今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

面白いけど居心地が悪い「シュガー・ラッシュ:オンライン」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの新作アニメーション『シュガー・ラッシュ:オンライン』ですよー!

大ヒット作品の続編として昨年公開され、歴代のディズニープリンセスが登場して話題になった本作。
もちろんクオリティーも高く面白かったんですが、正直ちょっと居心地の悪いモヤモヤが残ってしまった感じでしたねー。

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概要

ヒーローに憧れるゲームの悪役キャラクターと、レースゲームで仲間外れにされていた少女の友情を描くアニメーション。初めてアーケードゲームの世界を飛び出したラルフとヴァネロペが、インターネットの世界に入り込み冒険する。『スター・ウォーズ』『トイ・ストーリー』シリーズをはじめ、白雪姫などのプリンセスら人気キャラクターが多数登場。前作の監督のリッチ・ムーアと脚本のフィル・ジョンストンが共同で監督を務める。(シネマトゥデイより引用)

感想

ヴァネロペとラルフがインターネットの世界へ!

アーケードゲームの世界で、嫌われ者の悪役ラルクと、天才レーサーながら仲間はずれの少女ヴァネロペの友情を描いて大ヒットした前作「シュガーラッシュ」から6年。

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以来すっかり親友の二人ですが、ヴァネロペは刺激のないアーケードゲームの世界に物足りなさを感じ、ラルフは現状に満足しているというところから物語はスタートします。

そこでラルフはヴァネロペのため「シュガー・ラッシュ」に“新コース”を作ってあげるわけですが、それが原因で筐体のハンドルが壊れてしまうという事態になってしまうんですね。

このままでは、筐体がなくなりヴァネロペを始めとしたキャラクターは居場所を失ってしまう。
そこで、二人はハンドルを求めてインターネットの世界へと旅立つのだが――という物語。

刺激的なネット世界に目を輝かせるヴァネロペと、早く元の世界に帰りたいラルフの心は少しずつすれ違っていき、そんな時出会った過激なオンラインレースゲーム(Fallout的な感じ?)にヴァネロペはすっかり夢中になってしまって――という展開になっていくんですねー。

ネットの世界を視覚化

そんな本作の舞台はインターネット。
スタッフのアイデアと技術で広大なインターネットの世界を見事に視覚化しています。

主人公の二人がゲームキャラということもあって、本作で描かれるネットの世界ではユーザーの分身であるアバターには表情や動きが少なく、逆に擬人化された検索エンジンやポップアップ広告、システムなどの方が生き生きと動き話しているのが面白かったです。

またネットの世界が、古い年代から新しい年代にかけて縦に積み上がっている世界という設定も中々面白いと思いましたねー。

で、ネットの世界といっても決して無機質な世界感ではなく、「ベイマックス」の“サンフランソウキョウ”や「ズートピア」のような、彩り豊かで活気がある世界として描かれていて、観ていてとてもワクワクするんですよね。

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その一方で、動画サイト「バズチューブ」で荒れるコメント欄や、アンダーグラウンド的なゾーンは暗い色調で描かれるなど雰囲気が異なり、ネットの光だけでなく影の部分も同列で描く姿勢には誠実さを感じました。

都会と田舎

本作で描かれるインターネットは日本で言えば東京・大阪・名古屋などの都市部であり、二人が元々住んでいたアーケードゲームの世界は地方都市のそれぞれメタファーになっています。

住人全員が顔見知りで居心地のよい地方都市(アーケードゲーム)での変わらない日常にラルフは満足しているけど、ヴァネロペの方は退屈していて初めて見る大都会(インターネット)の煌びやかで刺激的な世界に胸を躍らせる。

前作では狭い世界の中で居場所のない二人が協力して居場所を作っていく物語だったのに対し、本作では都会に居場所を見つけるヴァネロペと、田舎での変わらない暮らしを望むラルフのすれ違いを描いているわけです。

いわば「都会のねずみと田舎のねずみ」の現代版とも言える物語で、異なる価値観を持つ二人は親友でいられるのか。親友でいるために何が必要かという物語でもあるんですよね。

ディズニー、ピクサーMCU、SWのキャラが大集合

前半、筐体のハンドルを手に入れる資金を集めるため、ラルフはバズチューバー(ユーチューバーみたいな感じ)として動画を上げまくり、ヴァネロペはラルフ動画の宣伝のためディズニーワールドに行くわけですが、そこではディズニーのみならずピクサーMCUスターウォーズなどディズニー傘下のキャラクターなどがこれでもかと登場します。

正直、一度はディズニーを解雇されたジェームズ・ガンが「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3」の監督に復帰した今だから心穏やかに観ていられましたが、もし劇場公開時に観ていたらグルートがファンの質問に答えるシーンにはかなりイラっとしてしまったかもしれませんw

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同様に、ストームトルーパーやC3POが登場するシーンに、ファンはちょっぴり(?)複雑な気持ちになるのでは? なんて邪推してしまったりw

そして、ディズニー歴代プリンセスの総出演ですよ。
ラストの方で活躍するからいいけど、もしこのコメディシーンだけの登場だったら(´ε`;)ウーン…ってなってたかも。

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いや、ファンサービスのちょっとしたお遊びとしてのセルフオマージュなのは分かるんだけど、果たして各作品のファンはこれを望んでいたのかな? って。
ちょっぴり引っかかっちゃうんですよねー。

まぁ、歴代プリンセスとの絡みは後の展開の伏線にもなってるので、外せなかったとは思うんですけどね。

面白かったけど居心地が悪い

事ほど左様に、さすがディズニー作品だけあって、アニメーションとしてのクオリティーは当然として、楽しいしワクワクする描写も多い本作。

しかし、僕が男でラルフにライドして観ちゃうからなのか、終始、居心地の悪さを感じてしまうんですよね。

近年(具体的には「塔の上のラプンツェル」以降?)のディズニープリンセスものは、「女性の自立」が主軸に据えられていて、それ自体は時代の潮流にも合っているし個人的にはそれ以前の王子様に見初められて~的なプリンセス像よりもずっと面白く見ごたえがあると思っているんです。

ただ、その一方で男性キャラが空気というか、割と雑に扱われているなーという印象も無きにしもあらず。

敵キャラかヘルプキャラのどちらかの立ち位置だなーという印象があるんですよね。

で、本作でその両方を一手に担っているのがラルフなんですよ。

もちろん、ラルフとヴァネロペは親友であって恋人ではないし、本作で描かれているテーマも重々分かってるつもりなんですが…。
観ている間中、何だかずっと責められている様な気持ちになっちゃうんですよねーw

リッチ・ムーア&フィル・ジョンストン両監督もその辺には(多分)自覚的で、ラルフ、ヴァネロペのどちらも悪者にならないようバランスを取ろうとしてるのは分かるし、物語的にも十分気を配って上手く着地させているのも分かる。

でも、ラルフにライドして観ているコッチとしては、こう言っちゃアレだけど、ヴァネロペだってまぁまぁ勝手じゃん? とか思っちゃうんですよ。

その辺のモヤモヤが最後まで残っちゃうので、前作や他の作品みたいに無条件で楽しめないし、物語にも乗り切れないんですよねー。

その辺、作劇的にもうちょっと上手いやり方もあったんじゃないかなー? って思ったりしてしまいました。

ネットの評価が分かれているのも、その辺に原因があるのではないかと思うんですよね。

まぁ、この調子なら次回作もありそうだし、次に期待って感じですかねー。

興味のある方は是非!!

 

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暗い・赤い・見づらい!「マンディ 地獄のロード・ウォリアー」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、みんな大好きニコラス・ケイジ主演のバイオレンス映画『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』ですよー!

奥さんを殺したカルト教団ニコラス・ケイジが復讐するというストーリーや、評論家筋には評判がいいという噂を聞いてたので、それなりに期待して観たんですが……。

今回は、感想の中で口汚く罵ってしまうかもしれないので、この映画が好きな人はスルーして頂けると嬉しいです。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ゴーストライダー』シリーズなどのニコラス・ケイジらが出演したホラー。妻を惨殺された男が、壮絶な復讐(ふくしゅう)を仕掛ける。監督は『ランボー/怒りの脱出』などのジョルジ・パン・コスマトス監督の息子のパノス・コスマトス。『シャドー・ダンサー』などのアンドレア・ライズブロー、『すべては愛のために』などのライナス・ローチらが共演。(シネマトゥデイより引用)

感想

ニコラス・ケイジ主演のバイオレンスと聞いて

一時期のニコラス・ケイジは、個人的に「安い映画にチョロっと出ては小遣いを稼ぐ過去の人」という印象でした。

しかし近年の主演作「オレの獲物はビンラディンマッド・ダディの二本で“イっちゃっけるおじさん”という新境地に、僕は復活の兆しを見た気がしたんですよ。

なので、そんなニコラス・ケイジ主演。しかもバイオレンス映画と聞いて、かなり楽しみにしてたんですよねー!

更にこの映画、カンヌ国際映画祭では約5分のスタンディング・オベーションを受け、サンダンス映画祭やファンタジア国際映画祭など数々の映画祭でも映画評論家やメディアに絶賛され、世界最大の映画レビューサイト「Rotten Tomatoes」では、なんと批評家スコア98%を叩き出したっていうじゃないですか!
なので、期待値上げまくって観たら、

……え、マジで? って。

いや、確かに事前に僕が期待してた内容とは随分違ってたからガッカリしたっていうのは認めます。でも、それを差っ引いてもそんなに高評価を受ける理由がまったく理解できないんですよね。

少なくとも僕にとって、この映画はビックリするくらい面白くなかったです。

ざっくりストーリー紹介

1983年、湖畔の家で静かに暮らすレッドニコラス・ケイジ)と妻マンディアンドレア・ライズボロー)
そんなある日、たまたま道ですれ違ったマンディを見初めたカルト教の教祖ジェレマイア(ライナス・ローチ)は、部下とヤク中のイカーギャングを使ってマンディを我が物にしようとするが、マンディに嘲笑されたことに怒り、彼女を焼き殺してしまう。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 見た目は怖いけど、これでもヒロインなのです。

愛する人を目の前で奪われたレッドは怒り狂い、自ら鋳造した武器と友人に預けていたボーガンを手に復讐に立ち上がるのだった。というストーリー。

このあらすじだけ読めば、いかにも面白そうじゃないですか?

前半15分くらいでカルト教団に恋人を殺されたレッドが、一人、また一人と復讐していき、ラストは壮絶なバトルの末にラスボスを倒す。

そんな、ベタだけど血湧き肉躍る90分弱の映画を予想するじゃないですか。

ところがですよ。

この映画なんと121分もあるのです。

そして前半1時間はメンヘラ妻マンディとオタクおじさんレッドのかったるいイチャイチャシーンを延々見せられるんですが、これが絶望的につまらない

我ながらよく寝ないでいられたものだと関心しますよ。

で、いざカルト集団の襲撃→マンディ包み焼き→レッド復讐という流れになってからも、意味のない長回しや無駄なカット。意味不明なアニメなどを見せられ、しかも暗い、赤い、見づらいの三拍子揃った映像や、子供だったら発作を起こしそうなチカチカ映像、アホみたいにスモークを焚きまくり。話のテンポは悪いわ、映像は見づらいわ……もうね、ずっとイライラしっぱなしでしたよ。

薬中のバイカーギャングたちは、超強力なSLDの中毒で、ヘルレイザー並に全身トゲトゲだったり、顔に人間の皮膚を貼り付けていたりと僕の大好物な造形なんですが、それも映像が暗すぎてせっかくのデザインが全然見えないっていうね。

やる気あんのかオラー!!ウガー!!*1°3°;)☆

音楽は故ヨハン・ヨハンソン

そんな本作で音楽を担当したのは「ボーダーライン」や「メッセージ」も担当した故ヨハン・ヨハンソン

「ボーダーライン」のあの重低音が効いた不安を煽るような音楽が、ほぼ全編垂れ流し状態で、本来ロマンチックなシーンでも全然心が休まらない。
対してエンドロールでは音楽は使わずに森の音や鳥の囀りなど自然音が流れるだけっていう。なに? 「沈黙」ですか?

っていうか、こんな映画がヨハン・ヨハンソンの遺作になっちゃったかと思うと…ねぇ。(・ω・`)

アートかぶれの映研部員が作ったような映画

いや、分かりますよ?
LSDなどの薬物を摂取した脳内の悪夢的イメージを映像化したんですよね。多分。

マンディが焼き殺される時、教祖ジェレマイアがレッドの脇腹をナイフで刺したり、バイカーギャングに拉致された時、手の甲に釘が刺さってたりと、分かりやすくキリストのメタファー的な表現もあるからレッドとキリストを重ねたんですよね。多分。

レッドとマンディの会話やラストの対決も如何にも意味ありげですしね。

原色ライト使ったり、チカチカ映像を挿し込んだりと、むやみに見づらい映像はいかにもアート映画っぽいですよね。うんうん…………って、

小賢しいわっ!!(´・ω・)つ)3゚)∵

っていうか映像がうるさいんじゃボケー!

それ以前に、レッドの木こり設定もマンディのメンヘラ設定も、別に後の展開に何も繋がってないし、キリスト教もスモークも原色ライトも、見づらいだけで何の効果も産んでない。中身のない「っぽい」だけの映画でしたよ。

ちなみに、本作を観たとき僕は『グラインドハウス』のフェイク予告編の長編映画化でカナダ映画ホーボー・ウィズ・ショットガンに似てるなーって思いました。

ただ「ホーボー」の方は、カナダのボンクラが自分の好きなものを詰め込みまくった結果として、冗長で物語が破綻しているわけで、個人的にはそういう映画って嫌いにはなれないんですよ。

でも本作の場合、映像の向こうにパノス・コスマトス監督のドヤ顔が浮かんでくる

つまり、いけ好かないんですよ!

お前はアートかぶれの映研部員か!と。

良かったところ

とまぁ、文句ばかり言ってるのもアレなんで、最後くらいはちょっとホメようと思います。

カルト教団にマンディを殺されたレッドことニコラス・ケイジ

で、木に有刺鉄線で括られていた手を何とか抜いて自由になった彼は、上はトラの顔がプリントされた超ダサいTシャツにブリーフ姿で、度数の強いお酒? をがぶ飲み&患部消毒しながら、唸ったり泣いたり叫んだり。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 本作唯一と言っていい名場面

そのクソダサい姿に思わず笑ってしまうんですが、同時にレッドのやり切れない怒りがストレートに伝わってグッときてしまうのです。
その辺は、さすがアカデミー俳優ニコラス・ケイジだなーと。
変な映画ばっか出てるから忘れそうになるけど、この人芝居は上手いんですよね。

あと、復讐のために斧とも槍ともつかない、中二病全開の武器をDIYで鋳造。(マンディの遺灰を入れてる?)

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画像出典元URL:http://eiga.com / 中二病前回のオリジナル武器

どうやらこの武器は、スイスの有名ヘビーメタル・バンド「セルティック・フロスト」のロゴにインスパイアされたものらしく、中二心をくすぐるデザインなんですよね。

そして、ラストの車の助手席にマンディの幻影を観てニカっと歯を見せて笑うニコラス。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ニコラス・ケイジだから出来る笑顔

もちろん血まみれなのもあるけど、あの鬼気迫る表情は、ニコラス・ケイジ意外の役者には出せないんじゃないかと思いましたねー。

まぁ、全体的に死ぬほどつまらない映画でしたが、ニコラスのブチギレ演技は良かったですよ。うん。

興味にある方は是非!

 

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*1:#`皿´)〇

日本映画界のトップランナーが描く“家族”の物語「万引き家族」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、日本映画界のトップランナー是枝裕和監督の最新作『万引き家族』ですよー!

「これはパルムドールも取るよね」と納得の美しくも凄まじい映画でしたねー!

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概要

『誰も知らない』『そして父になる』などの是枝裕和監督による人間ドラマ。親の年金を不正に受給していた家族が逮捕された事件に着想を得たという物語が展開する。キャストには是枝監督と何度も組んできたリリー・フランキー樹木希林をはじめ、『百円の恋』などの安藤サクラ、『勝手にふるえてろ』などの松岡茉優、オーディションで選出された子役の城桧吏、佐々木みゆらが名を連ねる。(シネマトゥディより引用)

感想

是枝監督が描き続けてきた“家族”の結論

僕は全作観たわけじゃないのでハッキリと断言はできませんが、是枝監督は「家族」を描き続けてきた作家だと思います。

「誰も知らない」(2004)では1988年の巣鴨子供置き去り事件を元に親に捨てられた子供たちを。
そして父になる(2013)では産婦人科による子供の取り違えから、ふた組の親子の姿を。
海街diary(2015)では、母親の違う4姉妹が家族になるまでの物語を。

これらの作品で、是枝監督は「家族を家族たらしめているものは何か」という問いをずっと観客に問いかけてきているんですよね。

それは同時に、血脈=家族という世の中の枠組みや常識の是非を、作品を通して世に問い続けているという事でもあります。

だから、彼が描く作品の登場人物の多くは、そうした枠組みから弾かれたりはみ出してしまった人々なんですよね。

そして、本作でもそうした「社会の枠組み」や「正しさ」から弾かれ、外れてしまった6人の登場人物が家族として都会の片隅で身を寄せ合い暮らす物語であり、彼が長年描き続けてきた「家族」というテーマにひとつの結論を出した作品と言えるのではないかと思います。

ざっくりストーリー紹介

日雇い労働者の柴田 治リリー・フランキー)とクリーニング工場で働く妻・信代安藤サクラ)、風俗に勤める信代の妹の亜紀松岡茉優)、息子の祥太(城桧吏)、治の母・初枝樹木希林)は、初代の年金と僅かな収入、そして万引きで盗んできた商品を頼りに東京の下町で身を寄せ合うように暮らす「家族」です。

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ある日、治と祥太は万引きの帰り道で、寒さに震える幼女じゅり(佐々木みゆ)を見かねて家に連れて帰ります。
見ず知らずの子供と帰ってきた夫に最初は困惑する信代ですが、DVで傷だらけの彼女を見て世話をすることにするのだが――という物語。

序盤から中盤にかけては、貧しいながらも楽しい我が家という感じの柴田家の様子が描かれますが、ある出来事をキッカケに、彼ら家族に隠された本当の姿が見えてくるという、ほんのりミステリー要素を含んだ構成になってるんですね。

物語内リアリティー

本作は冒頭から治と祥太の万引きシーンからスタートします。
治は祥太に指サインを送ったりして、明らかに常習犯であることが分かるんですよね。

その帰り道、真冬のベランダに放置されている痩せっぽちの幼女じゅりに「コロッケ食べる?」と声を掛ける治。

劇中ハッキリとは提示されませんが、恐らく治は前々から寒空に放置される彼女(じゅり)の事を気にかけていた事が分かります。

場面変わって彼らの家。

ビルの隙間に取り残されたように建つ平屋のおんぼろ屋敷で、ゴチャゴチャと汚い居間には、5人の家族がひしめき合うように暮らしていて、その中にポツンとじゅりがいるんですよ。見捨てて置けずに治が連れてきてしまったんですね。

治は冒頭で息子を使って万引きをして、しかもコツがどうこう自慢げに教えるという世間的には最悪の父親ですが、寒空に放置された幼女は見捨てて置けずに家に連れてきてしまう。
それに対して、さほど驚く様子もなく共に食事をする家族の描写で、彼らの正しくはないし常識もないが悪人ではないというキャラクターが説明なしでそれとなく分からせる作劇になってるんですよね。

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それにしてもこの家がですね、古臭くて汚くてゴチャゴチャしてて、周囲の建物に埋没して時代に忘れ去られたみたいな家でしてね。
そんな中、大人も子供もごちゃまぜで生活音と話し声が混じり合っているカオスっぷりは、どこか「ALWAYS 三丁目の夕日」的というか、家も住人も下町の原風景を思わせる温かみがあるし、リリー・フランキー演じる治の、日雇い労働者で基本怠け者で生活力なしという設定は落語的な感じすらあります。

そして、彼らのセリフのやりとりはアドリブっぽいというか、演技してる感がないというか。
でも、いわゆるリアルとは少し違って、敢えて言うなら“生々しい”んですよ。
彼らの醸す空気感や距離感は、物語の中でキャラクターが本当にこの家で生活している感じがするのです。

なので一見、役者がアドリブで好き勝手に喋っている様子を無造作に撮影してる様に見えるんですけど、実はキャラクターの配置や距離感などを周到に計算して、画的な説得力を観客に感じさせる是枝監督の演出と、リリー・フランキー安藤サクラ樹木希林松岡茉優という日本屈指の実力派俳優陣の演技ががっちり噛み合って、物語内リアリティーを生み出しているんですよね。多分。

唯一、この“家族”の中で松岡茉優演じる亜紀だけがちょっと浮いているように見えるんですが、それも実は作劇上の演出であることが、後に分かるような仕掛けになっているのです。

“生々しい”と言えば、中盤描かれる治と信代の濡れ場
二人で素麺を食べていると思ったら雰囲気が盛り上がって信代が押し倒したところでカットが変わり事後、オールヌードでうつ伏せの安藤サクラの体がですね。
“エロい”っていうよりも“艶かしい”という表現の方がしっくりくるんですよね。
それでいて、リリー・フランキーと全裸で会話する夫婦感も残している絶妙なバランスだったりします。

徐々に浮き彫りになる“正しくなさ”

そんな感じで彼ら家族は昭和感溢れる暮らしを満喫したり、みんなで海に行ったり、見えない花火を見上げたり。じゅりもすっかり打ち解けて貧しいながらも幸せな家族に見えるんですが、それと並行するように彼らの“正しくなさ”がじわじわ暴かれていき…。

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それはつまり、家族としての暮らしの終わりが近い事を示唆し、同時に現代社会の被害者であり弱者であると思われた彼ら家族が、実はそう単純ではなかった事が明らかになっていく。

そして後半のある出来事を境に、正しくはないけど憎めない大人として描かれていた初絵と治と信代の圧倒的な“正しくなさ”が詳らかになる様子を、(主に祥太の目線で)見せていくんですね。

あ、やっぱりコイツらダメなんじゃんと。

そしてある日、彼ら“家族”はいともあっさりと崩壊してしまうのです。

本作がカンヌでパルムドールを受けた事に対して、「日本人がみんなこんなだと思われたくない」とか「犯罪を美化している」と言う人がいたとかいないとかネットで見かけましたが、もしそんな事を言う人が本当にいたのだとしたら、その人たちは本作を観てないか、目が節穴かのどちらかだと思いますねー。

是枝監督は、本作を通して彼らの“正しくなさ”をこんなにも辛辣に糾弾していますからね。

そして、家族の崩壊は“正しくなさ”の報いであり、同時に救いでもあります。
彼らは家族の崩壊によってそれぞれが成長していくのです。

そんな彼らにそっと寄り添うように、是枝監督は家族の別れを描いているんですね。

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それは、オープニングの出会いと対になるラストカットを観れば明白で、“正しくない家族”に救われたじゅりは、しかし確かに彼ら彼らから何か大切なものを受け取っているのです。

好き嫌いは分かれるかも

というわけで、僕は面白かったし好きな映画ですが、正直好き嫌いは分かれるかもしれません。
というのも、本作は是枝監督の怒りや主張が割とハッキリ前面に出ているんですよね。
それを是と取るか否と取るかで、本作の評価は分かれそうな気がしました。

ただ、ケイト・ブランシェットが舌を巻いたというクライマックスでの安藤サクラの泣きの演技は正に圧巻だったし、個人的に観て損は絶対にしない作品だと思いましたねー。

興味のある方は是非!!!

 

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あまりに怖すぎて笑っちゃう「ヘレディタリー 継承」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ホラーに造詣の深い脚本家で、映画監督で、スクリプトドクターでもある三宅隆太氏をして「21世紀最怖!」と言わしめたホラー映画『ヘレディタリー 継承』ですよー!

劇場公開時、観に行こうか迷ったんですが、超ビビリなので「とても映画館の大画面&音響で最後まで観られる気がしない」と思い、レンタルが始まるのを待ってたんですよねー。(〃ω〃)>

で、この映画はネタバレなしではちょっと感想が書けないので、中盤からはネタバレありで感想を書こうと思います。
なので、これから本作を観る予定の方やネタバレは絶対に嫌! って人は先に映画を観てから、この感想を読んでください。

いいですね? 注意はしましたよ?

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概要

家長の死後、遺された家族が想像を超えた恐怖に襲われるホラー。主演は『リトル・ミス・サンシャイン』などのトニ・コレット。ドラマシリーズ「イン・トリートメント」などのガブリエル・バーン、『ライ麦畑で出会ったら』などのアレックス・ウォルフらが共演。監督・脚本は、ショートフィルムなどを手掛けてきたアリ・アスター。『ムーンライト』『レディ・バード』などで知られる映画スタジオA24が製作している。(シネマトゥディより引用)

感想

今、最も信頼できる映画スタジオ「A21」が送る最怖ホラー!

本作を制作した映画スタジオ「A21」は、インディペンデント系でありながら「複製された男」「エクス・マキナ」「ルーム」「ムーンライト」「20センチュリー・ウーマン」などなど、話題作を次々世に送り出している、今、最も信頼出来る映画スタジオです。

そんなA21が、昨年6月に送り出したのが本作「ヘレディタリー 継承」なんですね。

監督・脚本を務めるのはなんと本作が長編デビューというアリ・アスター

低予算映画ながら、サンダンス映画祭でプレミア上映された直後から「直近50年のホラー映画の中の最高傑作」「21世紀最高のホラー映画」と大絶賛。

日本でも、前述した三宅隆太氏を筆頭に、多くの映画関係者や評論家、観客を恐怖のどん底に突き落とし、早くも「21世紀最怖」「今後ホラー映画のクラッシックとして語られる映画」など、最大級の評価を得ています。

由緒正しい“オカルト映画”を現代にアップデート

一口にホラーといっても、殺人鬼が人を殺しまくる「スラッシャーホラー」や人体破壊や大量の流血などの残虐シーンが見ものな「スプラッタホラー」。怪物に襲われる「モンスターホラー」などなど、特に80年代以降は多様性が進み、近年では「クワイエット・プレイス」や「ドント・ブリーズ」など、若手監督による新感覚ホラーが次々と作られています。

では、本作はと言うと70年代の「オーメン」や「エクソシスト」と言った、クラッシックな正統派“オカルト”映画の流れを汲みつつ、それを現代にアップデートしてみせた作品なんですよねー。
なので、いきなりワッ! と驚かされるような「お化け屋敷」的ホラーが好みの人には、あまり合わないかも。
この作品は、どちらかといえばじわじわと真綿で首を絞められ続けるような、観客を悪夢に引きずり込む系ホラーなのです。

ざっくりストーリー紹介

物語は、主人公でドールハウス作家のアニートニ・コレット)の母エレンの葬儀のシーンから始まります。

エレンは解離性同一性障害を患っていて、夫は精神分裂病で餓死、長男(アニーの兄)は極度な被害妄想が原因で16歳で自殺。
さらに年老いて認知症まで患った母を介護していたアニーは、エレンとかなり激しくぶつかることもあったらしい。

アニー自身も夢遊病であり、長男ピーター(アレックス・ウルフ)と13歳の長女チャーリー(ミリー・シャピロ)にも精神疾患が遺伝するのではと恐れている彼女は、夫ティーガブリエル・バーン)に内緒で行ったグループセラピーで、上記の身の上を語るのです。

一方、極度に内向的でおばあちゃん子だったチャーリーは、エレンの死後不安定になり、死んだ鳩の首を切り取って持ち帰ったり、エレンの幻影を追って裸足で外に出たりと奇行が目立つように。

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画像出典元URL:http://eiga.com  / チャーリー役のミリー・シャピロちゃん。この子を見つけた時点でこの映画は勝ちだよね。

そんなある日、チャーリーの身に起こったある悲劇的な事故を引き金に、それまで辛うじて家族の形を保っていた一家に、次々と恐ろしい事態が起こるようになる――というストーリー。

(恐らく)前情報を入れずに観た人は「この話は一体どこに向かっているんだ…」と困惑し、映画が終わったら「え、じゃぁ“アレ”は一体いつから始まってたんだ!?」と、もう一度観返したくなってしまうのではないかと思いましたねー。

そういう意味ではリドリー・スコット監督の「悪の法則」に近い感じも受けました。
“仕掛け”に気がついた頃には既に終わってる的な。

斬新で美しい映像と神経を逆なでされる音

本作は、アニーの工房の様子から始まります。
自宅を模したドールハウスが置かれた室内をカメラがゆっくりとパンしていき、やがてミニチュアのピーターの部屋をゆっくりとズームアップ。
すると、そのミニチュアがいつの間にか本当のピーターの部屋に変わっていて――となるんですね。

同時に、アニーたちが住む家の室内は、普通では考えられない程の引きの画で撮られることで、まるでドールハウスの中でキャラクターが動いている様に見えたりするのです。

そして、映画全編を通してコリン・ステットソンによる、不吉極まりない音楽が流れ、観ているこっちの神経を逆撫でしてくるし、長女チャーリーの「コッコッ…」とう舌打ちの音が、非常に効果的に使われてどんどん恐怖が増していくという演出になっているんですねー。

 いやー、ホント映画館で観なくてよかったですよ。
明るくした自室のテレビ画面で観てるから耐えられるけど、映画館みたいな視覚的にも聴覚的にも逃げ場のない状態で観たらトラウマ確実だわー。

というわけで、ここからはネタバレしていきますよー!

 

 

 

悪魔憑きの家系?

タイトルの「ヘレディタリー(hereditary)」を直訳すると、「遺伝的」「親譲りの」「先祖代々」という意味になるんだそうです。

では、本作では一体何が遺伝するのかと言えば、一つは精神疾患
そしてもう一つ。
ラストではアニーの母エレンが悪魔信仰者だったことが明かされるわけですが、それだけではなくて、彼女は悪魔信仰教団の中でもリーダー的ポジションの人間だということも分かる。

日本でも、まだ精神医学が発達していなかった時代には、精神疾患を持つ人は「狐憑き」として忌避されたり、逆に巫女やシャーマンなど“神に通じる者”として崇められたりしてきました。

グループセラピーでアニーが語る家族の話を聞く限り、彼女の家系は先祖代々そうした家系だったのではないかと推測できるんですよね。

つまり、彼女の母エレンも恐らくはその母も、現世に悪魔を召喚する巫女的(というより生贄)な役割だったのではないかと。

そして、その家系に生まれた男子は召喚された悪魔が現世に留まるための「器」になる事が、先祖代々決まっているっていう。

アニーの兄は「母が僕の中に何かを入れようとした」という遺書を残して自殺しています。
つまり、母エレンは長男を悪魔パイモンの器にしようとしたけれど失敗。
ならば孫のピーターを――という思惑を感じたアニーは、エレンからピーターを引き離して育て、代わりに娘のチャーリーを差し出したのです。(それはそれで酷い)

さらに、夢遊病のアニーは無意識に眠っていたピーターとチャーリーを焼き殺そうとした過去があり、それが親子のわだかまりになっている。

しかしそれは、アニーが二人を母エレンから守るために、また呪われた血筋を断つ為に、無意識のうちにやったことなのではないかと思うのです。

ところが、そんなアニーの行動も母親や悪魔教団、もしくは悪魔パイモンの掌の上だったんですよねー。

チャーリーの悲劇

そして、起こったのがチャーリーの事故。
母の命令でピーターとパーティーに行ったチャーリー。
ピーターは好きな女の子に近づくため一緒に別室で大麻を吸おうと誘い、チャーリーにケーキを貰って食べるよう進めます。
ところが実は、チャーリーはナッツアレルギーで(エレンの葬式のシーンで分かる)、そのケーキには大量のナッツが入っていたのです。

発作を起こしたチャーリーを車に乗せ、猛スピードで病院に向かうピーター。
苦しさから少しでも逃れようと車の窓を開けて身を乗り出し、新鮮な空気を吸おうとするチャーリー。
その時、道路の真ん中には動物の死体が転がっていて、ピーターが慌ててハンドルを切ると、チャーリーの目の前に電柱が迫って――。ってういう。

そこで道路にチャーリーの頭部が転がっていく影は撮されるんですが、ピーターはチャーリーが乗っていた後部座席を見ることはなく、画面もピーターのアップを撮したまま、家に戻って無言のままベッドに入るんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 事故直後のピーターの絶望に満ちたこの顔ね

そのまま朝になり、アニーが車で出かけようとしてチャーリーの首なし死体を発見し、

「ぎゃあぁぁぁあぁぁぁぁ!!」

と絶叫するまでの様子を、ベッドの中でもずっと目を開いたままのピーターのアップで見せるという演出は超辛いし怖いんですが、その絶叫に被せるようにカメラは道路に転がるチャーリーの頭部を撮し――って……結局見せるんかーーーい!!(;Д;)ギャー!

崩壊する家庭

このチャーリーの死をきっかけに、それまで辛うじて形を保ってきた一家の崩壊が始まります。
そして、それを加速させていくのがアニーがグループセラピーで出会った女性ジョーン(アン・ダウド)。

自らも息子と孫を同時に失ったというジョーンに、アニーは心を開き悩みを打ち明けるわけですが、そんなある日ジョーンは何故かウキウキした様子。
なんと、街にやってきた霊媒師に教えられた降霊術で死んだ孫の霊を呼び出したというのです。

最初は信じなかったアニーですが、ジョーンに半ば強引に付き合わされて降霊術をすると、目の前で信じられない事が起こります。
アニーは、チャーリーを呼び出せるかもしれないと、深夜、寝ている夫スティーブとピーターを叩きおこして降霊術を開始。
しかし、実はそれは悪魔パイモンを召喚する儀式だったんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 現れたのはチャーリーじゃなく悪魔でした。

つまり、ョーンは母エレンと同じ悪魔教の教徒だったわけです。

ここから物語は一気に加速し、ピーターは授業中レギュラー(あるある探険隊)の西川くんみたいになったかと思ったら自ら顔面を机に強打しまくり、旦那はアニーの目の前で焼死。アニーはついにぶっ壊れてピーターを追い回し、ついには自らワイヤーで自分の首をゴーリゴーリと切り落とす

そんな狂った状況からピーターは何とか逃げようと屋根裏の窓を突き破ってダーイブ!!

3階から庭に落ちた彼はよろよろ立ち上がるものの目は虚ろで、彼の口からはチャーリーのクセだった「コッ…」という舌打ちが。

そのままチャーリーが使っていたコテージに上がると、そこには、頭のない、祖母エレン、母アニー、そしてチャーリーの遺体と、チャーリーが作っていた工作品が飾られた祭壇が。
その後ろにはピーターに傅く白塗りの悪魔教の信者たち。

そんな様子をぼんやり眺めるピーターに「パイモン様」と謎の女の声(ジョーン?)がして、彼の頭にはパイモンの証である王冠が被せられてエンドロールが始まるんですよねー。………うん。

 

怖ええええええよぉぉ!!((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

 

つまりですね、最初は多分、祖母エレンによってチャーリーにパイモンが降ろされる
でも、正式にパイモンが降臨するには、ピーターの体が必要
で、悪魔教&パイモンはこの一家を追い詰めて追い詰めて、邪魔な“ピーター”を自殺に追い込んで、窓からの飛び降り自殺で空になったピーターの体にパイモンが入り込み、エレン、アニー、チャーリーの首なし死体という供物も用意され、降臨の儀&“継承”大★成★功!( *• ̀ω•́ )b グッ☆

っていう事なんですよね。多分。

この映画を観た人の中にはローズマリーの赤ちゃんを思い出した人も多いんじゃないでしょうか。両作はほぼ同じ構成…というか続編に近い感じんですよね。

で、冒頭のドールハウスや、超俯瞰で取られた家や部屋の様子は、悪魔パイモンの視点ってことなんですよ。

つまり、全ては最初から全て仕組まれていて、逃れることなんか出来なかったっていう……。

という事を踏まえて最初から観返すと、最初に観たときは意味の分からなかった伏線がそこかしこに張られていて、それがラストシーンに全て集約されているんですよね。

一方で、この物語には全てアニーの妄想と捉える事も出来ます。
アニーもまた両親や兄と同じく精神的に不安定な「信用できない語り手」として最初から描かれていて、劇中での彼女の異常な行動が「これ、全部このおばさんの妄想じゃね?」と思わせる余白のようなものを残しているからです。

その辺、アリ・アスター作劇や演出の隙のなさは、これが長編映画デビューとは思えない見事な手腕ですよねー。

まぁ、あえて言えば若干やりすぎ感はなくもないですがw

主演のトニ・コレットの顔芸は後半、怖いを通り越してちょっと笑っちゃうくらいだし、前述したピーターの西川くん化にも思わず笑っちゃいましたしねw

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画像出典元URL:http://eiga.com / 思わず笑っちゃうトニ・コレットの顔芸

正直、ホラー映画にはそれなりに慣れているつもりの僕でも、トラウマ級のシーンがいくつもあるし、全編通してじわじわと嫌~~~~なストレスをかけられまくるので、ホラーが苦手という人には決してオススメ出来ませんが、僕が近年観たホラー映画の中では間違いなくダントツに怖い作品でしたよー!

興味のある方は是非!

 

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ナチの残党医師vsナチ・ハンター「ブラジルから来た少年」(1978/日本では劇場未公開)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アイラ・レヴィンが1976年に発表した小説を元にしたSF?スリラー『ブラジルから来た少年』ですよー!

有名な作品ですが僕は初見で、しかも内容もまったく知らずに観たので物語がどう転がっていくのかハラハラドキドキしながら見ることができましたねー!

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画像出典元URL:http://amazon.co.jp

概要

寡作のスリラー作家アイラ・レヴィンの同名小説を映画化したスリラー。アウシュビッツ収容所で死の天使と言われたメンゲレ博士が、ナチスの残党と共にある計画を発動した。それは、アメリカとヨーロッパにいる、94人もの人物を殺害する、というものだった。そしてそれは、ナチスの復活を告げる悪魔の計画でもあった……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

ナチの残党医師vsナチ・ハンター

有名な作品なのでご存知の方も多いかと思いますが、この映画はいわゆるナチスもの”です。数々の戦犯の逮捕に貢献したナチ・ハンターの老人リーベルマン(ローレンス・オリヴィエ)は、「戦後南米に逃げ延びたナチの残党に不穏な動きがある」とナチスハンターでユダヤ人の若者から連絡を受けます。

最初は相手にしていなかったが、ナチ残党による会議の盗聴・録音に成功した若者が、電話中に押しかけたナチの残党によって殺害されたことで、リーベルマンは独自に調査に乗り出すのです。

若者からの報告によれば、彼らの計画とはアメリカとヨーロッパにいる65歳の公務員94人を、決められた日程通りに殺害するというもの。
しかもターゲットはユダヤ人ともナチスとも無関係だというのですね。
最初は半信半疑だったリーベルマンでしたが、計画の首謀者がアウシュヴィッツの主任医師だったメンゲレ博士グレゴリー・ペック)だったこと、通信社の友人に調べてもらったところ被害者と思われる不審死があり、西ドイツ、マサチューセッツの被害者家族を訪ねたリーベルマンは、そこで信じられないものを目にする――というストーリー。

ちなみに、本作の主人公であるリーベルマンと悪役であるメンゲレには、それぞれ実在のモデルがいて、特にヨーゼフ・メンゲレの方は実名をそのまま使っています。

実在の人物がモデル

リーベルマンのモデルとなったのは、実在のナチ・ハンターであるサイモン・ヴィーゼンタール。
ドイツのナチス政権下時代の戦犯の追及者(ナチ・ハンター)として知られるオーストリアユダヤ教徒で、アドルフ・アイヒマンなど数多くのナチの残党逮捕に貢献した人物です。

一方、ヨーゼフ・メンゲレナチスの医師であり、戦時中アウシュビッツ収容所などで、数々の非道極まりない人体実験を行った戦犯として追われるも、ドイツ南部、アルゼンチン、ブラジルと逃亡を続け、1979年に海水浴中に心臓発作を起こして溺死したのだそうです。

彼はまた、双子に特別な興味を持っていたようで、双子の子供3000人に対しても非道な人体実験を行ったのだとか。

彼が隠れ住んだブラジルの村では、ナチスの主張するアーリア人的特徴を備えた双子が次々に生まれる現象が起き、メンゲレ風の医者に薬を提供された証言が残っているという話もあったりするそうですね。

そして、そうしたメンゲレのエピソードの多くが本作の作劇に使われ、だからこそ劇中のメンゲレの異常性や彼が遂行しようとしている恐るべき計画にもリアリティーが感じられるのでしょう。

メンゲレの計画事態は、今となっては数多くの映画で使われまくった新鮮味のないものですが、本作公開の1978年当時は(ラストシーンも含め)かなりセンセーショナル、かつショッキングだったのではないかと思いましたねー。

鏡合わせの二人

序盤、年老いたリーベルマンはナチ・ハンターとして数々の功績を挙げているものの、時代の移り変わりでユダヤ人協会からの援助もなくなり、厄介者扱いを受けていることが分かります。

それは本人も自覚していて、ナチ・ハンターとしての情熱も消えかけている。
そんな彼のもとに入った、一本の電話から物語は動き始めるんですね。

一方のメンゲレは、最初はナチの残党と共に計画を進めているんですが、ナチの残党のメンバーは計画には懐疑的だし、ぶっちゃけナチス復活の野望などほぼないんですよね。

そんな中、一人やる気まんまんで強行的なメンゲレに彼らは「コイツめんどくせー」って思っていて、中盤、計画を中止し証拠隠滅のためにメンゲレの隠れ家を焼き、関係者も皆殺しにしているわけです。
なぜなら、メンゲレの計画が明るみになって自分たちの居場所がバレれば、捕まるリスクが高まるから。

つまり、リーベルマンとメンゲレは立場は違えど、時代の流れに取り残された鏡合わせの存在なのです。

そしてクライマックスでは、アメリカの片田舎でついにこの二人の直接対決となるんですが、爺さん二人の取っ組み合いっていう、中々新鮮な映像が見られますよw

ただ、それだけでは流石に画が持たないからか、ドーベルマンや拳銃、被害者の息子を入れ込むことで、サスペンスを生み出しているんですよね。

地味だけど秀作

正直、本作はかなり地味な映画ではあるけど物語自体は面白いし、劇中でのメンゲレのエピソードはほぼ実話だし、彼の恐ろしい計画のアイデアも当時としては(多分)かなり早かったと思うんですよね。

メンゲレ役のグレゴリー・ペックローレンス・オリヴィエという名優二人の演技も相まって、今観ても見ごたえのある秀作だと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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女王vsリプリーの母親対決「エイリアン2/完全版」(1986)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、みんな大好き「エイリアン」シリーズの第2作『エイリアン2』ですよー!

実は僕、本作は初見なんですよねーw

理由は後述しますけど個人的に最初の「エイリアン」がダメで、なのでその続編である本作を観ないままここまで来てしまったのです。

で、ブルーレイで観ようとしたら、「劇場公開版」か「完全版」が選べるようになっていて、どっちがいいか分からなかったので「完全版」で観ましたよー。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

タイタニック』『アバター』のジェームズ・キャメロン監督がメガホンを取った、『エイリアン』シリーズ第2弾の完全版。凶悪な生命体から逃れた女性宇宙航海士リプリーが、彼らの巣窟である小惑星に戻ってすさまじいバトルを繰り広げていく。前作に引き続きシガーニー・ウィーヴァーリプリーを演じ、前作には見受けられなかった彼女の母性やタフさを巧みに体現している。アクション色を増した展開に加え、貨物運搬用パワー・ローダーなどのガジェットにも改めて注目。(シネマトゥディより引用)

感想

「エイリアン」シリーズを観てなかった理由

僕が「エイリアン」シリーズで観た作品は、1作目の「エイリアン」「プロメテウス」「エイリアン:コヴェナントの三作だけ。(「エイリアンvsプレデターも一応観てるけど)

で、なぜみんな大好きな「エイリアン2」を観てなかったのかというと、「エイリアン」を観てガッカリしてしまったからなのです。

いや、面白かったですよ?

面白かったんですけど、クライマックスで遂にエイリアンの全体像が現れた時に、

 

着ぐるみかーーい!!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

ガッカリしてしまったのです。

第一作目の「エイリアン」が公開された79年といえば、その2年前にスター・ウォーズ4/新たなる希望」「未知との遭遇が公開され、空前のSFブームが起こった時代。
そんな新たな時代にリドスコ監督が公開したのが本作「エイリアン」だったのです。

当時はCGこそまだ無かったものの、ハリウッドではアニマトロニクスや特殊メイクといった特撮技術が一気に花開いた時代

で、エイリアンでも口から更に小さな口が伸びてくるとか、顔に張り付くフェイスハガーとか、寄生された隊員の腹を突き破ってエイリアンが生まれるとか、アニマトロニクスや特殊メイク技術が随所に見られ、エイリアンの本体は一体どんなスゴイことに……とワクワクドキドキで待ってたのに、出てきたのが着ぐるみかーと、一気に冷めてしまったんですよねー。*当時の僕は、着ぐるみ特撮=子供だましと思っていたのです。

以来、2012年公開の「プロメテウス」を観るまで、「エイリアン」シリーズは一本も触れてこなかったのです。

しかし今回、名作と名高い本作「エイリアン2」だけは観ておこうと思い立ってレンタルしたら、ナニコレ、超面白ーーーい!!

ざっくりストーリー紹介

地球へ帰還する途中の貨物宇宙船ノストロモ号は、知的生命体からのものと思われる信号を受信。
発信源の小惑星LV-426に降り立ったのがキッカケでノストロモ号船内に寄生型宇宙生物(エイリアン)が入り込み、乗組員を次々に殺してしまう。

最後に生き残った乗組員エレン・リプリーシガニー・ウィーバー)は、ノストロモ号もろともエイリアンを撃退し、猫のジョーンズと共に命からがら脱出艇でコールドスリープに入る。という前作の直後から本作はスタート。

地球周回軌道付近の宙域で偶然発見、救助されたリプリーは、宇宙ステーションの病院で目覚め、自身が57年間も宇宙を漂っていた事、そして当時11歳になろうとしていた娘アマンダは66歳になり2年前に自分より先に他界した事を告げらます。

彼女は、事の次第を報告するも信じてもらえず、毎夜エイリアンに襲われる悪夢にうなされる日々。
そんな時、件の小惑星LV-426に移住していた開拓民からの連絡が途絶えた事を知らされた彼女は、“経験者”として海兵隊の救助活動に同行するように求められます。

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画像出典元URL:http://eiga.com

最初は断っていた彼女ですが、自分を苦しめるトラウマを克服するべく「エイリアンの殲滅」を条件に、戦略アドバイザーとしてLV-426に同行するのだが……。というストーリー。

リドリー・スコットが手がけた前作は宇宙船を舞台にした密室ホラーでしたが、本作は監督を「ターミネーター」のジェームズ・キャメロンが担当し、エイリアンとリプリーの対決を描いたアクション映画になっているんですねー。

説明ゼリフの上手さ

僕が本作で感心したのは、説明ゼリフの上手さでした。
僕は説明ゼリフを多用する映画って基本的には好みではないんですが、でも作品によっては説明ゼリフが必要な映画もあるんですよね。

本作の場合まさにそれで、キャラクターが現在置かれている状況と位置関係や、作戦内容やエイリアンに対抗する武器の機能などを説明する必要があって、それを隊員やリプリーに説明する体(テイ)で観客に説明しているんですよね。

そして、前半~中盤の説明ゼリフが後半の展開へのフリになっているのも上手いなーって思いました。

本作の主要キャラは開拓団の生き残りを救出する任務についている軍人なので、他の作品ならノイズになりそうな説明ゼリフも違和感なくストーリーに組み込まれているのです。

もちろんそれだけではなく、見せるべき部分はちゃんと見せて後の展開に繋いでいく、過不足ない映像演出も上手いと思いましたよ。

母親の物語

再び自分の娘と会うことが叶わなかったリプリーは、LV-426でたった一人の生き残りである少女ニュート(キャリー・ヘン)と出会います。

そして、ニュートに亡き娘を重ねたリプリーは、何があっても彼女だけは守ると心に誓い、ニュートの方もリプリーにやがて母親の面影を重ね心を開きます。
まだエイリアンの恐怖を知らない軍隊の面々と違い、ニュートとリプリーは同じ経験、同じトラウマを抱えている事が、互いを強く結びつけるんですよね。

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そして、リプリーはニュートを守りながらエイリアンと戦うわけですが、アンドロイドのビショップが遠隔操作で呼び寄せた降下艇に向かう途中、ニュートがダストシュートに落ちてしまいエイリアンに捕まってしまう。
しかし、エイリアンはすぐには獲物を殺さない習性を知っているリプリーは、ニュートを救うため降下艇を待たせて単身エイリアンの巣に乗り込んでいくのです。

一方、エイリアンはアリや蜂のように女王(クイーン)が大量の卵を産んで、幼生が生物に寄生させることで成長・繁殖していくわけですが、ニュートを救ったリプリーは女王と大量の卵を発見。持っていた火炎放射機で卵を焼き払い、銃の弾丸や手榴弾などをありったけ女王にぶち込みます。

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画像出典元URL:http://eiga.com

そして、無事ニュートを救い出し降下艇に乗り込んだリプリーの前に、“子供達”を殺されて怒り狂う女王が。
そして、両者の最終決戦となるわけですが、リプリーは直接的ではないにせよ、エイリアンのせいで再び会うことが出来なかった娘を重ねたニュートを守らなければならない。対して女王はリプリーに子供を殺されてしまった復讐に燃えている。
つまりこの物語は、種族は違えど我が子を愛する母親の物語なんですね。

正直長い

結局、86年当時に劇場公開された通常盤は観てないので比べることは出来ませんが、この完全版は通常盤より約20分長くなってるんですよね。

確かに面白いし、どのシーンも必要っちゃぁ必要だとは思うんですけど、154分はやっぱり長いなーって思いました。

ただでさえ通常盤だって137分と長いですしねー。

まぁ、キャメロンの作品は概ね冗長になっちゃう傾向があるんですが、細々と尺をとっているダレ場を削れば、全体的にもうちょっとスマートに出来たんじゃないかなーって思いました。

あと、前作や「エイリアン:コヴェナント」を観ている身としては、ビショップがいつ裏切るかとハラハラしてたのに、お前結局いい人かよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ って思いましたねーw

興味のある方は是非!!

 

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ガチ・ウィリスが繰り広げる復讐「デス・ウィッシュ」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、イーライ・ロス監督ブルース・ウィリス主演の『デス・ウィッシュ』ですよー!

1974年に公開されたチャールズ・ブロンソン主演作品「狼よさらば」のリメイク作品で、強盗に愛する妻を殺され娘に重症を負わされた外科医のリベンジムービーです。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

チャールズ・ブロンソンが主演を務めた『狼よさらば』をリメイクしたアクション。何者かに家族を傷つけられた外科医が復讐(ふくしゅう)に乗り出す。メガホンを取るのは『ノック・ノック』などのイーライ・ロス。『ダイ・ハード』シリーズなどのブルース・ウィリス、ドラマシリーズ「LAW & ORDER クリミナル・インテント」などのヴィンセント・ドノフリオらが顔をそろえる。ブルースが外科医と処刑人の顔を持つ男にふんした。(シネマトゥディより印象)

感想

狼よさらば」をリメイク

本作は、1974年公開の「狼よさらば」のリメイク作品で、原作はブライアン・ガーフィールドの同名小説です。

74年版では、ニューヨークの設計士ポール・カージーは、留守中何者かに妻を殺され娘も暴行されてしまいます。
傷心の中、出張先のアリゾナ州ツーソンで銃を手に入れたカージーは、毎夜一人自警団として街の悪党を射殺していく。と言う物語なんですね。

彼は愛する妻子と幸せに暮らす平和主義者でしたが、自警活動が知られ英雄扱いされるようになると行動がエスカレートしていく。
つまり、銃という“力”に次第に取り憑かれていく男の姿を描くことで、銃社会アメリカに警鐘を鳴らすとうテーマの映画だったわけです。

ただ、このカージー、妻を殺し娘をレイプした犯人を探し出して復讐するのではなく、関係ないチンピラを片っ端から射殺していくので、観てるコッチは何かモヤモヤするし、カージーにちっとも感情移入出来ない

彼が始めたのは“リベンジ”(個人的復讐)ではなく、“アベンジ”(正義感による悪への報復)で、だから物語的なカタルシスはなくて、むしろカージーの不気味さが浮かび上がる構造になっているのです。

そんな、前作のモヤモヤをスッキリ解消したのが本作「デス・ウィッシュ」で、序盤のストーリーラインは踏襲しつつ、外科医のポール・カージーブルース・ウィリス)が最終的には妻を殺し娘に重症を負わせた犯人に“リベンジ”する物語になってるんですねー。

ガチ・ウィリス降臨

ブルース・ウィリスと言えば、ダイ・ハード」でそれまでの筋肉アクション映画に止めをさした男
その後も数々の映画に出演しますが、近年はいわゆるB級映画にチョコっと顔を出しては小銭を稼いでいる印象が強かったし、(一部の作品を除き)主演映画ですらヤル気の見えない省エネ演技で往年のファンをガッカリさせていたんですが、本作では久しぶりに本気を見せてくれましたよ!

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画像出典元URL:http://eiga.com / 久々のガチ・ウィリス降臨

まぁ、正直に言えば外科医役は違和感があったけど、序盤の妻や娘に対する優しげな話し方なんかはダイハードの頃を思い出したし、後半の復讐シーンはこれぞブルース・ウィリスって感じで力が入ってましたしねー。

まぁ、ウィリスももうおじいちゃんだから、アクションシーンなんかはほぼスタントマンでしょうけど、それでも「あーブルース・ウィリス観てるなー」っていう満足感はありました。

イーライ・ロスの資質にあった作品

そして本作の監督を務めたイーライ・ロスも、ノってる感じが画面越しに伝わってきましたねー。
彼が手がけた作品の中では、「食人族」をリメイクしたグリーン・インフェルノ(13)、「メイク・アップ」(77)をキアヌ・リーブス主演でリメイクした「ノック・ノック」に次いで本作は3作目のリメイクになりますが、代名詞とも言えるゴア描写や痛い描写は控えめながら実に効果的に使っているし、後半の復讐パートでは外科医設定がしっかり活かされています。(っていうか、“あのシーン”のために外科医設定にしたとしか思えないw)

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画像出典元URL:http://eiga.com / このあとイーライ・ロスらしさ爆発のシーンが

映像的な韻を踏んだカットやシーンの繋ぎ方や、ブルース・ウィリスの過去作品、続編「Death Sentence」の模倣犯オマージュもサラリと入れていてニヤリとさせられるし、クライマックスのあの展開にはスッキリしましたよ。

先日、感想を書いたルイスと不思議の時計と比べると「そうそう、イーライ・ロスはやっぱコッチだよねー!」と誰もが納得の出来だろうし、本作自体が彼の資質に合った作品だと思いました。

別の意味でモヤる

まぁ、そんな感じで本作は、非常に楽しいしスカっとするリベンジムービーになってるわけですが、その分「狼よさらば」での銃社会への警鐘”というテーマの方はかなり薄まってしまった感が否めないなーと思いました。

前述したように、ブロンソン版のポール・カージーは自分の家庭を壊した犯人に直接リベンジするのではなく、街のチンピラを片っ端から処刑する“アベンジ”を始めるんですよ。

そんな彼の行動原理の不可解さだったり、英雄視されることに快感を覚えて行動がエスカレートしていくカージーの不気味さやモヤモヤ感こそが作品の本質だったんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88342/photo/a0e83bf554fd6395/640.jpg?1531458335

画像出典元URL:http://eiga.com / もちろん、みんな大好きポール・カージーポーズも

もちろん本作でも、英雄化→行動がエスカレートという部分は踏襲しつつ、ネットやSNSなどを使ってより現代的にアップデートさせた描き方をしているし、カージーが壊れていく様子も描かれてはいるけど、中盤以降のカージーの行動原理を分かりやすくリベンジに設定したことで、「狼よ~」で描かれたテーマが矮小化されてしまった感じがして、別の意味でモヤモヤしてしまうんですよねー。

いや、エンタメ映画としては面白いし、本作のポップさもある意味で現代的と言えるんですけどね。

興味のある方は是非!!

 

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