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無限地獄を描いたシチュエーションスリラー「パラドクス」(2016) 感想*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのはメキシコ発のシチュエーションスリラー『パラドクス』ですよー!
この映画を一言で言うなら「無限ループって怖くね?」という物語。
そして、観終わった後に「あー!」と「あれ?」が同時に来るという、何とも複雑な映画でしたw(ぶっちゃけ今もまだちゃんと理解できてる自信がないです)
で、今回感想部分はがっつりネタバレしますので、もし、これから本作を観る予定の方は、先に映画を観てから、このブログを読んでくださいませー!

いいですね? 注意しましたよ?

 

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あらすじと概要

シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭バンクーバー国際映画祭などで称賛を浴びたスリラー。1階へと下りると最上階の9階へと戻るビル、いくら進んでも同じ道に帰ってしまう道と、不気味なループ空間に迷い込んだ者たちの運命を追い掛ける。監督は、ショートフィルムを中心に活躍してきたアイザック・エスバン。『世界侵略2012』などのウンベルト・ブスト、『父の秘密』などのエルナン・メンドーサらが出演。異様なシチュエーション設定に加え、伏線を張り巡らせた物語にも圧倒される。

ストーリー:とあるビルへと飛び込んだ犯罪を犯した兄弟と彼らを追う刑事。非常階段で1階へと下りたはずの彼らの前に、なぜか最上階である9階が現れ、何度も1階へ下りても同じ現象が発生することに、三人は混乱をきたしていく。一方、どこまでも続く一本道を車で走っていた家族は、いつの間にか元の道に戻っていることに気付く。それぞれが謎のループを繰り返す空間から抜け出そうとする状況で、刑事に足を撃たれたカルロス(ウンベルト・ブスト)は生命の危機にさらされ、一家の長女カミーラは持病の発作を起こしてしまう。(シネマトゥディより引用)

 

 

感想と考察

本作は、ぶっちゃけ序盤~中盤まではつまらないかもです。
怪物や殺人鬼やオバケに追われるわけでもなく、何者かの命令で仲間と無理やり殺し合いをさせられるようなサバイバル系スリラーでもありません。
もうね、ただひたすら閉じ込められるだけの映画なのです。
それも、物凄く狭いとか超高いみたいな極限状況に追い込まれるというわけでもなく、非常階段と一本径という比較的広めの空間で、食べ物や飲み物の心配もなし。

ただ、後半の種明かしが始まった途端、物語は一気に加速し、謎が解明された瞬間に退屈だった序盤~中盤に仕掛けられた伏線に気づいて、「そういう事かー! ……でも、あれ?」となり、もう一回観直したくなる……かなー??w

ここからネタバレ含みます。

 

出口のない地獄

本作では、同じシチュエーションで描かれた2つのエピソードが登場します。

オープニング

まず、オープニングは、流れるエスカレーターのアップからスタート。
瀕死の老婆がエスカレーターに横たわったまま、流れてくるという、イキナリのショッキング映像ですよ。

非常階段編・1

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刑事に捕まった二人の兄弟(兄/カルロス、弟/オリバー)が、スキを見て非常階段から逃げようとしますが、兄が刑事に撃たれて足を負傷。
そのまま警察に連行――と思ったら、出口が無くなってるんですね。
扉にはノブもなく表には出られません。しかも非常階段の1階と9階が繋がっていて、1階まで降りると何故か9階にいるわけです。
もちろん逆も同じで、9階の上に登っていくといつの間にか1階から上がってきてしまうという円環構造。

非常階段に唯一ある自動販売機には、サンドウィッチ、水、ジュース、お菓子、カップヌードルがあるので、数日は耐えられそうですが、食料と水が尽きたら終わりなので3人はパニック。しかも兄カルロスは刑事の玉が動脈にヒットして、結局死んでしまいます。
その時、刑事が不意に気づくんですが、なんと一定時間が経つと飲食したはずの自販機の中身がいつの間にか補充されてるんですね。

一本径編・1

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画面は暗転して、どこかの家。
反抗期の男の子ダニエルと、その妹カミーラ、母親のサンドラ、そして、どうやら結婚前提で付き合っている母親の恋人ロベルトは、サンドラの元夫が務めるホテルにバケーションに。
一本径をひた走り、最初は和気あいあい(ダニエルはロベルトが気に入ってない)のドライブですが、カミーラはロベルトが飲ませたジュースが原因で、アレルギーが発症してアナキライザーショックに。ロベルトが吸入薬をを吸わせようとするものの、『うっかり』道に薬を落としてしまい瓶が割れ、ダニエルは予備の薬を忘れてきています。
急いで家に戻ろうと車を走らせるロベルトですが、なぜかこの一本径に閉じ込められてしまい、結局カミーラは死んでしまい、サンドラは半狂乱になります。

非常階段編・2

物語は再び非常階段編に。
が、なんとそこにいたのはヨボヨボの爺さん。
実はこの爺さんが刑事で、非常階段に閉じ込められて35年が経過してることが分かるんですね。 嫌すぎる。
自販機から供給され続ける飲食物と、亡き兄カルロスの増え続けるカバンの中身。(お金、糸と針、爪切り、歯ブラシセットなど)
もう一人の住人オリバーは暇に明かせて、体を鍛えまくってムキムキになり、何か我流のヘンテコ宗教を始めている様子。
階段と踊り場には、増え続けた大量の荷物と飲食物。それを階に分けて整理したり、ペットボトルの水で洗顔、シャワー、洗濯をしているオリバー。排泄物は空のペットボトルに入れて蓋を閉めてます。
壁一面は、刑事の描いた落書きで埋め尽くされ、何とも不気味でアートな光景に。

一本径・2

一本径も35年が経過。ロベルトとサンドラはすっかり老人になり、サンドラの方は娘の死で廃人同然、年齢による認知症も患っている模様。
食べ物飲み物はドライブインで調達し、二人は車の中でHをして過ごす日々。これまた正直、生理的にキツイ絵面です。
一方、息子のダニエルはすっかり逞しい中年となり、二人から独立してひとり暮らし。
こちらも増え続ける物に囲まれながら、サボテンを煮て食べたり、音楽を聴いたりしています。

一本径には至るところに35年分の割れた空き瓶や、スナックの袋が散乱。

と、ここで観客はあることに気づきます。

中年になったダニエルは、非常階段の刑事に瓜二つ(というか同じ役者)んですね。

そうして、いよいよこの2つの物語が混じり合います。

種明かし

サンドラも死に、ロベルトと刑事にもいよいよ死期が迫り、そこで、二人が突如この恐ろしい地獄の真実を『思い出す』んですね。

刑事はオリバーに、ロベルトはダニエルに、事の真相を話し始めます。
実はこの刑事=大人になったダニエルなんですね。
そして、ロベルトは子供のころルーベンという名の少年で、キャンプの時イカダの上に閉じ込められ、一緒にいたキャンプ指導員と共に35年間暮らし、指導員の死の間際、やはり同じように真相を語られていたのです。

つまり、この無限ループには法則性があって、中年、若者、生贄が閉じ込められ、生贄の死、35年の月日、老人となった中年の死によって、若者の方はループから抜け出すことが出来るんですが、しかし、それは次のループに移動するだけなんです。

そして、無関係に見えた二つの物語の時間は実はずれていて、一本径のダニエルは一度はループを抜け出しますが、刑事として再びループに取り込まれてしまったわけです。

つまり、この無限ループに取り込まれた者は、35年間のループを2回経験して死ぬというルールなんですねー。
ちなみに、無限ループの出口(次の無限ループへの入口ですが)に入り込んだ瞬間、それまでの記憶を完全に失い別人になってしまいます。
そして、一本径のダニエルの前には無人のパトカーが。
オリバーの前には、エレベーターが現れます。

エンディング

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残されたダニエルとオリバーはロベルトと刑事に「自分の名前を書いておけ」と言われたにも関わらず書かずに、それぞれエレベーターとパトカーに乗り込みます。
中には、新しい身分証明書や家族写真、新しい制服などが置かれ、彼らは身支度を整えると、次のループに入っていきます。

そして、カールというエレベーターボーイになったオリバーのエレベーターに、新婚夫婦が入ってきます。

ホテルの30階フロアに着いて、新婚の二人の荷物を持っていたカールは自分の意志とは関係なく、懐の小箱に忍ばせた蜂を放ち、荷物を落としてしまいます。
蜂に刺された新郎は、アナキライザーショックに。カバンに入っていたアレルギー用の薬は、カール(オリバー)が落としたせいで割れてしまっていて、三人はホテルの30階フロアに閉じ込められてしまうというオチ。

ここまで観た観客は、オープニングの花嫁姿の老婆がこの花嫁だと気が付くわけですねー。嫌すぎる。

なぜ、彼らは無限ループに閉じ込められるのか

刑事(ダニエル)、オリバー、ロベルト、ダニエル(刑事)が、この無限ループに閉じ込められた理由は、刑事と、ロベルトから語られます。

別次元に本当の? 自分がそれぞれいて、彼らが幸せになるために、この無限ループの中で彼らは閉じ込められるんですね。
どうも、ある場所に閉じ込められる肉体的負担と、生贄の死による精神的負担が、別次元の彼らの幸福のエネルギー源になっているらしい。
一巡目のダニエルとオリバーは若く、ループの中でも体を鍛えたり有意義に過ごすので、本当の彼らは幸せです。しかし、二巡目になるとそんな気力もなくなり、エネルギーの足りなくなった本当の彼らは不幸になっていくんですね。

そんな別次元の彼らの様子が、ラストの方で無声映画みたいに映し出されます。

考察

以上の事を踏まえて箇条書きで関係性をまとめると、こんな感じになります。

・一本径は1980年、非常階段は2017年の物語。
・一巡目→非常階段のオリバー、一本径のダニエル。
・2巡目→非常階段の刑事(ダニエル)、一本径のロベルト。
・生贄→非常階段のカルロス、一本径のカミーラ、30階フロアの新郎。
・その他→ダニエルの母サンドラ(二巡目?)、新婦。

厳密に言えば、ここに一巡目のロベルト(ルーベン)と指導員(二巡目)、生贄のロベルトの友達が入りますけどね。

で、多分映画を観た人が思うのは、最後のホテルで二巡目のオリバー(カール)と35年を暮らす相手は誰だったのかって事じゃないかと。
カールになったオリバーは二巡目なので死にます。生贄の新郎はアナキライザーショックで死にます。新婦はエスカレーターで老婆になって多分もうすぐ死にます。
あれ? じゃぁ次の“後継者“は?? ですよね。
もしかしたら、カール(オリバー)と新婦の間に子供が出来たのか、それとも、エスカレーターの老婆は、ホテル30階フロアの花嫁とは別人ってことなのかな??

 

で、これは間違ってるかもですが、ホテルの新郎は一本径のカミーラ、新婦はサンドラなんじゃないかと思うんですよね。カミーラと新郎は、同じアナキライザーショックで死んでしまうし、新婦とサンドラは多分同じ女優さんが演じてるんじゃないかなと。
で、カルロスはキャンプで死んだルーベン(ロベルト)の友達? の二巡目じゃないのかなと(怪我で死ぬから)思いました。

つまり、ループしているのはダニエル(刑事)、オリバー(カール)、(ルーベン)ロベルトだけじゃなく、生贄のカミーラ(新郎?)とカルロス(友達)、サンドラ(新婦)も含めた、登場人物全員なんじゃないかなーと。

ということを踏まえて、年代別に登場人物を箇条書きにすると、

イカダ編(??年)

ルーベン(一巡目)、友達(?)、指導員(二巡目)

一本径編(1980年)

ダニエル(一巡目)、ロベルト(ルーベン)、カミーラ(一巡目)、サンドラ(?)

非常階段(2017年)

刑事(ダニエル)、オリバー(一巡目)、カルロス(友達の二巡目?)

ホテル30階フロア(2052年?)

カール(オリバー)、新郎(カミーラの二巡目?)、新婦(サンドラの二巡目?)

エスカレーター(??年)

エスカレーターの老婆=新婦

となり、時代とシチュエーションによって、それぞれ『囚人役』と『生贄役』を入れ替えながら永遠に無限ループの中をぐるぐる回り続けているって事になるんじゃないかなと思って、ゾワゾワしてしまいましたよー! ((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

パラレルワールドタイムリープ

最初、同時代に別の場所で起こっていると思われた二つ(厳密には5つ?)の物語は、実は2つ時間の出来事で、しかも繋がっていた。まるで螺旋階段みたいに延々と続いていく無限地獄の物語だったという設定やストーリー運びが実に巧みで、イーサン・ホーク主演の「プリデスティネーションを思い出しました!

そして、本作を観たあとに、この物語は何も彼らだけではなく、僕も含めた全ての人類に起こっているかもしれない出来事って考えると、何か超怖いんですよね。

で、冒頭のエスカレーターと非常階段はまさに螺旋構造のイメージで、螺旋構造といえばDNAを想起してしまうんです。
つまり本作は、「人間は時間と運命いう牢獄からは永遠に抜け出すことが出来ない」みたいなテーマを、シチュエーションを限定して描いたある意味、寓話的な物語なのかなー? なんて思いました。

登場する老人をことさら嫌~~~~な感じに観せたり、ゴミや食べ物、排泄物が散乱する生理的に不快な絵面が続いたりするし、ストーリーのどこにも救いがない上に、前半から中盤にかけては、(ネタ振りなので)平坦で退屈と、好き嫌いや評価がハッキリ分かれるタイプの映画だと思います。
でも僕は(元々こういうややこしい映画が好きなこともありますが)、本作はかなり楽しむことが出来ましたよー!

ただ、二回以上観るのはかなりシンドイですけどもww

興味のある方は是非!!!

 

タイムパラドックスを描いた傑作▼

aozprapurasu.hatenablog.com

 

全体に漂う不穏なムードは◎、 だけど…「クリーピー 偽りの隣人」(2016) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、昨年公開のサスペンススリラー『クリーピー 偽りの隣人』ですよー! 映画ファンにカルト的人気を誇る黒沢清監督がエンターテイメントに振り切った作品です!

ただ今回は割と文句多めになると思うので、本作が好きな方はスルーして下さいね。

 

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あらすじと概要

アカルイミライ』などの黒沢清監督がメガホンを取り、第15回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝いた前川裕の小説を映画化。隣人に抱いた疑念をきっかけに、とある夫婦の平穏な日常が悪夢になっていく恐怖を描く。黒沢監督とは『LOFT ロフト』に続いて4度目のタッグとなる西島秀俊が主演を務め、彼の妻を竹内結子が好演。そのほか川口春奈東出昌大香川照之ら豪華キャストが集結している。

ストーリー:刑事から犯罪心理学者に転身した高倉(西島秀俊)はある日、以前の同僚野上(東出昌大)から6年前の一家失踪事件の分析を頼まれる。だが、たった一人の生存者である長女の早紀(川口春奈)の記憶の糸をたぐっても、依然事件の真相は謎に包まれていた。一方、高倉が妻(竹内結子)と一緒に転居した先の隣人は、どこか捉えどころがなく……。(シネマトゥディより引用)

 

 

感想

僕は黒沢清監督の作品って「スイートホーム」と「回路」くらいしか観ていないので、あまり偉そうな事は言えませんが、周囲のファン人たちの反応を見ていると「一般ウケはしないけど、監督の世界観にハマった人はファンになってしまう」的な作家性の強い監督というイメージがあります。

本作でも、画作りとか音の使い方とかは、僕がイメージする黒沢清映画って感じだったんですが、内容的にはかなりエンタメに振り切っている感じがしましたねー。

常に漂う不穏な空気感

本作のストーリーをざっくり書くと、元刑事で心理学者の西島秀俊竹内結子夫婦の新居の隣人は、超サイコな香川照之だったからさぁ大変。
幸せで穏やかだった二人の結婚生活に徐々に香川照之が侵食して……。という物語。

全体的に暗い色調の映像と、不協和音のような不安を掻き立てる音響、どこか箱庭的で演劇的な演出。そこに香川照之の怪演が相まって、観ている間ずっと胸の奥がザワザワしてましたねー。
圧縮袋の使い方なんかは、派手さはないけどかなりショッキングでしたしねー。

っていうか、香川照之の使い方としては100点満点だなーと。
香川照之のオーバーアクト(でも、普段よりはグッと抑えてた)も、このエキセントリック役柄にはハマってて、西島秀俊と共演した例のアクション大作の時よりずっと光ってるなーって思いました。

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役者陣の熱演

本作では香川照之だけじゃなく、ほかの役者さんも良かったですねー!
特に奥さん役の竹内結子と、香川照之の『娘』役の藤野 涼子は、本当に熱演! って感じで、藤野 涼子の壊れっぷりや、竹内結子の慟哭は観ていて胸をギュッと掴まれる感じがしました。

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画像出典元URL:http://eiga.com/ 藤野 涼子(左)

西島秀俊はまぁ……いつも通りの「熱演」でしたけども。

さて、と。

というわけで、ここから文句タイム

そんな感じで、画面や音響、役者さんは全体的に良かったし、悪魔のいけにえオマージュ(ですよね?)の分厚い扉、ラスト付近の作り物然とした車の走行シーンなんかはジャンル映画的エンタメ感があって個人的には好印象だったんですが、肝心のストーリーの方にツッコミどころが多すぎて、それがノイズで、ストーリーに集中できないっていうか、いい感じのところでツッコミポイントが入るので、イチイチ冷めちゃうというんですよ。

っていうか、いくらなんでも警察無能すぎね?

いや、ストーリーの展開上そうせざるを得ないってのは分かるし、本作で大事なのはそこじゃないのも重々承知してますよ?
ジャンル映画だし、多少の無理(例えば香川照之の家の構造とか)は100歩譲ってまだ飲み込めますよ。

ただ、警察があまりにもアレすぎてイライライライライライラするし、リアリティーラインがあやふやすぎてストーリーに全然集中出来ないんですよ。
これが、外国映画なら「そういうもの」として飲み込めるんでしょうけど、邦画ですからね。どうにも気になってしまうのです。(地元が舞台のドラマとか観てると嘘の部分が気になっちゃう気持ちに似てる)

フィクションだから嘘が入るのは当然なんですが、せめてノイズにならない程度に登上
人物の行動に物語内説得力を持たせてくれないと、雰囲気だけの「サイコホラー(げ)」な映画止まりになっちゃうし、それは正直勿体無いなーと思いました。

原作がある以上、好き勝手に内容や設定は変えられないだろうし、本作がどのくらい原作に忠実なのかは読んでいないので分かりませんが、少なくとも本作劇中のノイズになっている部分の殆どが、警察の存在と西島秀俊が元警官という設定に起因していると思うんですよね。

これが、犯罪心理学者の西島秀俊vsサイコパス香川照之という図式に集約して、異変に気がついた西島秀俊が警察に頼るも、狡猾な香川照之の計略の前に取り合って貰えず……みたいなシンプル構図だったら、その後の展開の違和感もなかったのかなーと思ったり。
その分、香川照之竹内結子を取り込んでいく様子や、竹内結子が抱えていた西島秀俊への不満? も、もう詳細に描いていくとかね。

 

評価が高かっただけに、観ているこっちのハードルが上がりすぎてたのかもしれないし、決してつまらない映画ではなかったんですが、個人的には画作り満点、でもストーリーで減点って感じでした。

とはいえ、ネットレビューを読むと褒めている人も多いし、確かに不満もあるけど良いところも多い作品だと思いましたよ(´∀`)ノ

興味のある方は是非!

 

万人に観て欲しい傑作映画!! 「この世界の片隅に」( 2016) 感想

ぷらすです。

公開から2ヶ月遅れで、おらが街の映画館でもついに『この世界の片隅に』が公開されました!!
というわけで、公開初日の今日、朝一番の上映を観に行ってきましたよー!!

本作の公開は昨年11月ですが、でも僕の地元みたいに、これから公開される町もきっとあるんじゃないかと思うので、出来るだけネタバレしない方向で感想を書いていくつもりです。が、本当は何の前情報も無しで観たほうが絶対にいい映画なんですね。

なので、これから観る予定の方は、是非是非、先に映画を観てから、この感想を読んでくださいね!

いいですね? 注意しましたよ!

 

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あらすじと概要

「長い道」「夕凪の街 桜の国」などで知られる、こうの史代のコミックをアニメ化したドラマ。戦時中の広島県呉市を舞台に、ある一家に嫁いだ少女が戦禍の激しくなる中で懸命に生きていこうとする姿を追い掛ける。監督にテレビアニメ「BLACK LAGOON」シリーズや『マイマイ新子と千年の魔法』などの片渕須直、アニメーション制作にテレビアニメ「坂道のアポロン」や「てーきゅう」シリーズなどのMAPPAが担当。市井の生活を壊していく戦争の恐ろしさを痛感する。

ストーリー:1944年広島。18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚し、生まれ育った江波から20キロメートル離れた呉へとやって来る。それまで得意な絵を描いてばかりだった彼女は、一転して一家を支える主婦に。創意工夫を凝らしながら食糧難を乗り越え、毎日の食卓を作り出す。やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされ、数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊されていく。そんな状況でも懸命に生きていくすずだったが、ついに1945年8月を迎える。(シネマトゥディより引用)

 

 

感想

映画の中には、「観終わった後に居ても立ってもいられなくなる作品」っていうのがあります。
僕にとっては、例えば近年なら「マッドマックス/怒りのデスロード」と「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」なんですが、本作「この世界の片隅に」も(その2本とはまったくテイストは違うんですが)、そんな「居ても立ってもいられない映画」の一本でしたよー!

原作は「夕凪の街 桜の国」の、こうの 史代の同名マンガ

本作の原作は、「漫画アクション」で2007年1月23日号~2009年1月20日号まで連載された、広島出身の漫画家、こうの 史代の同名マンガです。
終戦間際の広島を舞台に描いた作品で、様々な実験的表現や。戦争当時の日付と連載の日付をリンクさせるなどの仕掛け(例えば作中が昭和20年3月なら、平成20年3月発売の号に掲載とか)で反響を呼び、単行本が完結したあともクチコミなどで今尚売れ続けているようです。

監督は「マイマイ新子千年の魔法」の片渕須直

そんな本作の監督を務めるのが、前作「マイマイ新子千年の魔法」でメディア的な宣伝が殆ど無かったにも関わらず、クチコミとファンの熱心な活動によってカルト的ロングランヒットを飛ばした片渕須直です。

本作では、クラウドファンディングで集まった資金でパイロット版を製作、その映像を元に、出資者から資金を集めて本作を完成にこぎ着けました。
また、本作もメディアでの宣伝はほとんどなく、全国たった63スクリーンでの小規模な公開スタートでしたが、その後、ネットを中心に話題を呼んで今尚、公開館数は増えている状況です。

徹底した取材を元にしたリアルな描写

この二人に通じるのが徹底した取材を元に、当時の広島、呉市をリアルに再現した描写です。
当時の資料や写真だけでなく、両市に存命の戦争経験者の方々の生の体験談を聞くなどして、当時の町並みや情景、市井の人びとの生活様式や価値観までを作品の中に入れ込むことで、作品の登場人物が実在するような奥行きを表現しています。

また、デフォルメされ柔らかい線で描かれたキャラクターとは対照的に、映画版では軍艦や戦闘機など、細部に至るまで緻密に描くなど、TVアニメ「ブラックラグーン」なども監督し兵器にも造詣の深い片淵監督のこだわりが散りばめられ、作品に更なる厚みを持たせているんですよね。

よく「神は細部に宿る」と言いますが、原作者と映画スタッフの徹底したディテールへのこだわりによって、本作にはまさに神が宿ったようなリアリティーが生まれているんじゃないかと思いました。

主人公すずの視点を通して「世界」を描く物語

本作の主人公、すずは大人しくてポワポワした女の子で、特技は絵を描くこと。
江波市で海苔を作る両親と兄妹の5人家族で、貧しいながらも幸せに暮らしていました。そして昭和19年に呉市の北条周作の元に嫁ぎ、不器用ながらも家や土地に馴染んでいきます。しかし次第に戦況は悪化、軍港の町、呉市は毎日のように空襲され……。

という物語。

こんな風に書くと「ああ、戦争映画か」と思われるかもですし、実際その通りなんですが、本作が他のいわゆる「戦争映画」と一線を画すのは、「戦争」ではなく「戦時中の市井の人々の生活」を描いた作品というところ。

爆弾が降り注ぎ、次第に苦しくなる食糧事情の中、すずや北条家の家族、近隣の人々はそれでも、少ない材料を工夫をしながら食事を作り食べ、配給に並び、仕事をして、何か失敗して「ありゃー」って言って笑い合う、そんな極々「普通の生活」を送っています。

そんな市井の人々の当時の「普通」を、本作は一話完結の短編連作のように、すずの視点で綴っていくし、観ている観客もすずのエピソードに笑ったり、野草を摘んでご飯を作っているシーンでは、すずにつられて少しワクワクしたりしながら観ているわけですね。

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しかし、その合間にも彼ら彼女らは空襲を避けるために防空壕に入り、頭上からは敵機を撃ち落とそうと発射される炸裂弾の破片が降り注ぎ、焼夷弾によって町が燃えます。
当時の生活には、そうした悲惨極まりない現状も日常に一部として含まれていて、それも込みで、すずたちにとっては「普通」だし、どんな苦しい状況でも「普通であろう」としているんですね。

もちろん、そんな状況にすずたちが何も思わないほど呑気なわけではなく、それでも「普通の生活」を送ることが、すずたちにとっての「戦い」なのです。

しかし、そんなすずたちの戦いも虚しく、物語は8月6日に向かって刻一刻と進んでいくんですね。

つまり、そんなすずの見るミニマムな「普通の生活」を通して、本作はその向こう側にある、大きな「戦争」を、もっと言えば「生きるとは何か」を描いた作品なんです。

だからこそ、クライマックスのすずの慟哭に、僕ら観客は強いショックを受け心を震わされてしまうのです。

のんとすず

そんな本作の主人公 すずを演じるのは、能年玲奈改め、のんです。
個人的に、彼女の声って素朴というか、悪く言えば女優としては決して美声ではないと思うんですが、本作ではそんな彼女自身の声やキャラクターも含めて、すず役にピッタリだなって思いましたねー。
っていうか、一度本作を観てしまうと、彼女以外にすずの声は考えられないくらい。

NHKの朝ドラ「あまちゃん」やほかの作品でもそうでしたが、のんという女優さんには、役者としての実力だけじゃなく、人を惹きつける『何か』があるのかもしれません。

本作がここまで素晴らしい映画になった要因の一つが、すずの声にのんを起用したキャスティングなのは間違いないと思います。

初めての光景

今日が初日ということもあり、座席には結構なお客さんが座っていたんですが、面白いエピソードのシーンでは客席から笑い声があがり、クライマックスではすすり泣きが聞こえていました。

で、普通は映画が終わってエンドロールが流れている途中で、席を立つ人が割と多いんですけど、本作ではエンドロールが完全に終わるまで誰ひとり席を立つ人がいなかったんですよね。これは僕にとっては初めての経験だったし、この観客の反応が、本作の魅力を何より物語っているのではないかと。

とにかく、この映画は大人から子供まで万人に観て欲しいですし、
日本映画の歴史に名前を刻まれる名作だと思いましたよー!

興味のある方は是非!!!!!

 

▼原作コミック▼

青春+ゾンビ+コメディー「ゾンビワールドへようこそ」(2015/日本未公開) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2015年製作のゾンビコメディー
『ゾンビワールドへようこそ』(原題:Scouts Guide to the Zombie Apcalypse)
ですよー!

最近流行の「ゾンビ+〇〇映画」ですが、本作はゾンビ+青春映画です。
しかも、主人公三人組は、クラスカースト最下位のイケてないDT男子ズ!
この三人が、ボーイスカウトの知識でゾンビの大群と対決するという、何とも心躍る映画でしたー!

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概要とあらすじ

冴えないボーイスカウト3人組がゾンビの大群と死闘を繰り広げるサバイバルスリラー。

ストーリー:高校生になってもボーイスカウトを続けているベン、カーター、オギー。女の子に興味津々のベンとカーターはボーイスカウトを辞めたがっていたが、真剣に取り組むオギーにそのことを言い出せずにいた。
そんなある日、思いがけずパーティに誘われたベンとカーターはキャンプを抜け出して会場へ向かおうとするが、その途中でゾンビの大群に出くわしてしまう。ピンチに陥ったところをストリップバーのウェイトレスに助けられ、オギーとも合流した彼らは、ボーイスカウトで身につけた様々な技術を駆使して凶暴なゾンビたちに立ち向かう。

ベン役に「グランド・ジョー」のタイ・シェリダン。「パラノーマル・アクティビティ」シリーズの脚本家クリストファー・ランドンがメガホンをとった。(映画.comより引用)

 

 

感想

まず最初に書いちゃいますがこの作品、個人的に超面白かったです!

ゾンビ映画なので当然ゴアシーンもありますが、コメディー映画なので思わず笑っちゃうシーンも盛りだくさん。
しかも、非モテリア充のボンクラ三人組が主人公とくれば、もう、僕のツボにドンピシャでしたよ!

ストーリーが面白い

本作の監督はパラノーマル・アクティビティ」シリーズの脚本家クリストファー・ランドンということもあってか、まず物語がちゃんと面白いし、ゾンビ映画ならではのツボもちゃんと心得てます。
その上で、ボーイスカウトの三人組を主人公に据えてしっかりその設定を生かしてるところが良かったですねー。

また、非モテ男子の青(性?)春ムービーとしてもとても良く出来ていて、そこにゾンビという非日常的なエッセンスを入れ込んでいるという印象を受けました。

まず、冒頭のゾンビウイルスが拡散する原因となる、冒頭のシーンからして面白いんですよ。
間抜けな掃除夫が、研究材料にされていたゾンビをうっかり起こして襲われて――っていうシークエンスなんですが、もう、ここを観ただけで「あ、これは面白い映画だと確信出来るセンス溢れるシーンでした。

キャラクターが魅力的

そんな本作のメインキャラクターは、幼馴染の高校生三人組。
三人は、子供の頃からボーイスカウトで一緒だったという設定です。

タイ・シェリダン演じるメインの主人公ベンは、真面目で正義感はあるけど、お年頃なので女の子にも興味津々でカーターのお姉さんに片思い中な極々普通の高校生男子。

ローガン・ミラー演じるカーターは、チャラくて調子が良くて、エッチな事しか頭にない、これまた極々普通の男子高校生。

ジョーイ・モーガン演じるオギーは、二人と違ってボーイスカウト活動が楽しくて、課題をクリアすると貰えるワッペンを集める事に使命を燃やし、森や動物にも詳しいけど、ちょっとズレてる太っちょ男子高校生。どうも彼のお父さんはボーイスカウトのリーダーで、既に亡くなっているいるらしく、彼がボーイスカウトを頑張っている原因になってる事がわかります。

そんな彼らは、ロジャー隊長のもとボーイスカウト活動に勤しんでるわけですが、ベンとカーターは、ボーイスカウトを辞めたいと思ってるんですよね。
で、そんなある日、思いがけずパーティに誘われたベンとカーターはキャンプを抜け出して会場へ向かおうとするが、その途中でゾンビの大群に出くわして――という物語。

さらに、本作に登場する重要キャラが、高校を中退してストリップバーで働く女の子デニーズ(セーラ・デュモント)です。彼女は本作の中で一番HOTで、男前な姐さんキャラだったりします。

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ゾンビが魅力的

本作に登場するゾンビもとても魅力的です。
ゾンビって沢山登場するので、わりと十把一絡げになりがちなんですが、本作の場合、まず登場するゾンビはみんな、感染して間がないので、ゾンビになりたてのピチピチなんですね。

なので、腐ってもないし動きの素早いのやトロいのや、それぞれ生前の個性を引き継いでるという設定。
その辺、ゾンビの造形や動きに監督はかなりこだわっていたようで、特殊メイクも考えられていたし、モンスター専門振り付け師のパフォーマーを起用して、ゾンビ個々の動きもそれぞれ考えられてました。

なので、ストリッパーのゾンビのポールダンスや、好きだったブリトニー・スピアーズの曲を歌ったりしますよ。

だって思春期男子だもの!

あと、生前セクシーな女性警官だったゾンビが金網に引っかかって動けない&おっぱいがはだけるシーンがあるんですが、カーターが思わずそのゾンビのおっぱいを触っちゃうところとか、爆笑しながらも「うんうん、分かるよカーター!」と思わずグッときてしまいましたよw

思春期真っ盛りの男子高校生ですもんね。
そりゃあ、例えゾンビでも……っていうか、いや、むしろゾンビだからこそ、目の前におっぱいがあったら触らずにはいられないですよねー。だってゾンビ相手ならおっぱい触っても怒られないものw

ベンの方も、パーティーの場所を知るため、カーターのお姉さんの日記を探している最中に下着の引き出しを開けて、ドキっとしたりする様子は、実に微笑ましかったです。

まぁ、二人ともその後しっかりバチが当たるので、道徳的って言えるのかな?ww
バチが当たると言えば、劇中ムカつくイケメンや、ビッチがしっかりゾンビに食われるのもポイント高かったですねー。
ちなみに後で知ったんですが、どうやらそのイケメンは、シュワちゃんの息子らしいですよw

そして燃えるクライマックスへ!

そんな感じでなんやかんやあって、最後のクライマックスに向かうんですが、この時三人がホームセンターで、対ゾンビ用の武器をDIYするシーンは燃えましたねー!
それぞれ、ボーイスカウトの知識や技術を駆使して武器を作るんですが、その時、しっかり技能取得の証のワッペンの画がアップになるディテールは素晴らしかったですよ!

で、その武器を使ってクライマックスの大立ち回りのシーンに突入して、ゾンビをガンガンやっつける様子(ソフトな表現)は、昨年公開されたゾンビ映画の傑作邦画「アイアム・ア・ヒーロー」に通じるカタルシスがありました。(発表はコッチの方が先ですけども)

とにかくいちいち気が効いてるし、とかくインパクト重視でストーリーはおざなりになりがちなゾンビ映画の中で、これだけしっかりストーリー構成をして、その上でしっかり笑いも入れるセンスはさすが脚本家だなーと思いました。

まぁ、ゾンビ映画なのでグロいのや怖いのや、下ネタやおっぱいが苦手な方にはオススメできませんが、個人的には超面白かったですよー!

興味のある方は是非!!

 

知られざる良作「セレニティー」 (2005/日本未公開) 感想

明けましておめでとうございます。

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2005年米国公開のSF作品『セレニティー』ですよー!
新春一発目の感想がこれで大丈夫なのかと、思わず自問自答してしまうマイナー作品ですが、これが中々見応えがあったんですよ!
ストーリーの方はよく分かりませんでしたけどもw(ダメじゃん)

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あらすじと概要

宇宙の何でも屋を主人公にし、アメリカでカルト的な人気ながらも打ち切りとなったTVシリーズ「Firefly」の映画版にあたるSFアドベンチャー。「バフィー~恋する十字架~」や「エンジェル」といった人気シリーズを作り出してきたジョス・ウェドンの劇場長編監督デビュー作。

ストーリー:500年後の未来。無法の宇宙には同盟による統一化の波が押し寄せようとしていた。同盟に反抗する退役軍人マルコムが船長を務めるセレニティー号は、必要とあらば強盗もいとわない何でも屋。マルコムの右腕ゾーイ、その亭主でパイロットのウォッシュ、メカ担当ケイリー、元傭兵ジェインなど個性豊かなクルーに混じり、乗客として医師のサイモンと妹リヴァーがいるが、実はこの兄妹は同盟からの逃亡者であり、リヴァーこそ同盟によって最強の戦闘兵器に改造されていた最終兵器だった。同盟の暗殺者による追跡に、対抗勢力である“リーヴァーズ”も絡み合い、熾烈な駆け引きを展開していくのだが…。(allcinema ONLINE より引用)

 

 

感想

僕がなぜこの作品を観たかというとですね、監督があの『アベンジャーズ』のジョス・ウェドンだったからなんですが、知ってる役者が一人も出ないし、キャラクターの関係がよく分からないんですよ。
あれ、何でだろう? と思ったらこの作品、なんと打ち切りになった米国ドラマの完結編的な映画みたいなんですね。

通りでキャラ説明が全然ないわけだとw

ただ、映像の方は中々見ごたえのある作品で、その辺はさすがジョス・ウェドンだなーって思いましたよー!

特撮映画を思わせる迫力の映像!

まず先に、本作の物語をざっくり説明すると、今から500年後の未来が舞台のSFアドベンチャー映画でして。
色々あって地球に住めなくなった人類は住める星を探して宇宙に出るんですね。
でも宇宙に出てもケンカばっかりの人類は、流石にこのままじゃマズいべーと『同盟』を結成。反同盟との戦争にも勝利して実質銀河系の実権を握るわけです。

そんな同盟の地盤を揺るがす『機密』を抱えた改造人間平気少女リヴァーを救い出したのが宇宙海賊マルコム率いる『セレニティー号』で、ここから同盟軍と宇宙海賊の、壮絶なリヴァー争奪戦が始まる的な感じ。

もっとざっくり言うと、超小規模な「ローグワン」ですw

っていうか、多分ジョス・ウェドン監督、スター・ウォーズを意識したんじゃないかなー? っていうビジュアルなんですよねー。

1977年のエピソード4ぽいというか、2005年作品なのでもちろんCGを使ってるんですが、なんかこう特撮感があるというか。

特に前半、砂漠っぽい星での銀行強盗→ゾンビ感漂う食人族“リーヴァーズ”とのチェイスシーンなんかは、往年のスター・ウォーズを観ているみたいでワクワクしましたよ!

セレニティー号や他の宇宙船のデザインも、どこかレトロ感があってダサカッコ良かったですしね。
個人的に、前半から中盤にかけては、かなりワクワクドキドキしました。
あと、リヴァーちゃんのアクションもカッコ良かったですしねー。

ただ、物語後半はリヴァー(というか同盟)に関する謎解きシークエンスな分、若干の尻すぼみ感もないではないですが。

あと、物語の世界観やキャラクターの関係性が漠然としか分からないので、思い入れが出来ないという弱点もありました。

テレビドラマが本編だった!

というのも、本作は2002年に放送され、一部ファンにカルト的人気を博しながらも、三ヶ月で打ち切られたドラマ『ファイヤーフライ 宇宙大戦争』のいわば完結編らしいのです。

映画冒頭、文字でそれまでの流れが説明されてたのはそういう事だったんですねー。
ただ、それぞれのキャラや関係性については全然説明されずに「皆様お馴染みの」的な感じで登場するので、初見だと「お前誰やねん!」ってなっちゃうんですよね。
致し方ない部分はありますが、出来れば初見の観客向けに、もう少しキャラ紹介があると良かったなーと思ったり。

もしくは、今のジョス・ウェドン監督で劇場三部作としてリメイクしてくれたら、人気が出そうだなーと思いました。

興味のある方は是非!

 

【オススメ】今年公開された映画ベスト11【2016】

ぷらすです。

12月9日に、2015年版のオススメ映画をご紹介しましたが、今回は、2016年に公開された作品から、個人的にオススメしたい11本をランキング形式でご紹介しようと思いますよー!(どうしても10本に絞れませんでした)

100%僕の好みなので、人によって好き嫌いはあるかと思いますが、レンタルするDVDに迷った時の参考になれば嬉しいです(*´∀`*)ノ
ちなみに今回は、下にスクロールするほど、順位が上がっていくスタイルですよー!

 

11位

ブリッジ・オブ・スパイ

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巨匠スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演のサスペンス映画。
米ソ冷戦が最も緊張状態にあった1950年代の実話をもとにしたサスペンス映画です。
ソ連のスパイ ルドルフ・アベル役を演じたマーク・ライアンスが、何とも素晴らしい。
重くて難しい映画なんじゃないかと、正直観る前は身構えてたんですが、実際観てみると映画としてとても面白い作品でした。さすがスピルバーグですねー。

 

10位

スタートレック BEYOND」

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大人気SFドラマ『スタートレック』シリーズのリブート版第3弾。
J・J・エイブラムスに変わり『ワイルドスピード』シリーズのジャスティン・リンがメガホンを取りました。
監督交代ということで観る前は少し心配してたんですが、映像の迫力もアクションの流れも素晴らしかったです!
できれば、3作まとめ観がオススメ!

 

9位

「COP CAR / コップ・カー」

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みんな大好きケヴィン・ベーコンが主演、製作総指揮を務めたクライムサスペンス。
いたずら小僧に翻弄されるベーコン、車を上手く盗めなくてイライラするベーコン、牧場を全力疾走するベーコンなどなど、色んなベーコンが堪能できるベーコン好きにはたまらないベーコン映画です!

 

8位

ゴーストバスターズ

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オリジナルの人気故に、公開後出演女優のツイッターが一部の熱狂的オリジナル信者に荒らされるなど、イヤンなニュースも飛び込んできたりしましたが、オリジナルを観たことがない人も楽しめる面白い作品だと思いますよ。
ホルツマン大スキー(*´∀`*)ノ

 

7位

ズートピア

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ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの最新作。
今年公開のアニメ映画で1本選べと言われたら、この作品をオススメします。
大人から子供まで、誰でも楽しめる作品なんじゃないでしょうか。
ドキドキワクワクハラハラ、そしてラストはスカっとするエンターテイメント作品です。

 

6位

ヘイトフル・エイト

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クエンティン・タランティーノ監督最新作です。
上映時間なんと168分と長尺な作品ですが、全然退屈しなかったのは僕がタランティーノ信者だからですかねー?w
無駄話にも思えるセリフの応酬からやがて真相とテーマが見えてくるという、シナリオ出身のタランティーノらしい作品にして、集大成的作品だと思いますよー!
主演は、みんな大好きサミュエル・L・ジャクソンですよー!

 

5位

ちはやふる 上の句」

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競技かるたに青春を懸ける若者たちを描いた同名少女漫画の実写化作品前編。
主演の広瀬すずがとにかく素晴らしいです。
30巻以上続いている原作の映画化なので内容的には駆け足な部分もありますが、青春映画として良く出来てるし、クライマックスのかるたシーンも素晴らしいです。
できれば、後編「~下の句」と続けて観ることをオススメしますよー!

4位

デッドプール

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個人的な好みで言えば今年のナンバー1作品なんですが、観る前に多少アメコミの予備知識がないと混乱しちゃうかもなので、今回は4位で。
最初から最後の最後までサービス満点。ファンは全員「これが見たかった!」と拍手喝采のはず。
ネガソニックたん最高!(;゚∀゚)=3ハァハァ

3位

アイアムアヒーロー

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花澤健吾の人気同名コミックの実写映画化作品。
世界に胸を張れる国産ゾンビ映画です!
とにかくゾンビが怖い! そして切ない!
あと、有村架純が可愛い! 長澤まさみ大泉洋もイイ!
なにより志が高い!
世界よこれが日本だ!」と胸を張れる数少ないエンタメ映画です。

ゾンビ映画が苦手な人には合わないと思いますが、ゾンビとグロ描写が大丈夫なら観て損はしない映画だと思います!

 

2位

「オデッセイ」

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巨匠リドリー・スコット監督がメガホンを取り、マッド・デイモン主演のSF映画。
一人ぼっちで火星に取り残されたマッド・デイモンが、ジャガイモを栽培する映画です。
2時間21分と、かなり長尺な作品ですが退屈はしません!
次から次へと降りかかる危機を、マッド・デイモンが知恵と勇気とダクトテープで乗り越えていきます。
劇中流れる70年代ディスコソングもサイコー!

 

1位

シン・ゴジラ

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エヴァンエリオン」の庵野秀明監督と盟友 樋口真嗣監督がタッグを組んだ、12年ぶりのゴジラシリーズ最新作(日本)にして、初代ゴジラのリブート作品。
個人的に日本とアメリカで公開された全てのゴジラ作品の中でも最高傑作だと思います!
正直、庵野秀明樋口真嗣という名前を見たときは、期待より不安の方が大きかった本作ですが、いざ蓋を開けてみれば初代ゴジラをも超えるとんでもない作品になってました。庵野さん、あんたスゲエよ!

ただ、本作はまだDVDレンタルが始まってないんですけどね。残念!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

というわけで、僕の2016年公開映画ベスト11でした!

ちなみに「この世界の片隅で」ですが、僕の地元では来年1月公開なので、まだ観ていないんですよー!・゜・(ノД`)・゜・

さておき、このランキングには大した意味はなくて、ここに載せた作品はどれも個人的に大好きな映画です。
もちろん、ここには載ってませんが面白かった映画もたくさんありましたよ。
ともあれ、今回のブログが読者の方の参考になれば嬉しい限りです。
もし、気になる映画があればリンクから各映画の感想に飛んで下さいませー。

それでは、良いお年をー(*´∀`*)ノシ

 

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とにかく柳楽優弥がスゴイの一言!「ディストラクション・ベイビーズ」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、今年公開された日本映画『ディストラクション・ベイビーズ』ですよー!
正直、観終わったあとも上手く頭の整理がつかなくて、ラッパーの宇多丸師匠の論評を聴いたりネット評を何本か読んで、やっと飲み込む事が出来たので、何とかこの感想を書きました。
いや、難しい映画ではないんですけどね。

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あらすじと概要

イエローキッド』『NINIFUNI』などの真利子哲也監督が手掛けた若者による群像劇。『桐島、部活やめるってよ』などの喜安浩平が共同で脚本を手掛け、愛媛県松山を舞台に、若者たちの欲望と狂気を描く。暴力にとりつかれた主人公には『ゆるせない、逢いたい』などの柳楽優弥がふんし、ほとんどセリフのない難役を演じ切る。さらに『共喰い』などの菅田将暉、『渇き。』などの小松菜奈、『2つ目の窓』などの村上虹郎らが出演。

ストーリー愛媛県のこぢんまりとした港町・三津浜の造船所に2人で生活している芦原泰良(柳楽優弥)と弟の将太(村上虹郎)。けんかばかりしている泰良はある日突然三津浜を後にし、松山の中心街で相手を見つけてはけんかを吹っ掛けていく。そんな彼に興味を抱いた北原裕也(菅田将暉)が近づき、通行人に無差別に暴行を働いた彼らは、奪った車に乗り合わせていた少女・那奈小松菜奈)と一緒に松山市外へ向かい……。(シネマトゥデイより引用)

 

 

感想

まず最初に言っておかなくてはいけないのが、本作は決して万人向けのエンターテイメント作品ではないということです。

とにかく、暴力・暴力・暴力。108分間ひたすら暴力が描かれます。
柳楽優弥演じる主人公は訳わからないし、菅田将暉はゲスいし、小松菜奈はムカつくしで、ストーリーを追って観ようとすると、「え、どうゆうこと?」って思う人も多々いるんじゃないかなーって思いました。
逆に、あまりに規格外すぎて、展開の先読みが出来ない面白さはあるんですけどねー。

柳楽優弥がスゴい

柳楽優弥演じる主人公 泰良(たいら)は、殆どセリフがなく、生い立ちも殆ど語られず、彼が固執する暴力には一切何の理由も目的もないという、本作の中で一番謎のキャラクターです。

なのに、観客が泰良に惹かれてしまう一番の理由は、やはり主演の柳楽優弥が醸し出す説得力だと思うんですね。

序盤、“獲物“を求めて松山市をうろつく彼の後ろ姿を、カメラが追っていくシーンがあるんですが、もう、その段階で「あ、こいつヤバイやつだ」感が観客に伝わってくるんですよね。

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そして、最初の獲物であるバンドのあんちゃんを筆頭に、バカ学生、ヤクザと次々にケンカを吹っかけては勝ったり負けたりリベンジしたりを繰り返します。

そのケンカのシーンは、ちょい引き気味のワンカットという、ドキュメントタッチで撮影されるんですが、これが実に生々しいんですねー。
こう、アクション映画だと殴ったり蹴ったりする音ってちょっと重くて派手じゃないですか。
ところが本作では、「ボカッ!」じゃなくて「ペチ」「ポコ」っていうちょっと軽めで間の抜けた音なんですね。でも、それが逆にリアリティーがあって実に生々しいし、観ていて「イタタタ!」ってなっちゃうんですよね。

で、前半はずっと、泰良のケンカシーンが続きます。
多勢に無勢とかまったく考えずに、何人いようが目的の“獲物“めがけて殴りかかっていく彼に最初は引いちゃうんですが、負けてもすぐにリベンジマッチを仕掛けるそのしつこさとか、もう相手の身になると悪夢でしかないなと思っちゃいます。

さらに、泰良は喧嘩するたび、負けるたびに学習して、強くなるんですよ。
なので、映画前半はある種のスポ根もののような爽快感さえあるんですよね。

ただ、前述したように彼のケンカには、理由も目的もなくて、ひたすら目をつけた“獲物“に勝つためだけの暴力だし、もっと言えば泰良自身が純粋な暴力そのものなんですよね。

そんな難しい泰良というキャラクターを、柳楽優弥は見事に演じ、ともすれば滑稽でマンガっぽいキャラクターに独特の色気と実在感を出していましたねー。

菅田将暉がゲスい

そんな泰良に惹かれて寄っていくのが、菅田将暉演じる北原裕也です。
最初は、泰良にボコられる学生の仲間の一人として登場した彼は、チャラくて、ヘタレで、イキってて、強いものには弱く、弱いものには強いという、まさに
ゲスの極み( ゚д゚ )を体現したキャラクターです。

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そんな彼は、映画中盤で泰良に擦り寄り、彼を利用しようとします。
ところがそれは逆で、実は、裕也が泰良の暴力に飲み込まれている事に彼は気づいていないんですね。

それが証拠に、泰良と組んだ祐也がやらかす、あるドン引きの行動があるんですが、そのシーンだけでも「あ、コイツ何も分かってない」っていう事が分かるんですねー。

とはいえ、この二人が出会うことで、それまでスポ根的清々しささえあった本作のカラーが一気に変わっていきます。

小松奈々もヒドい

そんな二人が四国遠征ケンカ旅のために、運転手をボコって手に入れた車に乗っていたのが、小松奈々演じるキャバ嬢の那奈
彼女はそのまま拉致られて、菅田将暉に酷い目に合わされる、いわば被害者のはずなんですが、真利子哲也監督は、彼女をただの被害者にはしませんでした。

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画像出典元URL:http://eiga.com/

映画終盤に彼女が起こす、取り返しのつかないある行動が、三人の均衡を崩し、ラスト間近の逆襲が、泰良の暴力に辛うじて残っていたリミッターを解除する引き金になってしまうんですねー。

「暴力」とはを突きつける映画

映画冒頭からしばらくは、「なんだこれは?」と訳も分からずに泰良のケンカを延々観せられ、前半、次第に泰良のケンカをエンタメ的に楽しんでいた観客は、泰良と裕也が組んだ中盤、裕也の行動に冷水をぶっかけられます。

それは、真利子哲也監督が観客に向かって突きつけた「暴力とは」という問いかけでもあるし「お前ら、関係ないと思ったら大間違いだよ」という警告でもあるように感じましたねー。
まぁ、それにしたってこのハシゴの外し方はエグいとは思いましたがw

 

もちろん、まったく不満点がない傑作ということはなく、ところどころ、「あれ?」と思うシーンがあったりはしますし、前述したように好き嫌いがキッパリ分かれる映画だと思います。

それでも、ここまで真正面から「暴力」を描いた作品は邦画では珍しいと思うし、観終わったあとのショックやモヤモヤも込みで、一見の価値アリな作品だと思いましたよ!

興味のある方は是非!!!