今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

「SW」のドキュメントを2本!「ピープルvsジョージ・ルーカス」(2012)&「I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー」(2017)

ぷらすです。

今回は「スター・ウォーズ」のドキュメントを2本ご紹介しますよー!
1本目は、「SW」の生みの親ジョージ・ルーカスとファンの愛憎入り混じった関係を描いた『ピープルvsジョージ・ルーカス
もう1本は、「SW」ファンの監督が、ダース・ベーダーの中の人デビッド・プラウズや当時のキャストや製作陣のインタビューから、「SW」の暗部に光を当てていく『IAM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー
です。

ベクトルは正反対の両作ですが、「SW」関連のドキュメント作品ということで、ファンだけでなく、映画好きな人には興味深い映画だと思いますよー!

 

ピープルvsジョージ・ルーカス

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画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp

あらすじと概要

スター・ウォーズ』シリーズの熱狂的ファンであるアレクサンダー・O・フィリップが監督を務めた異色ドキュメンタリー。世界中の『スター・ウォーズ』ファンたちが、その生みの親であるジョージ・ルーカスに抱く愛憎渦巻く複雑な心理をインタビューで浮き彫りにする。出演者もダース・ベイダー役のデヴィッド・プラウズをはじめ、映画製作者や作家など多岐に渡る。激論を戦わせつつもその根底に横たわる傑作映画への愛の深さに感じ入る。

ストーリー:1970年から1980年代にかけてジョージ・ルーカスが発表した『スター・ウォーズ』最初の3部作には誰もが熱狂し、圧倒的な賛辞を惜しまなかった。やがてその映画は新しいアメリカ文化ともいうべき大々的ムーブメントを各地で巻き起こす。だが、特別篇と新3部作の話になると、コアなファンたちの態度は手の平を返したように冷たくなるケースも出てきて……。(シネマトゥディより引用)

感想

この作品、ずっと観たいって思ってたんですが地元のレンタル店になくて観ることが出来ずにいたんです。
でも今回、生まれて初めて利用したYouTubeの有料動画サービスを利用して、やっと観ることができましたよー!

レンタル店の棚から下げられちゃった古めの作品を観るには便利ですね。YouTube

で、この映画がどんな内容かをざっくり一言で言うと、「愚痴かと思ったらノロケかよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ」的な作品でしたw

「SW」の洗礼を受けて育ったファンたちが、SW旧三部作の偉大さについて熱く語り、「特別編」の改悪を罵り、プリクエル公開時のトキメキと観終わったあとの絶望、ジャージャー・ビンクスへの憎しみやミディ=クロリアン設定ってなんだよ!という文句を1時間30分に渡って愚痴り続け、でも最終的には「SW」もジョージ・ルーカスもやっぱり大好き! っていう内容。

SWの熱狂的なファンって、ほんっっっっっっとにめんどくせー!! って思いつつも、「うんうん、ファンってそういうもんだよねー」と、その気持ちは痛いほど分かってしまうっていうねw

ただ、それだけならファンの愚痴映画になってしまうところですが、本作はそうしたインタビューやファン映像などから、「一般に公開された作品は誰のものなのか」とか、「SWとは何なのか」といった深いテーマに切り込んでいく良作でしたねー。

何より、画面からSWシリーズへの愛が溢れ過ぎてて、最後は感動してしまうのです。

あ、あと、サイモン・ペグも登場してましたよw(何やってんだw)

ぶっちゃけ僕は、そこまでSWの熱狂的なファンってわけじゃないですが、やっぱリアルタイム世代のオタクですからねー。
彼らの気持ちも分かるし、SWに熱狂した時代の空気みたいのも分かるので、懐かしさも手伝って面白かったですねー。

あと、一応、プリクエル3部作や特別編の話題では反対派と擁護派の意見を交互に並べるなど、意見が一方に偏らないように気を使ってるのも好印象でした。

 

I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

スター・ウォーズ」屈指の人気キャラクター、ダース・ベイダースーツアクターを務めた俳優デビッド・プラウズの素顔に迫ったドキュメンタリー。「スター・ウォーズ」オリジナル3部作(エピソード4~6)で、ダース・ベイダースーツアクターとして活躍したプラウズは、ある時期から「スター・ウォーズ」公式イベントへの出入りを禁止されてしまう。その真相を探るべく、ダース・ベイダーを愛する「スター・ウォーズ」世代のクリエイターたちがカメラを手に、プラウズの栄光と光を描き出していく。日本では、2016年・第29回東京国際映画祭の「WOWOW映画工房×ジャパンプレミア feat. スター・ウォーズ in 東京国際映画祭」で上映され、17年1月にヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2017」で劇場公開。(映画.comより引用)

感想

「ピープルvsジョージ・ルーカス」がSWの光? を描いたドキュメンタリーだとしたら、こちらはSWの影に迫る作品になります。

SWのみならず映画界最強の悪役にして一番の人気キャラクター、ダースベイダーの“中の人”デビッド・プラウズや当時のキャスト、スタッフのインタビューを通して、旧三部作でダースベイダーを演じ続けた功労者にも関わらず、プラウズがルーカスフィルム側からSW公式イベントへの出入りを禁止されている「ある理由」の真相に迫り、また、プラウズが長年抱えていた「念願」を、本作の監督マルコス・カボタらでSW世代のクリエイターたちが叶えるというドキュメント。

この作品、ジョージ・ルーカスやルーカス・フィルムが取材を拒否している事もあって、どうしてもデビッド・プラウズ側の言い分がメインになっているし、正直、欠席裁判的な内容になっている感は否めないですよね。

(真実かどうかは別にして)プラウズがSW公式イベントへの出入りを禁止されている理由は、「ジェダイの帰還」でダースベイダーが死ぬことを、彼がマスコミにリークした事にルーカスが激怒したから。と言うことらしいんですが、本作では、そのネタを掲載した雑誌の記者にもインタビューをして、それが冤罪であることを証明しています。

また、「ジェダイの帰還」のベイダーのマスクを取るシーンで、素顔のベイダーをセバスチャン・ショウが演じた事にずっとわだかまりを感じていたプラウズのために、監督のマルコス・カボタらSW世代のクリエイターたちによって、「あるプロジェクト」が行われるのが本作のクライマックスなんですけど、その件は個人的に胸熱でしたねー!

作品の性質上、どうしてもルーカスフィルム側が悪者っぽく見えてしまうし、真実は当時作品に関わった人たちにしか分からないですが、少なくとも巷で噂されているプラウズの冤罪を晴らせたこと・長年のわだかまりを少しでも解消出来たのは良かったんじゃないかと思いました。

 

事ほど左様に、ベクトルはまったく正反対の両作ですが、どちらもSWファンによる作品でもあり、その根底にはSWの愛があるのは間違いないし、SWという「現象」をより深く知りたい人にはオススメできる作品だと思いました。

僕自身は、普段はほとんどドキュメント映画は観ないんですが、映画関係のドキュメントはメイキング的要素が強いので観ていて楽しいんですよね。(メイキング大好き)

興味のある方は是非!!

 

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早世の天才、伊藤計劃の名作小説をアニメ映画化「虐殺器官」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2009年に34歳の若さでこの世を去った小説家・伊藤計劃の作品をアニメ化していく、「Project-Itoh」の第1作として放たれるSFアクション『虐殺器官』ですよー!

僕は原作は未読なので、あくまでアニメだけを観た印象で言うと、「メッセージ」+「攻殻機動隊」+「フェイト」(っていうか奈須きのこ作品)って感じでしたねー。

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あらすじと概要

2009年に34歳の若さでこの世を去った小説家・伊藤計劃の作品をアニメ化していく、「Project-Itoh」の第1作として放たれるSFアクション。内戦や虐殺を裏で操っているとされる謎の人物、ジョン・ポールを追い掛けるアメリカ軍の特殊部隊大尉クラヴィス・シェパードの姿を描く。監督には数多くのガンダム作品に携ってきた村瀬修功、キャラクター原案には「ビビッドレッド・オペレーション」などのredjuiceが集結。謎が謎を呼ぶストーリーもさることながら、緻密なビジュアルや迫力満点の見せ場にも圧倒される。

ストーリー:開発途上にある国々で頻発する紛争や虐殺の背後に存在する、ジョン・ポールという謎に包まれた男。アメリカ軍の特殊部隊大尉クラヴィス・シェパードは特殊暗殺部隊を率いて、彼の行方を追跡していく。(シネマトゥディより引用)

感想

伊藤計劃とは

本作は、SF作家 伊藤計劃の小説をアニメ化するプロジェクト「Project-Itoh」の第一弾として製作されました。
ウィキペディアによると、伊藤計劃は2004年1月から「はてなダイアリー」にて映画・SF評論ブログを開始したそうで。ご本人はかなりのシネフィルだったそうです。
Webディレクターの傍ら執筆した同名小説が、2006年第7回小松左京賞最終候補となり、ハヤカワSFシリーズ Jコレクションより作家デビュー。
同作は『SFが読みたい! 2008年版』1位、月刊プレイボーイミステリー大賞1位、日本SF作家クラブ主催の第28回日本SF大賞候補になったそうです。

また彼は、ゲーム「メタルギアソリッド」の大ファンでもあり、同ゲームの生みの親で親交も深かった小島秀夫氏から直接『メタルギアソリッド4』のノベライズを依頼される程だっとか。

デビューからわずか2年、肺がんのため34歳という若さで亡くなった彼ですが、遺作となった『ハーモニー』で第30回日本SF大賞を受賞。
同作の英訳翻訳版はフィリップ・K・ディック賞の特別賞を受賞したそうです。

いわゆるオタク畑から登場したゼロ年代を代表するSF小説家の一人だったんですねー。

虐殺器官について

サラエボで発生した核爆弾テロによって世界中で戦争・テロが激化した近未来が舞台。
アメリカを始めとする先進諸国は、厳格な個人情報管理体制によってテロの脅威に対抗し、十数年後、先進諸国からテロの脅威が除かれるわけですね。

その一方、後進国では内戦と民族対立により虐殺が頻発。
その裏には、常に一人のアメリカ人の影があり……。

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本作の主人公、クラヴィス・シェパード大尉はアメリカ情報軍に所属する軍人で、政府の命令によって謎のアメリカ人で元言語学者のジョン・ポールを追ううちに、恐るべき世界の真理を知る……というストーリー。

言語が人の脳や行動に影響を与えるという設定は、昨年公開の「メッセージ」に近い気がするし、謎のテロリスト?を追うというストーリー構成や、光学迷彩などのガジェットは「攻殻機動隊」を、内紛や虐殺を起こさせる“法則”の解説なんかは「Fate」など(というか、奈須きのこ虚淵玄)の魔術の解説に近いものを感じました。

ここからは、ほんのりネタバレ風味になりますw

 

科学と魔術

ジョン・ポールは、様々な言語、特に虐殺を行ってきた為政者が国民を駆り立てる言語にある一定の法則を発見します。
それは、言語の違いに限らない普遍的な法則で、言語というよりも「音」の波長によって、人間の脳の中にある『虐殺器官』を刺激するというもの。

つまり、ジョン・ポールは言語を研究する学者であると同時に、ある種の呪術というか、魔術士的な存在なんですね。

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一方、シェパード大尉らアメリカ情報軍の兵隊たちは、政府の科学的な処置によって感情の起伏や痛覚、恐怖心までもシャットアウトされているんですね。
そして、ジョン・ポールの『魔術』とアメリカ政府の『科学』の根底は同じものだと指摘され、シェパード大尉は激しく動揺するわけです。

つまり、感情や恐怖などを司る脳の器官を恣意的にコントロールすることで、人間という種が持つ「生存本能」が刺激され、虐殺のスイッチが入るらしいです。多分。

では、ジョン・ポールは一体何のために、後進国を渡り歩き虐殺を誘導しているのか。というのが、本作最大の謎になってるんですねー。

個人的には面白いんだけど

とまぁ、本作は肝の部分の設定がかなり複雑でややこしいので必然的に会話劇になり、そこが好き嫌いの分かれるところかなと思いました。

個人的には、こういう理屈っぽい映画は嫌いじゃないので楽しめたんですが、言語と脳の関係性云々の説明シーンは、これが小説だったら耳馴染みのない単語でも字面で理解出来ると思うけど、セリフとして耳で聞くのは正直辛いなーとw

言葉の意味を頭が理解する前に物語が進んでしまうので、観ている最中は何となく分かったような気になっているんですが、観終わったあと思い返してみると「あれ? 結局どういうこと?」ってなっちゃうんですよねw

「ざっくりこんな感じ」というのはイメージ出来るんですが、言葉の意味をちゃんと理解しようと思ったら1回観ただけでは難しいかもしれません。

もしくは字幕をONにして、一時停止しながら観るとか。

まぁ、そこまでするなら原作を読めって話ですけどねw

本作にどのくらい原作が反映されているかは分かりませんが、本作を観た印象としては、かなり映像化に対して苦労している様子が伺えたし、おそらく原作ファンにとっても、原作未読の人にとっても、大満足とはいかない作品なのかな? と思いましたねー。

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とはいえ、様々なガジェットやアクションは新鮮だったし、R-15指定だけあってゴア描写も容赦なくて。何より、劇中にハッキリしたメッセージ性があって考えさせられる内容だったので、個人的には面白い作品でしたよ。

興味のある方は是非!!

 

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こじらせティーンの面倒くさい日常「スウィート17モンスター」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、思春期こじらせ17歳少女の青春を描いたコメディー映画『スウィート17モンスター』ですよー!

コーエン兄弟の西部劇「トゥルー・グリット」で、14歳にしてアカデミー助演女優賞にノミネートされた女優で歌手のヘイリー・スタインフェルドが空回りしまくりの主人公を快演する、痛々しくも愛おしい物語でしたー!

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

トゥルー・グリット』などのヘイリー・スタインフェルドが主演を務めた青春ドラマ。恋愛未経験ゆえに妄想を膨らませている17歳の少女が、さまざまな出来事を通して成長する過程を描く。監督は、脚本家として活躍してきたケリー・フレモン・クレイグ。『メッセンジャー』などのウディ・ハレルソン、『愛に迷った時』などのキーラ・セジウィックらが共演する。青春まっただなかにいるヒロインのリアルな言動が見どころ。

ストーリー:恋愛に関する妄想を膨らませては何かと騒動を起こし、情緒不安定気味の母親(キーラ・セジウィック)や教師のブルーナー(ウディ・ハレルソン)らを翻弄(ほんろう)している高校生ネイディーン(ヘイリー・スタインフェルド)。親友クリスタ(ヘイリー・ルー・リチャードソン)と一緒にいるときだけ安らげると思っていたが、彼女が人気者でエリートの兄ダリアン(ブレイク・ジェナー)と恋仲になり……。(シネマトゥディより引用)

感想

超面倒くさい、こじらせティーンの日常

本作の主人公ネイディーン・フランクリンは、出来の良くて勝ち組の兄ダリアンにコンプレックスを持ち、コミュ障で皮肉屋で母親と衝突しまくりで、唯一の理解者だった父親は天国に行っちゃって、それでもたった一人の親友クリスタがいるから、何とか学校生活を送れている、思春期こじらせまくりの17歳。

それなのに、クリスタがよりにもよって天敵の兄と付き合い始めたからさぁ大変。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 天敵の兄と親友がベットイン!?

「ぼっち」になってしまったネイディーンは、いよいよ空回って暴走し……。という物語。

そんな超面倒くさい「こじらせ女子高生」を演じるのは、コーエン兄弟監督の西部劇「トゥルーグリッド」で14歳にしてアカデミー賞にノミネートされたヘイリー・スタインフェルド。多分ハリウッドで一番むくれ顔が似合う女優さんです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ネイディーン役のヘイリー・スタインフェルド

チャーミングだけど美人系ではなく、不器用で生意気でいつも空回っていて、ひねくれてて面倒くさいけど、どこか憎めなくて、物語が進むとだんだん可愛く見えてくる。そんな17歳の女の子を、見事に演じていましたねー。

そして、そんな自分を持て余して、空回ったり自己嫌悪したりと忙しい彼女の言動に、現役ティーンは何処かしら自分を重ねるだろうし、昔ティーンだった人たちは、昔の自分を思いだして赤面したり、もしかしたらネイディーンのお母さんに感情移入してしまうかもしれません。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ネイディーンの奇行に手を焼くお母さん(キーラ・セジウィック

本作は、特別なことは起こりませんが、そんな「自分」を持て余している思春期ティーンの「あるある」が詰まった甘酸っぱくて可愛らしい青春コメディーなのです。(/ω\)キャッ

監督について

そんな本作で脚本と監督を務め、制作にも携わったのは、本作がデビュー作となる新人のケリー・フレモン・クレイグ。
コメディーらしくデフォルメしつつも、主人公の複雑で繊細な心情を細やかに描いていたし、自ら手がけた脚本も本当に素晴らしかったです。

この世界感は女性監督の彼女だから描けたんじゃないかと思いましたねー。

傷つけ傷つきながら成長していく物語

主人公のネイディーンは、幼い頃から兄に対して劣等感を抱えています。
かっこよくて、スポーツもできて、母親のお気に入りで、周囲の評判もいい兄と自分を比べて勝手に劣等感を持って拗ねているんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ネイディーン唯一の友達で親友クリスタ(ヘイリー・ルー・リチャードソン)

ただそれは、裏返してみればある種のブラコンでもあるわけで、だからこそ唯一の親友クリスタを奪った兄が許せないし、心の底では大好きな兄を奪ったクリスタも許せない。一方で素直に二人を祝福できない自分も許せないっていう、何とも複雑で面倒くさい状況に陥ってネイディーンはパニックになってしまうんですね。

そして色々キャパオーバーして暴走した彼女は、母親や先生に当たり散らしたり、自分に好意を持っているクラスメートのアーウィン(ヘイデン・セットー)とデートしてみたり、あこがれの上級生ニック(アレクサンダー・カルヴァート)に、うっかりエロメールを送ってイタいサイコ女扱いされたり、大切なクリスタや兄にも当たり散らし、傷つけたり自分も傷ついたりと、もう散々。

まぁ、それもこれも全部彼女の自業自得なんですけどねw

そんな彼女を適度な距離感で良い方向に導いてくれるのが、担任のブルーナー先生(ウディ・ハレルソン)です。

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画像出典元URL:http://eiga.com / いざという時は頼りになるブルーナー先生(ウディ・ハレルソン

ネイディーンの繰り出すイヤミ攻撃にはそれ以上のイヤミで返し、皮肉には皮肉で返し、最初はただの無気力教師かと思うんですが、でもちゃんと最低限のフォローや助け舟はだしてくれるし、ネイディーンが本当に辛い時には、駆けつけてくれる良い先生なのですよ!・゜・(ノД`)・゜・センセー!

観てる間はネイディーンの言動に、「イタタタ…」って思ったり、「もー!お前ー!」って思ったりするけど、観終わってみると「うんうん青春ってそういうものだよね」と、なんとも清々しい気持ちになるんですよねー。

人は皆、傷つけたり傷ついたり、空回りしたり恥をかいたりしながら成長していくのです。(。_。(゚д゚(。_。(゚д゚ )うんうん

ラストシーンも、現役でこじらせ中の人から見ればご都合主義に見えちゃうかもですが、そこ映画だし、思春期の絶望的に感じる苦しい状況だって、ほんの小さなキッカケで意外と簡単に解決してしまうものですしね。

普段、自ら進んで観るジャンルの映画ではないですが、とても面白かったし観て良かったと思える映画でしたねー。

興味のある方は是非!

 

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前作から2年、さらにパワーアップして奴らが帰ってきた!「キングスマン:ゴールデン・サークル」(2018)

ぷらすです。

今日の朝一の回で、年明け5日から絶賛公開中の『キングスマン:ゴールデン・サークル』を見てきましたよー!

衝撃の前作から2年、キャストも内容もパワーアップした彼らが帰ってきましたー!!・:*+.\*1/.:+

というわけで、まだ公開されたばかりの作品だし、前作ファンの人も多いと思うので、できるだけネタバレしないように注意して書きますが、これから本作を観る予定の方は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいねー!

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

コリン・ファースが粋なスパイを演じてヒットした『キングスマン』の続編。スパイ組織「キングスマン」の本拠地が壊滅状態に陥る中、敵を追ってアメリカに渡るスパイの奮闘を描く。マシュー・ヴォーン監督、タロン・エガートンマーク・ストロングらが続投し、新たにハル・ベリーチャニング・テイタムらが参加。

ストーリー:謎の組織「ゴールデン・サークル」によって、ロンドンにある高級スーツ店を隠れみのにしたスパイ組織「キングスマン」の根城がつぶされてしまう。残ったのは、以前スカウトされて腕を磨いたエグジー(タロン・エガートン)と、教官でありメカ担当のマーリン(マーク・ストロング)だけだった。二人は敵を追い、同盟組織の「ステイツマン」の協力を求めてアメリカへ渡る。(シネマトゥディより引用)

感想

キングスマンとは

2014年に公開された、マーク・ミラーとデイヴ・ギボンズによるコミック『キングスマン:ザ・シークレット・サービス』の実写映画化作品です。

どの国にも属さない世界最強のスパイ機関「キングスマン」の活躍と、亡き父の後を継いでキングスマンのスパイとなる道を選んだ青年ゲイリー・“エグジー”・アンウィン( タロン・エガートン)の成長を描いたスパイ映画。

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露悪的なまでに過激な描写で、ヒーローに憧れる少年の成長とヒーローの“リアル”を描いた「キックアス」のマシュー・ヴォーン監督が、荒唐無稽なスパイ組織や秘密道具、不謹慎な人体破壊ギャグなどを織り交ぜながら描いた、ダニエル・クレイグ版007などシリアスなスパイ映画へのカウンター的作品です。

続編となる本作では、すっかり一人前のスパイになったエグジーや、前作でエグジーを育てる先輩ハリー(コリン・ファース)、彼らのサポーターとして活躍したマーリン(マーク・ストロング)などが続投。

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さらに本作では、謎の組織「ゴールデン・サークル」の攻撃でピンチに陥ったキングスマンと共闘する同盟組織「ステイツマン」も登場。前作からさらにパワーアップした物語になっているんですねー!

前作以上の豪華メンバー

で、エグジーらと共に「ゴールデン・サークル」に立ち向かう米国の組織「ステイツマン」のメンバーとして、ハル・ベリーチャニング・テイタムジェフ・ブリッジスペドロ・パスカル

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「ゴールデン・サークル」のサイコな女ボス ポピー・アダムズ 役に、ベテラン名女優のジュリアン・ムーアと、超豪華なメンバーが勢ぞろいしていますよ!

さらに、(これはCMでも登場してるのでネタバレにはならないと思いますが)なんと、 エルトン・ジョンが本人役で登場してるんですねー!

余談ですが、本作でハル・ベリーはネットをハッキングして、ステイツマンのメンバーをサポートする“ジンジャー”というキャラクターを演じているんですが、このジンジャーという役名は2001年公開の「ソードフィッシュ」オマージュかな? なんて思いましたねー。

今度の舞台はアメリカ!?

前作では貧民層で街のチンピラだったエグジーが、大先輩のハリーに英国紳士としての「マナー」を教えられて一人前の男になるという物語でもあったのですが、本作ではそんな彼らが自国を離れ、型破りな“米国式マナー”の洗礼を受けることになります。

といっても、カウボーイにバーボン、投げ縄などなど、イギリス人の目線を通して“カリカチュア”された異国文化がてんこ盛りで、この辺はコミック原作ならではのデフォルメっぷりなんですよね。

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キングスマンの表向きの職業が高級テーラーだったのに対し、ステイツマンはウィスキー工場という設定も面白かったですねー。

また、「ゴールデン・サークル」の女ボス ポピーが、ジャングルの奥地隠れ家に祖国アメリカの町並みを再現してるのは、「地獄の黙示録」のカーツ王国オマージュかな? 思ったりしました。
他にも、歴代007オマージュも随所に散りばめられてましたねーw

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前作よりもパワーアップ! だけど…。

映画冒頭、エグジーがイキナリ襲われてスタートするカーチェイスシーンで、もう僕の興奮はマックス!
見かけはただの古いタクシーなのに、昔の007を思わせるガジェットが仕込まれているのもサイコーだったし、相変わらずおもちゃ箱をひっくり返したような秘密道具の数々や、スタイリッシュなアクション、コメディーシーンも満載なんです。が、前作に比べればパンチに欠けるというか…。

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もちろん、続編なので観ているこっちが「キングスマン」の世界に慣れてる部分もあるんですが、前作がR-15指定だったのに対し、今回はPG-12指定だからか、露悪的で不謹慎な人体破壊描写はかなり控えめ。

また前作で強烈なインパクトを残した、両足義足の女殺し屋ガゼルのような、インパクトのある悪役がいなかったのもちょっと残念でしたねー。
その代わりになるのが「彼」なんでしょうけど、そこまでのインパクトはなかったというか。

前作の「威風堂々」に乗せて繰り広げられる、超不謹慎すぎて思わず笑っちゃう、ヌケのいい“悪ふざけ”が今回はなかったのも、ちょっと残念だったかも。

この辺は好みの分かれるところかもですが、全体的に表現がマイルドになっているんですよね。

まぁ、その分各キャラクターを掘り下げるようなストーリーになってたし、小五脳全開のガジェットやアクションは超楽しかったので、個人的には全然アリだったし、観終わったあとはずっと、カントリーロード」のメロディーが頭から離れませんでしたよー!

ひとつ言えるのは、本作を楽しむなら、前作は押さえておいたほうがいいってことでしょうか。前作の引用や、流れを踏まえているシーンも多いですしねー。

ともあれ、是非、劇場の大画面で堪能して欲しい作品でした!

興味のある方は是非!!

 

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*1: °ω°

邦画監督トップランナーの一人、吉田大八が三島由紀夫の小説を映画化「美しい星」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは三島由紀夫が1962年に発表した同名小説を、「霧島、部活辞めるってよ」などで知られる吉田大八監督が、現代に舞台を変えて映画化した『美しい星』ですよー!

良い人から凶悪な役まで幅広く演じ、役者としても評価の高いリリー・フランキーを始め、ベテラン女優の中島智子、ジャニーズの亀梨和也、朝ドラ「あまちゃん」などで知られる橋本愛など、個性豊かなキャスト陣が出演でも話題になりましたね。

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あらすじと概要

三島由紀夫が1962年に発表した核時代の人類滅亡の不安を捉えた小説を、『桐島、部活やめるってよ』などの吉田大八監督が大胆に翻案して映画化。突如自分たちは地球人ではなく宇宙人だと信じ込んだ平凡な一家が、美しい星・地球を救おうと大暴走するさまが展開する。世界救済の使命に燃える火星人として覚醒した主人公はリリー・フランキー、水星人として目覚めた長男を亀梨和也、金星人として目覚めた長女を橋本愛、地球人のままの妻を中嶋朋子が演じる。

ストーリー:予報が当たらないと話題の気象予報士・重一郎(リリー・フランキー)は、さほど不満もなく日々適当に過ごしていた。ある日、空飛ぶ円盤と遭遇した彼は、自分は火星人で人類を救う使命があると突然覚醒する。一方、息子の一雄(亀梨和也)は水星人、娘の暁子(橋本愛)は金星人として目覚め、それぞれの方法で世界を救おうと使命感に燃えるが、妻の伊余子(中嶋朋子)だけは覚醒せず地球人のままで……。(シネマトゥディより引用)

感想

今や邦画監督としてはトップランナーの1人と言っても過言ではない吉田大八監督ですが、僕は代表作とも言える「霧島、部活辞めるってよ」が個人的にはそこまでハマれなかった事もあって、吉田作品にはちょっと苦手意識があったんですね。

なので本作も公開時はスルーしていたんですが、今回、TSUTAYAで作品を物色している時にたまたま本作を見つけたので、思い切って観てみる事にしました。

「美しい星」について

原作の「美しい星」は1962年、東西冷戦時代の核兵器による人類滅亡の不安・世界終末観を背景に、三島由紀夫が宇宙的観点から見た人間の物語を描いた異色のSF(というかSFベースの寓話?)小説です。

1964年にテレビドラマ、75年にラジオドラマ、2012年に舞台と、様々なメディアに展開されているようですが、映画化は今回が初めてなのかな?

吉田大八監督は、大学時代に三島の『美しい星』を読んで以来ずっと映画化したいと考え、周囲にもそう言い続けてきて、今回、ようやく30年越しの念願が叶ったんだそうですよ。

僕は原作未読なんですが、本作は時代設定だけでなく、一部キャラクター設定やラストシーンなどなど、割と大胆に原作を改変しているようです。

やっぱり上手い吉田監督

本作鑑賞後の第一印象としては、「やっぱり上手いなー」でした。。
今の邦画の世界で、セリフではなく映像でストーリーを語れる監督はあまり多くないんじゃないかと思うんですが、アバンのレストランの食事シーンでサクッと主人公家族の関係や、それぞれのキャラクターを流れの中で説明している手際の良さや、(恐らくは監督が影響を受けている)スピルバーグの「未知との遭遇」オマージュも盛り込まれてて、思わずニヤリとしてしまいました。

それ以降も語り過ぎず語らな過ぎず、過不足なくストーリーを映像とセリフなどで見せていくスマートさはさすがだなーと。

キャラ設定も絶妙で、主人公の大杉重一郎(リリー・フランキー)は、原作では無職で火星人として目覚めてからは「宇宙友朋(UFO)会」を作り、各地で「世界平和達成講演会」を開催して回る活動をするという設定なんですが、本作では、あまり当たらなくてニュースキャスターにいじられる天気予報士という設定です。

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映画冒頭、愛人のキャスターとの電話の最中に、2人の女性が握手と写真を求めてくるんですが、この「テレビに出ていてそこそこ有名人だけどナメられてる感」だったり、羽場裕一演じるニュースキャスターにぼんやり反感を持ってる感じを、ちょっとしたセリフや表情で見せています。

息子の一雄(亀梨和也)は学生時代野球部で、多分学校でも人気者だったけど今は自転車メッセンジャーのバイトをしていて、娘の暁子(橋本愛)は、美人ゆえに自分の中身を見てもらえない事に不満を抱いているし、奥さんの伊余子(中島朋子)はバラバラになってしまった家族や専業主婦という立場にぼんやりした不満があって、怪しげな水を売るねずみ講にハマって行くんですね。

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前半は、そんな家族の閉塞感や不満を、吉田監督ならではの嫌ぁぁぁな感じでじっくりじっくり見せていきます。

そして、お母さん以外の3人が宇宙人として“覚醒”してからは、それまで溜まりに溜まった鬱憤を爆発させるように、物語が一気に加速していくんですねー。

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特に、一雄と暁子の覚醒シーンでは、ヨーロッパのクラブ音楽っぽい曲に合わせて、両者のシーンがサブリミナル的に高速でカットバックして見せるドラッキーな映像で、観ているこっちが圧倒されるような凄いシーンでした。

で、そんな家族とともに、もう一人重要人物が登場します。
それが、佐々木蔵之介演じる議員秘書の黒木で、彼は自称(一雄と同じ)水星人で、議員を影から操り、大杉家族とも深く関係を持っていく謎の男。

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本作では特にCGなどの特殊効果は使わず、佐々木蔵之介の演技(と撮り方)だけで黒木の怪しさや不気味さを表現してるんですが、佐々木蔵之介って演技上手いんですよねー!(お正月に「超参勤交代リターンズ」を観たばかりなので余計にそう感じましたw)

現実か妄想か

ただ、この作品では大杉家や黒木が本当に宇宙人なのか、それともただの妄想なのかは、曖昧なまま最後まで明かされることはありません。

何度か登場するUFOも、ハッキリとその姿を見せることはないし、劇中で超常的な事も起こらないし、大杉家や黒木の姿が変わるわけでもない。

宇宙人であるというのはあくまで彼らの自己申告で、さらに、実は溜まったストレスで彼らがおかしな妄想を見ているだけという風にも取れるエピソードがどんどん出てくるわけです。

その一方で、やっぱり彼らは宇宙人なのではと思わせるシーン(クライマックスのディスカッションとか)もあったりして、観てる方は「一体どっちなの!?」と、最後までモヤモヤするし、ラストシーンには「え、どういうこと?」ってなっちゃうんじゃないでしょうか。

もちろん、これは吉田監督を始めとした製作陣が意図的にそうしてるわけで、大杉家や黒木が本当に宇宙人なのか、それともイカれた地球人なのかは、ぶっちゃけどうでもいいわけです。

テーマ

じゃぁ、本作のテーマは一体何かといえば、スバリ「環境問題」……ではなく、「美しさとは何か」っていう事なんじゃないかと。
いや、そこにはもちろん環境問題も含まれてはいるんですが、もっと根本的な、自然の美しさだったり、人類の文明や文化や歴史がもたらした美しさだったり、家族や人々の営みの美しさだったり。
それらは全て繋がっていて、この「繋がり」が失われたとき「美しい星」も失われてしまうというのが、本作のテーマなのではないかと思いましたねー。

 

そんな感じで、やりたい事や言いたいことは分かるし、表現や語り口も上手いなーとは思うんですが、個人的にはやっぱり、大絶賛! ってほどはハマれませんでした。
ただ、本作の場合は「霧島~」の時とは違って、原作も含めた物語自体のヘンテコさによるところも大きいような気がします。

なので、原作を読んでいたら、また印象は変わっていたのかもしれませんね。

興味のある方は是非!!

 

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孤独なチンピラがヒーローになるまでの物語「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、日本のアニメ「鋼鉄ジーグ」をモチーフにした、イタリア産ヒーロー映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』ですよー!

日本公開前から注目してた作品ですが、残念ながら僕の地元では公開されなかったので、DVDレンタルが始まるのを待ってたんですよー。

いろいろツッコミどころも多いけど、個人的には好きな映画でしたねー(´∀`)

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あらすじと概要

アニメ「鋼鉄ジーグ」をモチーフとし、イタリアのダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で最優秀新人監督賞などを受賞したアクション。荒廃したイタリアを舞台に、超人的な力を得た男が「鋼鉄ジーグ」ファンの少女を守るため、闇の組織と戦う姿を描く。『緑はよみがえる』などのクラウディオ・サンタマリア、『グレート・ビューティー/追憶のローマ』などのルカ・マリネッリらが出演。ダークな世界観やクライマックスの激闘が見どころ。

ストーリー:テロが頻発するローマ郊外。チンピラのエンツォ(クラウディオ・サンタマリア)は、ひょんなことから人知を超えた力を手に入れる。ある日、エンツォが慕う“オヤジ”が殺害されてしまう。オヤジの娘のアレッシアは、エンツォを日本製アニメ「鋼鉄ジーグ」の主人公・司馬宙に重ね、二人の距離は少しずつ近づいていく。そんな中、闇の組織のリーダー・ジンガロ(ルカ・マリネッリ)の脅威が迫り……。(シネマトゥデイより引用)

感想

鋼鉄ジーグとは

本作のタイトルにもなっている「鋼鉄ジーグ」とは、1975年から1976年まで放映された永井豪・安田達矢とダイナミック企画原作のロボットアニメです。

サイボーグ化した主人公が変形する頭部パーツと、バラバラに射出される体のパーツが磁力で合体して巨大ロボットになるというコンセプトが斬新な作品で、僕も玩具持ってましたねー。

ただ、本作は「鋼鉄ジーグの実写映画」ではなく、「鋼鉄ジーグをモチーフにしたヒーロー映画」なので、「鋼鉄ジーグ」を期待して観ると肩透かしを食らってしまうと思います。

イタリアの“ジーグ”はコソ泥で孤独なダメ中年!?

本作の主人公エンツォ(クラウディオ・サンタマリア)は孤独なダメ中年で、盗んだ品物を“故買屋”のセルジョ(ステファノ・アンブロジ)に買い取ってもらうことで食い繋いでいるコソ泥なんですね。

映画は、そんな彼がイタリアの街を逃げ回るところからスタート。
散々走りまくった挙句、エンツォが逃げ込んだ川の底には、放射性廃棄物の入ったドラム缶が不法投棄されていて、漏れ出した放射性廃棄物の混じった水をしこたま飲んだエンツォは、不死身の体と怪力を手に入れます。

その能力にエンツォが気づくのは、セルジョの手伝いで麻薬取引の現場に行き、取引相手に拳銃で撃たれて建設中のビルの9階から落っこちるも、体は無傷で弾丸が当たった傷も翌日には綺麗に治っている事に気づいたことや、うっかり自分の家のドアを破壊してしまったから。

ただ、エンツォはダメ人間なので、その能力を使ってATM強盗とかするくらいしか思いつかないんですね。

家族や友達もいない彼の好物はヨーグルトで、趣味はAV鑑賞なんですが、ATM強盗で得た金で、ヨーグルトとAV(あとローション)を山ほど買ってくるあたりは、思わず笑っちゃうような切ないようなw

麻薬取引でエンツォと共に撃たれて死んだセルジョには、アレッシア(イレニア・パストレッリ)という一人娘がいるんですが、母親の死や辛い現実に心を病み、アニメの「鋼鉄ジーグ」の世界に逃げ込んでいる彼女が、セルジョのボス ジンガロ(ルカ・マリネッリ)に(父親の行方を聞き出すために)拷問されそうになるところを、エンツォがなけなしの罪悪感で助けるんですね。

彼女はエンツォの力を目撃し、彼を鋼鉄ジーグの主人公司馬宙(しば・ひろし)と重ね合わせて慕い、エンツォはそんな彼女をどう扱えばいいか分からず、しかし一緒に行動するうち、孤独だった彼の心に愛が芽生え……というな感じで、物語は2人の奇妙なラブストーリー? へと進んでいくのです。

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画像出典元URL:http://eiga.com 主人公エンツィオとヒロインアレッシア

ヒーロー誕生の物語

エンツィオを公司馬宙と重ね合わせているアレッシアは彼に「人類のために力を使い、父さんを助け、闇の日から世界を救って」と懇願し、貧民層の生まれで、仲間や友達を次々と失って自暴自棄に陥っていたエンツィオは、力をアレッシアのために使おうと考えるようになっていきます。

一方、ギャングのボス ジンガロは、かつてTVのオーディション番組に出たことだけを誇りにしていて、世間の目を自分に向けさせたいと思ってる小物。
本当はただのチンピラなのに「俺はすごい」って思ってる、典型的な誇大妄想狂で、身の丈に合わない麻薬取引に手を出して失敗(セルジョが撃たれ麻薬が手に入らなかった)。上位組織の女ボス・ヌンツァによって殺されかねない状況になります。

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画像出典元URL:http://eiga.com ある意味主人公以上の存在感を見せた悪役ジンガロ(カラオケ中)

本作は、ヨーグルトとAVだけが楽しみなエンツォと、誇大妄想に取り憑かれたチンピラのジンガロという、社会の底辺にいる鏡合わせの2人の対決を軸に、エンツィオがヒーローになるまでを描いたヒーロー誕生の物語なんですねー。

ダメ中年がヒーローになる物語といえば、昨年感想にも書いた「アメリカン・ヒーロー」もそうですが、本作でメガホンを取ったガブリエーレ・マイネッティ監督は、子供の頃に観ていた日本のアニメが大好きなオタクなので、設定や物語がいちいちツボを抑えているなーって思いました。

気になったところ

そういう意味で、本作はヒーロー誕生譚として過不足ないし、「鋼鉄ジーグ」の絡め方も絶妙だと思うんですが、ただ、ヒロインの言動がエキセントリックすぎて、正直ちょっと引いちゃうんですよねーw

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本来なら主人公と年の差がある少女のほうが、「レオン的」な感じで物語が収まりがいいと思うんですが、本作のヒロインはどう見ても主人公と同年代なんですよね。

物語に「鋼鉄ジーグ」を絡めたいとか、主人公との(セックスシーンもある)ラブストーリーだとか、ヒロインの設定的な問題とかが絡んでるからなのかもですが、大人の色っぽい女性が「鋼鉄ジーグ」の世界に逃げ込んで、少女のように振舞う姿は、どうにもノイズになっちゃうというか、もっと単純に(オタク的に)観ていて痛々しいというか。
まぁ、本作に限って言えばそれも正解なのかもですが。(´ε`;)ウーン…

おそらくイタリアでも「鋼鉄ジーグ」は大分前に放映されたアニメだと思うし、それをストーリーに絡めるために、設定に無理が出ちゃってるかなって思いました。

あと、普通に街中の川に放射性廃棄物が捨てられてるってのも、若干違和感を感じたけど、そこはまぁ物語の展開上仕方ないのかな。

それ以外の戦闘シーンがショボイとか、クライマックスのサスペンスシーンがあまりハラハラしないとか、爆発シーンが思いのほかショボイとかは、予算の都合上仕方がない部分だと思うし、それでも格好良く見せようという工夫や努力が見えるところは、個人的には好感が持てました。

一方で、ジンガロが自分の残虐シーンをスマホで撮影してYouTubeにアップするとか、エンツォの超人的なシーンを防犯カメラで捉えるとか、今風な映像演出もされてて良かったし、エンツォ役のクラウディオ・サンタマリアは、その佇まいも含めて凄く良かったし、ジンガロ役のルカ・マリネッリはどんどん狂っていく悪役を魅力たっぷりに演じてましたねー。

あと、本作のタイトルはイタリア語のタイトル「LO CHIAMAVANO JEEG ROBOT」の直訳なんですが、映画が開幕すると「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」と日本語で映し出されるんですね。
僕は最初、日本の配給会社がタイトルを差し替えたんだと思ったんですが、これ、オリジナルそのままの状態らしいです。

子供の頃にイタリアで放送されていた日本のアニメに、並々ならぬ愛情とこだわりを持っていて、長編デビューとなる本作以前にも「ルパン三世」や「タイガーマスク」をモチーフにした短編を撮っているガブリエーレ・マイネッティ監督のこだわりだったらしいんですが、だからと言って一部のオタクに向けた映画ではなく、一本の映画としても十分面白いし見ごたえのある作品でしたよ!

興味のある方は是非!!

 

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ストップモーションアニメの究極形「パラノーマン ブライス・ホローの謎」(2013)

あけましておめでとうございます。
ぷらすです。
今年もよろしくお願いします。

さて、2018年1発目にご紹介するのは、現在公開中の「KUBO /クボ 二本の弦の秘密」が話題沸騰中のストップモーションアニメスタジオ「ライカ」2012年公開作品『パラノーマン ブライス・ホローの謎』ですよー!

僕の地元では、未だ「KUBO~」の公開予定がないんですが、万が一の公開に備えて予習も兼ねて観ることにしましたー!

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 あらすじと概要

300年前の魔女の呪いによって死者たちに襲撃された町を舞台に、死者と会話のできる少年の活躍をファンタジックに描くストップモーション・アニメ。ホラー映画好きのどこにでもいるような少年でありながら、死者が見え話すこともできる主人公の声を、『ザ・ロード』『モールス』のコディ・スミット=マクフィーが担当。アカデミー賞にノミネートされた『コララインとボタンの魔女 3D』の製作会社によって作り出された、繊細でユーモラスな動きや表情を見せる人形たちに夢中になる。

ストーリー:300年前に魔女狩りが行われていた町、ブライス・ホロー。ノーマンはどこにでもいるホラー映画好きの少年だが、死者と話せる特殊な能力を持っていた。ある日、ノーマンの前に死んだおじさんが現れる。そして、魔女の呪いによって町が滅ぼされる日がすぐそこまで近づいており、それを救うことができるのはノーマンだけだと言われ……。(シネマトゥデイより引用)

感想

驚異の“人形アニメ

本作を制作しているのは、米国のストップモーションアニメスタジオ「ライカ」
ストップモーションアニメとは、ミニチュアのセットに置いた人形を少しづつ動かして撮影する手法で、日本だと「人形アニメ」っていう方がしっくりくるかもですね。

基本的には絵を動かす普通のアニメーションと理屈は同じですが、実際にセットの中で人形を動かすので、実写と同じ立体的な映像が作れます。

ライカはそこに、CG映像を組み合わせたり、3Dプリンターでキャラクターの顔を作成、一コマ単位で人形の表情を変える「リプレイスメント・アニメーション」という技法を開発するなど、とんでもない手間をかけてストップモーションアニメを進化させているスタジオなのです。

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なので、本作は限りなく3DCGアニメに近い作品ながら、キャラや町並みの質感なんかはCGに比べて実在感を感じたし、逆にストップモーションアニメ独特の“ぎこちなさ”みたいなものは、ほとんど感じられませんでしたねー。

ストーリー

そんな本作なので、どうしても技術的な事にばかり目が行きがちですが、ストーリーの方もシンプルで無駄がなく、普遍的な重いテーマを寓話的に分かりやすく伝えていて、本当に素晴らしかったです!

ストーリーをざっくり説明すると、幽霊とコミュニケーションができるせいで変人扱いされる少年ノーマンが、その力で魔女の呪いを解く物語で、日本でいえば「夏目友人帳」に似ているかもしれません。

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舞台は300年前に魔女狩りが行われていた町ブライス・ホロー。
幽霊と話ができる事を、最初は誰にも信じてもらえずに、大人たちには白い目で見られたり、同級生にはいじめられているノーマンはある日、同じ力を持つ親戚のおじさんに、魔女を封じて町を呪いから守る役目を継ぐように迫られ……。
というのが物語の大筋で、そこにノーマンを理解しようとする母親、逆にノーマンの言葉を受け入れられない父親、いじめっ子、太っちょの親友、ノーマンを疎ましく思っている思春期の姉と、心を閉ざしたノーマンとのエピソードが語られていきます。

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そこには多様性を認める事の大切さだったり、排他主義の恐ろしさだったり、いじめや集団心理の怖さなどなど、人間が根本的に抱える普遍的な問題が描かれていて、「魔女の呪い」の事件キッカケに、ノーマンとメインキャラクターの関係が少しだけ変わっていくわけです。
そんな風に書くと「最後はみんな仲良くなって大団円」って思うかもですし、まぁ概ねそうなんですが、例えば同じテーマを扱っているディズニーやピクサー作品のほどはスッキリはしないかもw

でも、それが大人の着地と言う感じがして、個人的には凄く新鮮でしたねー。

その辺は「ライカ」が、ポートランドストップモーション・アニメーションを制作していたウィル・ヴィントン・スタジオの流れを汲んでいる事も関係しているのかも。

なので、子供たちはノーマンに感情移入して純粋に楽しめると思いますが、大人はクライマックスやラストでの少量の毒に、ドキっとしてしまうかもしれませんw

ただし、だからと言って小難しい映画というわけではなく、映像もストーリーも、大人から子供まで楽しめるエンターテイメント作品になってるんですけどね。

この作品には、お化けと話せる少年の姿を通して、人と違う事に悩む少年少女たちへの「人と違うのは悪いことじゃない」というメッセージが込められているし、それはライカのスタッフ自身の経験が反映されたテーマでもあるんですね。

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そして、僕は本作を観て益々「KUBO~」をスクリーンで観たくなってしまいましたよー!!(血涙) 2ヶ月遅れでもいいから、何とか地元でも公開してくれないかなー。|ω・)チラ

興味のある方は是非!!

 

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