今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

良い意味で和洋折衷、前作から更にパワーアップした傑作!「KUBO / クボ 二本の弦の秘密」(2017)

ぷらすです。

日本公開から2ヶ月遅れながら、僕の地元でもついに『KUBO / クボ 二本の弦の秘密』が公開されたので、観に行ってきましたよー!

今回で日本公開は3本目となるライカ作品ですが、前作「パラノーマン ブライス・ホローの謎」の技術を更に押し進め、前作から更にパワーアップした作品になってましたねー!

で、今回は後半部分でネタバレしていくので、これから本作を観る予定の人は、先に映画を観てから、ネタバレ部分を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

 

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

コララインとボタンの魔女 3D』などを手掛けたアニメーションスタジオのLAIKA制作によるストップモーションアニメ。日本を舞台に、魔法の三味線と折り紙を操る片目の少年が出自の秘密を探るべく、壮大な冒険を繰り広げる。監督は『パラノーマン ブライス・ホローの謎』などに携わってきたトラヴィス・ナイトボイスキャストにテレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのアート・パーキンソンをはじめ、シャーリーズ・セロンマシュー・マコノヒーらが参加。人形を1コマずつ動かして作り上げた繊細な映像に注目。

ストーリー:クボは三味線を奏でることで折り紙を自由に操ることができるという、不思議な力を持つ少年。かつて闇の魔力を持つ祖父に狙われた際に父を亡くし、片目を奪われたクボは、最果ての地で母と生活していた。しかし、闇の刺客に母までも殺されてしまう。両親のあだ討ちを心に誓ったクボは、面倒見のいいサルと弓の名手であるクワガタを仲間にする。(シネマトゥディより引用)

感想

これまで日本公開されているライカ作品は、「コララインとボタンの魔女 」「パラノーマン ブライス・ホローの謎」そして本作の3本(2014年制作の「ボックストロール」は日本未公開)ですが、新作毎に進化を続けています。

ライカのストップモーションアニメは、パペットアニメーションという人形を少しずつ動かして1コマずつ撮影していくやり方ですが、今回はなんと、体長約5mの巨大パペット体長5cmにも満たない最小のパペットも登場。

また、人形の動きは実際に人間が動く姿を撮影し、その動きを参考にアニメーションで再現したり、海の波や背景は、一旦ミニチュアで作って動かしたものを撮影してVFX(CG)で加工したりしているのだそうですよ。

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さらに、動きに応じて表情を変えるために3Dプリンターで制作したパーツは、口のパーツが8,000x眉のパーツが8,000。組み合わせの可能性としては約4万8000通りもあるそうで、ほんと、気が遠くなるような手間をかけてストップモーションアニメを制作しているんですねー!

本作では、昔の日本が舞台ということで、平安時代の資料を調べて衣装やセットを作り、お盆や灯篭流しといった日本の風習なんかも入念に取材し再現しているようです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 実写と見まごうばかり。美しい灯篭流しのシーン

それでいて、ストーリー作りの骨格はあくまで西洋的なので、良い意味で「和洋折衷」な感じの作品になっていたと思いますねー。

で、過去2作の感想でも書いてきましたが、ライカのアニメーションの凄いところは、動きや映像だけでなく、徹底的に練りこまれたストーリー作りにあるんですよね。

本作も、ぱっと見は一見単純な英雄譚に見えるんですが、その裏にはいくつものストーリーが重層的に折り重なっている、とても深い物語なのです。

というわけで、ここからネタバレしていきますよ!

 

 

ストーリーのベースは「かぐや姫!?」

本作のストーリーをざっくり説明すると、“月の帝”の娘であるクボの母親は、人間の武将ハンゾウと禁断の恋に落ちてクボを出産するんですが、これに怒った帝はクボの目を奪い母子を連れ戻そうとします。

この時、赤ん坊のクボは片目を奪われるものの、父親のハンゾウが命懸けで二人を守り、母親はクボを連れて小舟で海に逃げるんですね。

そして、何とか逃げ延びた二人でしたが、母親は大波に飲まれたときに頭を打ったのが原因で、今では一日の大半をぼんやり過ごし、成長したクボは三味線に合わせて折り紙を動かす能力を使って、母親から何度も聞いた「物語」を語って村で日銭を稼ぐ生活。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 村人に「物語」を“観せて”日銭を稼ぐクボ

そんなある日、お盆の灯篭流しで死んだ父に会いたいと、母の言いつけを破って帰りが遅くなってしまったクボの元に、月の帝の娘で、クボにとっては叔母にあたる二人が、クボの目を奪いにやってきます。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 怖い叔母さん達。モデルは『子連れ狼』の弁天来三兄弟だとか。

恐ろしい力を持った2人が村を破壊しクボを捕らえようとしたその時、そこに駆けつけた母親は最後の力を振り絞ってクボを逃がしますが、力を使い果たした彼女は死んでしまいます。

そしてクボは、月の帝や叔母と対決するために、お節介なサルとクワガタ侍をお供に、母親から聞いてた「物語」の、怪物に守られた3種の神器ならぬ武器と防具を集める旅に出る……。という典型的な英雄譚なんですね。

で、敵のラスボス「月の帝」でクボの祖父ってことは、クボのお母さんはかぐや姫って事ですよね。つまりこの物語は、地上に残って人間の男と結婚し子供を授かった、かぐや姫の物語でもあるわけです。

この作品の元になったアイデアは、元ライカでキャラクター・デザインをしていたシャノン・ティンドルという人が考えたそうで、シャノンさんは日本の昔ばなしに精通していたそうですし、ライムスターの宇多丸師匠によれば、ライカスタッフの人たちは宮崎駿の影響を非常に公言してるそうなので、もしかしたら同じジブリ高畑勲監督作「かぐや姫の物語」が本作の元ネタになっているかもとのことでしたが、個人的には藤田和日郎さんのマンガ「月光条例」のテイストにも近い感じがしましたねー。

クボ=ライカ!?

クボは、母親から譲り受けた能力を使い、月の帝とハンゾウの戦いのストーリーを、三味線の音に合わせて折り紙を動かしながら村の人たちに語り聞かせて日銭を稼いでいます。

このクボの姿は、そのまま人形を動かして物語を作るライカのメタファーになっているんじゃないかと思うし、劇中、何度も「物語」をめぐる会話とか議論が出てくるんですが、これはそのままライカの主張でもあるんじゃないかと。

つまり本作は、人間には「物語」が必要で、それは人の死生観にも及んでいるんじゃないかという。

時に、「物語」は辛い現実から逃避するための手段であり、辛い現実に向きあうためのエネルギーであり、人はそれぞれ自分の人生の「物語」を持っている。

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画像出典元URL:http://eiga.com / サルとクワガタと共に冒険の旅に

そして、人は死んでも残された人々に、人生という「物語」を語り継がれることで、子供や孫など後世の人々の中に生き続けるという事を、この作品は語っているのだと思うんですね。

二本の弦の秘密

劇中、クボが肌身離さず持っている三味線。
タイトルでは「二本の弦の秘密」となってますが、本作では、クボが持っているのが3本弦の「三味線」であることが重要だったりします。

三味線に張られた3本の弦は、そのままクボと両親の絆を表しているんですよね。

だからクライマックスでの月の帝との対決で、クボは苦労して集めた3種の武具ではなく、(亡き両親の絆と共に)三味線で戦うんですねー。

なぜ月の帝はクボの目を奪おうとするのか

本作でよく分からないのが、なぜ、祖父である月の帝が、クボの目を奪おうとするのかってトコじゃないかと思います。

別に、クボの目自体に、何か特別な力があるようでもないんですよね。

帝や月世界の住人は人間よりも高位の存在で、なので人間や地球を不完全でうす汚い世界だと見下げています。
そんな「薄汚い世界を見なくていいように」クボの目を奪い月に連れて帰るというのが帝の主張なんですが、もう一つ、目を奪う=相手を(洗脳し)支配する的な意味もあるんだと思います。(「コララインと~」でも目が重要な要素になってましたね。)

で、赤ん坊のクボから片目を奪った帝でしたが、クボは残った目で母親や村の人たちの愛情や優しさを見てきたので、帝の「永遠の命」という甘言に惑わされることがなかったわけですね。

結末

そして、死闘の末にクボが倒された月の帝は、力も記憶も失ってしまいます。
そんな帝に対し、村の人々は「あんたはいい人だった」と口々に言って、クボ共々、村に迎え入れるのです。

本作を観た人の中には、あの結末に「えー…」と思う人もいるかもしれません。(ぶっちゃけ僕も最初はそう思いましたw)

もちろん、無力になった月の帝を、みんなで袋叩きにする事も、真実を突きつけて責め立てる事だって出来たハズ。

けれど、今までクボの語る「物語」で楽しませてもらった彼らは、恨みを忘れてクボとたった一人の肉親となった祖父を「物語」で救う。

本作は、そういう物語なんですねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 折り紙の翼で空だって飛べる

しかし、穿った見方をすれば、村人たちが月の帝に語った物語は、嘘ではなかったのかもしれません。
実は母が幼いクボに、現実世界の両親と祖父との確執を「物語」という形に置き換えて語ったのかも。なんて思ったりするんですよね。(例えば、月の帝は村を治める領主で、娘と部下が禁断の恋に落ちて……的な)
そう考えると、クボの冒険は母の死という辛い現実から逃避するために、彼自身が作り出した「物語」だったのかもなーなんて思ったりもするんですよねー。(考えすぎ?w)

もちろん、別にそこまでゴチャゴチャ考えなくても、少年の英雄譚や成長譚として大人も子供も十分に楽しめる作品だし、前2作に以上に今回もアニメーションの根源的な楽しさを堪能出来る傑作でしたよー!

 興味のある方は是非!!

 

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映画に登場するスゴイ悪役【Res-C】

ぷらすです。

僕は、「Res-C」というサブカル系のブログサイト? で毎週火曜日に記事をアップしています。

今のところ、映画の話と、料理のレシピ記事がメインで、同じ映画の話でもこちらのブログとはちょっと内容を変えて、テーマに沿って数本の映画を紹介する感じでやってるんですね。

で、今日(というかもう昨日)アップしたのがこちら。

res-c.blog.jp

劇中で主役以上に存在感を放つスゴイ悪役を5人、僕の独断と偏見ピックアップしましたー!(´∀`)ノ

良かったら、読んでいただけたら嬉しいです!

ではではー。

香港とタイを舞台に繰り広げられるクライムアクション「ドラゴンxマッハ!」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、中国・香港合作映画「SPL」シリーズ第2弾『ドラゴンxマッハ!』(原題:殺破狼2)ですよー!

香港映画? のアクションスター、ウー・ジンと「マッハ!!!!!!!!」のトニー・ジャーが共演する、クライムアクション映画。

ちなみに、「SPL/狼よ静かに死ね」(僕は未見)の続編という事らしいんですが、ストーリー的に前作との繋がりはないようで、本作単体で観ても特に問題はないと思いますよー。

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

ドニー・イェンサモ・ハンらが出演した『SPL/狼よ静かに死ね』の続編。『マッハ!』シリーズでブレイクしたトニー・ジャーを主演に迎え、前作のウー・ジンとサイモン・ヤム、『グランド・マスター』などのマックス・チャン、『アクシデント』などのルイス・クーらが集結し、ムエタイとカンフーの異種格闘技戦がさく裂する。監督を『軍鶏 Shamo』などのソイ・チェン、アクション監督を『プロジェクトBB』などのニッキー・リーが務める。刑務所での囚人200人による大立ち回りなど、肉弾アクションの連続にくぎ付け。

ストーリー:香港の臓器売買について調査していた捜査官チーキット(ウー・ジン)は素性がばれ、タイの刑務所に送り込まれてしまう。指揮官のチャン刑事(サイモン・ヤム)がチーキットの行方を捜す一方、臓器売買の拠点である刑務所の所長(マックス・チャン)はチーキットに暴行を繰り返していた。見て見ぬ振りをするしかない看守チャイ(トニー・ジャー)だったが、チーキットが難病を患う娘の適合ドナーだとわかり、彼を救おうとする。(シネマトゥディより引用)

感想

実は、本作はまったくノーチェックで、TSUTAYAでたまたま見つけてパッケージ借りしてきた作品です。
パッケージ写真で、ウー・ジントニー・ジャーが出るんだなくらいは分かったので、カンフーとムエタイで戦うのかな? と思って観始めたわけですが、一言で言うと男たちの挽歌」系譜の格闘クライムサスペンスアクションって感じの作品でしたねー。

香港・タイのアクションスターがそろい踏み!

 本作のストーリーをざっくり紹介すると、香港警察が追っている臓器密売組織に潜入捜査している男と、白血病の娘を持つタイの刑務官が、臓器密売組織と対決するという物語で、潜入捜査官と気づかれないように麻薬中毒になってしまう捜査官チーキットを香港映画のスター、ウー・ジンが、真面目なタイの刑務官チャイをトニー・ジャーがそれぞれ演じています。

国も言葉も違う二人が意思の疎通を図るのにスマホの翻訳アプリを使うってのは、今風で新鮮だと思いましたねー。

他にタイ刑務所の所長を隠れ蓑に、臓器密売組織の一員として誘拐した女性や子供を(刑務所の中に)監禁している悪役コーを「イップ・マン 継承」にも出演していたマックス・チャン。チーキットの上司で叔父のチャンをサイモン・ヤムが演じていて、まさにアジアのスターが揃った超絶アクション映画でした!

アクションが全部素晴らしい!

物語は臓器密売組織のイヤ~な手口を見せるオープニングからスタート。
タイトルのあと、場面は変わってチャイが娘とスケートする微笑ましいシーン……かと思いきや、8歳の娘サー(アンダー クンティーラー ヨードチャーン)が鼻血を出し、チャイは慌てて病院へ。
実は、サーは白血病でずっと入院していて、骨髄ドナーは見つかったものの連絡が取れない状況なのです。

で、そのドナーというのが潜入捜査官のチーキットで、潜入捜査中に身バレしてしまった彼は、チャイが勤めている北クロン刑務所に受刑者として送られてくるわけです。

ドナーがすぐ近くにいるのに、二人は言葉が通じず、カンフーアクションを駆使して暴れるチーキットを古式ムエタイを駆使してで何とか押さえ込むチャイ。

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画像出典元URL:http://eiga.com / トニー・ジャーvsウー・ジン

そこから物語はチーキットがなぜタイの刑務所に送られたのかが分かる回想シーンへ突入していきます。

実は、密売組織のボス ホン・マンコンは幼い頃から心臓を煩い、心臓移植をしないと死んでしまうと言われてるわけですね。
臓器密売組織のボスなんだから部下に命じて「心臓」を調達すればいいじゃんと思ったら、彼は100万人に1人という珍しい血液型で、同じ血液型は弟だけ。
で、ホンは弟から心臓を奪うため、空港で弟を拉致る計画を立て、チーキットもそのメンバーに選ばれます。

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画像出典元URL:http://eiga.com

当然チーキットは叔父さんで上司のチャンに連絡し、激しい銃撃戦の末に、何とか弟の拉致は防ぐものの、弟は被弾して重体になり、チーキットは身バレして組織に捕まり、弟と交換する人質として、組織の一員で所長のコーがいるタイの刑務所に監禁した。というわけなんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com 最強の悪役コー(マックス・チャン)

非常に入り組んだ設定なんですが、語り口が上手いのでキャラクターの人間関係はすんなり頭に入っていましたねー。

その後、チーキットは叔父に連絡を取るため刑務官のスキをついてスマホを盗み、全牢屋の扉を開放。受刑者の暴動に紛れて、何とか叔父さんに連絡を取るんですが、ここでの暴動のアクションでは、ものすごい数の人間によるアクションシーンをワンカットの長回しで撮りつつ、トニー・ジャーウー・ジンの格闘や、マックス・チャン演じるコーの強さを映像で見せることで、クライマックスの格闘シーンに繋げるなど、とにかく格闘アクションの設計がいちいち素晴らしいんですよ!

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画像出典元URL:http://eiga.com  / 刑務所での大乱闘シーン

中盤、コーの「娘のドナーを提供」という誘惑に負け、組織の仲間になったチャイは、叔父ともども捕まってしまったチーキットをバスに乗せて、組織の「臓器摘出工場」へと運ぶんですが、「やっぱり、自分の正義に嘘はつけないマッハー!!!!」と二人を助けるシーンにはグッとくるし、何とか逃げ延びた病院でサーと出会ったチーキットが、父親のチャイを助けるためにボスのいる病院に乗り込む事を決意する、漢気溢れるシーンには理屈抜きに痺れます!

そこからの、組織のナイフ使いとトンファーで戦うシーンや、ついに合流したチャイとチーキットが協力して敵と戦うクライマックスは燃えるし、そんな二人を相手に一歩も引かない戦いを見せるコーの強さには震えるのです!(いくらなんでもやりすぎな描写もなくはなかったけど)

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画像出典元URL:http://eiga.com / トニー・ジャーウー・ジンの二人をも圧倒するマックス・チャン

格闘シーンは全部100点満点だったし、複雑なキャラクターの関係性も最後まで観客が混乱しないようにスッキリ見せる編集も素晴らしいし、臓器売買というモチーフを通して、「命」に向きあうテーマも中々深かったし、それぞれのキャラクターが何かしらの哀しみを背負ってるのも良かったですねー。

なにより、キャスト陣、特にトニー・ジャーウー・ジンは、僕が今まで観た彼らの映画の中でもベストアクトだったと思いましたねー!

敢えて言うなら

ただ、敢えて文句をつけるなら、クライマックスの格闘シーンに差し込まれる娘のサーのシーンは丸ごといらなかったかなーと思いましたねー。

超絶アクションシーンのノイズになるし、ストーリー的にも意味がないし、個人的にそれまで彼女に好意的だったのに、「お父ちゃんたちが命懸けで戦ってるのにお前は何してんだー!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ」と、ちょっとイラっとしてしまいましたよw

あと、モロCGの狼が登場するのは、本当に意味が分かりませんでした。

でも、文句があるとしたらそのくらいで、(細かいツッコミどころはあるけど)映画として本当によく出来てたし面白かったですねー!(;゚∀゚)=3ハァハァ

興味のある方は是非!!!

 

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腹八分目の面白さ「Mr.&Mrs. スパイ」(2016*日本ではビデオスルー)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ガル・ガドットジョン・ハムザック・ガリフィアナキスアイラ・フィッシャーが共演するアクションコメディー映画『Mr.&Mrs. スパイ』ですよー!

観よう観ようと思っていながら、ほかの新作を観てるうちにうっかり忘れてたんですが、先日TSUTAYAで見つけて「あ、まだ観てないじゃん!」とレンタルしてきましたよ。

で、観た感想を一言で言うなら良い意味で「腹八分目」な作品でしたねー。

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画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp

あらすじ

夫はIBMの人事職員、妻は内装業を始めたばかりという、平凡なギャフニー夫妻の隣の家に、美男美女のジョーンズ夫妻が引っ越してくる。何から何まで完璧なジョーンズ夫妻を怪しむギャフニー夫妻だったが予感は的中。実はジョーンズ夫妻はスパイだったのだ。しかもジョーンズ夫妻の周辺を嗅ぎまわっていたことで、ギャフニー夫妻は国際的なスパイ活動に巻き込まれてしまう。

感想

何気に豪華メンバー

本作のメインとなるのは、正反対な二組の夫婦。

世界的なコンピューター会社「IBM」の人事課に務める夫ジェフ(ザック・ガリフィアナキス)と、最近家の内装デザイナーを始めた妻カレン(アイラ・フィッシャー)は、“袋小路”になっている住宅街に住む、極々普通の夫婦です。

2人の子供を持ち、ご近所付き合いも良好ですが、ある日、売り物件だったお隣の家に紀行ライターのティム・ジョーンズ(ジョン・ハム)と、料理ブロガーのナタリー(ガル・ガドット)夫婦が入居してくるんですね。

夫婦ともに高身長の美男美女の二人はあっという間にご近所でも評判の的に。
近所の住人が集まって行われるお祭り(というか大規模なホームパーティー?)でも、二人はちょっと浮いてるんですが、とはいえ驕ったところもなく感じの良い夫婦なのです。

しかし、ティムはジェフが話していないIBM社員の名前を知っていたり、ナタリーはダーツが異常に上手かったり、怪しげな男と密会していたり。
完璧な容姿も手伝って、どうも胡散臭いと怪しむカレンと、二人を完全に信じ込んでいるお人好しのジェフ。

そんなある日、引越しの挨拶で貰った吹きガラスのオブジェを割ってしまったカレンは中から盗聴器を発見し……。というストーリー。

ジェフを演じるのは「ハングオーバー」で髭面のアラン・ガーナーを演じたザック・ガリフィアナキス
その妻カレンを演じるのは、「華麗なるギャツビー」でマートルを演じたアイラ・フィッシャー
ティム役には「ベイビー・ドライバー」にも出演していた ジョン・ハム
そして、妻のナタリー役は「ワンダーウーマン」で一躍有名になったガル・ガドット姐さんという、何気に豪華なメンバー。

ガル姐さんは、この作品がコメディー初出演。ワンダーウーマンでは優しくて強い母性的な役柄の姐さんですが、本作ではドSなスーパースパイ役!
……うん、これはこれで…(;//́Д/̀/)'`ァ'`ァ(でもガスバーナーで股間を焼かれるのは勘弁w)

っていうか、姐さんのプロポーションはやっぱり凄くて、共演のアイラ・フィッシャーの背がそれほど高くないのもあるけど、なんかもう違う星の人みたいでしたねーw

そんな姐さんなので、銃の撃ち方も様になっていて車のサンルーフからマシンガンを撃つアクションシーンも超カッコイイのです。(元イスラエル軍人だし)

平凡な夫婦とスーパースパイの友情の物語

本作はごく平凡で善良な夫婦と、世界を股にかけて任務をこなすスーパースパイの夫婦。普通なら絶対に交わることのない二組の夫婦が出会い、なんやかんやあって友情を育むという物語で、そんなアホなっていう設定を可能にしているのが、巨大企業「IBM」の秘密と、人事課というジェフの職業です。

「IBM」のある秘密を探るため、ティムとナタリーはギャフニー夫妻と接触するんですが、企業の機密とは無関係で、社員のコミュニケーションを円滑に進めるのが仕事の人事課で働く、超のつくお人好しなジェフは、知らず知らずのうちに「ある事件」に巻き込まれているのです。

そしてジェフとティムは、物語が進むうちにお互いに足りない部分を認め合い、カレンとナタリーも、最初は反目し合っているものの、次第に女の友情が芽生えていくんですね。

良くあるといえば良くある物語で、特に目新しさはないんですが、そんなストーリーを盛り上げていくのがザック・ガリフィアナキスアイラ・フィッシャーの掛け合いやドタバタシーン。
特にザック・ガリフィアナキスは、愛すべきボンクラを演じさせたら本当に上手いんですよね。

腹八分目の面白さ

106分という時間(先日紹介した「ダンケルク」と同じ時間!)の中に、笑い、アクション、そしてほんのり感動も入った本作。
観終わったあとに何かを考えさせられたり…なんてことは一切なく、超面白くもないけど、つまらなくもなくて、少なくとも観ている時間は楽しめるっていう、全てにおいて腹八分目くらいの丁度いいアクションコメディー映画でしたw

アメリカンコメディーっていうと、やたらギャグが下品だったり、言葉遊びや引用が多くて日本人には分かりにくいものもありますが、本作はそんな事もなく、ファミリーで楽しく見られる作品になってましたしね。

この作品を目当てに観るっていうより、ちょっと重めの作品を観たあとの口直し的な感じで観るのがいいんじゃないかなって思いましたよ。

興味のある方は是非!

 

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第二次世界大戦の史実をクリストファー・ノーランが映画化「ダンケルク」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ダークナイト」や「インターステラー」などのクリストファー・ノーラン監督が、第二次世界大戦の史実「ダンケルクの戦い」を劇映画化した話題作『ダンケルク』ですよー!

正直に言うと、面白かったのかつまらなかったのか、一回観ただけでは判断がつかない映画でしたねー。

ちなみに本作は、史実を元にした作品なので普通にネタバレしていきます。
なので、ネタバレ嫌という人は、先に映画を観てから、この感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

第2次世界大戦で敢行された兵士救出作戦を題材にした作品。ドイツ軍によってフランス北端の町に追い詰められた連合軍兵士たちの運命と、救出に挑んだ者たちの活躍を描く。監督は『インセプション』などのクリストファー・ノーラン。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』などのトム・ハーディ、『プルートで朝食を』などのキリアン・マーフィ、『ヘンリー五世』などのケネス・ブラナーらが出演。圧倒的なスケールで活写される戦闘シーンや、極限状況下に置かれた者たちのドラマに引き込まれる。

ストーリー:1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。一方のイギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ向かうことを決意。さらにイギリス空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)が、数的に不利ながらも出撃する。(シネマトゥディより引用) 

感想

ダンケルクの戦い」とは

ウィキペディアによれば、第二次世界大戦中、ドイツ軍のフランス侵攻の1940年5月24日から6月4日の間に起こった戦闘のことだそうです。

フランスに攻め込んできたドイツ軍に対抗する英仏軍でしたが、ドイツ軍は戦車や航空機を駆使した電撃戦を展開。連合軍はフランス本土最北端のダンケルクに追い詰められてしまいます。

英仏軍は、この戦闘でドイツ軍の攻勢を防ぎながら、輸送船の他に小型艇、駆逐艦、民間船などすべてを動員して兵士の救出作戦を実行。約40万人の将兵を脱出させたのだそうです。

本作では、そんな「ダンケルクの戦い」を106分の映画にしているんですねー。

状況を把握するだけで精一杯

そんな本作は、若き英兵士たちがダンケルクの町を歩いているシーンからスタート。
まるでゴーストタウンのような町の中で、ある兵士は家の前のホースから直接水を飲み、ある兵士は家の窓から手を入れて、残されていたシケモクを取って吸おうとし、ある兵士はドイツ軍がばら撒いた「降伏せよ」というチラシを、尻拭き紙用にポケットにねじ込んでいます。

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画像出典元URL:http://eiga.com

そこにイキナリ銃声が響き、慌てて逃げる兵士たちは一人また一人と銃弾に倒れ……。

そうして命からがら辿り着いた遮蔽物の何もない海岸線には、大勢の兵士たちが救助船を待っている状況なんですね。

ノーランはここまで、一切セリフを使わず、(字幕による簡単な説明と)映像だけで描いているのです。

イギリス人にとって、「ダンケルクの戦い」は恐らく一般教養として誰もが知っているだろうから、本作のタイトルと冒頭の映像を観れば、何が起こっているのか大体は分かると思うんですが、日本人で歴史に疎い僕なんかは、ただただ画面の中で起こっている状況を理解するので精一杯で、(少なくとも1回見ただけでは)ストーリーまではとても追いきれないんですよね。

まるでイキナリ自分が、(わけも分からないまま)戦場に放り込まれたような感覚だったし、それはまさにノーランの狙いでもあるわけです。

また、時計が針を刻む音が不安感を煽る激伴や、様々な音の演出も、自然と不安感を煽り立てるんですよね。

僕はテレビ画面で観ているのでそれほどでもなかったけど、劇場、特に大画面・大音量のIMAXで観ていた人は、本当に戦場にいるような感覚を味わったんじゃないかと思いましたねー。

異なる3つの「時間」

本作はざっくり、陸軍兵士のトミー (フィン・ホワイトヘッド)、英軍の要請を受けて兵士を救うため、自分の遊覧船でダンケルクに向かうミスター・ドーソン (マーク・ライランス)、英国の戦闘機“スピットファイヤー”を操縦し敵機を撃墜するファリア (トム・ハーディ)という三つの視点で物語が進みます。

トミーのパートでは「防波堤:1週間」、ミスター・ドーソンのパートでは「海:1日」、ファリアのパートでは「空:1時間」と、それぞれのパートの冒頭で表示されます。

これはつまり、映画開始時点から終了までの106分間にどれだけ時間が経過しているかという時間の流れを説明していて、トミーのパートはクライマックスの1週間前から、ミスター・ドーソンは1日前から、ファリアは1時間前から。それぞれのパートがスタートしているわけです。

なので、パートごとに昼間だったり夜だったりして、この仕掛けを理解するまでに結構時間がかかってしまいました。

そして、その演出は劇伴の時計の音ともリンクしているんですねー。

「戦争映画」ではなく「サバイバルサスペンス」

本作は戦争を扱った映画にも関わらず、敵のドイツ軍人は一人も登場しません
登場するのは、敵の戦闘機と機銃と魚雷くらいなのです。

なぜなら「これは戦争映画ではない。サバイバルに焦点を当てたサスペンス映画なんだ」とノーラン自身が言うように、本作が描こうとしているのは、登場人物たちがドイツ軍の攻撃から生き延びて海を渡り、自国(ホーム)に帰りつけるかどうかのサバイバルであって、(誤解を恐れずに言うなら)戦争そのものではないからです。

いつ、どこから敵の発射した銃弾や爆弾に襲われるかも分からないまま、彼らは生き延びるため必死に逃げ回っているんですね。

そんな中、トニーとギブソンアナイリン・バーナード)は、砂浜で見つけた負傷兵を担架に乗せて、人ごみを掻き分けて救助船に運びます。

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でもそれは、負傷兵の命を救う為ではなく、負傷兵と一緒に自分たちも船に乗り込んで逃げようという計算なんですね。

結局ふたりは船から下ろされてしまうんですが、次の救助船に乗り込もうと、桟橋の下に潜り込んで様子を伺います。

「戦争映画」として観れば、このふたりの行動は自己中心的で汚い行いに見えるかもですが、ふたりは切望的な状況から生き残るために知恵を絞って行動しているのです。

しかし、その後も何とか忍び込んだ船が沈没させられたり(そして海岸に戻るハメに)、やっと見つけた座礁船(潮が満ちたら浮くので逃げられる)に隠れていれば、敵の銃撃で船底が穴だらけになり、沈没したり。

一方、遊覧船のオーナー ミスター・ドーソンは危険を顧みずドーバー海峡を越えてダンケルク沖に向かいます。

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そこには「ある理由」があることが後半で明かされますが、序盤は何故、彼が危険を冒してまで英兵を救助に向かうか分かりません。
その途中で救った一人の兵士によって、ダンケルク湾にはドイツ軍のUボートが救助船を沈めようと待ち構えていることが分かります。

空軍のファリアは、ダンケルクに残された兵士や船を守るため敵機を撃墜するものの、敵の銃撃によって燃料計を破損。

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いつガス欠になるか(=自国に戻ることが出来ない)分からない状況で、自国の兵士を守るために、敵機と死闘を繰り広げます。

そんな感じで三者三様、まさに生き残りをかけたサバイバル映画といった作りなんですねー。

そして、この作品では、必ずしも善人が生き残り、悪人が死ぬわけではなく、最終的には運の強い奴が生き残ります。

劇映画としてはスッキリしない結末ですが、「戦争ってそういうものだろ?」というノーランの声が聞こえてきそうな結末だし、誰が生き残るか分からないことで、観客はより劇中のサスペンスにのめり込んでいくわけですね。

 実物主義者ノーラン

クリストファー・ノーランといえば、フィルム主義者でもあり、また出来るだけCGを使わず(可能な限り)本物を使うことで知られた監督です。

例えば「ダークナイト」では、本当の大型トレーラーの横転させ、病院を爆破していますし、多分観た誰もがCGだと思ったであろう、「インターステラー」の高次元描写も実際にセットを作って撮影しているんだとか。

そんなノーラン、本作では実物のスピットファイヤーや船を登場させ、実際に爆破したり沈めたりしたそうですよ。
魚雷が当たった船底に大量の海水が流れ込んで、大勢の兵士が飲み込まれていく様子もセットを使って撮影してるし、砂浜の爆破シーンもCGじゃなく本当に爆破させているのだとか。

また、本作はIMAX用のカメラで撮影してるんですが、不時着する戦闘機の内部にIMAXカメラを設置して着水シーンを撮影しようと思ったら、予想以上に飛行機が早く沈没したという話もあったそうです。(結局もうダメかと思われたフィルムは何とか復元できたそうです)

そうやって、(極力)CGではなく本物を使う事で、画面の中に「質量」を感じさせる大迫力の映像を撮影できたんですねー。(その分役者さんたちは大変だったと思いますがw)

この映画にドラマはあるのか

事ほど左様に、本作は106分という時間の中で、登場人物たちがどうやって生き残るかを描いた、ある種のシュミレーション的な映画で、キャラクターの背景やドラマなどは殆ど描かれません。

それは例えば、ジョージ・ミラー監督の「マッドマックス 怒りのデスロード」や庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」に近い作り方です。

それを持って、この作品にはドラマがないとか、登場人物に感情移入出来ないという意見もあるようで、それは確かにその通りかもと思うんですが(実際僕も最初はそう感じたしw)、しかし、ノーラン監督はそうしたシュミレーション的な状況の中で、彼らが背負っている背景や、心情、性格・信念が分かるような役者の表情であったり、うっかりすれば見逃してしまうような短いセリフを、そっと忍び込ませているのです。

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そして劇中、絶望的な状況の中、ボルトン海軍中佐 (ケネス・ブラナー)が言う「生きて故郷(ホーム)に帰ることが勝利」(意訳)と言うセリフは、そのまま本作の背骨とも言えるメインテーマになっているし、本作が凡百の「戦争映画」と一味違うところなんだと思います。

ところで、この記事の冒頭で「面白いのかつまらないのか判断がつかない」と書きましたけど、これだけ長い感想を書いてるって事は、きっと面白かったんでしょうねww

興味のある方は是非!!!

 

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ライカの長編劇場アニメ第1弾「コララインとボタンの魔女」(2010)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「KUBO/クボ 二本の弦の秘密.」や、このブログでもご紹介した「パラノーマン ブライス・ホローの謎」で知られるストップモーションアニメのトップランナー「ライカ」による長編劇場アニメ第1弾『コララインとボタンの魔女 』ですよー!

本作を一言で言うなら、ゴシック風ダークファンタジーという感じの作品で、監督は「ナイトメア・ビフォアー・クリスマス」のヘンリー・セリックです!

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の鬼才、ヘンリー・セリック監督が手掛けるダークで幻想的なアニメーション。世界中で愛されている同名のファンタジー小説を映画化し、パラレルワールドに迷い込むヒロインの冒険と成長を生き生きと描く。ちょっと生意気な主人公の声を担当するのは名子役、ダコタ・ファニング。1コマごとに人形やセットを動かしつつ撮影するストップモーションアニメを、さらに3Dにした驚異の映像を目に焼き付けたい。

ストーリー:コララインは両親と新しい街に引っ越して来るが、二人とも仕事が忙しくてちっとも自分にかまってくれず不満に思っていた。一人で外出すると、ワイビーという少年が黒猫と共にどこからともなく現れ、また姿を消す。コララインは退屈しのぎに築150年のアパートの探検を始め、その最中にレンガで封印された小さなドアを発見する。(シネマトゥディより引用)

感想

本作は、ヒューゴー賞を受賞したニール・ゲイマンの児童文学作品「コララインとボタンの魔女」を原作に、「KUBO/クボ 二本の弦の秘密.」「パラノーマン ブライス・ホローの謎」のストップアニメーションスタジオ Laika, LLC.(ライカ)が制作した長編劇場アニメ。監督を務めるのは、ティム・バートン製作の「ナイトメア・ビフォアー・クリスマス」の監督として知られるヘンリー・セリックです。

 

圧倒的な映像のコンセプトアートを担当したのは日本人

ライカといえば、細部にまでこだわり抜いた精緻なストップモーションで、今やストップモーションアニメのトップランナー
そんなライカの劇場アニメ第1弾である本作は、後の2作の雛形とも言える作品で、動きだけでなく美術や色彩など、技術と工夫を凝らした映像はやっぱり凄いんですよね。

そんな本作のコンセプトアートを担当したのは、日本人イラストレーターの上杉忠弘。
僕は、本作を観たあとにネット情報で知ったんですが、言われてみれば桜並木や学生帽など、日本的な記号も入っていたりしましたねー。(学生帽の方は、来日の際に監督が息子さんに買ってきた学生帽を被って貰えなかったので、本作で主人公に被らせたらしいですけどw)

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ストーリーの方は、両親とともに築150年の「ピンクパレスアパート」に引越してきた11歳の少女コララインが、壁紙に隠された小さなドア見つけ、トビネズミに導かれて入っていくとそこはワクワクするような刺激的な世界で、現実では自分を相手にしてくれない両親もこの世界では優しいんですね。
でも実は、そこはコララインを罠に掛けようとしているボタンの魔女の作り出した世界だったという物語で、「不思議の国のアリス」や、「ヘンゼルとグレーテル」的でもあり、日本で言えば「千と千尋の神隠し」的とも言える、普遍的な物語です。

ビジュアルの方は、「ナイトメア~」的なので、ティム・バートンの世界感が好きな人なら楽しめるんじゃないかと思いましたねー。

誰でも一度は考える原初的な恐怖

そんなボタンの魔女の世界は、ぱっと見、現実のピンクパレスアパートと同じに見えるんですが、そこの住人たちは皆、目がボタンになってるわけです。

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もちろんコララインのママもパパも目がボタンになっていて、コララインの望みが全て叶う夢のような世界にも関わらず、常に不穏な雰囲気が漂っているんですね。

これは、「自分の母親は本物ではないかもしれない」という誰でも子供時代に一度は考える原初的な恐怖や不安が物語の根底になっているから。

僕が子供の頃に呼んだ永井豪先生のマンガで、ある日突然母親が自分を殺そうとするというのがあって、小学生の僕は震え上がった記憶がありますww(今だったらコンプラ的に絶対出版できないw)

子供にとって母親は絶対的な存在ですからねー。
その母親が自分を害する存在になるのって、子供にとっては超怖いですよね。

本作では、そんな不安感を印象づけるために、冒頭でぬいぐるみの人形を解体して主人公そっくりに作り直す様子が描かれていて、それがまた、何とも言えない不安感を煽るのです。

っていうか、それをストップモーションアニメでやるのも凄いですけどもw

結局、不思議世界のママの正体はボタンの魔女で、コララインは“野良猫”や、(現実世界)の住人たちの助言や助けを借りながら魔女と対決するんですが、物語前半では(大人視点だと)自己中心的で、何ならちょっと嫌な感じにさえ見えるコララインの性格が、このクライマックスに役立つし、この「冒険」を通して、前半ではただの変人だと思っていたアパートの住人たちや、同い年の男の子ワイビー(ワイボーン)の「本当の姿」に気づくという展開になっていくんですねー。

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ただ、僕が「パラノーマン~」から遡って観ている事もあって、ストーリーの方は少々食い足りなさは感じましたけども。

それでも、ストップモーションアニメのクオリティーや、映像の美しさなど見どころは多い作品なので、観ておいて損はない作品だと思いますよー(´∀`)ノ

興味のある方は是非!!

 

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微妙な出来だけど志は高い「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」 (2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「攻殻機動隊」TVシリーズや「東のエデン」などの監督として有名な神山健治のオリジナル長編劇場アニメ『ひるね姫』ですよー!

この作品、公開時の評判があまり芳しくなかったので、スルーしようかとも思ったんですが、攻殻機動隊TVシリーズは好きだったので、一応、観てみる事にしましたよー!

今回は後半部分でネタバレする予定なので、これから観る予定の方は後半部分は映画を見た後に、読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

 

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

攻殻機動隊』『東のエデン』シリーズなどの神山健治監督が手掛けたアニメーション。岡山県倉敷市児島を舞台に、瀬戸大橋のたもとののどかな町で暮らす親子の絆を、夢と現実を結び付けつつ描写する。NHK連続テレビ小説とと姉ちゃん」などの高畑充希が、主人公の森川ココネの声を担当。そのほか、満島真之介古田新太前野朋哉高橋英樹江口洋介といった面々がキャスト陣に名を連ねる。

ストーリー:高校生の森川ココネは家でも学校でも常に眠気に襲われ、ついウトウトと居眠りばかりしていた。2020年、東京オリンピックが間近に迫った夏の日、彼女の家族は事件に見舞われる。実は両親にはココネも知らない秘密があり、その謎を解く鍵は彼女の夢の中にあった。(シネマトゥディより引用)

感想

神山健治とは

アニメーション監督、脚本家、演出家であり、現在は「株式会社クラフター」代表取締役共同CEOでもある、日本を代表するアニメ作家の一人です。

PRODUCTION I . Gの精鋭を集めて行われた押井守主催の「押井塾」では「級長のような存在」だったという彼の作風は、個人的に「ストーリーテラー」という印象。

事実、TV版 攻殻機動隊「 STAND ALONE COMPLEX」「 S.A.C. 2nd GIG」では、スタッフと共に徹底してストーリーのアイデアを煮詰める姿を特集番組などで見ています。

そんな彼が監督・脚本を担当した初の劇場用オリジナル長編作品ということで、本作の公開前はかなり期待値が上がってたわけですが、いざ公開されると、どうにも評判が芳しくなかったんですよねー。

で、今回自分の目で本作を観てみた結果、うーん…確かに微妙な作品でした。

いや、面白いんですよ?

ただ、神山健治作品にしては、随分とストーリー運びが乱暴な印象だったんですよね。

ざっくりストーリー

本作の主人公、森川ココネ(高畑充希)は、岡山に住む高校三年生。
そんな彼女は、家でも学校でもいつも眠気に襲われ居眠りばかりしてるんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 主人公のココネ(高畑充希

で、そんな彼女の夢に登場するのは「ハートランド」という、国民全員が自動車を作る国営会社に勤めている国で、彼女はそこの王女らしい。

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画像出典元URL:http://eiga.com

そんなある日、地元で小さな自動車修理工場を営む父親のモモタロー(江口洋介)が、ある容疑をかけられ警察に捕まってしまい、ココネの夢と現実も徐々にリンクして……というストーリー。

設定自体は面白いと思うし、この作品で神山監督が言いたいこと、やりたい事も分かるんです。が、登場するキャラクターの行動がおかしいので、本来サスペンスフルになるであろうシーンも、緊張感のない間抜けなだけのコメディー風味になってて、ストーリー作りに定評のある神山健治作品にしては(´ε`;)ウーン…って感じなのです。

それで、観終わったあとにネットで作品解説のサイトを読んでいたら、こんなレビューを発見しましたよ。

www.jiyuuniikiru.com

こちらのブログによれば、本編で削られた? 大事なエピソードが、『エンシェンと魔法のタブレット ~もうひとつのひるね姫~』という30分ほどの短編として、hulu限定で公開されているらしいんですねー。(僕は未見)

何故、そんな事になったのかは分かりません。
単純に、本編に入れるには長すぎるという判断かもしれないし、最初からそういう(本編補足としての短編をネット公開する)計画だったのかもしれないし、もっと他の、何か大人の事情が関わっていたのかもしれませんね。

というわけで、ここからネタバレですよー!

 

ただの夢あふれるファンタジー映画ではない

本作を見た人なら、この作品が単なる夢があふれるファンタジーではないと分かると思います。
ココネの夢に登場するハートランド王国は、日本最大の自動車製造会社であるシジマ自動車であり、それてって、そのまんまTOY〇TAを始めとする日本の自動車業界なんですよね。

そして、日本は、自動車の輸出でのし上がってきた国でもあるので、この王国はそのまま日本のメタファーでもあるわけですね。ハートランド→シジマ自動車→自動車業界→日本っていう連想ゲームみたいなメタファーになっているわけです。

そこの王女であるエンシェンはタブレットで魔法を使える魔女という設定で、そんな彼女のせいで王国には定期的に巨大な鬼が攻めて来るのを、相棒となるピーチという「海賊」と共に撃退しようとしているんですね。

場面変わって、ココネが目を覚ますと、そこは岡山県のある小さな町。
父親のモモタロウは、居住空間までエンジンのパーツが転がっているような小さな自動車整備工場を営んでいて、ココネのお母さんはココネが赤ん坊の頃に亡くなっていることが分かります。

http://eiga.k-img.com/images/movie/84763/photo/eb657bf5a23c8870/640.jpg?1479089269

画像出典元URL:http://eiga.com  / ココメの父親モモタロウ(江口洋介

で、このモモタロウは町の老人たちの車を(ほぼ無料で)自動運転車に改造してるんですね。

テレビでは2020年東京オリンピック開幕間近のニュースが流れ、そこでシジマ自動車開発の自動運転自動車のデモンストレーションが行われる予定にも関わらず、開発が難航している事も分かり、父親には「タブレットを渡さないと訴える」っていう謎の電話が掛かってくるわけですよ。

つまり、ココネの夢に出てくる王国は日本最大の「シジマ自動車」で、魔法のタブレットは自動運転のコードデータが入ったタブレット。王国を攻めて来る鬼は、(恐らく)自動運転に先進的な海外企業なのでしょう。

http://eiga.k-img.com/images/movie/84763/photo/3d080993f5e28194/640.jpg?1479089286

画像出典元URL:http://eiga.com / ココネと共に東京に向かう幼馴染のモリオ(満島真之介

さらに物語が進むと、自動運転など必要ないという考えの社長と、未来のために自動運転自動車の開発をするべきという娘(ココネの母親)の対立があり、結局、父の反対を押し切って娘は系列の子会社? で開発を続け、(映画のEDロールの中で)志半ばにしてテスト走行に事故で亡くなってしまう事も分かります。(ハッキリとは描かれてませんが)

残されたモモタロウ(子会社のテストドライバーで娘と駆け落ち)は、以降シジマ自動車とは縁を切って娘の意志を継ぎ、ついに自動運転のシステムを完成させたわけですね。

で、タブレットを欲しているのは、反社長派閥の渡辺という男で、彼は自分(もしくは自分の派閥の長)が手柄を立てることで支持を集め、現社長を引退させるために、独断でモモタロウが持つタブレットをあの手この手で奪い取ろうとしているのです。

つまり、この作品はシジマ自動車のお家騒動に、モモタロウとココネが巻き込まれるという物語なんですね。

神山監督はそんな生臭い話を、夢(ファンタジー)描写を交え寓話的に描くことで、誰もが楽しめるような作品にしようと頑張ってはいるんですが、それが上手くいっているかといえば、上記のとおり正直、微妙な出来なのです。

http://eiga.k-img.com/images/movie/84763/photo/6db7e953a1e2b835/640.jpg?1479089274

画像出典元URL:http://eiga.com / 夢でも現実でも重要な役割を果たすぬいぐるみのジョイ(釘宮理恵

それは随所に見られるご都合主義な展開だったり、キャラクターの行動に統合性はないのが主な理由で、「ファンタジーコメディーなので」と言われても、色々飲み込みづらいんのです。

っていうか、神山監督が作るんだから、もっとゴリゴリの硬派なアニメにする手もあったと思うし、その方が監督の資質も活かせたんじゃないか? なんて思ったりもするんですが、まぁ、それだとファミリー向けアニメにはならないし、ポスト駿を探してる日テレ絡みの作品だからって事もあるのかも? ですね。

この作品で神山監督が言いたかったこと

では、この作品を通して神山監督が言いたかった事は何かといえば、「老害がいつまでものさばってると日本は壊滅する!」……ではなく(いや、それも多少はあるだろうけどw)、「今までの成功体験にすがるのではなく、新しい発想や技術を受け入れる柔軟な姿勢が未来の日本を救う」的なことじゃないかと。

とすれば、鬼の正体は、海外企業でもあると同時に、また新しい事に挑戦する人たちを(無知ゆえに)邪魔する、世間の風評やマスコミだったりするのかもしれません。

そういう意味では、庵野監督の「シン・ゴジラ」に通じる部分もあると思うし、ある意味で、3・11以降の日本を批評的に描いた作品といえるかもしれませんね。

いや、全然読み違えてるかもですがw

同時にこの作品は、コミュニティーの絆の大切さを描いていて、その象徴が、ココネの家族や彼らのクラス町の人々で、それは大企業のシジマ電気や東京との対比になっているんですねー。

そういう意味でも3・11以降の物語として考えられていると思うし、(色々文句はあるけど)少なくとも観ている間は楽しめる作品でしたよー。

それと、ココネ役の高畑充希を始め、キャスト陣はみんな良かったし、高畑充希の歌う「デイ・ドリーム・ビリーバー」も良かったですねー。(´∀`)

 

興味のある方は是非!

 

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