテーマや、現代に通じる先見性があったりして驚きましたねー。

もちろん40年近く前の作品なので、恐怖描写はわりと牧歌的というか、いかにも作り物っぽさがあるのは確かなんですが、実はこの映画が公開された1962年当時でも特殊メイクや造形、撮影技法など「ゆるいなー」と思ってた記憶があります。

その辺は、前述したように「ホラーコミック」オマージュということで、わざとポップでキッチュな映像にしているんでしょうね。

興味のある方は是非!!

 

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死霊のナイトミュージアム「アナベル/死霊博物館」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、MCU・レジェンダリーと共に「世界3大ユニバース」の1本と呼ばれている「死霊館」ユニバース最新作『アナベル/死霊博物館』ですよー!

実在の心霊研究家エド&ロレイン・ウォーレン夫妻の自宅に収蔵されている、呪われたあれやこれやが、3人の少女を襲う一夜の物語です!

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概要

死霊館』シリーズのスピンオフ第3弾。超常現象研究家夫妻の家で保管されていた呪いの人形アナベルの封印が解かれる。ウォーレン夫妻をおなじみのパトリック・ウィルソンヴェラ・ファーミガ、彼らの娘を『gifted/ギフテッド』などのマッケナ・グレイスが演じる。シリーズに携ってきたジェームズ・ワンが製作を務め、『アナベル』シリーズの脚本を担当してきたゲイリー・ドーベルマンがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

死霊館」ユニバースの歩み

*これ、新作が公開されるたびに毎回書いているので「またか」と思われた方は読み飛ばしてくださいw

シリーズ第1作「死霊館」は、映画「悪魔の棲む家」の元ネタとして有名な「アミティヴィル事件」など多くの超常現象を調査・解明してきた、アメリカで有名な超常現象研究家ウォーレン夫妻が1971年に体験したという実際の事件を基に、「ソウ」や「アクアマン」などのジェームズ・ワン監督が制作したホラー映画です。

実在の人物・事件を題材にした作品ということもあって「死霊館」は大ヒット。

このヒットを受け、ワンは監督を自分の仲間に任せて自身は制作に回り、

・2014年「死霊館」に登場した史上最凶と言われる呪いの人形”アナベル”をフューチャーした「アナベル/死霊館の人形

・2016年に本編続編でアミティヴィル事件を描いた「死霊館/エンフィールド事件」をそれぞれ公開。

死霊館」を起点に、ウォーレン夫妻が主役の死霊館」シリーズと呪いの人形アナベルをメインにしたアナベル」シリーズ、「死霊館」に登場するサブキャラクターを描いたスピンオフ作品に枝分かれしていきます。

その後、

2017年にはアナベルシリーズ第2弾「アナベル/死霊人形の誕生

2018年に悪魔ヴァラク修道院シスターの闘いを描く「死霊館」のオリジン的作品「死霊館のシスター

2019年には「アナベ/ 死霊館の人形」のペレス神父が登場する「ラ・ヨローナ〜泣く女〜

と、約1年1本ペースで作品が公開され、(現行)シリーズ最新作が第1作「死霊館」冒頭シーンの直後からスタートする本作なのです。

死霊館」から派生したこれらの作品はすべてが一つの世界観を共有する”ユニバース”になっているんですね。

MCU(マーベルシ・ネマティック・ユニバース)の成功によって、雨後の筍のように作られた”ユニバースもの”でしたがその殆どは興行的に失敗。
実質成功と言えるのは本家のMCU、レジェンダリー制作のゴジラキングコングを有する「モンスターユニバース」、そしてこの「死霊館ユニバース」くらいなんですねー。

これが俗にいう、世界3大ユニバースです。(嘘)

ざっくりストーリー紹介

前述したように、時系列で言うと本作はシリーズ第1作「死霊館」の冒頭シーンの直後からスタート。

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最凶の呪い人形アナベルの厄災を防ぐため、ウォーレン夫妻は人形を自宅の地下で、いわくつきの品物を収蔵しているコレクションルームに厳重に封印・保管します。

その一年後、ウォーレン夫妻は用事で外泊することになり、もうすぐ11歳の誕生日を迎える娘ジュディ(マッケナ・グレイス)をシッターのメアリー(マディソン・アイズマン)に託します。

誕生日間近ということもあり、メアリーはジュディと誕生日を祝う準備をしていますが、そこにメアリーの友人ダニエラ(ケイティ・サリフ)も参加。

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実はダニエラ、ある過去が原因でウォーレン夫妻のコレクションルームに興味津々なのです。
そんなダニエラ、ジュディとメアリーが出かけた隙に、こっそり地下のコレクションルームに潜入し、事もあろうにアナベルの封印を解いてしまったからさぁ大変。

地下室の死霊たちが、ジュディ、メアリー、ダニエラの3人に襲い掛かる――というストーリー。

序盤で、エドパトリック・ウィルソン)とロレインヴェラ・ファーミガ)のウォーレン夫妻が久しぶりに登場した時はテンション爆上がりでしたが、蓋を開けてみれば本作は2人の娘ジュディと、メアリー&ダニエラがメインの物語だったんですねー。

死霊のナイトミュージアム

そんな本作、コレクションルーム=博物館を抜け出て暴れまわる死霊(悪霊)に右往左往する3人の少女の一夜を描いているところが、映画「ナイトミュージアム」を思い出しましたねーw

悪魔の依り代になっている人形アナベルを始め、狼男、アコーディオンを弾く猿のおもちゃ、数秒後の未来を映し出すテレビ、勝手に演奏を始めるピアノに勝手に文字を打つタイプライターなどなど、収蔵・保管されている“いわくつき“の品々が次から次へと動き出す様子は、まさに「死霊のナイトミュージアム」ですよw

また、本作は少女3人が主人公ということで、これまでの「死霊館」作品よりグッとライトかつポップな仕上がりになっていて、本格ホラーというよりアトラクション的「お化け屋敷映画」といった感じ。

中盤までは制作のジェームズ・ワンお得意のJホラー表現もあり、じわじわ怖い、いつもの「死霊館」テイストなんですが、死霊たちが次から次へと登場する後半~クライマックスにかけては、何か別作品を観てるようでした。

また、本作では3人の少女それぞれが抱える悩み?を反映したお化けが登場。

父親の死後自分を責め続けるダニエラには呪いのウエディングドレスを着た血まみれの花嫁。(幽霊)

幼い頃に喘息で死線を彷徨ったメアリーには、三途の川を渡る舟の船頭フェリーマン。(死神?)

母の能力を受け継ぐ娘ジュディには、彼女の魂を狙うアナベル(悪魔)がそれぞれ襲い掛かってくるんですね。

そして、本作は3人が協力しながら襲い掛かる苦難を乗り越えちょっぴり成長するという、青春映画でもあるのです。
その辺はちょっと「IT/イット」っぽさもあったりしましたねー。

なので、これまでの作品群と比べて怖さは控えめだし、ラストは爽やかな後味もあるので怖いのが苦手という人でも結構楽しめるかもしれません。

興味のある方は是非!!

 

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分かるけどしんどい「メイドインアビス-深き魂の黎明-」(2020)

ぷらすです。

漫画家つくしあきひとの同名コミックのアニメ化劇場作品『メイドインアビス-深き魂の黎明-』を観てきましたよー!

いやー、もうね。覚悟はしてたんだけど……案の定しんどかったですねーww

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概要

つくしあきひとのコミックを原作にしたアニメの劇場版。大穴“アビス”の謎を探る探窟家になることを夢見る少女の冒険が描かれる。ボイスキャストには富田美憂をはじめ、伊瀬茉莉也井澤詩織森川智之水瀬いのりらがそろう。アニメーション制作をキネマシトラス、監督を本シリーズを担当してきたアニメ「ブラック・ブレット BLACK BULLET [黒い銃弾]」などの小島正幸が務める。(シネマトゥデイ

感想

メイドインアビスとは

とはいえ、「メイドインアビス」を知らない人もいると思うので、ざっくり説明すると、漫画家つくしあきひと氏が「WEBコミックガンマ」で不定期連載の人気コミックで、現在、単行本が8巻まで発刊中。

約1900年前に南ベオルスカの孤島で発見された直径約1000メートル、深さ不明の縦穴「アビス」が舞台の物語。

「アビス」は特異な生態系を持ち、また人知を遙かに超える技術で造られた「遺物」が数多く出土することから、大穴の縁に作られた街には、アビスの探検を行う「探窟家」たちが多く暮らしているわけです。

主人公リコはその街に暮らす探窟家の卵でしたが、ある日、アビスで不思議なロボット少年のレグと出会い、また、消息不明の「白笛」(最上位の探窟家)でリコの母ライザの笛と伝言が10年ぶりに発見されたのをキッカケに、レグと共に「アビスの底」を目指すという物語。

この「アビス」というのが、あまりに深すぎる上にヤバい生き物も多くいるので降りるだけでも大変なんですが、地上に向かって上がろうとすると「上昇負荷」が掛かって身体や精神に色々な影響が出たり最悪死亡する「アビスの呪い」ってのがあるんですね。

分からない人は、深海への素潜りや高山への登頂などをイメージしてもらうと分かりやすいかもです。

で、この漫画がアニメ化され、2017年7月から9月まで13話が放送
その後、TV版を再編集した「総集編」が前後編に分けて劇場アニメとして上映され、現在TV未放送の”続編”である本作が劇場公開中なのです。

僕は原作は未だ未読なんですが、TVアニメ版と総集編を観てまして、その続編が公開されるとなれば、これはもう観に行くしかないじゃないですか!

覚悟はしていたけれど…

で、観てきたわけですが……。

いえね、TV版で内容は知っているし、R-15指定ですからね。
それなりに覚悟は決めていたわけですが……しんどかったですねー!

もうね、原作者のつくし先生を始め、監督・スタッフ全員に正座させて小一時間説教したいですよ。

お前らの血は何色だ。と。

メイドインアビス」のもう一つの特徴として、とにかく子供がとんでもなく酷い目に合う(抑え目な表現)っていうのがありましてね。

TV放送分でも10話以降は、観てるこっちが引くくらいリコ、レグ、ナナチ、ミーティたちが悲惨な目に遭うわけです。

それでも、そこまでの経緯やキャラ同士の関係性、リコたちの目的などが12話かけてじっくり描かれているので、コッチもすっかり感情移入しているし、ストーリーの組み立ても素晴らしく、またアビスという地上とはまったくルールの違う壮絶な環境でサバイブするという設定もあって、辛さや嫌悪感よりも物語的説得力や感動の方が上回っていたから乗れたわけです。

で、約1時間(2話分)かけて放送された13話では、白笛の探窟家ボンドルドというキャラが登場するんですが、こいつがマ・ジ・でスーパー腐れど外道でして。

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貧民街などから身寄りのない子供を連れてきてはアビス深くにある自分の基地に連れてきて、とんでもなく非人道的な人体実験を繰り返しているわけです。

物語後半で登場するミーティとナナチはその犠牲者なんですが、ここでボンドルドの腐れ外道っぷりがナナチの回想として余すところなくたっっっぷり描かれる。
そしてTV版はリコ、レグ、ナナチがボンドルドの待つ第5層へと旅立つところで終わっているんですね。

つまり、13話はいわば「子供たちvsボンドルド編:前編」なわけです。

そして、総集編2作を挟み、本作はいよいよ「~後編」となるわけで、これはもう、リコたちがただでは済まない事は、TV版(もしくは劇場版前2作)を観た人なら誰もが容易に想像できるわけですよ。

分かるんだけど……

で、まぁ……結論としては想像以上にしんどかったですよと。

ネタバレになっちゃうので詳しいことは書けませんけども、「あー、そこも見せちゃうんだ」「あー、そこも描いちゃうんだ……」って感じ。

いや、必要な情報をTV版13話に絡めながら、過不足なく入れ込んだ見事な脚本だったし、映像も動きも音楽も素晴らしいクオリティーなんです。

で、本作の設定上、リコ、レグ、ナナチの3人がアビス第6層へ降りるためには、第5層でボンドルドが管理している前線基地(イドフロント)を避けて通ることは出来ないわけですね。

で、前線基地に到着した3人を出迎えるのが、ボンドルドの“娘“であるプルシュカという少女。

この基地で生まれ育ちリコと同じく白笛の親を持つ彼女は、同年代の3人に対して友好的だし、3人もまた彼女に心を許す(特にリコは)わけですが、当然、それはこれから起こる展開の前振りでしかなく。

で、この後、案の定物語は凄惨なことになっていくわけですが、ここで問題なのがプルシュカと3人の関係性がTV版ほど時間をかけて描かれてないことで。(正確には、脚本では限られた時間の中で頑張って描いているんだけど、観ているこっちにそれを消化する時間の余裕がない)
多くの時間はボンドルド安定のど外道っぷりや、3人対ボンドルドの対決の方に割かれているので、子供が酷い目に合う嫌さの方が先に立ってしまうんですよね。

それでも、もし本作がTVアニメ終了から間を開けずに公開されていれば、コッチも13話分の熱を持ったまま観られただろうから印象も違ったかもですが、やはりTV版から時間が経ち、一度熱が冷めた状態で本作を観てしまうと、感動よりも嫌悪感の方が先に立ってしまうというか。ただただ、嫌でしんどい展開が続くので観終わった後グッタリしてしまうんですよね。

かといって、ここで生ぬるい描写でお茶を濁してしまうと、これまでつくし先生の原作とTVアニメ版でスタッフが築き上げてきたメイドインアビス」ではなくなってしまうので、あえてキツい描写も避けずに描いたスタッフの決断も分かるだけに、何とも複雑な気持ちになりました。
そういう意味で、「メイドインアビス」は幸せな作品と言えるかもしれません。

そして、どうやらTV版2期も決定したらしい今、ファンとしてこの作品を避けては通れないところが、本作の内容と現実がリンクしているっていうw

そこまで計算して本作が作られているんだとしたら、それはそれで凄いですけどねw

映倫GJ!

ちなみにこの作品、当初はPG12指定だったのが、映倫の最終審査の結果R15+指定に引き上げられたという経緯があるのだそうです。
僕は基本的に、作品に映倫が介入することに対して否定的なんですけど、今回のこの判断に関しては初めて「映倫グッジョブ!」って思いましたねーw

っていうか、PG12指定って小学生以下の子供でも保護者同伴なら鑑賞OKってことですからね。

こんなもん、うっかり何も知らない親子連れが「可愛い絵のアニメだわー」なんて観たら大騒ぎになるわ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

まぁ、製作者側はこうなる事は最初から分かっていて、(話題作りも含め)確信犯だと思いますけどねw

 

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ジャンルの枠に収まらないポン・ジュノ印!「グエムル -漢江の怪物-」(2006)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは「パラサイト」のポン・ジュノ監督2006年の作品『グエムル -漢江の怪物-』ですよー!

「パラサイト」が面白かったので、他のポン・ジュノ作品も観たい!って思って先日TSUTAYAでレンタルしてきました!

「怪獣映画」だと思って観ると肩透かしを食らうかもですが、ポン・ジュノ作品だと思って観れば、色々楽しめる作品でしたよ!

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概要

韓国の人々のオアシス、漢江(ハンガン)に突如出現した怪物を巡る事件に肉迫するパニック映画。怪物に娘を奪われた一家の奮闘を描く。情けない父親から一変、闘うお父さんを体当たりで演じるのは『南極日誌』のソン・ガンホ。その妹役を『リンダ リンダ リンダ』のペ・ドゥナ、弟役を『殺人の追憶』のパク・ヘイルが演じている。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどを手がけたニュージーランドのWETAワークショップが、魚に似たリアルな怪物を作り上げた。(シネマトゥディより引用)

感想

“ジャンル”の枠からはみ出すポン・ジュノの作家性

本作をざっくり説明するなら、いわゆる怪獣……というか「モンスターパニック」映画のテンプレで作られているものの、出来上がってみたら「結局ポン・ジュノ作品になっちゃった」系映画。つまり、いつものポン・ジュノ映画でしたよ。(褒め言葉

映画冒頭、2000年、駐韓米軍基地の白人博士が、韓国人助手に命令し大量のホルマリンを漢江に破棄させます。
その2年後、釣人が奇形生物を目撃。さらに漢江で投身自殺した男が無惨な遺体で発見されるんですね。

同年、漢江の河川敷で父親ヒボン(ピョン・ヒボン)と小さな売店を営むパク家の長男カンドゥソン・ガンホ)はトレーナーに金髪姿で居眠りばかりのダメ親父ですが、元妻との娘、中学生のヒョンソ(コ・アソン)を心から愛しているんですね。

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のどかな休日。パク家長女ナムジュペ・ドゥナ)のアーチェリー大会をテレビで観ているヒョンソとヒボン。
カンドゥは河川敷の客にスルメを届けに行くんですが、そこに突然巨大で奇妙な生物が出現。河川敷でレジャーを楽しんでいた人々を次々に襲い始めるんですね。

カンドゥは、休暇で遊びに来ていた米軍兵士と共に怪物と闘うもののまったく刃が立たず、ヒョンソを連れて必死で逃げますが、転んで手を離した拍子にヒョンソは怪物に連れ去られてしまいます。

怪物が去ったあと、体育館のような場所で行われた合同葬儀に、ナムジュとパク家次男で大学出のフリーター・ナミル(パク・ヘイル)も駆けつけ、パク家は死んだヒョンソを偲んで泣き崩れるんですが、そこに突如政府の役人が乗り込んできて、怪物が未知のウィルスのホストであると接触した者を強制隔離。

パク一家も強制連行&入院させられるんですが、その深夜、死んだはずのヒョンソからカンドゥのケータイに連絡が――というストーリー。

しかし、警察も政府も医者も、誰ひとりカンドゥの話を信じようとしないので、パク家の家族は病院を抜け出すと、あの手この手で警察の追っ手を躱しつつヒョンソの行方を探すんですね。

つまり本作は「モンスターパニック映画」のテンプレを使ってはいるものの、本質的には権力やシステムという巨大な理不尽に翻弄される家族の物語なのです。

そういう意味で本作は最新作「パラサイト」と同じテーマを扱った作品とも言えるし、それこそがポン・ジュノ監督の一貫した作家性と言えるのかもしれません。

コメディー演出

病院から抜け出したあとヒョンソが電話で言った「大きな下水溝」をヒントに、パク家族は彼女を捜すんですが、この家族全員が種類の違うバカなので無策のまま市内の下水溝という下水溝を片っ端から捜し回るんですね。

この辺の計画性のなさや行き当たりばったりっぷりも、ある意味「パラサイト」のキム家族に通じるものがあるかもしれません。

とはいえ、警察でも政府関係者でもない一般市民が、行方不明の子供を捜す(しかも政府や警察に追われながら)んだから、ある意味この行動はリアルと言えるかもですが。

ストーリー自体は割と悲惨で重い内容ながら、どこかコメディー的な家族描写も、ポン・ジュノ印と言えるかもしれませんね。

母親の不在

そんなパク一家には母親の影は見えません。
カンドゥの元妻でヒョンソの母親は、どうやら家族を捨てて出て行ったらしい事がセリフの中で分かるんですが、そのカンドゥの母親もいないんですね。
これも劇中で、父親のヒボンが過去に家族を顧みない酷い父親だった事を告白しているので、もしかしたらヒョンソの母親同様、家族を捨てて出て行ったのかもしれないし、何かの原因で死に別れているのかもしれません。

監督のインタビューによれば、「母親は賢く現実的で、家庭の中でとても強靱な存在」と考えていて、「母親がいると、駄目なはずの家族が、情けない家族に見えなくなると思った」そうなんですね。

つまり、監督にとって「母親」は家族を一つに繋ぐ“かすがい”の役割をしているわけで、本作でその役割を担っているのが娘のヒョンヒだったのです。

そのヒョンヒを失ったことで、家族のダメさ加減が顕になり、バラバラになってしまう。一方、下水溝のヒョンヒは、怪物に攫われた孤児の少年セジュを、母親のように必死に守ろうとするんですよね。

なので、本作冒頭のパク家の最初の姿と対になった本作のラストシーンは、ある意味でブックエンド形式になっているわけですね。

ちなみに、ヒョンヒやセジュが生きていたのは、怪物が飲み込んだ食べ物を巣に運んで一旦吐き出し、貯蔵するという習性があったからみたいです。
実際にそういう習性の水生動物がいるかは分かりませんが、この設定によって怪物が「怪獣」ではなく、巨大化した「生物」であるという事に説得力を持たせていると思いましたよ。

反米意識

本作は、ポン・ジュノ監督の反米意識が割とストレートに現れた作品でもあります。
冒頭で科学者が漢江にホルマリンを流させるという設定は、2000年に在韓米軍が大量のホルムアルデヒドを漢江に流出させた事件にヒントを得ているそうですし、中盤~後半で明らかになる、米軍がウィルスが存在しなかった事を隠し怪物を殺すため猛毒の化学兵器「エージェント・イエロー」を漢江に散布するのは、どこか9.11以降のアメリカを連想します。ちなみに「エージェント・イエロー」という化学兵器アメリカ軍がベトナムで使用した枯葉剤エージェント・オレンジ」に掛けてあるそうですね。

ただ、監督自身の感覚としては、「アメリカ憎し」というよりは、多くの人間が幸せになれない今の社会システムに対しての反感という感じで、そのへんも「パラサイト」に通じている感じがしました。

2006年公開の作品ということで、今見るとCGの粗さが目立つとか、脚本や演出にも、まだ若干の粗さも見えたりしますが、漢江で怪物が暴れるシーンには手に汗を握ったし、ストーリーも(モヤモヤ感も含め)面白い作品でしたよ!

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オリジナル長編なのに総集編っぽい「プロメア」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは「天元突破グレンラガン」シリーズやアニメ「キルラキル」の今石洋之監督と脚本の中島かずきが再びタッグを組んだ劇場版アニメ『プロメア』ですよー!

この作品、劇場オリジナルアニメなんですが、なんだか「TVアニメの総集編みたい」でしたねー。

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概要

天元突破グレンラガン』シリーズやアニメ「キルラキル」の今石洋之監督と脚本の中島かずきが再び組んだ劇場版アニメ。炎を自在に操る集団によって危機に陥った世界を舞台に、主人公と宿敵の戦いが描かれる。ボイスキャストは『聖の青春』などの松山ケンイチ、『BLEACH』などの早乙女太一、ドラマ「半沢直樹」などの堺雅人のほか、声優の佐倉綾音吉野裕行小山力也小清水亜美ら。(シネマトゥデイより引用)

感想

今石洋之中島かずき

本作で監督を務めたのは「天元突破グレンラガン」「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」などで知られる今石洋之
ガイナックスから退社後、大塚雅彦舛本和也と共にアニメスタジオ「TRIGGER」を設立。「キルラキル」などの人気アニメーションを世に送り出しています。

そんな今石と組んで「天元突破グレンラガン」で脚本を担当したのが、劇団☆新感線の座付き作家としても知られる中島かずき

その後、「TRIGGER」を設立した今石と再びタッグを組んだTVアニメ「キルラキル」や、「コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜THE LAST SONG」「ニンジャバットマン」など、数々のアニメ作品で脚本を担当してるんですね。

で、そんな二人が「~グレンラガン」「キルラキル」に続き三度タッグを組んだのが本作「プロメア」なのです。

ざっくりストーリー紹介

炎を操る新人類バーニッシュの出現に端を発する惑星規模の発火現象、「世界大炎上」で人口の半分が焼失してから30年が過ぎた世界。

炎上テロを繰り返す過激派バーニッシュの集団“マッドバーニッシュ”に対抗すべく、対バーニッシュ用装備を扱う“高機動救命消防隊バーニングレスキュー”が消火活動を行っていた。

そんなある日、新米隊員ガロ・ティモス松山ケンイチ)は、火災現場でマッドバーニッシュの首魁である少年リオ・フォーティア早乙女太一)と出会い――というストーリー。

最初は敵同士の二人でしたが、後半でガロがある真実を知ったことで二人は力を合わせ、真の敵に立ち向かうという、まぁ王道の展開なんですが、観た感想を一言で言うなら、(オリジナル長編のハズなのに)「TVアニメの総集編みたい」だと思いました。

物語のスケール感がおかしい

なぜそう思うかというと、物語のスケールがそもそも2時間弱に収まる分量ではないからです。

映画冒頭のアバンで、セリフやナレーションを一切入れずにアニメーションだけで“事の始まり”を見せていく編集には「お!?」と期待したんですが、始まってみればいつものTRIGGER作品で、炎上テロを繰り返す過激派バーニッシュの集団“マッドバーニッシュ”のボス・リオと対バーニッシュ用装備を扱う“高機動救命消防隊バーニングレスキューの新米隊員ガロの戦い。

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ここまでは両者入り乱れてのチーム戦で、まぁいい感じではあるんですが、マッドバーニッシュがガロに逮捕され、バーニングレスキューの手柄を横取りするように対バーニング特殊部隊「フリーズフォース」が現れて横暴な振る舞いをする。

この時点で、観ている人の殆どは“真の敵”の存在を確信するはず。

で、実際その通りの展開になるし、ラスボスも登場した瞬間に大抵の人は「コイツがラスボスだろ」って気づくと思うんですが、やっぱりその通りの展開になっていくんですよね。

つまり、本作はTVアニメ1~2クール分(6~12時間分くらい?)のスケールの物語を無理やり2時間弱にギュッと詰め込んじゃってるんですね。

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だからストーリーの起承転結を追いかけるだけで精一杯。
時間的にキャラクターの魅力や個性や関係性を描く余裕はなくなってしまう。

ところが、TRIGGER……というか今石・中島作品の魅力ってキャラクターの魅力や関係性で物語を引っ張る構成ですからね。
本作では、その一番の魅力を切り捨ててるわけですよ。

さらに、炎を使うバーニッシュたちの扱いはまんま「X-MEN」のミュータント。
X-MENのミュータントって、要は人種的マイノリティーのメタファーですからね。
そういうキャラを出すってことは、当然人種差別というテーマが物語の中心になるハズで、実際、本作でも“バーニッシュ”に対して差別的な描写や“フリーズフォース”のバーニッシュに対するホロコーストっぽい描写もあるにはあるんですが、そこに平行宇宙がどーのこーのとか、地球の危機がどーのこうーのみたいなつじつま合わせの設定をぶち込むだから話の軸がブレてしまう

あのラストには正直、「はぁ?」って思いましたよ。

X-MEN」かと思って観てたら「ウォッチメン」でしたみたいな。

そんな感じで、最終的には「グレンラガン」や「キルラキル」と一緒で、ロジックも何もなく根性と魂ですべてが解決するに至って、もう全てがどうでも良くなってしまうんですよね。

それでも「グレンラガン」や「キルラキル」はTVアニメとして2クール分の積み重ねた分、観客はキャラクターに思い入れがあるけど、本作はそれもないですしね。

アクションシーン

とはいえ、本作はアクションシーンが見せ場のアニメ。
アクションシーンさえカッコよければそれで万事OKなハズ。

で、どうだったかと言えば、無駄にカラフルでポップ、溶岩や炎のカリカチュアされた絵面も相まって、何かもう画面がうるさい

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しかも、キャラやカメラポジションが動きまくる3D描写や「金田フォロワー」今石監督の演出も相まって、どこに何がいてどう動いてるかがさっぱり分からないし、一つ一つの動きに溜めがなく、すごいスピードで絶えず動いてるので、全体的に何してるのかよく分からないんですよね。

お前はマイケル・ベイか!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッっていうw

足し算の作劇、引き算の作劇

今石・中島コンビの魅力と言えば、足し算に次ぐ足し算で過剰に盛った作風だと思うんですが、それはあくまで尺の長いTVアニメだから活きるわけで。

やっぱ劇場アニメ、しかもオリジナル作品の場合は何を活かして何を捨てるかっていう引き算でストーリーを作っていく事は必須だと思うし、それが出来てなかったのが本作の失敗だったのではないかと思いましたねー。

いや、ネットを見ると絶賛評も結構見かけたので、もしかしたら僕がオッサンだから新しいアニメの形についていけてないだけかもだし、もしくは単純に好みの問題かもですね。

興味のある方は是非!

 

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